L→R 井上竜馬(Key&Vo)、木村雅人(Dr)、服部栞汰(Gu)、広瀬臣吾(Ba)

L→R 井上竜馬(Key&Vo)、木村雅人(Dr)、服部栞汰(Gu)、広瀬臣吾(Ba)

【SHE'S インタビュー】
生きるために
必要な音楽になってくれたら

側に置いておくお守りのような曲が
一曲でもあればいいなって

その次に人間のダークな面を描いた「Delete/Enter」がくるのは、すごくSHE’Sらしいと思いました。

実は、これを1曲目にしようか迷っていました(笑)。アルバムの全体像として、例えば怒っている時、ストレスを発散したい時、楽しい時、悲しくてどうしようもない時…そういったいろいろな感情に対して曲をピックアップできるというか、“今日の気分だと、この曲を聴こう”と思えるものにしたかったんです。そういう意味での“お守り”なんです。自分の側に置いておく曲が一曲でもあればいいなって。そんなアルバムにしたんで、むしゃくしゃして何かをぶっ壊したくなる夜に聴ける曲を作ろうと思って作ったのが「Delete/Enter」なんです。自分もたまたまそういうことがあったし。

アルバムは曲と曲のつながりを考えてしまうのですが、今のお話を聞いてパレットからいろいろな色を選ぶようなイメージの作品なんだと思いました。

そうですね。もちろんアルバムを通しての流れも意識はしましたけど、どちらかと言うと書き下ろしが中心で、それぞれ違う作品に向かって書いた曲がいっぱい入っているから、むしろサブスクリプションとかが主流になっている今の時代、一曲ずつピックアップできて幅が広がればいいのかなと思いました。

「Delete/Enter」の暗くて深みにはまる雰囲気は、個人的に大好きです!

デジタル感と途中からのバンドの爆発感とか音の融合というのは、SHE'Sはわりとやってきたことなので、それをよりホラーチックなテイストにできたかなと思いますね。前のアルバムだと「Unforgive」がわりとデジタルとバンドの爆発みたいになっていたから、それとは違うアプローチということで、コード選びとか歌い方とか言葉の棘などでもっとホラーにできないかなと。分かりやすく言うと、ビリー・アイリッシュの不気味さみたいなものをエッセンスとして加えられたらいいなと思って作りましたね。

《愛情の打球は 友情の頭上を越えてった》という歌詞もヒリヒリして怖いなと。

実際に越えますからね。ゾッとする(笑)。

ゾゾゾ~とします(笑)。言葉の感じも怖いし、井上さんの歌い方もダークで底知れぬ沼感がありました。

確かにAメロなどは結構ヌルッと歌うことをイメージしました。

そんな「Delete/Enter」に続く「Imperfect」はさわやかで、コーラス隊の感じも楽しげですよね。

女性ふたりと男性ひとりの外国の方の力を借りました。ゴスペルの感じはずっとやりたいと思いつつもできていなかったので、思い切って“コーラスの人たちを呼べないですか?”と尋ねたら意外とすんなりいけたんです。そもそも僕はこういう曲を普段から好きでよく聴いていて、ずっと“SHE'Sでも作りたいな”と思っていたので。コーラスの人たちを呼ぶことによってライヴの雰囲気も想像できるし、人数が増えれば増えるほど楽しそうな感じが生まれると思って、“ぜひやりたいです!”とお願いしました。

コーラスが入ることで多幸感が増しますね。

“Imperfect”は“不完全”や“未完成”という意味なので、ネガティブな内容をめちゃくちゃ明るく歌うことによって、みんなに“これでええんや”と思ってほしかったというか。バラードで“俺たちは未完成でいいんだよ”と湿っぽく歌うより、陽気な歌い方で楽しい曲にしたほうがホッとすると思ったんですよ。

今回そういう曲の明るさに救われるというナンバーが数曲あると思いました。

メッセージとサウンドのギャップというのは強烈なインパクトを生む時があるので、この曲はトラックができたタイミングでそういうふうにしようと思いました。

9曲目の「Take It Easy」もポップで聴いている人を明るくするナンバーですね。

これも書き下ろしなんですけど、お昼とかに聴いて気分がアガる、明るくなれるような曲にしようと思って。タイアップ先の番組自体が『2時45分からはスローでイージーなルーティーンで』というタイトルなので、生活に密着した感じはなるだけ意識して作りましたね。

この曲もタイアップでのコンセプトが大きかったということですね。

家の中にいる時間が多くなっていくと、自分の人生について焦ったりすることが多いんじゃないかなとぼんやり思ったので。でも、“人生の意味など別に知らなくていいんじゃない? もうちょっと気楽でもいいんじゃん”と思ってくれたらいいなと思って書きました。

ちなみに井上さんが最初に音楽がお守りだと感じた曲は?

ずっと昔から思っていたわけではなくて、このアルバムを書く時に思ったことなんで…とはいえ、毎回落ち込んだ時に聴く曲があって。家を出て駅まで向かう時に、気分を上げたくて聴く曲って決まったものがあったり。それを聴くと“ほんま、この曲は最強やな”と思うんですよ。ある時、すごく楽しい気分になれて、“音楽ってお守りみたいやな”と思ったのがきっかけで、アルバムのタイトルを“Amulet”にしてから方向性を決めました。

今回がきっかけだったんですね。

そうですね。それまでは特に“音楽ってお守りだな”とか思ったことはなかったので。だから、改めて気づいた感じですね。

もちろん音楽には最新とか流行はありますが、好きな曲は何年経っても変わらないですよね。

そうですね。音楽自体、不思議ですし。例えばお笑いライヴは知っているネタばかりやられても楽しくないし、どちらかと言えば新しいネタを観たくて行ってるし。けれど、音楽の場合は知っている曲を聴きたくてライヴに行っているところがある。“待ってました!”となりますからね。たくさん新曲をやって、“新曲、めっちゃええな”と思っても、思い出の大好きな曲が演奏されればウワー!となるし。

OKMusic編集部

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