【前Qの「いいアニメを見にいこう」
】第38回 「Sonny Boy」のとがり具
合がたまらない

(c) Sonny Boy committee 瑞穂派です。というわけで、今回は「Sonny Boy」の話をするわけ。今期のテレビアニメはなかなか豊作だなと感じているんですが、とがり具合ではこれが頭ひとつ抜けているのではないでしょうか。

 とある高校の1クラスがまるっと校舎ごと異次元に転移するという、楳図かずおの「漂流教室」を想起させる状況からスタートし(第1話の作中で、生徒間のグループチャットのルーム名としてタイトルが登場し、オマージュであることを明示しています)、転移とともに超能力に目覚めた生徒間での権力闘争劇へと状況が展開していくのかと思いきや、物語の背景となる舞台が毎話、(監督である夏目真悟の初監督作品である「スペース☆ダンディ」よろしく)目まぐるしく変化。登場人物たちが世界の秘密を捕まえようとしても、謎はするりと腕の中をすり抜けていきます。猫のように。
 シリーズ中盤では、元の世界に帰還するという登場人物たちの目標が不可能であることが示唆され、さらには同じように次元を漂流し、悠久にも思える時のなかで過酷な運命を辿ったかつての学生たちの姿もサブエピソードとして描かれました。どこまでも先を読ませない、とがった筋運び。登場人物たちもこのアニメも、最終的にどこに流れ着くのでしょうか。
 とがっているのは物語ばかりではありません。いや、むしろ、この作品で真にとがっているのは映像表現だと言えるでしょう。主人公たちが別次元へと移動するたびに立ち現れる、新たな世界の鮮烈なビジュアル。人気イラストレーター・マンガ家である江口寿史が原案を手がけたキャラクターデザインは、どこかにいそうな実在感と、現実から離れたマンガ・アニメ的な記号性のバランスが絶妙です。それを動かす作画も素晴らしい。はっとするような、気持ちのよい動きに満ちています。背景美術もキャラクターも、写真的な、フォトリアリスティックなベクトルではない。それでいて、極端にデフォルメされたものでもない。手描きらしい柔らかで省略されたニュアンスの魅力を追求している。細かいところですが、ロングショットでキャラクターの輪郭線が消える表現もその一環でしょう。見ていて心地よいです。
 演出的にも鮮やかな場面転換、凝ったレイアウトから漂う、ほどよい緊張感が素晴らしい。画面への集中を自然と促されます。全体的にアベレージが高いのですが、中でも、3話(絵コンテ・演出)・8話(絵コンテ・演出・(総)作画監督)の斎藤圭一郎さんの仕事は印象深いです。
 ナチュラルな芝居を展開するキャスト陣(定評のある方の名前をあらためて出すのもなんですが、悠木碧さんは相変わらず、スゴいですね……)、「カウボーイビバップ」「キャロル&チューズデイ」の渡辺信一郎さんがアドバイザーとして関わり、豪華アーティストが集った音楽など、音響面も充実の内容。映像のエッジさを際立たせると同時に、視聴者との距離をグッと縮めるものになっています。銀杏BOYZの手がけた主題歌「少年少女」の終わらない青春感は、まさにその空気感を代表するもの。作品イメージを的確に反映しているという意味で、まさにアニソンらしいアニソンだといえるかと。タイトルが歌詞に入っていたりはしませんけれど……って、このエクスキューズもいいかげん必要のない時代ですかね。
 奇妙さと青臭さが混じり合った、変化球だが豪速球な作品。どこに流れ着くかわからないこうした作品は、リアルタイムで追いかけると楽しさが増すものです。今からでも遅くないので、最終話に間に合うように追っかけ視聴をしてみてはいかがでしょうか……というあたりで、また次回。2カ月後にお会いしましょう。

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