ジャズとパンクの壁を打ち破った
ジェームス・ブラッド・ウルマーの
『アー・ユー・グラッド・
トゥ・ビー・イン・アメリカ?』
本作
『アー・ユー・グラッド・トゥ・ビー・
イン・アメリカ?』について
サウンドはというと、フリージャズ、ロック、ファンク、パンク、アバンギャルド(ワールドミュージックの要素も少しだけある)が渾然一体となって、最初から最後まで息苦しいほどのハイテンションで迫ってくる。ウルマーはのちに本作はハーモロディクス理論を具現化した最初のアルバムだと述べている。参加メンバーはそれぞれ個々のプレイをしながら、変化が起これば柔軟に即興で応えるという流れであったようだ。なお、タイトルトラックではウルマーの特徴的なヴォーカルを聴くことができるが、歌入りのナンバーはロック/ブルース色が濃くなるのは本作以降のアルバムと同じである。
また、本作のジャケットはLP時代、英ラフ・トレード盤、米アーティストハウス盤、日本盤、ヨーロッパ盤で全て違ったデザインが使われており、贔屓目なしに日本盤のジャケットが文句なしに素晴らしかった。95年にDIWがCD化した時、違うジャケット(2種類あり)だったので残念であった。次回のCD化の際にはぜひ日本盤LP時に使われたオリジナルジャケットで再発してもらいたい。
最後に、実はウルマーのサウンドが完成するのはコロンビアレコードからリリースされた大傑作の4thアルバム『ブラック・ロック』('82)なのだが、現在入手しにくいためあえて本作(もちろん、こちらも傑作なので…)を取り上げた。91年にニッティング・ファクトリーからリリースされたコンピ『ニッティング・ファクトリー・ツアーズ・ヨーロッパ1991』では、ジェームス・ブラッド・ウルマー・ブラック・ロック・リバイバルというグループ名であることから、彼自身『ブラック・ロック』に対する思い入れは特別なのだろうと思う。
TEXT:河崎直人