【INORAN インタビュー】
もとにはもう戻らないのだったら
次のところへ行こうよ!
同じ心地良い湿度で、
ずっと晴れのところなんてない
「Count Me In」には《For the rest of ya life》という表現が出てきます。慣用句だとは思うのですが、“これから先、残された人生をどう生きるか?”というのを切実に考えているモードなのかなと。
やっぱり…笑って毎日を過ごしたいよね。自分の影響が及ぶ人たちには、いい影響を与えたいしさ。そんなに遠い先のこと…終わる時のこととかは考えていないですけど、“終わりは必ずくる”というのは、この何年かですごく分かって、踏ん切りはついているというか。だからこそというのはありますけどね。心地良い湿度で、ずっと晴れのところなんてないし、それは作りものだと思うし。こういう状況を経験することによって、それをすごく感じる。もっと言うと、ずっと花を咲かせていたい、ずっと花が咲いていてほしい、ずっと自分は花でありたいとか思っても、やっぱり冬には一回枯れて休まないと。それが自然だと思うからね。大それたことを言うようだけど、人間というのは、資本主義というのは、そうやって過ごしてきてしまったので。だから、この時間ってまんざらでもないなって思うんだよね。尊いものとか、プライオリティーが分かったから。だからこそ、感動できるんじゃないですかね?
INORANさんは、この状況下で歩みを止めるどころかむしろ加速し、コンスタントに作品をリリースされています。その時々の時代の空気を感じながら音に落とし込み、世に送りだしていくというのはご自身にとって自然なことですか?
自然ですね、INORANというミュージシャンにとっては。“Between The World And Me”じゃないけれど、“僕と僕以外”というのがあって、それがあるから僕がいるわけで。時代の流れとか、自分の両腕をグルグル回した時に周りにいる人たちとかと共有するものを作って過ごしたい、生きていきたいという想いはあるよね。だから、創作意欲の源泉ってもしかしたら、自分のクリエイティブなものではないのかもしれない。“そういう人たちと過ごしたい”という想いが一番というかね。そこに動かされる部分が自分の場合はすごくあるので。
“俺の作りたい音をこだわり抜いて5年に一回だけリリースしたい”というタイプではなく、人とのやり取りから生まれる何か、その間にあるものを大事にされていると?
うん。そこを音に乗せる、かたちにするしかないですもん。その想いはだんだん強くなってきましたね。培われてきたというか、育ってきたのかも。今でもいろんなところでステージに立たせてもらっているという部分で、LUNA SEAであればユニバーサルミュージックだったり、INORANであればキングレコードであったり、そういうファミリーができていて。そこに対して自分の感情論だけじゃなくて、しっかりと仕事をするというか。それが自分のいわゆるクリエイティブなものよりも勝つし、それを糧にしてクリエイティブにつなげるっていうキャラですね。
カッコ良いですね!
9曲目のインストゥルメンタル「flavor」は海辺の水音のようなサウンドが心地良かったです。
えっ!? てっきりリアルな水音なのかと思いました。ここからトーンが切り替わるのを感じ、ラストの「Dancin‘ in the Moonlight」はシンセフレーズと歌との呼応が心地良く、新境地を思わせるダンサブルな曲ですね。
この曲を作った時に“あっ、アルバムの最後になるな”と思ったから、自分のある一日のストーリーであれば、こういうふうにみんなで思って、想いを共有してベッドにつきたいと思って。“今日も良かったね、明日もいい日だったらもっといいね”っていう。終わらない感じかな?
何か具体的に思い浮かべた情景はあったのですか?
まぁ、“Moon”という言葉には、私どもはかなり強い意味を抱きがちなので(笑)…LUNA SEAとは違う神秘的な、僕なりのムーンライトというかね。焦がれてしまうようなシルエットを描き出してくれたりするわけじゃないですか。なので、もう少しセクシーな感じっていうのかな?
どんな月ですかね? 満月? それとも三日月でしょうか?
えーっと、新月です…って、見えないっちゅーの!(笑) 何でしょうね? でも、かたちじゃないかもしれないです、僕の場合は。照らされる、その光ですね。
やはり太陽というよりはINORANさんの場合は月のほうが…
いやいや、この曲だけですよ。あとは、全部昼間です! …と言っておかないとイメージ的に全部夜にされるから、俺のキャラ的に(笑)。昼です! 絶対に昼です!!
(笑)。ジャケットのイラストレーションに象徴されるように、自分ひとりの世界ではなく、愛する人、信頼できる誰かとの関係など、パートナーシップの大切さを感じられる作品だとも思います。
そうですね。“リモートじゃねぇだろ!”というのは俺もそう思うし、みんなもそう思うだろうし。やっぱり近くに行きたいよねっていう。お酒を飲むでも旅行でもいいけど、そういう素敵な時間は支えだったんだと改めて感じられた時期だと思うんだよね。恋人だけじゃなくて家族もそうだろうし、そういう部分でイメージしたジャケットだと思いますね。今より状況が良くなったら“旅したいよね?”っていう感じ。コロナ禍になる前のようには戻らないけど、そういう気持ちを抱きながら、思いやりを強く持てるようになれば、さらに世の中は良くなるんじゃないかな? みんながそう思えば、周りの人も幸せにできるんじゃないかな? …とか。そういうことの例えのジャケットかもしれないですね。俺もそうだけど、自由の意味というのがすごく分かった時期だったと思うし。
あと、“ANY DAY NOW”というタイトルですが、どの段階でお決めになりましたか?
ある映画の中で歌われた曲のワンフレーズなんですね。ボブ・ディランの「I Shall Be Released」という曲の一節なんですけど。
もともとお好きな曲だったんですか?
好きだし、その曲を使用している映画があって、それがすごく響いたっていう。
差し支えなければ、どんな作品ですか?
『チョコレートドーナツ』ですね。主人公たちの勇気に触れて“すごいな”と感じて、心が震えてしまったんですよね(※映画の原題は“Any Day Now”)。それでこの言葉を使いたいなと思っちゃった。映画にインスパイアされたという点では『Between The World And Me』の時と一緒ですね。
アルバムが完成してからつけられたのですか?
いや。作っている時に観たんですよね。もともとその作品のどうこうというよりは、そのタイミングでたまたま観たというか。
INORANさんは映画はよくご覧になり、刺激も受けているんですよね?
うん。一日が終わったあと、いろんなことが毎日あると思いますけど、夜に映画を観るとメンタルが浄化されるというか。また映画館にも行きたいですよねぇ。
アルバムリリース後のINORANさんの展開を教えてください。
11月、12月、1月にマンスリーで、東京、大阪、横浜、三都市のBillboard Liveでまたライヴをします。LUNA SEAとしてのツアー(『LUNA SEA 30th Anniversary Tour -CROSS THE UNIVERSE-』)も同時に走っているし。
2022年の1月8日(土)、9日(日)にはそのグランドファイナルとして、さいたまスーパーアリーナ2daysが開催されますね。
待たせたぶん、ファイナルには全力で向かいたいと思っているし、その前に何カ所か回りますけど、そこに行くのも楽しみだし。この『ANY DAY NOW』の展開もいろいろ考えたいとは思っています。
ソロとLUNA SEAとの両輪でお忙しいと思いますが、お体に気をつけてください!
取材:大前多恵
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アルバム『ANY DAY NOW』2021年10月20日発売
KING RECORDS
- 【完全生産限定盤】(CD+Blu-ray+写真集)
- NKCD-6964
- ¥13,200(税込)
- ※KING e-SHOP限定販売
- ※LP SIZE BOX仕様
- 【通常盤】(CD)
- KICS-4022
- ¥3,300(税込)
『INORAN 2021-2022 PREMIUM ACOUSTIC LIVE』
[2021年]
11/23(火) 東京・Billboard Live TOKYO
1stステージ:開場15:30 開演16:30
2ndステージ:開場18:30 開演19:30
12/25(土) 大阪・Billboard Live OSAKA
[2022年]
1/16(日) 神奈川・Billboard Live YOKOHAMA
1stステージ:開場15:30 開演16:30
2ndステージ:開場18:30 開演19:30
イノラン:国内にとどまらず、世界に活動の場を拡げるLUNA SEAのギタリスト。1997年よりソロ活動を開始、現在迄にフルアルバム10枚以上をリリースする等精力的な活動を行なっている。LUNA SEA、ソロの他にもTourbillon、Muddy Apes等多岐に渡るプロジェクトで音楽活動を鋭意展開中。ソロ活動20周年を迎えた17年8月にセルフカバーベストアルバム『INTENSE/MELLOW』を、LUNA SEAが活動30周年を迎えた19年8月にはオリジナルフルアルバム『2019』を発表。そして、20年9月に『Libertine Dreams』、21年2月に『Between The World And Me』、同年10月に『ANY DAY NOW』と三部作となるアルバムをリリース。INORAN オフィシャルHP
「Wherever,Whenever」MV
『ANY DAY NOW』
全曲試聴トレーラー