鈴木みのり

鈴木みのり

【鈴木みのり インタビュー】
“これから前へ進んでいくんだ!”と
挑むように歌った

自分の中で物語ができている女性の
面倒くさい部分を書きたかった

ご自身で作詞作曲をされたカップリングの「リナリア」は、“自分の中に消しようがなく残っているもの”を歌っているあたりに「サイハテ」との共通点を感じて、それこそ表題に合わせて作られたのかなと。

そういったニュアンスは入れていますね。あとは、遊び心で「サイハテ」と同じカタカナの4文字のタイトルにしようっていうのはありました。“リナリア”は花の名前で、花言葉に“この恋に気づいて”とかの可愛い意味合いもあれば、“乱れる乙女心”とか“幻想”っていう重たい意味もあるんですよ。その二面性がこの歌詞に合うと思ってつけました。

相手に依存している自分にはしゃいでいた1番から、そこに疑問を感じて別れを選ぶ2番、そんな自分を《忘れがたい恋をした》と客観的に見返すラストと、時間の経過によって主人公の心情も移り変わっていきますからね。《なんて言ってる私が今は好き》という同じフレーズが、最初と最後でまったく違う意味合いを持つのも面白い。

ずっとモヤモヤしていて、自分の中で勝手に物語ができている女性の、ちょっと面倒くさい部分を書きたかったんです。楽曲の最後に入る息の音は編曲のタイミングで江口 亮さんが私のブレスをどこかから取って入れてくださっていて。それがあることによって“今は好き”っていうフレーズを言いきった感だったり、そこに残るモヤモヤ感とかを醸し出してくれているんですよ。

「リナリア」の作曲は、その江口さんと鈴木さんとの共作ですよね。しかし、ポップなアップチューンでもなく、メロディックなバラードでもなく、淡々とした曖昧なムードの曲調は作曲初挑戦にしては随分ハードル高くありません?

もともとカップリングは江口さんにお願いすることにしていて、ディレクターさんと江口さんの間で、“今回はみのりちゃんの好きな曲調、好きな歌詞で歌わせてみようか”という話になっていたようで、打ち合わせの時に私が“自分で作詞をしたいけど、今まで作詞したのは可愛らしい恋の曲が多かったので、そうではなく、聴いた人が自分の思い出や何かと重ねられる恋の歌を書いてみたい”と案を出して。あと、私はindigo la Endさんがすごく好きなので、彼らの楽曲にあるような切ない曲にも挑戦してみたいとお話ししたところ、江口さんに“それなら、歌詞を際立たせるためにもメロディーは自分が作ったほうがいいんじゃない?”と言われたんです。そこから書きたい歌詞のイメージをメモにして江口さんに送ったら、ベースとなるオケが渡され、そこに私がメロディーを乗せて…の繰り返しで出来上がりました。

ちなみに“女性の面倒くさい部分を書きたかった”とおっしゃいましたが、もしや鈴木さんご自身も面倒くさい女性なんでしょうか?

そうですね(笑)。人とやりとりする中でも、素直に言えばいいのに“こう言ったら傷つけちゃうな”とかって考えて言わなかったり、気になったことがあれば行動に出して完結させてしまえばいいのにそうせず、友達とかに愚痴を聞いてもらい、アドバイスをもらった挙句、“いや、でもね”と言っちゃう感じが、すごく面倒くさい女子だなぁって思うんですよ。

なるほど(笑)。初めて作曲してみて、またどんどんやってみたい気持ちは芽生えました?

芽生えましたね! 自分が手をかけていたものが、どんどん音楽として素敵なものになっていく過程がすごく楽しかったですし、自分が作詞したものを伝える上で歌うだけじゃなく、曲を作るということもひとつの大きな方法なんだなぁと思えたんです。あと、私はオケ録りもできるだけ参加して、スタジオミュージシャンのみなさんとも交流を深めるようにしているんですね。そこで“この人のベースのこの音が好きだな”とかって、もっと音の細かいところまで理解できるようになったら、自分の作曲にもいつか役立つんじゃないかっていう想いもあります。

歌さえ歌えればいいわけじゃなく、あくまでも自分のイメージをより的確に伝える創作活動と表現をしていきたいということですよね。

そうですね。ただ、伸び伸びと歌っているのをみなさんに届けたいというよりは、楽曲の世界観を自分で作り上げたいし、自分の今の想いを楽曲にして伝えたい。それを考えると自分で曲を作るほうが、気持ちを伝えやすいですし、自分の表現の幅を広げられる気がします。

思考からしてアーティストですね。

フライングドッグさん(所属レーベル)の考え方がそうなんです。すごく音楽に特化していて、声優さんやアニメのフェス以外にも、例えば過去には南 佳孝さんのフェスに出させていただいたり、アーティストとしての在り方を学ばせていただく機会が多いんです。なので、声優だからとか、20代の女の子だからとかじゃなく、どんどんアーティストとして成長していけたらなぁという想いはありますね。

リリース日の11月10日に向けて、今、カバー動画を週1ペースで公開していますが、それもアーティストとしてのチャレンジの一環なんでしょうか?

そうですね。ソロとしても声優としてもライヴをしていて、私の歌を“いい”と言ってくださる方がたくさんいて、“もっと歌っている自分を観ていただきたい”という気持ちが強くなりました。それで、J-POPやアニソン、ボカロ、アイドルソングから、本当に自分がリスペクトするアーティストさんの好きな曲を選ばせていただきました。やはりカバーをするのなら、その曲への愛がないとダメだと自分は思うので。

どんな愛があふれてくるか楽しみですね。

ドキドキですが、自分の歌声も知ってもらいつつ、自分の推しの布教活動みたいな感じでやりたいです(笑)。この一年、声優活動の中でも今まで会う機会のなかった方と時間をともにすることが多くて、改めていろんな方の良いところを学ばせてもらったり、先輩を見て“こんなふうになりたいな”という憧れもはっきりしてきたんですね。その中で痛感したのが、やっぱり最前線で活躍してる人って、何をするにも覚悟を持ってやっているってことだったんです。なので、より自分の歌とお芝居に覚悟を持ってやっていきたいですし、たくさんお芝居して、歌って、そこでの表現で悩んでいきたいですね。

取材:清水素子

シングル「サイハテ」2021年11月10日発売 FlyingDog
    • 【初回限定盤】(CD+Blu-ray)
    • VTZL-191
    • ¥4,400(税込)
    • 【通常盤】(CD)
    • VTCL-35331
    • ¥1,320(税込)
    • 【アニメ盤】(CD)
    • VTCL-35332
    • ¥1,320(税込)
鈴木みのり プロフィール

スズキミノリ:声優・歌手。2015年にTVアニメ『マクロスΔ』歌姫オーディションを受け、約8,000人の中からグランプリを射止める。16年4月、同作ヒロイン役で声優として本格的に活動を開始。また同作内ユニット“ワルキューレ”としても活躍中! ずば抜けた歌唱力と幅広い表現力、見るものに元気を与える印象的な“笑顔”が武器の、今最も勢いのある声優アーティストのひとり。18年1月、三原康司(フレデリック)が楽曲提供し話題となった「FEELING AROUND」でソロデビューを果たし、歌手活動5周年となる2023年は1月に待望の3ndアルバム『fruitful spring』とTVアニメ『シュガーアップル・フェアリーテイル』OPテーマとなるシングル「ミュージカル」を同時リリースする。鈴木みのり オフィシャルHP

「サイハテ」MV

「サイハテ」(2 Chorus Only Ver.)

OKMusic編集部

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