ブルーグラスバンドでありながら
ポップさも持ち合わせた
カントリー・ガゼットの
『パーティーの裏切り者』

本作『パーティーの裏切り者』について

そして、カントリー・ガゼットとしての記念すべきデビューアルバム『パーティーの裏切り者』が72年にリリースされた。本作はブルーグラスの編成であるにもかかわらず、ウエストコーストロックのテイストを持っているのが特徴となっている。これはバーズやディラーズ、FBBを手がけたプロデューサー、ジム・ディックソンの優れた手腕であろうが、グループの洗練かつ卓越したプレイや楽曲のセレクトも大きい。特に5人目のメンバーとも言われるハーブ・ペダーソンによるCSN&Yを彷彿させるコーラスアレンジ(ブルーグラス的でない)は実に斬新である。

現在ではアラン・マンデのバンジョーの評価はもちろん高いが、当時は彼のプレイを本作で初めて聴いてその美しいトーンと鋭いドライブ感に驚いたものだ。特に「スウィング・ロウ・スウィート・チャリオット」のバンジョーソロには心惹かれた人は少なくないはず。もちろんバイロンはフィドルだけでなく、マンドリンやヴォーカルなど八面六臂の大活躍である。

収録曲は全部で12曲。トラッドは2曲のみで、ジーン・クラークの名曲「キープ・オン・プッシン」と「トライド・ソー・ハード」のアレンジは秀逸で、オリジナルを超えているというのは言いすぎか? ルーヴィン・ブラザーズ作でジム&ジェシーの十八番でもある「アイ・ウィッシュ・ユー・ニュー」、ゴスディン・ブラザーズの「サウンド・オブ・グッドバイ」、ハーブ・ペダーソン作の美しい「アンナ」など1曲も捨て曲はなく、デビュー作にして完成された音楽になっていると思う。もし本作を聴いたことがないのであれば、これを機会にぜひ聴いてみてください。よりウエストコーストサウンドに近づいた2nd『ドント・ギブ・アップ・ユア・デイ・ジョブ』(’73)も素晴らしいので、ぜひ!

最後になるが、バイロン・バーラインは今年の7月10日、残念ながら77歳で亡くなってしまった。実に偉大なフィドラーであった。R.I.P

TEXT:河崎直人

アルバム『Traitor In Our Midst』1972年発表作品
    • <収録曲>
    • 1. ロスト・インディアン/Lost Indian
    • 2. キープ・オン・プッシン/Keep On Pushin
    • 3. アイ・ウィッシュ・ユー・ニュー/I Wish You Knew
    • 4. ホット・ブリトウ・ブレイクダウン/Hot Burrito Breakdown
    • 5. アイ・マイト・テイク・ユー・バック・アゲイン/I Might Take You Back Again
    • 6. 忘れな草/Forget Me Not
    • 7. トライド・ソー・ハード/Tried So Hard
    • 8. アンナ/Anna
    • 9. イフ・ユーアー・エヴァー・ゴナ・ラヴ・ミー/If You're Ever Gonna Love Me
    • 10. アグラヴェイション/Aggravation
    • 11. サウンド・オブ・グッドバイ/Sound Of Goodbye
    • 12. スウィング・ロー・スウィート・チャリオット/Swing Low Sweet Chariot
『Traitor In Our Midst』(’72)/Country Gazette

OKMusic編集部

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