いよいよ開幕!甲斐翔真主演ミュージ
カル『October Sky-遠い空の向こうに
-』初日前会見&ゲネプロレポート

2021年10月6日(水)よりシアターコクーンにてミュージカル『October Sky-遠い空の向こうに-』が幕を上げる。
今作は、全米ベストセラーとなった元NASA技術者ホーマー・H・ヒッカム・Jr.の自伝小説『ロケットボーイズ』を原作とした青春映画(1999)がミュージカル化されたもので、今回が日本初上陸。シアターコクーンにて行われた初日前会見及びゲネプロの様子をレポートする。
◆初日前会見
初日前会見には、甲斐翔真、阿部顕嵐(7ORDER)、夢咲ねね、栗原英雄、朴璐美、中村麗乃(乃木坂46)、井澤巧麻、福崎那由他が登壇した。会見は代表質問で進められた。
厳格な炭鉱夫の家庭に育つも、宇宙に夢を見出す主人公ホーマー・ヒッカム役の甲斐翔真には、「稽古を経てどんなカンパニーになったか」という質問が。「昨日、楽屋でロケットボーイズの4人(甲斐、阿部、井澤、福崎)でタピオカを飲みました!」と微笑ましいエピソードを披露。
次いで、「舞台の好きなシーンについて」には、ホーマーと一緒にロケット制作に励む「ロケットボーイズ」のひとりで複雑な家庭環境に育つロイ役の阿部顕嵐(7ORDER)が、「スプートニクの打ち上げシーン」「ステージ上の全員の時間が止まるような瞬間なので、観客のみなさんも同じように時間が止まるといいな」と答えた。
ホーマーの幼馴染で「ロケットボーイズ」のメンバー・オデル役の井澤巧麻の好きなシーンに「オープニングのシーン」と回答。幕が開き、炭鉱夫たちが音楽に合わせて出てくる迫力溢れるシーンと太鼓判を押す。
いじめられっ子だが、優れた科学的知識を持つクエンティン役の福崎那由他は、「クエンティンがいじめから助けられ、ロケットボーイズの仲間になるシーン」「クエンティンも救われるし、僕自身も救われた気持ちになる、大事なシーンです」と打ち明けた。

撮影:NAITO

ホーマーのガールフレンド・ドロシー役 乃木坂46の中村麗乃は、海外翻訳ミュージカル初挑戦。アイドルとしての活動との違いについて尋ねられ、「ミュージカルは歌が台詞で、振付らしい振付がない」「私たちのダンスはふりつけもすべて決まっているので、全部違って驚いている」とはにかんだ。
科学教師でロケットボーイズの夢を応援する科学教師・ミスライリー役夢咲ねねは「稽古場で見たボーイズは十分輝いていて、眩しくてエネルギッシュでパワフルで、負けちゃう!って思いました」と笑顔を見せた。「プラスアルファとして一緒に頑張っていけたら」と意気込みを語った。
また、偶然にも会見前日の4日は、作中で大きな役割を果たす人類初の衛星スプートニクの打ち上げ日。ホーマーの父で炭鉱のリーダージョンを演じる栗原英雄は、「スプートニクが打ち上げられたころ、またコロナ禍のなかで開幕を迎えることができること」に意味を感じていると語る。また、作品はボーイズだけではなく、「群像劇で、色々な人生・悩みが表現されている」ことを魅力としてあげていた。ジョンの妻でありホーマーの母エルマーを演じる朴璐美は「この作品の魅力のひとつは実話であること」だと栗原と息を合わせる。
最後に主演の甲斐から「このような状況下(コロナ禍)でここまで来れたんだという実感が湧いてきました。この奇跡をかみしめながら無事に千秋楽まで届けられるように走り抜けたいなと思います」と挨拶があった。
◆ゲネプロレポート
舞台は米ソ冷戦時代のアメリカ、1957年のウェストバージニア州コールウッド。人々は炭鉱を運営する会社に仕事から住宅、果ては教育の現場まで管理されている。子どもたちも当然のように炭鉱で働くか、炭鉱夫と結婚し生活を支える妻となる。
主人公のホーマー(甲斐)は、花形フットボーラーの兄、家族を愛し生活を守る母エルシー(朴璐美)、炭鉱夫として炭鉱を守る父ジョン(栗原英雄)という、コールウッドらしい家庭で育った。

撮影:NAITO

幕があがったその時、炭鉱夫たちの力強いナンバー「炭鉱へ」から舞台が動き出す。
圧巻のコーラスワークで男たちの誇りが歌い上げられる中、ホーマーは父へランチを届けに行く。父のジョンは他の炭鉱で起きた事故のニュースを伝え、事故が起きないように炭鉱を守ることを仲間に誓う。そんなコールウッドの生活に未来がないことを感じ始めている少年たち。そんな中、ソビエト連邦が打ち上げた人類初の人工衛星スプートニクが打ち上げられる。その光景を街の人々と眺め、ホーマーは一筋の光を見る。そしてホーマーは彼の人生を一変させることとなる、「ロケットを作る」ことを夢見るようになる。
ホーマー演じる甲斐は、スポートニク打ち上げまでは、俯いた少年だったのだが、そのシーンから突然、輝きを放ちはじめる。夢を見つけ、星空を見上げるホーマーの表情は炭鉱の煤けた空を照らす一筋の光となる。
しかし試作品は失敗、社宅のフェンスを壊してしまう。それでも諦められないホーマーは友人のロイ(阿部)、オデル(井澤)を誘う。最後のひとりとして、いじめられっ子であるクエンティン(福崎)を迎え、4人でロケットの作成に乗り出すことに。
クエンティンに笑顔で友達になろうと持ちかける甲斐の屈託のなさ、そして勇気を出して彼を信頼し、友人となるクエンティンの出会いが、彼らを大きく前進させるきっかけとなる。福崎の演じるクエンティンの持つオタクっぽさと、しかし、芯の強い姿勢が、お気楽なティーンエイジャーだった彼らの最後のピースとして、合致する。
ある日、ホーマーたちのロケット作成は校長の耳に入ることとなる。炭鉱を管理する会社からクレームが入ったのだ。会社の機嫌を損なうわけにはない校長は、ロケットの制作を辞めるように伝える。そこに科学教師のライリー(夢咲)が現れ、「サイエンスフェアで優勝すれば、この学校はもっと有名になり、あなたもインタビューをうけるはず!」と助け船を出してくれる。
このシーンのナンバー「言われた通りに」はライリーとロケットボーイズのコミカルなダンスが見どころ。彼らを応援する大人と、炭鉱に生活を支配された街の側面が、明るい場面ながらもはっきりと浮かび上がるシーンでもある。井澤演じるオデルのお調子者さが光り、ロケットボーイズの明るさ、ひたむきさが際立つ。
サイエンスフェアで優勝すれば奨学金を得て、コーンウッドを出ることができる。そうライリーからアドバイスを受け、更にロケット作りに熱中するホーマー。ロケットも徐々に飛距離を伸ばすが、父・ジョンは自分のあとをホーマーに継がせようと説得する。
しかし、父ジョンの管理する炭鉱は、採掘量が減り続け、人員の削減による人手不足が表面化していた。ストライキを視野いれる労働組合をなだめている始末。息子に炭鉱夫になってほしいとジョンは願うが、現実は厳しい。
そんな中ホーマーのロケットが炭鉱に突っ込んでしまう。大惨事を起こしてしまったことに動揺するホーマーに、ジョンは「炭鉱夫になるんだ」と言いつけ、事故の処理に行ってしまう。
そんな中で1幕は終わりを迎える。
ホーマーは責任を感じロケットボーイズを抜けることにするが、諦めることができない。助言を求める3人に力を貸すことに。ロケット成功のカギとなる液体燃料としてアルコールを求めて酒場に向かう。この発案者はロイ。家庭環境に難のある彼だからこそ、密造酒を思いつくことができる。
阿部の演じるロイは、基本的に強がっているが、ある種の脆さを持ったキャラクターだ。その後の流れまで、ロイの持つ一面を際立たせるとても象徴的なシーンとして、とても印象深い。
そこでムーンショットと呼ばれる密造酒を手に入れることに成功する4人。酒場の荒くれ者たちと一緒に歌い踊る「ムーンシャイン」はそれぞれのキャラクターの魅力が弾ける見どころたっぷりのナンバーにしあがっている。
ムーンシャインを手に入れたことによって、ボーイズたちのロケットは完成、サイエンスフェスティバルの地域大会に出場する。
しかし、人員を減らされていたことにより、事故が発生。父・ジョンが重傷を負う。誰かが炭鉱に行かなければ、家を失うという現状にホーマーは高校を退学し、炭鉱夫となる道を選択する……

石炭という資源の限界を迎え、エネルギーも転換される米ソ冷戦時代。炭鉱を舞台に現実と夢・理想に揺れる彼らの物語は、どんどん加速していく。様々なアクシデントに翻弄されるホーマーだが、彼は10月の空にどんな夢を見るのか。彼の、彼らの選んだ結末を是非劇場でご覧いただきたい。
ミュージカル『October Sky-遠い空の向こうに-』は東京・Bunkamura シアターコクーンにて10月6日(水)~24日(日)まで上演予定。
撮影:NAITO
取材・文・撮影=森きいこ(一部オフィシャル提供)

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