『ムーラン・ルージュ』がミュージカ
ル作品賞、主演男優賞など最多10部門
を受賞 「第74回トニー賞授賞式」
オフィシャルレポート到着

2021年9月27日(日本時間)、アメリカ演劇界で最も権威のある「第74回トニー賞授賞式」が開催され、『ムーラン・ルージュ』がミュージカル作品賞、主演男優賞他10部門受賞の快挙を成し遂げた。演劇部門では演劇リバイバル作品賞を『ソルジャーズ・プレイ』が受賞。演劇作品賞は、演劇部門最多ノミネートの『スレイヴ・プレイ』を抑えて『インヘリタンス』が受賞した。
約2年ぶりの開催となった「トニー賞授賞式」は2部構成にて行われ、2部は「ブロードウェイが帰ってくる!」と銘打ち、主要3部門(ミュージカル作品賞、演劇作品賞、演劇リバイバル作品賞)の発表と、ミュージカル作品賞にノミネートされている3作品からのパフォーマンスなどが披露されるライブ・コンサート形式のスペシャルな授賞式となった。
「ムーラン・ルージュ」ミュージカル作品賞/第74回トニー賞授賞式(C)Getty Images

「ソルジャーズ・プレイ」演劇リバイバル作品賞/第74回トニー賞授賞式(C)Getty Images
ニューヨークのウィンター・ガーデン劇場にて行われた授賞式の模様は、WOWOWにて生中継され、番組では、井上芳雄が今年のミュージカル作品賞にノミネートされている3作品のメドレーを披露しスタート。井上は、ミュージカル『ナイツ・テイルー騎士物語ー』大阪公演で滞在中の大阪サテライトスタジオから出演し、東京のスタジオにはナビゲーターの宮澤エマと、「WOWOWミュージカルラウンジ」アンバサダーの海宝直人が出演した。
そして、井上とともに、大阪サテライトスタジオから出演したのは、スペシャル・プレゼンターの堂本光一。堂本はブロードウェイで活躍する女優・高橋リーザが、ブロードウェイ閉鎖中に立ち上げたプロジェクトに密着したドキュメンタリーを紹介。現地の高橋とSkypeでつなぎ、井上とともに、長い閉鎖を経て、復活を遂げたブロードウェイの生の情報を伝えた。
井上芳雄、堂本光一
宮澤エマ、海宝直人

◆第74回トニー賞授賞式レポート
第1部は「ヘアスプレー」より“YOU CAN'T STOP THE BEAT“のパフォーマンスでスタート。MCを務めたオードラ・マクドナルドは「ブロードウェイの鼓動を止めることは誰にもできません!」と開催予定だった2020年6月から約1年3か月のタイムラグを経てのトニー賞授賞式開催の喜びを口にした。
オードラ・マクドナルド/第74回トニー賞授賞式(C)Getty Images
俳優として40年以上のキャリアを誇るデヴィッド・アラン・グリア(「ソルジャーズ・プレイ」)は演劇助演男優賞に輝き「やっともらえたよ」と喜びをかみしめる。ミュージカル助演男優賞のダニー・バースタイン(「ムーラン・ルージュ」)も7回のノミネートの末に初受賞を果たしたが、昨年、妻を亡くしたことに触れつつ、温かく支えてくれた周囲への感謝の思いを口にした。
演劇助演女優賞に輝いたロイス・スミス(「インヘリタンス」)は3度目のノミネーションで初受賞し、90歳にして史上最高齢のトニー賞受賞者となった。5人のノミニー全員が初ノミネートとなったミュージカル助演女優賞は、ローレン・パッテン(「ジャグド・リトル・ピル」)に授けられた。
特別賞を授与された「アメリカン・ユートピア」のデヴィッド・バーンは、スタッフをはじめ、関係者への感謝の念を口にする。なおデヴィッド・バーンをはじめとする「アメリカン・ユートピア」の面々は、第二部でのパフォーマンスで”BURNING DOWN THE HOUSE”を披露し、客席はオールスタンディングで拍手を贈っていた。
「アメリカン・ユートピア」/第74回トニー賞授賞式(C)Getty Images
演劇主演男優賞は、トム・ヒドルストン(「背信」)ジェイク・ギレンホール(「シー・ウォール/ライフ」)ら日本でも人気が高い実力派候補たちをおさえて、「インヘリタンス」のアンドリュー・バーナップが初ノミネートにして受賞。バーナップは壇上に上がるやいなや「オーマイガッ!ちょっと漏らしちゃったかもしれません(笑)」と笑いを誘いつつ、同作について「新たな家族を与えてくれました」と感謝の思いを口にした。
ミュージカル主演男優賞は、候補者がアーロン・トヴェイト(「ムーラン・ルージュ」)1名だけという初めての事態で、60%以上の得票で受賞が決まるという状況だったが、見事に受賞!初めての受賞となった。
アンドリュー・バーナップ(演劇主演男優賞)/第74回トニー賞授賞式(C)Getty Images
アーロン・トヴェイト(ミュージカル主演男優賞)/第74回トニー賞授賞式(C)Getty Images
ミュージカル主演女優賞は、「ティナ/ザ・ティナ・ターナー・ミュージカル」のエイドリアン・ウォーレンが初受賞し、第二部のパフォーマンスでも、ティナ・ターナーのメドレーで力強い歌声を響かせた。演劇主演女優賞は「サウンド・インサイド」のメアリー=ルイーズ・パーカーが受賞し、母から譲られたというドレスに身を包み、感謝の思いを口にしていた。
エイドリアン・ウォーレン(ミュージカル主演女優賞)/第74回トニー賞授賞式(C)Getty Images
メアリー・ルイーズ・パーカー(演劇主演女優賞)/第74回トニー賞授賞式(C)Getty Images
続く第2部では、MCを務めるレスリー・オドム・ジュニアによるオープニングアクト” Broadway's Back!”で幕開け! 劇場前の通りからパフォーマンスをスタートし、ダンサーたちを引き連れ、劇場ロビー、客席を通ってステージへ。圧巻のパフォーマンスに会場は総立ちで拍手を贈る。これには大阪スタジオの堂本光一も「素晴らしいね。ゾクッとした!これだよ、これ!」と興奮気味に語り、井上芳雄も「無条件に感動しちゃう。(ブロードウェイが)再開したことを実感しました」とうなずいていた。
レスリーオドムジュニア/第74回トニー賞授賞式(C)Getty Images
主要三部門は、演劇リバイバル作品賞を「ソルジャーズ・プレイ」が受賞。演出のケニー・レオンは、スピーチの冒頭で、昨年、警察官による銃撃で亡くなったブリオナ・テイラー氏と、同じく警察官によって殺害されたジョージ・フロイド氏の名前を繰り返し口にし「我々は決してあなたたちを忘れません」と呼びかけ、さらに「私たちは、この状況を改善できるはずです!」と訴えた。
演劇作品賞は「インヘリタンス」が受賞。本作の脚本化であるマシュー・ロペスは、ラテン系のアメリカ人作家の作品として初めて同賞を受賞したことの喜びを口にし、アメリカの人口に占めるラテン系の割合に対し、アメリカ演劇界で活躍するラテン系の劇作家が少ないことに言及した。
「ムーラン・ルージュ」ミュージカル作品賞/第74回トニー賞授賞式(C)Getty Images
そして、注目のミュージカル作品賞は「ムーラン・ルージュ」が受賞!スピーチに立ったプロデューサーのカルメン・パヴロヴィッチは受賞の喜びを語ると共に「この歴史的な夜に、受賞作がひとつだけなんて!昨シーズンの全てのショーが受賞に値すると思っています。先のことを想像できない状況で作品を作り続け、未来のブロードウェイのために力を注いできたすべての人に賞が贈られるべきです」と苦しい時期を共に乗り越えてきた仲間たちを称えた。
パフォーマンスでも「ムーラン・ルージュ」は、主演男優賞に輝いたアーロン・トヴェイトをはじめ、出演陣が総出で上演劇場から“WELCOME TO THE MOULIN ROUGE!”の圧巻のパフォーマンスを披露し、観客を魅了した。
<主な部門受賞結果>
★ミュージカル作品賞 「ムーラン・ルージュ」
★演劇作品賞 「インヘリタンス」
★演劇リバイバル作品賞 「ソルジャーズ・プレイ」
★演劇主演男優賞 アンドリュー・バーナップ「インヘリタンス」 ※初受賞
★演劇主演女優賞 メアリー=ルイーズ・パーカー「サウンド・インサイド」
★演劇助演男優賞 デヴィッド・アラン・グリア「ソルジャーズ・プレイ」 ※初受賞
★演劇助演女優賞 ロイス・スミス「インヘリタンス」 ※初受賞
★ミュージカル主演男優賞 アーロン・トヴェイト「ムーラン・ルージュ」 ※初受賞
★ミュージカル主演女優賞 エイドリアン・ウォーレン「ティナ/ザ・ティナ・ターナー・ミュージカル」 ※初受賞
★ミュージカル助演男優賞 ダニー・バースタイン「ムーラン・ルージュ」 ※初受賞
★ミュージカル助演女優賞 ローレン・パッテン「ジャグド・リトル・ピル」 ※初受賞
★特別賞 ブロードウェイ支持連合
「アメリカン・ユートピア」
「フリースタイル・ラヴ・シュープリーム」
※「ムーラン・ルージュ」が最多10部門受賞(ミュージカル作品賞、ミュージカル主演男優賞、ミュージカル演出賞、ミュージカル助演男優賞、ミュージカル装置デザイン賞、ミュージカル衣装デザイン賞、ミュージカル衣装デザイン賞、ミュージカル音響デザイン賞、オーケストラ編曲賞、振付賞)
「フリースタイル・ラヴ・シュープリーム」レスリーオドムジュニア他/第74回トニー賞授賞式(C)Getty Images
シンディ・ローパー/第74回トニー賞授賞式(C)Getty Images
チタ・リヴェラ、アンドリュー・ロイド・ウェバー/第74回トニー賞授賞式(C)Getty Images
ジョン・レジェンド/第74回トニー賞授賞式(C)Getty Images
井上芳雄コメント(番組より抜粋)
(「ソルジャーズ・プレイ」のケニー・レオンのスピーチに)スピーチだけど演劇的だと感じました。ブラック・ライヴズ・マターに対しても大切なメッセージがあって、楽しく華やかなだけがブロードウェイではないというのを改めて感じました。(今回のノミネート作品がコロナ禍以前の作品ということに触れ)これから、どんな作品が出てくるのか? さらに期待が膨らみます。
堂本光一コメント(番組より抜粋)
(授賞式やパフォーマンスを通じて)ブロードウェイが「新たな一歩」を踏み出していく姿を見ることができましたし、人のエネルギー、ヒューマンパワーを感じました!(ミュージカル作品賞候補3作品について)「選ぶ」というより、それぞれの紹介PVを見ているだけで全部観たいって思いますね。(コロナ禍で)観劇の心を忘れているところはあるけど、改めて劇場で「観たい」って思いました。
宮澤エマコメント(番組より抜粋)
(演劇作品賞の候補作の持つ社会性に)ブロードウェイらしさというか、エンターテイメントの中に、心に訴えるものがあり、社会性を包み込んでいる。観ながら我に返り、自問自答するということに、ブロードウェイの真骨頂、神髄があるんだなと感じます。
(「ムーラン・ルージュ」の受賞に)生きる活力をくれる派手さ、パフォーマンスの力強さに軍配が上がったのかなと感じます。
(デュエットのパフォーマンスについて)名曲ぞろいで、この1年半以上「触れる」ということができない状況で、パートナーたちが手を取り合い、ハグし、抱き合っている姿に、やっと少し希望をもって、他人と手を取り合い、触れ合える“未来”が見えたんじゃないかと勇気をもらいました。
海宝直人コメント(番組より抜粋)
(「ムーラン・ルージュ」の受賞に)「劇場で体感する」というならではの作り、「あの場で体感したい!」という力に満ちていましたね。
(パフォーマンスについて)追悼のパフォーマンスが胸に迫りました。喪に服すだけではなく、「前に進もう」というのを感じ。レガシーを引き継いで、前に進んでいかなくてはいけないと思いました。
(主演女優賞を受賞したエイドリアン・ウォーレン「ティナ/ザ・ティナ・ターナー・ミュージカル」のパフォーマンスに)最高!彼女はこのパフォーマンスを公演中は毎晩演じているんですよね。視線ひとつでしびれました!
なお、WOWOWライブでは、10月2日(土)17:30より「第74回トニー賞授賞式」[字幕版]が放送される。

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