TVアニメ「平家物語」FODで先行配信
スタート 脚本家の吉田玲子が「物語
を語ることへの再宣言」と手応え

(c)「平家物語」製作委員会 日本の古典文学をアニメ化する「平家物語」の先行配信が9月15日深夜に動画配信サービス「FOD」でスタートし、新規ビジュアルやスタッフコメントが公開された。
 同作は、鎌倉時代に成立したとされる軍記物語「平家物語」の古川日出男訳(河出書房新社刊)を底本に、「リズと青い鳥」を手がけた山田尚子監督と脚本家の吉田玲子が再タッグを組んで送り出すテレビアニメ。キャラクター原案を漫画家の高野文子、アニメーション制作をサイエンスSARUが担当する。平家一門が栄華を極める時代に、亡者が見える目をもつ男・平重盛(CV:櫻井孝宏)は、未来が見える目をもつ琵琶法師の少女・びわ(悠木碧)から「お前たちはじき滅びる」と予言される。テレビ地上波での放送は、2022年1月からフジテレビのアニメ枠「+Ultra」ほかでスタートする。
 新規ビジュアルは、アニメオリジナルキャラクターである琵琶法師の少女・びわの横顔を和風に描いたイラスト。15秒バージョンのプロモーションビデオも公開されている。
 吉田は「この座組でこのタイトルをやるということに、わくわくしました。山田監督で『平家物語』。高野文子先生がキャラクター原案(『棒がいっぽん』という短編集はどれだけ読み返したかわかりません)。そして脚本を書き終えたとき、これは我々の『物語を語ることへの再宣言』なのだと感じました」と完成した脚本の手応えを語った。
 牛尾憲輔による同作の音楽を収録したオリジナルサウンドトラックEPと、牛尾がソロユニット「agraph」として、「スチャダラパー」の ANIとともに手がけるエンディング主題歌「unified perspective」の配信も、「Apple Music」ほか音楽サービスで始まった。なお、オープニング主題歌「光るとき」は3人組みロックバンド「羊文学」が歌っている。
 以下に、吉田や牛尾らスタッフからのコメント全文を掲載する。
【古川日出男(原作)】
 日本人の誰もが知るはずの「平家物語」を、ほとんどの人間は誤解していると私は思う。この長大な物語の、全体のほんの何パーセントかの、しかも誇張されたエピソードにしか普段は接することがないと思うから。
 通読してみれば、そこには「戦争をすることは悲しい。恐ろしい」と訴える感情が充満しているとわかる。 「戦死者たちを鎮魂しなければ。あらゆる死者たちを弔わねば」との切実な思いにも満ちている。そして、戦場では主役となる男性たち以外に、そうした現場には立つことの少ない女性たちのドラマも描かれているのだという事実。いったい誰が、「平家物語」の主役は女たちでもあるのだ、と理解したか? 私は「このテレビアニメ版は、したぞ」とここに断じる。それも鮮烈にだ。痛烈にだ。原作の「平家物語」が秘めていた決定的なポイントにこのアニメ版は迫っていて、だからこそ視聴する私たちの胸にも迫る。主役のびわは、あなたの琴線を鳴らす。
【吉田玲子(脚本)】
 この座組でこのタイトルをやるということに、わくわくしました。山田監督で「平家物語」。高野文子先生がキャラクター原案(「棒がいっぽん」という短編集はどれだけ読み返したかわかりません)。
 そして脚本を書き終えたとき、これは我々の『物語を語ることへの再宣言』なのだと感じました。栄え滅び、時代は変わり、人は命を終える。ですが、物語は煌めきを保ったまま、生き続ける。そこに勇気をもらいました。
【高野文子(キャラクター原案)】
 はじめに重盛さんを描きまして、次に平家の兄弟さんを、歳の若いほうから順に描いていきました。どの人もハンサムで、わたしのマンガには出てきようのない、素敵な男性ばかりなんですよ。
 作業の中ほどで、監督の絵コンテを見せてもらいました。両のお目々が離れぎみの、まん丸顔が、用紙のあちこちに描かれていまして、それが「びわちゃん」だとわかった時など、うれしかったですね。
 新鮮な体験をたくさんしました。機会をくださった皆さまに感謝いたします。
【牛尾憲輔(音楽)】
 作曲に手を付けるより以前、アニメ「平家物語」はどういう作品なのかずっと考えていました。多数の登場人物、大きな歴史の流れ、という物語に対峙するとどこから手を付けていいのか、音楽は何を描けば良いのか、大変苦慮していました。
 しかし、この物語は大きな歴史物語以上に、――監督の言をお借りすれば――“確かに生きた人たちの”ひとつひとつの物語でありました。喜び、怒り、哀しみ、笑ったひとりひとりのお話です。その全てとともにあった音楽であれ、と願っています。

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