yonawo、バンドのテーマは最新アルバ
ム『遙かいま』にも通ずる「相反する
ものが同時に存在し得る矛盾を共有す
ること」

福岡で結成された荒谷翔大(Vo)、田中慧(Ba)、斉藤雄哉(Gt)、野元喬文(Dr)による新世代バンド、yonawo(ヨナヲ)。ネオソウルやジャズのグルーヴや浮遊感、アブストラクトなムードの中から浮かび上がる、ギターロックから培ったエッジィな匂い。そして何よりも、柔らかな歌声と共に紡がれていく美しい矛盾に心を奪われるバンドが8月11日(水)に、ニューアルバム『遙かいま』をリリース。先行配信された「哀してる」では冨田恵一冨田ラボ)、「闇燦々」では亀田誠治といったプロデューサーを迎えて制作されるなど、新たな境地を切り開いた彼ら。『FUJI ROCK FESTIVAL ‘21』初出演直後の高揚感冷めやらぬ中、yonawoの4人に話を聞いた。
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ーー今回は亀田誠一さん、冨田恵一(冨田ラボ)さんをプロデューサーとして迎えたんですよね。
荒谷翔太(以下、荒谷):いつもアルバムの制作に入る前にみんなでいろいろ話すんですけど、今回はプロデューサーさんを入れてやろうということは作る前から話してたんです。
斉藤雄哉(以下、斉藤):僕は個人的にもいろんな人と音楽をやってるので、プロデューサーさんというか、メンバー以外の方と一緒にやること自体に抵抗はなかったですね。ただ、yonawoとしてやる、というところではちょっと不安もあったんですけど、プロデューサーさんを迎えること自体にはかなり前向きでした。
ーー実際はどうでしたか?
野元喬文(以下、野元):亀田さんは、現役で東京事変でバンドとしても活動されてる方だから、バンドに寄り添ってもらえたし、スケジュールも余裕を持って組んでもらえて、すごくやりやすかったです。冨田さんとの作業もすごく楽しくて、どっちも安心してやれましたし、いろんな経験もできて良かったです。
荒谷:今回「プロデューサー」という、この4人以外の異質なものを迎える経験をして、自分たちのオリジナリティというか、新しいことをどれだけやってもyonawoというブレない軸があるんだなとがわかったのが大きいですね。今までは4人だけしかいないからそこら辺がぼやっとしてたというか。
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ーー他者の存在があることで、自分たちの立ち位置がはっきりした。
荒谷:そうですね。そういう意味でもいい経験をさせてもらいましたね。
ーーそうやって「新しい風」を取り入れたニューアルバム『遙かいま』。メンバーそれぞれにとってこだわりや思い入れのある曲は?
斉藤:インディーズぶりに自分でミックスしたというのもあって、「はっぴいめりいくりすます – at the haruyoshi/Take 5」は思い入れがありますね。
野元:あの曲は本当にクリスマス感があるよね。冬の(空気が)乾燥した冷たい感じもあるけど、温かい、みたいな。
斉藤:嬉しいです。あざっす(笑)。
田中慧(以下、田中):僕は、ずっとリズムがシンコペーションしてるだけのデモが来た「恋文」ですね。リズムが独特で、最初は「これ何や? めちゃくちゃかっこいい曲やけど、どうしろと言うんや?」と思ったんですけど(笑)。全体像が見えていくにつれて、自分がベースをこうやって弾いていきたいという感覚が、どの曲よりも素直に反映出来た気がしてますね。
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ーー「恋文」のデモはかなり未完成な状態でバンドに委ねたんですか?
荒谷:多分、ドラムだけの状態だったのかな? ベースは入れてなかったですね。
田中:バスドラの音が入ってるところにベースを入れておけば大体なんとかなるんですけど(笑)、でもそれがずっと続くのでどう聴かせるかというか……。
荒谷:でも弾き過ぎちゃいかん、というところのいい塩梅をね。
田中:そうそう。歌を聴かせたいので。「恋文」の歌詞は煙に巻かれる感じがあるというか。その混沌とした感じを出すために、シンコペーションしたリズムでアレンジを進めていった感じですね。
野元:僕も「恋文」ですね。yonawoの曲だけど、初めて海外のアーティストの新譜を聴いた時みたいな感覚でデモを聴いてて。結構びっくりして鳥肌が立ちました。その時は自分がドラムを叩くなんてことも考えてなくて。
荒谷:いちリスナーとしてね(笑)。
野元:日本の音楽だけど、これは世界というか、どこにでも出せる曲だと思っています。いろんな人がいろんな音楽をやってるけど、「恋文」みたいな曲は珍しいですよね。いい意味で、メジャーでもこんな曲出せるんだ、本当に曲としていいなと思ったんです。ただ、いざレコーディングに入ると、ジャストなグルーヴが難しくて(苦笑)。
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ーー作曲者である荒谷さんは感覚で音やリズムを捉えてる人でしょうから、人力で再現するとなると難しい場面もあると思います。でもそれを人力で表現したいという葛藤……。
田中:演奏者としては、なるべく曲のイメージに応えたい、表現したいというのがありますからね。
野元:そうなんです。今まではドラムを先に録って、後でベースやギターを重ねる形で進むことが多かったんですけど、今回からは福岡にスタジオができたこともあって、グルーヴが先に出来ているところにドラムを重ねるという初めての試みをしたことも難しかったですね。
荒谷:僕の場合は「美しい人」の詞の面で結構トライしました。「木綿のハンカチーフ」(太田裕美)のような対話形式の歌詞を自分でもやってみたくて今回取り組みました。自分なりの対話形式の歌詞が出来たことはめちゃくちゃ満足してますね。
ーー先ほど田中さんが、「歌を聴かせたい」とおっしゃってましたが、今回の『遙かいま』のブックレットには「詩」だけで表現された作品が掲載されています。この意図は?
荒谷:僕自身はそんなに、「詩」作品をたくさん読みこんだりしてるわけではないんですけど、詞があってメロディがあって楽器の演奏もある「音楽」の可能性はめちゃくちゃあると思うんです。言葉だけの可能性は、無限過ぎて逆に狭まるというのもあるけど、音楽としての表現と、言葉だけの表現で、バランスがとれたらいいなという思いもちょっとあります。でもそこにメロディはなくても良くて、詩として淡々と読んで欲しいという意図もあったので『遙かいま』というアルバムタイトルをもっと噛み砕いたものを詩として出したいなという自分の思いみたいなものもあったりして。興味を持ってくれた方が読んで、自分の気持ちを乗せてくれたらいいかなという、立ち位置の作品ですね。
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ーー言葉にメロディや音やリズムが乗ると、必然的にエモくなりますよね。発信する側が聴き手の感情を動かすこともできる。でも言葉だけだと、受け手の感情に委ねる部分が大きくなりますよね。
荒谷:ああ、そうですよね……そういう面でもバランスを取ってたのかな? 実際はそこまで考えてはなかったと思うんですけど、とにかく『遙かいま』というタイトルをもっとわかりやすく説明したかったんですよ。「遙か」と「いま」のような、相反するものはつねに僕のテーマとしてあって。前作(1stアルバムのタイトル『明日は当然来ないでしょ』)とつながる「時間」という部分……明日は当然来るという固定観念や常識と、来ないかもしれない未来は、「遙か」と「いま」と同じく、同時に存在し得るというか。あと、日本語の挨拶、「さよなら」みたいに、もともと接続詞だったものが別れの言葉になってるのという、日本語の回りくどい感じが素敵だなと思ってて。『遙かいま』もそういう感じで、別れの言葉じゃないけど、挨拶みたいな言葉になったら素敵だなということを、メンバーみんなには説明したんですけど、それをリスナーの方に説明するわけにはいかないですからね。
ーーリスナーに説明する代わりの詩だった。今回のアルバムも、歌と詞とバンドサウンドのバランスが絶妙ですよね。
荒谷:今回は歌詞を書いてからそれにメロディを乗せることが多かったんです。(斉藤)雄哉が作曲した「The Buzz Cafe」以外はほとんど歌詞が先でしたね。「浪漫」のように歌詞が後からつくパターンの方が簡単なんです。でも歌詞を先に書く方が、難しかったんですけど意外と楽しくて。だから今回のアルバムはその「楽しかった方」の作り方をした曲をいっぱい詰め込んだ感じですね。
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ーーだからなのか、「闇燦々」を筆頭に、歌詞に心を持っていかれる曲がすごく多い。ただ歌詞が先にあると、演奏する方も詞に引っ張られる部分もあるのでは?
田中:曲それぞれで捉え方は違うんですけど、「闇燦々」に関しては、今までになくそれぞれの楽器のぶつかり合い、みたいなところもありました。自分の中ではマッチョな感じというか(笑)、オラオラ感というのはかなり意識しつつ演奏してましたね。
yonawo - 闇燦々【OFFICIAL MUSIC VIDEO】
ーーそのオラオラ感のせいなのか(笑)、「闇燦々」はとくに言葉と音が同時にわっと押し寄せてくる曲というか。恋愛にしろ社会生活にしろ、価値観の違いを受け入れるには究極のところ、自分を変えるしかないわけですよね。「闇燦々」はそういう心情の時に聴くとものすごく心が揺れる曲だと思います。
荒谷:矛盾が生まれる瞬間はいっぱいあると思うんです。その矛盾と向き合う……それすらも受け入れないといけない状況も多々ありますが、そういう時に、自分が書いた歌詞が、その人の側にあればいいなと思いますし、言ってみれば「闇燦々」というタイトル自体も矛盾してると思うんです。矛盾があって当然だなというのが僕としてはいちばん居心地がいいので、そこを詞やタイトルで表せたらなと思ってて。
ーーそれで、「闇」と、「燦々」と輝く、光。
荒谷:そうです。相反するものが同時に存在し得る……なかなか想像しがたいですけど、そういう感覚を共有し得る詞がいいなと。
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ーーもともとyonawo結成当初から今のようなクロスオーバーなバンドサウンドを目指していたんですか?
田中:その時に好きで聴いていた音楽の影響を受けているような感じだったから、活動を始めたての頃は、ディアンジェロなどR&Bの感じもありました。
荒谷:バンドをやる前にデモを作ってた時の僕は、THE 1975にめちゃくちゃ影響を受けてましたね。「ijo」という曲は当初、THE 1975みたいなアレンジになってて。でもバンドになってからは、(斉藤)雄哉がディアンジェロとかのR&Bをいろいろ教えてくれて。それでブラックミュージックとかも聴くようになって、かっけぇなとなったけど、僕自身はバンドで誰かのコピーとかはしたことなくて。雄哉とか(田中)慧は学祭とかでコピバンをしたりしていて。僕はまったくそういう経験がなくて、作曲者としてどういうふうに伝えたりすればいいんやろという感じだったんです。
ーーそういう粗さというか、若いからこその探究心や冒険心と同時に、ジャジーでソウルフルな成熟した感覚が共存しているのがyonawoの魅力であり、今回のアルバムの面白さでもあるのかも。
荒谷:そのジャジーな感じと粗さはどっちも好きなんですけど、まず最初はその両方をぶち込むんです。で、徐々にブラッシュアップしていくというか。
斉藤:だんだん洗練させていくという、ね。
荒谷:そう。で、最初のぶち込む発想があるからこそ、今の感じに整えられるんだと思います。
斉藤:要は、どう馴染ませるかということだよね。
野元:そのやり方が最近結構わかってきたかもしれないですね。メジャーでやり始めたり、福岡でスタジオを作ったりするうちに、今まで目指してきたものにだんだん近づいてきました。そのための環境も徐々に整い出して、作りたいイメージに沿った音を出すための技術も上げました。今まではそれがなかったがゆえに、出来る範囲が狭かったけど、徐々に出来る範囲が広がったのと同時に、自分たちのやりたいことやイメージも拡がっていって。でも芯にあるものはブレないままだからこそ、「変わる」という要素につながっていったんじゃないかなと思います。
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ーー10月からはワンマンツアーもスタートしますが、’ 97~’ 98年生まれのyonawoは、とくにライブにこだわらなくても、いろんな表現の場のある世代だと思うんです。
野元:確かに。ただ僕らは、メンバー全員が大好きなアークティック・モンキーズとか、いろんなライブを観るんですよ。そういう経験を通して知ったライブに対する憧れとか楽しさとか、ライブでしか見れないアレンジとか特別感、みたいなものがずっと胸の内にあって。そういうことが自分たちもライブでできることが嬉しいし、ありがたいというのが、ライブをやりたいという動機になってますね。
斉藤:僕の場合は、単純にこの4人で演奏するのが楽しいんです。それだけの理由ならリハスタでやってるだけでも十分楽しいんですけどね。
荒谷:僕も音源を作ること自体が好きだし、緊張しぃなので、ライブはちょっと構えてしまうんです。ライブで歌うことは好きなんですけどね(笑)。
斉藤:メジャーデビューの後、僕らが数百人から千人規模の会場でライブをできるようになったのは、ほんと最近なんです。コロナ禍以降にワンマンツアーも始まったし、ライブの楽しさが実感できないままで。みんなマスクつけてるし声も出せないし、ライブが楽しい感覚があまりないままというか(苦笑)。
荒谷:お客さんも騒いでくれていた頃はすごく狭い会場で演奏してたから、それが大きい規模になったらどうなるのか? というのをまだ味わえてない気がするので、その意味でも10月からのワンマンツアーが楽しみなんです。
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取材・文=早川加奈子 撮影=ハヤシマコ

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