『ルパン三世 PART6』栗田貫一インタ
ビュー「人間としてだらしなくなって
くるとカッコよくなくなる」

10月からアニメ化50周年記念の新作テレビアニメ『ルパン三世 PART6』の放送が始まる。そこで26年間、ルパン三世を演じてきた栗⽥貫⼀にルパン三世をどうとらえているのか、今回の作品について訊いてきた。栗⽥貫⼀が考えるルパン像、そしてカッコいい大人とは。必見です。
TVアニメ『ルパン三世 PART6』キービジュアル 原作:モンキー・パンチ (c)TMS・NTV

――まずはルパン三世のアニメ化50周年記念作品ということで、ナンバリングされたTVシリーズとしては約3年ぶりですね。
やっぱり、シリーズものというのは嬉しいですよね。今はこのご時世ですので、いっぺんに全員でスタジオに入ることはできないですけど、スタジオのロビーで会えるので。みゆきちゃん(沢城みゆき)がスタジオ出たら、僕が入って、そのあと大ちゃん(浪川大輔)が入って、ってテレコで会える。とはいえ一緒に芝居したいですけどね。
原作:モンキー・パンチ (c)TMS・NTV
原作:モンキー・パンチ (c)TMS・NTV
――いわゆるルパンファミリーとの交流もあった感じなんですね。

はい、だからいいんですよね。僕は26年間ルパンを演じている、と言われていますけど、最初の15年間はTVスペシャルしかやっていないんですよ。TVスペシャルは2日間で収録してしまうので、15年をギュッとまとめると31日ぐらいしかやっていないんです(笑)。だから山ちゃん(山寺宏一)たちより長くやっているって、よく言われるんですけどだいたい1か月ぐらいの差なんだよな、と僕は思っているんです。それに彼らとリスタートしたタイミングを考えると、彼らとの差は全く感じていないです。
原作:モンキー・パンチ (c)TMS・NTV
――とはいえルパンを演じて26年がたち、先代・山田康雄さんよりもルパンを演じている期間が長くなったわけですが、今は栗田さんが演じるルパンから入った、というファンも多いと思うんです。
僕は山田さんが亡くなってしまって、急にスタジオに連れていかれた感じなので。最初は声優とはどんなことをするのかもまったく分かっていなくて、スタジオに入ると超レジェンドの声優さんが揃っていたわけです。その頃は必死で、全く余裕もなかった。そして今はこの時代の超レジェンドと演じているんですよね。ずっと声優界のレジェンドと仕事をしているので、僕って、ラッキーなのかなって(笑)。
――僕らはモノマネ四天王の時期から見ていたので、栗田さんがルパンを演じる、ということになったときすごく納得できたんですよね。
当時はほんとに、少年野球で優勝したぐらいの子供が、いきなりメジャーリーグのマウンドに立たされて、いきなり投げろって、『ルパン三世 くたばれ!ノストラダムス』(1995年放送)の時は言われた感じでしたからね。必死っていうか、ホームに届いてないですもんね、球が。
撮影:大塚正明
――当時はそれぐらい必死だったと。
今観ると酷いなって思いますよ。当時は「なんで僕にやらせんだよ!」って思ってました。当時、一度断ってますからね。勘弁してよと思っていました。
原作:モンキー・パンチ (c)TMS・NTV
――とはいえ、長くルパンを演じられていて、ハマったなって時はあったのでしょうか?
ある時、アフレコ時に絵ができていないときがあったんです。声優さんであれば、このカットは何秒でセリフを言って、とできるんでしょうけど、そんなことできないわけです。で、現場でどうしましょうとなった時に、納谷悟朗さん(先代・銭形警部)が「どうするって、お前の作品なんだから、お前が決めろ」って言われたんです。「僕の作品なんですか?」って聞いたら、「お前が主役なんだからお前の作品だろう」と。それでその時は絵ができるまでアフレコは延期になったんですけど、「自分が座長なんだ」という責任が出てきた瞬間でした。それまではレジェンドたちの背中に隠れていればいいと思っていたんですよ。
――それは凄いというか、嬉しいというか。
とはいえ監督に向かって「じゃあ帰ります」なんて言えないじゃないですか(笑)。だから当時は困った記憶があります。結局、帰ったんですけど(笑)。
原作:モンキー・パンチ (c)TMS・NTV
――『ルパン三世』ってPart1から始まり、たぶん見ている人の世代によって、それぞれルパン像ってあると思うんです。栗田さんの中のルパン像っていうのはどういったものなのでしょうか?
『LUPIN the Third ~峰不二子という女~』をやった時に、それまでなかったぐらいダークなルパンだったんですね。それまでは最初にモノマネをしていたPart2の「ありゃりゃらぁ~」なんて軽い感じのルパンだった。鍵盤でいう上のルパンだったんだと思うんです。それが『LUPIN the Third ~峰不二子という女~』では、山田康雄さんが演じていたダーティハリーより低い、鍵盤のもっと下のほうのルパンを弾くことができた。だから、俺の中ではルパンを演じるうえでの幅が広がった。そこから、自分なりにいろいろなルパンを出せるようになったんです。だから、今回も新しいルパンになるのかなと。
――今回の『ルパン三世 PART6』のルパンは栗田さんの中でどんな印象でしょうか?
今回はサスペンスですよね。ある人が殺された過去を、誰にも言わず抱えながら生きているルパン。もしかしたらルパンが犯人なんじゃないか、ということもあるのかなと。僕らもアフレコのたびに台本をもらって演じていたので、最後になって「そういうことだったんだ…」と。だから今回のルパンはミステリアスな部分を持った深いルパン、かな。
――観ていけば観ていくほど楽しみになる展開になっていると。
そうですね。あとオムニバスのシナリオを担当している人たちも豪華ですよね。
――押井守さんなどそうそうたるメンツがシナリオを担当されていますよね。これはどうなるんだと。
演じていて、この台本誰が書いてるんだろうなって台本を見返して、「ええっ?!すげえな」って。だからただの単発の物語なんじゃないんだなぁ。
――アニバーサリーにふさわしい感じになっていますよね。僕らも一話を観させていただいたんですけど、アクションもしっかりあってすごく作りこまれていますよね。
カーチェイスもすごい。
――先ほども話に出ましたが『LUPIN the Third ~峰不二子という女~』からあたりから『ルパン三世』って、ハードボイルドな感じが強く出てきていますよね。
小池監督(LUPIN the thirdシリーズ)もそうなんですけど、カッコいいルパンを描かれるようになりましたよね。前はカッコいいけど、優しくて、可愛くて、滑稽で、でもスマートな感じがあったけど、カッコよくていいんだ、ワルくていいんだという感じになっていますよね。そのあたりからです。僕がルパンを演じやすくなったのは。先代の山田さんを追求しなくていいんだなって。
――やっぱりルパンって憧れるカッコいい大人なんですよね。それはルパンだけではなくて、次元も五ェ門も、不二子も銭形もですね。そんなカッコいい大人というのは、栗田さんの中でどんなところなのでしょうか?
まず誰しもが男ならおっさんになっていくわけですよね。白髪も生えるだろうし、鼻毛も白くなるわけです。その時、汚く、臭くならない人っているんです。で、おやじ臭いって言われる人は、何かさぼっている人なんですよね。風呂入っていないとか、頭が臭いとかじゃなくて、人間として何かだらしなくなってくると臭いが出てくるんだと思うんです。それがだらしない大人になってくる。歳をとってもそういうのを感じない人っているんじゃないですか。それって人に見えないところでだらしなくしていないんだと思うんです。カッコよく生きている人は見せないんだけど、ちゃんとジムで走っていたり、自分を退化させないようにやっているというか、ストイックさを持っているんだと思うんです。だから「毎日酒飲んで酔っ払って、お姉ちゃん大好き~」って言っているおっさんのほうがカッコよく見えたりする。もちろん真面目にやってきた学者みたいな人もカッコいいけど、どっちが人生として楽しいか、ってことなのかなと。「お姉ちゃん遊ぼうよ~」って言えるジジイのほうがカッコいいのかなと(笑)。
撮影:大塚正明
――まさにルパンですよね。
だってあんな高いところから落ちたりしても大丈夫なのは、やっぱり見えないところで鍛えているんだと思うんですよ。モンキー・パンチさんもそういう生き様を描いていたんだと思う。飲んでいるお酒とか、乗っている車だとかこだわっていて、それがなくなるとカッコよくなくなる。
――胸が痛い話ですね…。だからこそルパンに憧れるというのがあるのかなと思いました。では最後にファンの皆様に一言いただければと思います。
今回は、一話一話の台本を読むまで先が見えない新シリーズなのですが、本当に気の抜けない話になっています。そこに負けず劣らずのオムニバスストーリーが入ってくるので、そちらも楽しみにしてほしいです。
取材:加東岳史 構成:林信行 撮影:大塚正明

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