エロティックでラウドでキャッチーな
「感情を揺さぶる」新進気鋭のロック
バンドSTART TO BLINGのワンマンライ
ブレポート

2021.09.18 [START TO BLING 1st ONEMAN SHOW] @SPACE ODD
台風が迫りつつある9月18日の夜、START TO BLINGの初ワンマンライブへ足を運ぶ。START TO BLINGは、舞台女優、ロックシンガーとして活動中の茉莉奈をフロントに、舞台演出や音楽プロデュースなどを幅広く手掛けるHaKAをギタリスト&作曲に据え、今年6月に始動したばかりのロックユニット。愛くるしい茉莉奈の天然キャラとパワフルなボーカルに、ゴリゴリにハード&ヘヴィな演奏をぶつけ、メロディはしっかりJポップでキャッチーという、一粒で三度おいしいユニークな存在だ。
「こんばんは。今日は会いに来てくれてありがとう!」
バンドロゴの入ったタオルを高々と掲げ、満面の笑顔で登場した茉莉奈は、パンキッシュな赤黒のミニスカートにブーツ、そしてメンバーとお揃いの黒のワークシャツ。ブロンドの毛先をピンクに染めたセミロングのヘア、噂通りのパワフルボイスを響かせ、小柄ながらもダイナマイトなボディで飛び跳ねる姿は、ひとことで言えば「華がある」。スクリーンに炎が燃え盛るかっこいいオープニング映像から、インスト曲「S.T.B」を皮切りに「Break The Shell」「Shout It To My Face」とファストチューンをたたみかけるアグレッシヴな展開に、フロアを埋めたオーディエンスはクラップで応戦。緊急事態宣言下、キャパシティ制限がありつつもソールドアウトしたこのライブ、ステージの上も下も気合の入り方が半端ない。
「今日を必ず素敵な日にして、みなさんの心が1曲ごとに明るくなるように、最後の最後まで楽しんでいきたいと思います。ついて来れますか!」
START TO BLING
セットリストは、リリースされたばかりのファーストEP『S.T.B』を中心に、茉莉奈ソロアルバム『RE:BOOT』からの「Everlasting」「Ale for…」などを加えてぐんぐん飛ばす。風貌もプレーもワイルド&アグレッシヴなHaKAのギター、落ち着いたたたずまいとは裏腹に鬼のダウンピッキングで重低音を絞り出す大石彬のベース、クールに見せかけて雷神のごとく暴れ太鼓を叩く鍵山喬一(Dr)のドラム。野獣のようないかつい音に囲まれて、笑ったり叫んだりせつなかったり挑発したり、猫の目のようにくるくる変わる茉莉奈の表情。美女と野獣のロックは、視覚的にも刺激的だ。
Vo 茉莉奈(START TO BLING)
前半のハイライトは、『RE:BOOT』からのメロディックチューン「千年コントラクト」で決まりだろう。蛍のような粉雪のような銀河のような、まばゆい光の粒が舞うスクリーンの映像と、幻想的にステージを照らすランタンの灯を背景に、スローでメランコリックなイントロ、疾走するエイトビート、ヘヴィメタルなブレイクダウン、エモいギターソロを経てクライマックスに至る、ドラマチックな5分間。からの、4ビートを効かせた軽快な曲調の「RUMBLING」へ、楽曲のバリエーションは予想以上に広い。私たちが歌って演奏すればSTART TO BLINGになる。言わずとも伝わる、強い意志。
ここまで30分を全力で駆け抜けたところへ、演出振付家のゲッツとダンスアーティストの月代彩佳を呼び込み、盛り上がりはさらに一段シフトアップ。「ここからすごいエンタテインメントを見せたいと思います!」というHaKAの言葉通り、ロックバンド+ダンサーのコラボで魅せた「Revolution」、さらに映像を加えた「JUNCTION」「約束と夕空」の3曲は、この日のクライマックスと言える出来栄えで、特に「約束と夕空」のコンテンポラリーダンス、モダンバレエ、音楽、映像が一体となったシアトリカルなパフォーマンスは秀逸。START TO BLINGが目指すライブの理想を垣間見せてくれる、意欲的な試みから目が離せない。
START TO BLING
音楽だけじゃない。ゲッツと月代彩佳を加えたにぎやかトーク、グッズ紹介などで盛り上がったMCコーナーで、自由奔放発言で暴走しまくる茉莉奈と突っ込みまくるHaKA、それを笑いと拍手で包み込むオーディエンスが作り出す、この空気もSTART TO BLINGの大事な魅力。
そしてすでに発表済み、喉にできた結節の手術治療のため年内のライブ活動休止を告げる中で、感極まって何度も声を詰まらせる茉莉奈。笑ってる茉莉奈と泣いてる茉莉奈、どっちも茉莉奈。喜怒哀楽の極端に大きな振り子と、繊細すぎる感情センサーの持ち主。
「START TO BLINGの活動は止まりません。私、戦ってくるんで、またこうやってみんなの顔を見て歌う日が来たら、笑った顔を見せてください。それまでちょっとだけお休みして、また必ずここに戻ってきたいと思います」
Vo 茉莉奈(START TO BLING)
 涙を振り切り歌い出すロックバラード「残心クレセント」のエモーショナルな響きと、スクリーンに映る月のはかない美しさ。その余韻を断ち切るように、アップテンポでぶっ飛ばす「ツクヨミ」の清々しさ。今泣いたカラスがもう笑った、茉莉奈も吹っ切れた笑顔で歌いまくる。
そしてスタッフの一人ずつに感謝を告げ、メンバー紹介を終えたあとは、いよいよゴールテープを目指してのラストスパート。イケイケのアップテンポで拳を振り上げる「I LOVE YOU」から、メランコリックなミドルテンポの「Bleed」を経て「Phantom Tale」へ。スクリーンでは美しい雪の結晶が舞い、オーディエンスはシンガロングの代わりに手を挙げて応える、一体感あふれるフィナーレ。
EP『S.T.B』の世界観を中心に、全14曲+SEで構成した、ロックでダンスでアートでアクトレスな、それはSTART TO BLINGにしか作れないドリームワールド。
Gu HaKA(START TO BLING)
「これからもSTART TO BLINGと一緒にロックを楽しんでいきましょう。愛してるぜコノヤロー!」

Vo 茉莉奈(START TO BLING)
HaKAの熱血な叫びから始まったアンコールは、しばしのお別れの前に悔いも涙も残さないための完全燃焼タイム。茉莉奈が高校時代に作ったポップなダンスロック「YUME」は、みんな揃っての手振りで楽しく一体感いっぱいに。メロディアスな90’ sのJロックの香り高い「クチナシ」は、拳を振り上げて熱く激しく情熱的に。長い長い長い闇を抜けてきっと、幸せも悲しみも超えた先で、生きろ。それはたぶん今の茉莉奈に、START TO BLINGを愛するファンに、そして今の時代を生きるすべての人にぴたりと当てはまるメッセージソング。

START TO BLING
終わってみればちょうど2時間、全16曲で作り上げた現在のSTART TO BLINGの集大成であり、まだ見ぬ未来への初めの一歩。実はこのあと、ファンのための動画撮影タイムとして「JUNCTION」「Phantom Tale」の2曲を再演するうれしいプレゼントもあり、気づけば2時間半近いライブになったが、満足感はあれども満腹感はなし。もっと聴いてみたい、見てみたいと思わせる吸引力みなぎる、START TO BLINGの活動はまだ始まったばかり。休止を経た茉莉奈がどれだけパワーアップして帰って来るか、その日を楽しみに代官山SPACE ODDをあとにする。雨はまだ残っているが、台風は温帯低気圧に変わった。明日はきっと晴れるはずだ。

取材・文=宮本英夫 Photo by 大橋祐希

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