シライシ紗トリ

シライシ紗トリ

【シライシ紗トリ インタビュー】
何の制約もなく、
やりたいことができる
唯一のアーティストが自分

スタンスとしては
仕事だと思ってやってはいない

ソウルっぽいバラードの「GENTLE SMILE」と、サザンソウルというかゴスペルっぽいところもある「BIRD」ともにバンジョーの音色が印象的で、個人的にはソウルとカントリー/ブルーグラスのミクスチャーというテーマもあるように聴こえたのですが、なぜバンジョーだったのですか?

普段からわりと弾いているんですけど、どちらの曲もバンジョーの弾き語りにフィットしたんですよ。カントリーは昔から好きなんですけど、どカントリーじゃなくて、ビリー・ジョエルのようにカントリーのテイストもありながらポップスをやっていた人たちの音楽が自然と入っているのかな? 今、曲を作る時にメインで弾いているのがバンジョーとマンドリンなんです。だから、カントリーっぽかったり、アイリッシュっぽかったりする曲は多いかもしれないですね。

ということは、曲を作る時は弾き語りから始めるのですか?

弾き語りです。

それは他のアーティストに提供する曲もですか?

そうですね。とりあえず一番身近にある弦が張ってある楽器で作ります(笑)。作ってからオファーに合わせて、リアレンジ、リハーモナイズ含め、サウンドメイキングをしていく感じですね。

「GENTLE SMILE」「BIRD」ともに、まずバンジョーの弾き語りがあって、そこにどんな音を加えていくかを考えたわけですね。

もともとはどちらもアコギで作って、「BIRD」は途中でピアノでリハーモナイズしました。「GENTLE SMILE」はそのまま…たまに自分でライヴをやる時もアコギで歌っていましたけど、それが途中でバンジョーになって、いろいろやっていくうちに6弦のギターバンジョーがフィットしたので、今回の2曲はそれで完成させました。

なるほど。ご自身の楽曲を作る時は自分をプロデュースするという感覚があるのでしょうか?

自分のことはあまり客観的に見られないので、自分のことをプロデュースしているという気持ちはないかもしれないですね。何の制約もなく、やりたいことができる唯一のアーティストが自分なので(笑)、楽器にしても、表現にしても、何にしても自由にやってやれって思っています。

音数を厳選したアコースティックサウンドではあるのですが、現代的な感覚も加えられているところも聴きどころですね。

そうですね。「GENTLE SMILE」はオートチューンも使っていますしね。それが今の素の自分なのかもしれないです。エレクトロニックなサウンドとか、DAW(Digital Audio Workstation)の使い方とか、日々上達していると思うし。でも、プレイする時は生楽器がとても大事な人なので、それは必ず融合してくるってことなのかな? 『Happydom』はメンバーがメンバーだったからっていうのもあるんですけど、全部が人力だったので、その時はうまい人とやるってことがすごく楽しかった…でも、もう今はそういう時代なんですかね。DAWでもっと自分に向き合って、音像を作ることに段々落ち着いてきたところはあります。ライヴでやる時はライヴのアレンジでやればいいわけだし。

そういうところも含め、ナチュラルに作った2曲なのですね。

そうですね。最近、手かげるアーティストでもEDMやフューチャーベースみたいなトラックを作ることがあるんですけど、そこにも違和感がない人なので、エレクトロニックなものとアコースティックなもの、どちらもナチュラルになっていますね。

《ゆっくり自分らしく/やってきゃいいんじゃないの?》と歌う「GENTLE SMILE」の歌詞は、今の時代の空気にぴったりだと思いました。

それは嬉しいです。その当時つき合っていた女の子のために作った曲なんで、ただただ彼女に伝えてあげたいことを書いただけなんですよ(笑)。

そんなエピソードが!?(笑) いつも歌詞はどんなふうに書いているのですか?

歌詞とメロディーが同時進行なので、弾き語りする時にほぼほぼ書いちゃいます。なので、止まるとずっと止まっちゃうんです(笑)。

歌いたいことがなんとなく頭の中にある時にギターを弾きながら言葉にしていくのですか? それとも、ギターを弾いていると自然に言葉が出てくるのですか?

ギターを弾きながら、何も考えずに何か言葉を発し、それをとりあえず書き留めて歌ってみたら、“意味があるじゃん!”ってなる時もあれば、“何だこれ?”ってなる時もあって、そういう時はあとから考え直します。でも、その時に歌いたい言葉づらみたいなものが大事で、中身じゃないんですよ。言葉の響きと音がフィットしているかどうかなんです。歌詞を書くのは好きなんで、歌詞だけの仕事をいただくこともあるんですけど、自分の中ではめちゃめちゃいい相乗効果があって、音で行き詰まっている時に歌詞を考えるとちょうどいいんですよ。だから、歌詞を書くのはずっと楽しいです。言葉遊びが好きなんでしょうね。

曲にしても、歌詞にしても、職人的に作っていると想像していたのですが、そうではないのですね。

職人ではないですね。さすがに30年もやっていれば、手練れになっている部分がなきにしもあらずだと思うんですけど、スタンスとしては仕事だと思ってやってはいないです。遊ばせてもらって、それでお金をもらっているみたいところがどこかにあって…なので、食えなくなったらいつでもバイトするってスタンスも変わっていない(笑)。“音楽業界に就職しました!”みたいな感覚じゃないんですよね。面白いものとか、人の心に触れて何か変わっていくようなものとか、そういうコンテンツ作りが死ぬまでできたらいいなと思っています。イコール、それは自分の中では人生を懸けた遊びなのかもしれないですね。

今後はイケイケの曲も出していこうとおっしゃっていましたが。

はい。みなさんが思っているとおり、そんなにバラードの人ではないので、ぼちぼちうるさいのもやろうとは思っています。本当は今回もノリのいい曲とバラードの2曲で出せたら良かったんですけど、そんなにこだわりもなかったので、まぁいいかなって。ただ、今回の2曲のような曲ばかりをやろうとは思っていないですね。

『Happydom』では織田裕二さんやSMAPに提供した曲のセルフカバーもやっていましたが、またセルフカバーをやってみようとは?

アーティストのお許しがあればやってみたいです。アイドルの曲とかね(笑)。

それはもちろんシライシさんらしいアレンジでということですよね?(笑)

むしろ、作った時のアレンジでやってみたいですよね。プロデュースだけやらせてもらって、面白いと思った曲をカバーさせてもらってもいいかもしれないですね。僕がORANGE RANGEの「上海ハニー」をやらせて頂くのも楽しいかも(笑)。

取材:山口智男

配信シングル「GENTLE SMILE」2021年9月22日配信開始 Northern Ground Records
    • ※配信先の詳細はオフィシャルHPをチェック
配信シングル「BIRD」2021年9月22日配信開始 Northern Ground Records
    • ※配信先の詳細はオフィシャルHPをチェック
シライシ紗トリ プロフィール

シライシサトリ:数多くのアーティストの作詞、作曲、編曲、プロデュースを手がけるトップクリエイター。ORANGE RANGE、SCANDAL、岡崎体育、藤木直人、乃木坂46、Disney作品、U-NEXTサウンドロゴ、ウルトラマンオーブなど幅広い音楽制作をしている。近年、自身がプロデュースをするアーティストのMVの監督を務めるなど映像作品にも力を注ぐ。2005年に発表した1stアルバム『Happydom』はニューヨークのアバタースタジオなどでレコーディング。レイ・パーカー・ジュニア、ウィル・リー、オマーハキムなど海外のミュージシャンが多数参加している。シライシ紗トリ オフィシャルHP

OKMusic編集部

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