現在開催中の関西おすすめアート展覧
会3選ーーミロコマチコ展、『ハリー
・ポッター』展、いとうひでみ個展を
ピックアップ

関西の美術館やギャラリーで開催される展覧会、イベントが、2021年も芸術の秋にふさわしく大小様々な会場にて開催されており、アートに触れる機会が多い。そこでSPICE編集部では、様々な展覧会やイベントを紹介するなど、アートにまつわる企画をスタートさせた。今回は現在開催中の展覧会の中から、筆者が独断で選抜した、ぜひ足を運んでほしい3つの展示を紹介する。最後にはこれから開催される見逃せない展覧会もピックアップしているため、参考にして欲しい。
1.特別展『ミロコマチコ いきものたちはわたしのかがみ』/神戸ゆかりの美術館
「音のどうぶつ」(2017年) (c)mirocomachiko
最初に紹介するのは、10月2日(土)から12月19日(日)まで神戸ゆかりの美術館にて開催中の『ミロコマチコ いきものたちはわたしのかがみ』展。栃木・愛知・高知を経て、関西に巡回してきた。画家で絵本作家のミロコマチコは、2012年に出版したデビュー絵本『オオカミがとぶひ』が大ヒットして以降、国内外の絵本賞や文芸賞を立て続けに受賞、MBS『情熱大陸』にも出演するなど、老若男女問わず、幅広い年齢層の人から大きな支持を集めている。
「いちじくの断面」(2015年) (c)mirocomachiko
なんといってもミロコの絵の魅力は、そのダイナミックさ。大きなキャンバスいっぱいに描かれるエネルギッシュで躍動感のある筆致が、見る者を圧倒し、生命力をわき立たせる。大阪出身の彼女は上京後、2019年6月に奄美大島へ移住した。もともと画面からはみ出しそうなエネルギーを持って描く破天荒な作風だが、「東洋のガラパゴス」と呼ばれる奄美大島の生活の中で、目に見えない生き物、体内、光といった神秘的な要素が加わった。
「生物進化とはなにか」(2016年) (c)mirocomachiko
本展は、「ミロコマチコとは何者なのか」をテーマに、近作・新作を中心とした絵画や絵本原画、書籍の装画や企業とのコラボレーションを展示すると同時に、奄美大島での暮らしや制作風景も紹介しながら、彼女の魅力に迫ってゆくもの。
「ドクルジン」(2019年) (c)mirocomachiko
筆者は昨年、宇都宮美術館での展示を鑑賞した。壁一面もある巨大なキャンバスに、まるで生きているかのように走り、吠え、うねる動物たち。その目に宿る強く美しい輝きに釘付けになり、しばらく絵の前に立ち尽くしていたことを、ありありと思い出せる。色使いもデザイン的で、一切の制約がない(ように見える)のびのびと自由な雰囲気は、本当に心を打つ。中には、ミロコの作品に入り込んだような感覚が味わえる展示もある。
「海の呼吸」(2020年) (c)mirocomachiko
今年7月、世界自然遺産に登録された奄美大島。彼女の暮らしのすぐ近くにある豊かな自然と、生き物の存在の偉大さを感じるため、展覧会自体がパワースポットのようである。まだ彼女の作品を観たことがない人にも、過去に観たことがある人にも全力でおすすめする。筆者ももう一度観に行こうと思う。会期は12月19日(日)まで。
2.特別展『ハリー・ポッターと魔法の歴史』/兵庫県立美術館
ジム・ケイ「『ハリー・ポッターと賢者の石』の9と3/4番線の習作」 ブルームズベリー社蔵 (c)Bloomsbury Publishing Plc 2015
続いては、9月11日(土)〜11月7日(日)に兵庫県立美術館にて開催中の特別展『ハリー・ポッターと魔法の歴史』を紹介する。『ハリー・ポッター』シリーズは、周知のとおり、イギリスの作家J.K.ローリングによるファンタジー文学。1997年にブルームズベリー社から出版されるや否や、瞬く間に人気を博し、20年以上経った今も世界中で愛されている。本展は第1作『ハリー・ポッターと賢者の石』がイギリスで出版されて20周年を記念して、大英図書館が2017年に企画・開催した展覧会『Harry Potter: A History of Magic』の国際巡回展。2018年のニューヨークに続いて日本にやってきた。
大英図書館の展示風景 (c)Easy Tiger Creative
日本初公開となるJ.K.ローリングの直筆原稿やスケッチ、イラスト版『ハリー・ポッター』シリーズの美しい挿絵を描いたジム・ケイの原画をはじめ、ハリーたちがホグワーツ魔法魔術学校で学んだ魔法の科目に沿って、魔法や呪文、占いなどにまつわる、大英図書館所蔵の貴重な書籍や資料が展示されている。
「薬草書」 15世紀 大英図書館蔵 (c)British Library Board
筆者も鑑賞したが、まさに『ハリポタ』ファンにとっては垂涎の展覧会だろう。ホグワーツ魔法魔術学校の図書室をイメージした本棚に囲まれて、物語のように展示は進む。全ての始まりの第1章「旅—The Journey—」を経て、ホグワーツ魔法魔術学校に入学した生徒の気分で、第2章「魔法薬学—Potions—」、第3章「錬金術—Alchemy—」……と、全10章にわたり様々な見聞を広めてゆくのだ。
レオナルド・ダ・ヴィンチ 「天体にまつわるメモとスケッチ」 1506-1508年頃 大英図書館蔵  (c)British Library Board
J.K.ローリングは、古来から実際に世界各国で人々が使用したり、信じて伝承してきた文化や学問を取り入れて、ハリー・ポッターの世界観を作り上げた。実在するものも数知れず(引き抜くと叫び声をあげる薬草・マンドレイクが実在の植物だったのには驚いた)。『ハリポタ』作品の奥深さにさらに魅了され、会場を出る頃には「もう一度読んでみよう、観てみよう」と思えること間違いなし。人気の展示なので、なるべく平日を狙うことをオススメする。会期は11月7日(日)まで。
3.いとうひでみ個展『Cosmo』/ニュースタアギャラリーOsaka
『Cosmo』
最後におすすめするのは、東京在住のイラストレーター・いとうひでみの個展『Cosmo』。10月5日(火)〜17日(日)まで、ルクアイーレ4FのニュースタアギャラリーOsakaにて開催されている。彼女が主に描くのは、超能力をもつ女の子、宇宙人、UFOといったSF的なモチーフ。切れ長の目の少女が優しい味わいの水彩で描かれる。かわいくて、色っぽくて、オシャレで、ちょっぴり不思議で、時にシュールで、どこか懐かしさも感じる作風が魅力だ。
本展は、今年7月に東京で開催された展覧会『Spece』の巡回展。展覧会タイトルを新たに『Cosmo』とし、ほぼ新作の絵画作品約40点を展示している。
テーマは、「わたし」「宇宙」「いる場所」。昨年春に緊急事態宣言が発令され、外出ができなくなり、人と会えなくなった状況を「1人1人が宇宙船にいるみたいだ」と思ったことから制作を開始。描かれているのは、宇宙船の中でそれぞれの生活を営む少女の姿。
『Cosmo』
宇宙船と聞くと、はるか彼方、銀河の向こうの別世界を想像すると思うが、絵の中の少女の日常は、私たちのそれにとても近い。たとえば、ペヤングを食べている。オレンジのパックジュースを飲んでいる。洗濯をしている。ネックレスのチェーンがこんがらがって顔をしかめている。外の景色を見ている。
これらは、いとうひでみ本人の日常に着想を得て描いたものだ。コロナで住環境を考えるようになったことをきっかけに植物を部屋に置いたり、AirPodsを洗濯してしまったり、PCのメモリを増設したり、ワクチンを打って腕が痛かったり。そんな彼女の体験が作品に反映されている。ポートレイト風の絵は、少女の会えない友人を思い浮かべたもの。宇宙という異空間にいる少女は私たちでもある。コロナで誰しもが抱えた思いを、パステルカラーの絵の具で鮮やかに描き出す。
『Cosmo』
ギャラリー内には、宇宙船の窓をかたどった額をはじめ、宇宙人の顔のオブジェ、天体の軌道がモチーフの置物やモビール、ニュートンのゆりかご、空中浮遊する三角錐、謎のスイッチなどが並び、宇宙やエネルギーを感じる空間に演出されている。
注目してほしいのは少女たちの服。シースルーの袖はPVC素材をイメージしたらしい。まつげや瞳の色もカラフルでとてもキュートだ。いとうひでみの作品には未知なる発見と光がある。「新しいスタアと未来をつくる」ために生まれたニュースタアギャラリーとの親和性も抜群だ。オリジナル作品集やグッズも販売されているので、ぜひ訪れて彼女の作品のかがやきに触れてほしい。
『Cosmo』
ほかにも10月はおすすめ展覧会やイベントが目白押しだ。11月23日(火・祝)まで開催されている『六甲ミーツ・アート芸術散歩2021』が現在会期中だ(SPICEでのレポートはこちら)。また10月15日(金)から10月31日(日)まで心斎橋PARCOにて、Suchmosgo!go!vanillasのジャケットやグッズデザインを手がける、新進気鋭のイラストレーター・YUGO.の個展『NEW DESTRUCTION』が延期を経てついに開催される。
さらにこれから開催されるもので、10月16日(土)、17日(日)の2日間に実施される若手作家の登竜門と言っても過言ではない国際アートフェア『UNKNOWN ASIA 2021』や、10月30日(土)〜11月15日(月)に奈良国立博物館にて年に一度、希少性の高い宝物が期間限定で見られるとあって、全国からファンが集結する『第73回 正倉院展』なども外せない展覧会だ。気になる人は、是非、足を運んでみてはいかがだろうか。
文=ERI KUBOTA

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