シライシ紗トリ

シライシ紗トリ

音楽は哲学だったり、
生き方だったりする

シライシさんのスタンスとは真逆のモードのアーティストをプロデュースすることもあると思いますが。

2005年にリリースしたソロアルバム『Happydom』を作りにアメリカに行った時、自分が何かをするという立場をプロデュースと呼ぶわけではないってことに気づいて。“プロデュース”と言っても、同じ物作りにかかわっている人というくらいの気持ち。音楽はちょっと哲学だったり、生き方だったりするから、その人が持っている人生はその人のものなので、かかわる時はそこに100パーセントいいかたちでかかわりたいと思うようになりました。

最初は“スティーヴン・タイラーにこんなにダメ出しできるのか!?”と衝撃を受けたプロデュース業だけど、それだけではないことを知ったのが大きい?

あれで変わりましたね(笑)。こちらも勉強もさせてもらうし、そのおかげで成り立っている立場でもあるから。

『Happydom』の制作は、ご自身にどんな影響がありましたか?

スティングを支えていた人たちと一緒に制作をして、“このままでいいんだ”ってことと、“これは考えなくてもいいんだ”ってことの2種類を持って帰ってきたんです。どんなバックグラウンドであっても、どんな立場でも、人種でも、音楽をやる上では何も関係ないから、“目の前の人をリスペクトするかどうか”だけなんだということを痛感できた。それまでは“プロデューサーってこうあるべきじゃないか”とか、“アーティストってこうあるべきじゃないか”っていうのを引きずっていたところがあったから、そういうのがなくなったんですよね。プロデュースすることも、自分の作る曲も、フルフラットになった。インターンさせてもらったような気持ちで作れたのが『Happydom』かな?。

配信でのリリースが普及したり、今ではSNSなどで切り取って音楽が広まることも多いですが、そういった聴き方が変化していく中で思うことがありますか?

アウトプットの時代の流れはあまり意識していないです。カセットテープがCDになって、MDも出てきて、今はストリーミングになって…と形態は変わってるけど、いいコンテンツを作るっていうのは同じだし、絶対に音楽はなくならない。なくてもいいものだからこそ、音楽は素晴らしい娯楽でもあるわけで、相反するものがいつも共存しているんだと思います。良かったものに投げ銭してもらうのが音楽として正しいかたちだと思うから、ストリーミングで無料で聴いてもらって…こっちは頑張って金払って作ってるけど、聴く人はそんなこと考えずに、もっと貪欲に音楽に触れればいいんじゃないかな? かたちはこれからもどんどん変わるだろうしね。

先ほどブルース・フェアバーン、デズモンド・チャイルドも出てきましたが、最後にシライシさんにとってのキーパーソンとなる人物は?

もうひとり崇拝している“こういうおじさんになりたい”っていう方は、キース・リチャーズですね。何かあった時の辞書にしています。悩んだり、ふと気がつくとキースを聴くし、生き方に惹かれているのかな? 理屈じゃなく、ミュージシャンとして、男として、アーティストとしてずっとカッコ良くて、この人を見ると本当に元気になる。笑顔になるね。

取材:千々和香苗

OKMusic編集部

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