カプコンと手塚治虫、夢の競演ふたた
び! 『CAPCOM vs. 手塚治虫CHARAC
TERS’』内覧会レポート

池袋PARCO本館7階にあるPARCO FACTORYにて、企画展『CAPCOM vs. 手塚治虫 CHARACTERS’ 』が開催中だ。本展はゲームメーカーのCAPCOM(カプコン)が生み出したゲームキャラクターと、マンガの神様こと手塚治虫(手塚プロダクション)の描いたキャラクターが一堂に会する、夢のコラボレーション企画だ。会期は2021年10月1日(金)から10月18日(月)まで。ゲームやマンガ好きなら、きっとテンションが昇龍するはずだ。
そもそも『CAPCOM vs. 手塚治虫 CHARACTERS』は、手塚治虫記念館(宝塚市)が2020年の企画展として行ったもの。それがこのたび池袋へと舞台を移し、関東エリアでの初公開となった。2020年の展示内容に、さらに新コーナーや描き下ろし展示を加えて再構築されたのが本展『CAPCOM vs. 手塚治虫 CHARACTERS’ 』だ。末尾のテンに注目してほしい。今回は「 ’ (ダッシュ)」なのだ! 『ストII』ファンとしては、このネーミングの時点でニヤリとしてしまう。よく見ると、本展タイトルのダッシュ部分は『ストリートファイターII’ 』のダッシュと同じデザインになっていて芸が細かい。
メインキーアート (c)CAPCOM CO.,LTD.ALL RIGHTS RESERVFD. (c)TEZUKA PRODUCTIONS
エントランスでは、カプコンのクリエイター・ベンガスが描いたメインキーアートがお出迎え。お気に入りのキャラクターを探すのはもちろん、時間をかけて隅々まで鑑賞したい作品だ。アトムとロックマンががっちり握手を交わしているのもグッとくるし、『逆転裁判』シリーズに登場する成歩堂龍一の「異議あり!」の指先がヒョウタンツギ(手塚マンガに欠かせないギャグキャラクター)にムニュッと刺さっているのも可笑しい。
豪華展示の一部をピックアップ
展示風景
展示室には、カプコン作品のパッケージイラストなどの原画が勢揃い。イラストレーター・あきまんの描いた等身大の春麗(油絵)は圧巻で、堂々たる大腿筋の前に平伏したくなる……。
さらにイラストだけでなく、『バイオハザード』シリーズや『ストリートファイター』シリーズといった有名ゲームタイトルの手描き企画書や設定資料などで壁はびっしりと埋め尽くされている。各スタッフへの指示がイラスト入りで記されていて、プレイ経験の有無にかかわらず興味をそそられるだろう。
展示風景
そして本展でなんといっても面白いのは、カプコンと手塚プロ両社のクリエイターが、お互いの作品のキャラクターを描き下ろしているところだ。「ロックマン vs. 鉄腕アトム」と銘打たれたコーナーでは、映像資料を挟んで、左手のロックマンはつのがい(手塚プロ)、右手のアトムは水野佳祐(カプコン)が描いており、キャラクター元来の持ち味はそのままに、それぞれの磨き上げられたタッチによって新たな魅力が引き出されている。ほかにも、「ブラック・ジャック vs. 逆転裁判」や「火の鳥 vs. モンスターハンター」、「ストリートファイター vs. リボンの騎士」などの競演に胸が熱くなる。どれもお互いのキャラクターへの愛情がなくては描けないような作品ばかりだ。
展示風景
さらなるコラボレーション企画として、会場内には『逆転裁判』と『ブラック・ジャック』が共演するオリジナル4コママンガも展示されている。これは『逆転裁判』シリーズの生みの親でディレクターの巧舟がラフを作り、つのがいが作画したものだ。巧舟は軽妙なセリフまわしで同シリーズを人気シリーズにした張本人。そしてつのがいと言えば、SNSに自身が掲載していたファンアートをきっかけに、手塚プロ公認として筆を振るうことになるという稀有な経歴をもつクリエイターである。両者の笑いのセンスが融合したこのコラボ企画、さすがにニヤニヤが止まらない。もっと見たい!
展示風景(右が手塚治虫による原画、左がカウンターイラスト)
後半の展示室では、手塚治虫による原画も堪能できる。思い切ったコマ割りや躍動するような感情表現は、作家の没後30年以上経った現在でもまったく古さを感じさせない。『新撰組』の1ページで、打ち上げ花火を背景に剣を構えるシーンがあるのだが(写真中央あたり)、ぜひ花火の効果音「ドーン ドーン」の「ド」の濁点が、咲き開く火花に完全に溶けているところに注目してみてほしい。それだけで、音が光に遅れて聞こえてくる情景が鮮やかに浮かび上がるのだ。
つのがい作画→カプコンカウンターイラスト(一部) (オフィシャル提供)
会場ラストで見送ってくれるのは、つのがいによるキーアートへのカウンターイラスト。冒頭にあったキーアートをきれいに反転させた構図で、双方のキャラクターが愛嬌たっぷりの手塚タッチで描かれている。画面の上の方では、ユニコと女ハンター(キリン装備)が、一角どうしで仲良くなっている様子が伺えて微笑ましい。
なお本展では他にも、新要素である『デビル メイ クライ』のコーナーも見どころのひとつだ。こちらは実際に会場へ足を運び、楽しんでほしい。『デビル メイ クライ』の世界観にどっぷり浸れる展示が待っている。個人的な感想だが、カプコンのクリエイター・実田千聖の描くV(ブイ)のイラストがイケメンすぎて腰が砕けるので、心の準備をしておいたほうがいいかと思う。
グッズの魅力も10万馬力
会場の出口前には物販も。グッズが、欲しい……! 展示を眺めながら、心に湧き上がる思いを抑えきれない人も多いのではないだろうか。魅惑のショップコーナーでは、手塚治虫記念館で販売していたグッズに加え、本会場から新規販売となる「各クリエイターの直筆サイン入りの複製原画」など、約90点を超える商品が揃っている。
アートカード(価格:各880円) (オフィシャル提供)

アクリルスタンド(価格:各1,650円)(オフィシャル提供)

懐かしのドット絵で描かれた「ミニアクリルスタンド ロックマン vs. アトム」(価格:715円)も可愛い! デスクの癒しとして並べたくなるアイテムだ。ちなみに、ドット絵のロックマン vs. アトムは展覧会の告知動画になっているので、動いている姿はこちらでチェックを。
『CAPCOM vs. 手塚治虫CHARACTERS’』展覧会告知動画
やっぱり生で見る原画の力は格別だ。そしてカプコンキャラクター、手塚キャラクターの双方が、描き手の交換によって新しい魅力を与えられているのをぜひ目撃してほしい。ダッシュに続き、ぜひダッシュターボへと続いてほしい企画である。
『CAPCOM vs. 手塚治虫CHARACTERS’ 』は2021年10月1日(金)から10月18日(月)まで、池袋PARCO本館7階・PARCO FACTORYにて開催中。

文・写真=小杉美香

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