小野大輔「古代を演じるうえで、常に
心の中にあったのは“理想の先輩”で
ありたいという想い」 『宇宙戦艦ヤ
マト2205』インタビュー

公開中の映画『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち前章』で古代進を演じている小野大輔にインタビュー。「この時代にヤマトがまた発進するということに、僕はとても強い意味を感じています」、「『ヤマト』を観ると、希望が持てる」と語る小野。その理由を語ってもらった。
【インタビュー】「彼の姿が自分の芸歴や人生と重なった。もう小野大輔=古代進になっています」
――2012年に『宇宙戦艦ヤマト2199』が上映されてから今年で9年。そこから『2202』を経て、ついに最新作『『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 前章 –TAKE OFF-』(以下、『2205』)が上映されています。約10年古代進を演じられてきたなか、どのような気持ちで本作に臨まれたのでしょうか?
最初に古代進を演じさせていただいてから、もう10年近く経ったんですね。僕自身も今あらためて実感しています。振り返ると長い旅ではありましたが、この10年はあっという間でしたね。そう感じるのはきっと、必死だったからなんだと思います。物語の中で古代は「地球を救う」という大きな命題を抱えて旅立ち、大切な出会いがたくさんありました。森雪との愛もそうですし、異星人との交流、戦いを通してヤマトのクルー同士の絆も深まりました。「地球を救う」という、たったひとつの目的のために旅をしていたはずなのに、その過程でいろいろなものを得ているんですよね。「ずっと旅をしてきて良かったな」と、あらためて心から感じました。
――約10年という長い月日を重ね、小野さんにとって古代進はどんな存在になっていますか?
当初はやはり、古代進という『宇宙戦艦ヤマト』の象徴のひとつを背負わなければいけないという思いがありました。プレッシャーを感じていましたし、自分には大きすぎる存在でした。ただ、10年近く旅を重ねるなかでたくさんの人と出会い、さまざまな経験をするなかで、古代と自分がリンクしていく感覚を強く感じるようになったんです。古代はただ猪突猛進なだけの人ではなく、後ろを向くし、ウジウジするし、ちゃんと迷うんですよね。その中で答えを見つけていき、1人ではなくみんなで使命を背負うことの大切さに気づくんです。そんな彼の姿が自分の芸歴や人生と重なった。もう小野大輔=古代進になっています。「自分は古代と同じだったんだ!」ってあらためて気づいたりして。それが自分でも意外であり、誇らしくもあります。
(c)西﨑義展/宇宙戦艦ヤマト 2205 製作委員会
――本作の台本を印象や、完成した映像をご覧になった際の感想はいかがでしたか?
『ヤマト』の新シリーズが始まるたびに、「なぜ旅をするのだろう」と考えるんです。古代たちは毎回、過酷な運命に巻き込まれていくんですよね。彼らは「また旅に出なければいけない」というプレッシャーと、ヤマトにしか背負えない使命を背負って出航します。そのことに想いを馳せたとき、ひとつの誇りのようなものを感じました。
今回の『2205』では、そこにさらに若手クルーが新しく乗り込んでくるんです。なかでも土門竜介が象徴的な存在ではあると思うんですけれど、彼を見た時に『2199』で最初にヤマトに乗り込んだ時の古代進を思い出しました。それと同時に僕自身も当時の自分を重ね合わせて、すごく熱い想いがこみ上げてきたんです。『2205』の物語に触れた時、同じ使命と熱量を持った若い魂を感じて、そのことに胸が熱くなりました。
(c)西﨑義展/宇宙戦艦ヤマト 2205 製作委員会
土門を演じた畠中(祐)くんのお芝居もすごく熱いんですよ。彼自身がそういう男でもあるんですけれど、不器用で真っ直ぐなんですよね。僕はそんな畠中くんのお芝居や、役者としての佇まいが大好きなので、見ていて嬉しくなりました。あと本作の“熱さ”について語るうえでは、安田賢司監督の存在も欠かせません。安田監督とは過去にいろんな作品でご一緒させていただいたのですが、安田監督も畠中くんや僕と同様で“ヤマト直撃世代”ではないんですよね。やっぱり新しい時代を作っていくクルーなんだなあと思いましたし、それでありながらヤマトが持つ熱量をしっかり具現化して表現する姿を目の当たりにして、「安田監督、こんなに熱かったんだ……!」と刺激を受けました。僕が古代だとしたら、まるで島(島大輔/CV:鈴村健一)みたいな。新しい旅の道標を安田監督が作ってくださっていて、本当に頼もしく思いました。
――『2202』を経て、『2205』ではさらに重い使命を背負い成長した古代の姿が描かれていますが、演じられるなかでどのようなことを意識されましたか?
『2205』は、『2202』の3年後の物語で、まだそんなに時間が経っていないんですよね。古代が変わったというよりは、彼をとりまく環境が大きく変わったんです。『2202』のラストで古代や森雪がたどり着いた答えは彼らにとって正しい選択だったし、全地球人類が異星人と共に出した答えでした。僕としては『2202』ですべての旅を終えたと思っていたのですが、やはり地球の中には彼らの答えを良しとしない人も少なからずいて、『2205』では毎回この命題を叩きつけられるんです。
ただ『2202』を経たこの3年で、古代はぐっと大人になりました。それは単純に年齢的なものではなく精神的な成長で、以前よりもずっと俯瞰で周りを見られるようになったと思います。たとえば森雪と会話しているシーンでも、今までは雪のことしか見ていなかったと思うんですよ。でも、今回は周りのクルーはもちろん、若手クルーをすごく真っ直ぐ見ているなと思いました。それは僕自身にも共通しています。古代を演じるたびに、自分のことだけではなく周りのことがどんどん見えてきました。自分の経験も踏まえて『2205』の古代進を演じる際には、これまでの経験値をすべて乗せようと思いながら演じさせていただきました。
命を賭けて宇宙へ旅立つ人々の、ロマンと愛を描いた作品
――本作は、これまで『宇宙戦艦ヤマト』シリーズに触れてこなかった若い層や女性も多くご覧になると思います。そんな新しいファンに向けて、本作を楽しむポイントや本作の見どころをお聞かせください。
『ヤマト』は人類のために命を賭けて宇宙へ旅立つ人々の、ロマンと愛を描いた作品です。そのテーマは普遍的なものなので、きっとどの世代の方がご覧になってもその魅力を共感していただけると思います。小学生が観ても、20代の方が観ても、ヤマトおじさんたちが観ても、同じ気持ちを感じられると思うんです。これから新たに『ヤマト』に触れる新しい世代の方に向けてこの作品の魅力を語る際も、それを他の世代の方に語るときも、違う言葉にはならないと思います。ぜひ世代の壁を越えて、『ヤマト』という共通の話題で語り合ってほしいですね。そういう意味では、これから初めて『ヤマト』をご覧になる若い世代がひとつ得をすることは、上の世代の方々と共通の話題で盛り上がれることだと思います。ヤマト直撃世代の中にも、新しいシリーズを観ていない方もたくさんいらっしゃいますので。そんな方たちに若い世代が「『2199』から『2205』シリーズがめちゃくちゃ面白いですよ!」とオススメしてくれたらすごく嬉しいです。今のこの時代は、『ヤマト』が描く普遍のテーマを新しい世代につないでいく、すごく大事な時期だと思うんです。ぜひ若い世代の方にも観ていただきたいですし、上の世代と語り合ってほしいです。
古代進と土門竜介の関係性に注目
――これから『宇宙戦艦ヤマト』シリーズを観たい!という方に向けて、今回の前章の中で、小野さんがぜひ注目して観てもらいたいポイントや、思い出のシーンがありましたら教えてください。
やっぱり今作において注目していただきたいポイントは、古代と土門竜介の関係性ですね。劇中で古代が森雪との会話の中で「あいつ(土門)は俺なんだ」とこぼすシーンがあるんですけれど、僕自身が畠中くんを見ながら「ああ、自分も昔こういうところがあったな」と感じるときがあるんです。古代の気持ちがすごくよく分かるし「ああ、やっぱり俺は古代進なんだな」と思える、大好きなシーンになりました。
古代は土門と会話する際、あまり多くを語らないんです。そこには「皆まで言わなくてもいい」という語らない男の美学を感じられて、そんなふたりの関係性がすごく好きですね。もうひとつの見どころといえば、やはり薮さんです。本作での活躍を観て、「薮さん、好きだな」ってあらためて思いました。僕はどうしても役者目線で作品を観てしまうので、演者さんのお芝居に注視してしまうところがあります。チョーさんのお芝居は軽やかさの中にいろいろな感情が乗っていて、深いなあと思いました。人間の泥臭さや狡さ、汗とか熱を感じられるお芝居をされるので、きっと薮さんにもいろんなことがあったんだなと想像が駆り立てられました。「人間って、そういうところあるよね」と、もしかしたら本作の中で一番共感しやすいキャラクターなのかもしれないです。薮助治ファンには、ちょっと楽しみにしていてほしいです。そもそも、生きていたってことだけでもすごく嬉しいですし!
――さらには、再び旅を共にするという……。
そうですよね。「裏切り者の不穏分子と一緒に旅をするなんて」と言ったりもしていますが、ああいったセリフもすごく好きです。そういう人間臭くて泥臭い、熱量があふれている人たちと一緒に旅をすることで、古代自身も大人になり、覚悟を固めていくんですよね。今回、『ヤマト』の出航時に古代の長台詞のシーンがあるのですが、そのなかで「ヤマトは希望の艦だ」という言葉があるんです。その台詞を声にした時、これはまさしく今の時代に新しい未来へ進んでいく人々の背中を押してくれる言葉だなと感じて、僕自身も強く背中を押してもらいました。本作の見どころについては、語るといっぱいあるんですが、後章も含めてぜひ楽しみにしていただけたらと思います。
「これも運命で、自分は試されている」
――コロナ禍により、1人ずつのアフレコになったと聞きました。従来とは異なる特殊な状況下で収録をされて、大変だったことや感じられたこと、他の演者の方とこういうところを話し合ったということがありましたらお聞かせください。
そうですね、音響作業を行うにあたって、どの現場でも感染予防対策は徹底して行われています。そのなかで『2205』も、より安全に安全を重ねる形で、対策をしていただきました。いつもは何人かで一緒に行うアフレコも、今回は1人1人でした。それが最初は、本当に辛かったですね。このインタビューの中でも話に挙がったと思うのですが、仲間を信じて艦を進めていく、みんなで背負うことで、古代も重圧から解放されていく、という部分がストーリーの根幹にあったと思うんです。異星人との交流も含めて、『ヤマト』は人対人の物語なんですよね。それを、たったひとりで録るのか……と思うと、アフレコが始まるまで気が重い部分もありました。
しかし、それと同時にこれも運命で、自分は試されていると思ったんです。だとしたら、これまで『2199』『2202』で長年培ってきたキャスト、スタッフの絆をしっかりと見せようと、気持ちを切り替えることができました。僕は古代進を一言で表すと“ポジティブ馬鹿野郎”だと思っているので、そこからは前向きに取り組むことができましたね。アフレコをしていても、自然と「山寺さんはこう演じるはず」「きっと桑島さんならこう返してくれるだろうな」と他のキャストの皆さんの声が聞こえてくるような感覚がありました。
畠中くんとは幸運なことにライブイベントや他の作品で交流があったので、それまでも「畠中祐っていいな。自分と重なるところがあるな」と思っていたんです。そんななか、今回のキャスティングを受けて「祐だったら、絶対こうやるな!」って想像ができたんですよね。もちろん、皆さんその予想を越えた演技をされていて、完成版を観た時には「やっぱりみんな、これだけすごい熱量をくれるよね!」と、ものすごく感動しました。ただ、そのぶんスタッフの皆さんはすごく大変だったと思います。あらためて今、『2205』の制作に携わってくださったすべてのヤマトクルーの皆さんに、心からお疲れ様でしたと言わせていただきたいです。
古代が下の世代に伝えたいメッセージ
――主人公・古代進は新クルー・土門竜介に対し、時に自分を重ね、大きな懐で導いています。今回の新シリーズでヤマト3世代とも呼べる若者たちを迎え、上官としての立場で彼らと接する古代を演じるうえで、大切にしたことについてお聞かせください。
古代を演じるうえで、常に心の中にあったのは“理想の先輩”でありたいという想いでした。これは、僕自身の想いでもあるんですよね。常日頃、後輩から「こんな先輩になりたい」って思ってもらえるような存在でありたいと思っています。古代に関して言うと、彼は「沖田艦長のような立派な艦長になりたい」という目標に向かって『2205』でようやくその覚悟が固まってきたんですね。本作では新クルーが続々と入ってきて、その中には徳川機関長の息子さんもいます。自分がお世話になった方の息子さんがいるって、半端ないプレッシャーだと思うんですよね。でも、そんななかで古代は艦長として立派にやり遂げなければいけないですし、月並みな言い方ですけれどお手本にならなければいけないんです。古代が下の世代に伝えたいメッセージは「艦長とはこうあるべきだ」「艦長は覚悟が決まっている」ということなんです。若手がその背中を見た時に、不安を感じちゃいけないと思うんですよね。この人ブレてるって思ったらついていけないじゃないですか。なので、ブレない覚悟を固めようという姿勢は、それまでのシリーズとは全く異なるメンタリティでした。
――『2205』以前の選択では、どうしても難しい選択をしなければいけない局面がたくさんありましたね。
そうですね。古代ってともすると、不安も葛藤も全部出していましたから。でも、だからこそ周りのみんなが助けてくれたし、分かり合うことができたんだと思います。ただ、今回はそこからもうひとつ上のフィールドに行かなくてはいけません。若い世代のクルーを見ながら、古代もそうですし僕自身も覚悟が決まったように思います。
ある意味僕の方が自信をもらっている
――上記の質問に絡めた内容になるのですが、ご自身が声優として後輩とお仕事で接する際に大切にしている姿勢やご自身の中でのお仕事への向き合い方に変化を感じたことがありましたらお聞かせください。
役者としての後輩や、若手の子たちを見ていると、本当にとても性格の良い子が多いなと感じます。それがとても誇らしいですし、先輩と接するうえでとても接しやすいんですよね。なかには僕が過去に出演した作品を観てくれていた人もいて、「あの作品、すごく好きでした」と言葉で伝えてくれるんです。そのたびに、ある意味僕の方が自信をもらっているというか、パワーをもらっているんですよね。そんな後輩のみんなに、先輩としてできることはただひとつ、彼らの背中を押してあげることなんですよ。立ち止まっていたり、何か進みづらそうだなと感じたりした時は、背中を押してあげられる存在になりたいんですよね。たとえば良い芝居をしていたら「良い芝居してるね」ってストレートに言ってあげたい。いいなって思ったらすぐ褒めます。
――もしかしたら、褒められるまで「これで良かったのかな」と迷いが残っているケースもあるかもしれないですよね。
おっしゃる通りです。あとこちらが褒めると、向こうも褒めてくれます。それが自分の自信にもつながりますし、とても幸せな循環だと思うんです。そうしていくうちに、お互い喋りやすくなって、接しやすくなってくるんです。あとは、褒めることと同じくらい「気を遣わせないこと」を意識しています。先輩が現場にいたら、絶対気を遣っちゃうじゃないですか。でも、僕に対してはそれは要らないと思っています。結構意図的にそうなるようにしていますね。だから、みんな慣れてくると「Dさん、Dさん」っていじってきます。喋りづらいと思われるよりも、そのほうが絶対いいですよね。なので、そのふたつはずっと心がけています。
――今回、役柄としてもご本人同士の間柄としても近い存在の畠中さんが共演されていますが、どのような言葉をかけましたか?
先日畠中くんと話す機会があった際に、「土門良かったよ、まんま祐じゃん」って声をかけました。彼も「本当ですか?ありがとうございます」って素直にそれを喜んでくれて……。役柄と役者のイメージが必ずしも一致しなければならないとは思いません。ただ、これだけリンクしていると、こんなに気持ちって高まるんだなっていうのをあらためて感じたんですよね。彼が土門を演じることで、「あ~!合ってるな」って。僕が置かれている立場が『2205』の古代と同じだなと思いましたし、シリーズ構成/脚本の福井(晴敏)さんや、音響監督の吉田(知弘)さんも、僕たちの関係性が古代と土門にぴったりと言ってくださいました。それはもちろん、畠中くん以外のキャストにも言えることで、とにかくキャスティングがすばらしい。これは、作品にとっても僕ら役者にとっても、幸せなことです。
――これから『2205』を観るファンの皆さんに向けてメッセージをお願いします。
この時代にヤマトがまた発進するということに、僕はとても強い意味を感じています。エンターテインメントは、どこまで行っても観た人が何かポジティブな想いを抱けるものだと信じて、僕は声優という職業やエンターテインメントに携わっています。生きていると、辛いことや理不尽なこと、我慢しなきゃいけないことがたくさんあると思います。でも、今あらためて『ヤマト』を観ると、希望が持てるんですよね。どんなことがあっても前を向いて、空を見上げて進んでいけば「必ずそこに希望の未来が待っている」と思わせてくれるんです。それが『ヤマト』の魅力なんだなと。この時代だからこそ強く感じます。ぜひ『2205』を観ていただいて、一緒にこの艦に乗って未来へ旅立っていただけ
れば嬉しく思います。
取材・文=本多恵

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