【おすすめコミック】「『ONE PIECE』100巻“覇王色”」尾田栄一郎(ジャンプコミックス/集英社)2021年9月3日発売

【おすすめコミック】「『ONE PIECE』100巻“覇王色”」尾田栄一郎(ジャンプコミックス/集英社)2021年9月3日発売
ロマン優光のさよなら、くまさん
連載第194回 『ONE PIECE』100巻達成 自分「あの、次回のコラムのテーマって何ですか?」
 編集氏「『ONE PIECE』100巻記念ということで『ONE PIECE』どうですか?」
 いや無理でしょ、絶対無理。どうなったって無理。3日で99冊も読めないよ……。 『進撃の巨人』の時もそうだったけど、言われても時間的に無理なものは無理。しかも、原稿書くんだから内容をちゃんと読み込む必要があるし。ただ、読めばいいというわけじゃないんですよ。内容をちゃんとね、考えないといけないんですよ! せめて1ヶ月前に言ってくれたらがんばれたかもしれないのに。俺、アーロンのあたりまでしか読んでないし。
 いや、別につまらないから読むの辞めたとかいうわけじゃないんですよ。基本、単行本派なわけじゃないですか、自分。誰も知らないと思うけど。それはともかく、ある程度巻数がたまってから一気に読もうと思ってたら、何となく読むのを再開するタイミングを逃してしまい……。じゃあ、完結したら一気に読もうと思ってたら、いつまでたっても終わらない。長くなるなんて、思ってなかったんだよ。60巻くらいで終わると思ってたのに……。尾田先生が物語は終盤にと言ってるけど、その終盤の長さがどれくらいになるかは全く読めないわけで、今では自分が生きている間に完結するかどうかもわからないような気がしています。どんなにがんばっても、物語の終わりまで読めないかもしれないと思うと、今さら手がだせない!
 編集氏としては「別にちゃんと読まなくても、『ワンピース』より面白い漫画はいくらでもあるとか、『ワンピース』を好きな奴はヤバい、みたいなことを逆張り感満載で適当に書いてくれて、ファンの怒りをかって炎上してPVがのびればいいですよ」とか思ってるんでしょ……ほんと勘弁してください。だいたい、そんなこと思ってないし、漫画はちゃんと読んで書かないと。
 他の漫画は読んでるんだから、そっち読まずに読んだらよかったのではないかという意見もあるでしょう。「お前、『魔人探偵脳噛ネウロ』を頼まれもしないで何回読み返してるんだよ、その間に『ONE PIECE』けっこう先まで読めたじゃん」と言われたらそれまでだし。のっぺらぼう奪回作戦終わったあたりから止まってた『ゴールデンカムイ』を無料公開をきっかけに二周くらい最初から読みなおしてたりするし。ただ、ちゃんと終わっててラストのカタルシスが味わえたり、今からでも充分追い付けて決着を見届けることができそうな漫画を優先してしまうというのは実際あるんですよ。読めば面白いのはわかってる。わかってはいるけど、既刊分を読んでるだけでも時間がめちゃくちゃとられるのに、その上どれぐらいの時間が完結するまでにかかるか全く見当がつかないものには手がだせなくなってしまってるんですよね。自分もいい年で、いつまで生きてるかが不安な年齢だし。そこまで大げさでなくても、時間が限られてきたのは感じるわけで、絞っていきたくなるんです。
 長期連載といっても『ゴルゴ13』みたいな単発エピソードの積み重ねで出来てる作品だと、どこからでも入ることができるじゃないですか。読み切り形式のギャグ漫画とか日常系もそうです。でも、一貫した波乱にとんだストーリーがあるタイプの作品って、あまりに長期連載になると連載途中の段階で読もうと思っても、1巻から今やってるところまで追い付こうとすると、めちゃ時間とお金がかかるんですよね。それで読むのを断念する人も出てきます。特に子供とか大変ですよ。お小遣い、いくらあっても追い付かないよ! 一般的にいって、中年以上の大人は時間に、子供はお金に強い制約があるものです。いや、大人だってお金には限りあるし。そんなこんなで、長すぎると敬遠して他の作品選んじゃう人も出てきちゃいますよね。最近のヒット作の中に、『鬼滅の刃』とか『チェンソーマン』(第一部完ですけど)みたいに、そこまで長くならないうちに、ちゃんと終わる作品が増えているのは、新規が入りやすいという点から考えてもいいことなのかなと思います。
 余談になりますが、長期連載作品って、連載途中にテコ入れが入って作品の雰囲気がまるっきり変わってしまうこと(変わった結果として人気が出て長期連載化するのがほとんどですが)がよくあるじゃないですか。ジャンルごと変わってしまう、あの感じ。子供の時にリアルタイムで連載読んでて、その変化ににびっくりしたことってありませんか? 自分にとっては週刊少年ジャンプで連載してた『銀牙 -流れ星 銀-』が印象深いです。犬が喋る漫画として知られる作品ですが、連載当初はそんな漫画じゃなかったんですよね。作者の高橋よしひろ先生が月刊ジャンプで連載していたのが『白い戦士ヤマト』。ハードな闘犬漫画で犬は喋ったりしません。武器を使う犬とか、傭兵犬とか、必殺技は出てきますが、あくまで犬は犬として扱われています。『銀牙 -流れ星 銀-』は当初はその流れをくむような、猟師と猟犬VS熊の戦いをハードに描こうとしているような作品でした。今考えれば矢口高雄先生の『羆風』の少年ジャンプ版みたいな感じもあり、『白い戦士ヤマト』以上にリアルな感じだったんですよ。それが、いきなり人間をおいてけぼりにして犬が台詞喋りだして、全国を巡って男(犬ですが。雌犬もいます)を集めて熊と闘うみたいな話になった時は本当にびっくりですよ。リアルな熊猟漫画が犬番長スーパーバトル漫画になってしまうんだから。面白かったからいいですけど。まあ、犬が喋る漫画という予備知識があってから読む人にはできない、貴重な体験をしたと思います。
 逆パターンもあって、『リングにかけろ』って自分が読みだした頃には、宇宙のような背景をバックに必殺技の名前を叫びあうボクシングのような何かを描いた、何だかよくわからないスーパーバトル漫画だったんですよね。めちゃくちゃ面白かったんです。それで、1巻から単行本を買ったんですよ。そしたらね、派手で謎な必殺技が飛び交うバトル漫画を買ったと思ったら、貧乏な姉弟が亡き父の遺志をついでチャンピオンを目指す貧乏やボクサーの悲哀が克明に描かれた地味な熱血ボクシングだったんだから、驚きですよ。対戦相手に辻本というキャラがいるんですが、本当に悲惨。酒浸りで酒乱で働かないゴクツブシの親父に子供の頃から当たり屋をやらされているのですが、失敗して車に跳ねられて重傷をおっても病院につれていってもらえず。その上、母を殴ろうとした父を止めようとしたら一升瓶でアゴをカチ割られ、ボクサーとして致命的な欠陥をおってしまうという。ほんとにアゴから飛び散る血飛沫が本当に怖かったです。小学生の自分は、中盤以降の雰囲気との違いと、漂う辛気くささにびっくりしたわけですが、初期は初期で別の魅力があって面白いんですよね。なにはともあれテリブル東京って感じですよ。
 ギャグ漫画。地味なシリアスもの。奇妙な味系。気のきいたSF小品。オカルトもの。気がつけば、たとえその漫画のジャンルが何であろうとも、途中でバトル漫画になるのが普通のことのように感じてしまっている自分がいるわけで、あの頃の新鮮な驚きはもう味わえないんだと思うと、少し寂しい感じがします。まあ、ほんのちょっとしか思ってないですけど。
 余談はここまでにするとして、単行本になってからまとめ読み派の人も溜めすぎると読むきっかけを失うこともあるので、小まめに読むようにした方がいいですよ。あんま溜めるとネタバレを避けるのも大変だし。自分のような悲劇を繰り返さないようにしてほしいものです。
(隔週金曜連載)
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【ロマン優光:プロフィール】
ろまんゆうこう…ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っており、『蠅の王、ソドムの市、その他全て』(Less Than TV)が絶賛発売中。代表的な著書として、『日本人の99.9%はバカ』『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』(コアマガジン刊)『音楽家残酷物語』(ひよこ書房刊)などがある。現在は、里咲りさに夢中とのこと。twitter:@punkuboizz
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