LEGO BIG MORL 最新曲やツアーから
見えてくる、15周年のいま向き合うこ
ととは

2021年、LEGO BIG MORLが結成15周年イヤーを迎えている。4月にブルーノート東京で行なったライブを皮切りに、フロントマンのカナタタケヒロが初のソロツアーに挑んだり(ソロツアーなのにしっかり他メンバーの存在も感じる内容に)、バンドとしても『十五輪』と題したツアーを開催中だったり、新曲「愛を食べた」をリリースしたりと、コロナ禍下ゆえに活動に制約も生じる中、大々的にアニバーサリーを打ち出すことはなくとも、かなり精力的に動いているといえるだろう。重ねてきた年月とキャリアの重み、そこで得た経験や気づき、良い意味での余裕や遊び心……中堅に差し掛かったバンドならではの魅力を放つようになっているレゴの3人と、たっぷり語り合った。
――15周年イヤーの動きとしては春のライブからスタートしていますけど、感覚としては「節目だ」という意識がはっきりとあるのか、そこはそうでもないのか。そのあたりはいかがでしょう?
カナタタケヒロ(以下、キンタ):僕は10周年とかと比べると、(当時は)気持ち的にもまだまだ未熟な部分があったなと自分の中では感じてて。この15周年を迎えるにあたっては色々なことがあって、僕らも大きな変化を経てここに今いますけど、その自分たちで動いていることがようやく根付いてきて、曲を作るとか、この3人や社長を含めたミーティングもそうだし、ようやく自分たちで歩き出せてるなっていう感覚もあったりするんですよね。いま一番充実しているし、お互いのことをしっかり尊重しあった上でいろんな発表もできてるなと思いますね。
ヤマモトシンタロウ:バンドは結成15年なんですけど、メンバーとは高校から一緒なので20年以上くらいの付き合いで。そう考えると、本当に人生レベルで関わってくる人になったという感慨深さはありますね。出会った頃には20年も付き合う仲になるとは思っていなかったですけど、高校で友達として出会ったメンバーやから続いてきたし苦楽を共にできたなと思ったりして。やっぱり音楽性だけじゃないところで繋がってきたっていう部分を大切にできたし、続けていく上でも重要なポイントだと思います。
タナカヒロキ(以下、ヒロキ):シンタロウがいま言っていたのにも繋がる話ですけど、「周年感はあるのか、そうでもないのか」っていう質問でいうと、どっちかといえば後者です。10周年のときみたいにベスト盤を出してコーストを発表して――というよりは、もう少しちゃんと地に足ついて、日常の中のレゴというか。もちろん15周年は胸を張れることなんですけど、アニバーサリーというよりはもっとじんわりくるものの方がでかいですね。
――積み重ねの結果が今という。
ヒロキ:ほんとに。バンド活動というよりはご飯を食べるのと一緒の感じというか。人生の中の一つの……できたことないけど、子供ができたとかと同じトピックというか。家族とか仕事とかある中にもうひとつレゴというものが、15年もやってればさすがに出来てきているなというのはありますね。
――10周年当時と比べる話も出ましたけど、そこからの5年って特に環境面も含め大きく変わりました。当然そうなると視界も違ってきますよね。
ヒロキ:そうですね。もっと大きいタームの話というか。「次のライブを成功させるぞ」「アルバムを出すぞ」とかいうよりも、5年10年20年先の、ほんまに人生のタームの話かなと思います。
――その中で特に周年イヤーに至るこの1年ちょっとは、やりたいことや思いついたことがあっても容易にはできない社会状況があって。その中で何ならできるか、何なら面白がってもらえるかを考えなければならないことも多々あったと思います。
キンタ:ほんまにそうでしたね。
ヒロキ:周年じゃないバンドさんもそうでしょうけど、計画が立てれないんですよね、まず。でもそれ以外は、別にメンバーともコミュニケーションはとれているし、「潔癖症」から「愛を食べた」のリリース感覚も僕らとしてはいつもより短い。ライブも今のところ……シンタロウさんのせいのやつ以外は……(笑)。
ヤマモト:っ!(笑)
ヒロキ:まあ延期とかはありましたけど、このコロナ禍でもちゃんと、できることをやれてる感じはあります。
――その周年の歩みの中でいうと、キンタくんのソロツアーというのはどんな位置付けでしたか。
ヒロキ:あれもちゃんと15周年っていうのと、このコロナ禍っていうのも鑑みて、「じゃあキンタさんが一肌脱ごうじゃないか」みたいな。
キンタ:はははは! 今までやってこなかったこと――ブルーノートでピアノを弾いたのとかも、自分としてはまさかこの15周年で色々とやることになるとは、と。でもそういうきっかけがあるからこそ自分で殻を破れるのもあるんで、ソロツアーとか回れてだいぶ強くなったとは思いますね。一人でやる難しさと表現したいことはいっぱいありましたけど、「もっと柔軟な考えができるやん」って今さら気づいたこととかもあったりもして。それが今の『十五輪ツアー』に活きている部分もたくさんあります。
ヤマモト:だから、各々が成長しなきゃっていう思いが強いんですよね。そういう意味では誰かに楽曲提供するとかもそうですし、キンタさんの弾き語りにしても……時代感としてもそうだと思うんですけど、ミュージシャンが良い曲作って良いライブだけしてたらなんとかなるっていう時代じゃないところに来たので。やりたいことを実現するためにメンバーがどういう頭を使わなきゃいけないか、っていうのも成長だと思うので、昔よりもライブで「こうやろうよ」っていうことが話し合われるようになったんですよ。昔はもっとざっくり、「今日も全力出してドヤって言わすぞ」くらいやったんですけど。
キンタ:(笑)
ヤマモト:でも今はもうちょっと「こういうことを表現して伝えたい」っていうことを話すようになってるし、そのわりにはリハの回数とかは逆に昔より減っていたりとか。そういう意味でも成長したなと思います。細かいところで演奏が合う/合わないも大切なんですけど、「ここでどう見せたいか」みたいな方が重要視されるようになって。
――そんな中での『十五輪』ツアーはどんな感じで回れていますか。
ヒロキ:レゴのお客さんってコロナ前からモラルはあるし、良い意味で大人なので、この『十五輪』の初めのリハの時に不安やったり懸念していたことが、僕は全然なくなってます、ほぼゼロですね……MCがウケない以外は(笑)。
ヤマモト:そこに対してももはや強くなってきてるな(笑)。
ヒロキ:元からウケてなかったんかもな、っていうのはあります(笑)。でも歌が伝わってるとか、セトリの流れを理解してくれてるとかっていうのは、その日がレゴ初めてっていう人にも伝わってる自信はあります。
――コロナ以降久々の「ツアーを回っているなぁ」感もあります?
ヒロキ:めっちゃあります。だから意外に大丈夫かもね。打ち上げがないくらいで。
ヤマモト:そうね(笑)。あとは、より音楽をコミュニケーション手段やなと思うようになったというか。今まではわかりやすく「ワーッ」となる掛け合いが多かったんですけど、今はもうちょっと通じ合う瞬間がシビアにわかるというか。無表情に立っているだけでも「伝わった」感じがなんとなくわかるようになった気がしますね。あと今回、ライブグッズで鈴リストバンドっていうのを作ったんですよ。なんとなく、シーンとなる瞬間が微妙な空気になることがあったりするから、もっと音が鳴っててほしいっていう気持ちとか、お客さんが拍手以外でリアクションを倍増させるためであったりとかで。普段はそういうガヤグッズみたいなのは絶対作らないんですけど、それが思った以上に好評価で、客入れの時からシャンシャン聞こえてくる感じとかも面白かったですし、こういうときやからこそ思いついたこととして、すごく良かったですね。
――ライブの環境が変わったことで、「こういう見せ方が/こういう曲が刺さるのか」みたいな新たな気づきがあったりもしました?
ヒロキ:僕らの今回のセトリ、あえて普段なら絶対(観客も)一緒に歌う曲を多めに入れてるんです。そういう曲をやる上で、一緒に歌えなくても曲としての強度で持っていけるんやなっていう発見は曲単位でありますね。
キンタ:過去イチ盛り上がってるんちゃうかなと思ってるんですよ、このツアー。なんか知らんけど、一つになろうよ精神が空間に充満してる。
ヒロキ:制約があるから余計になんかな?
キンタ:かもしれん。声出せなくてもなんかすんごい溢れてるんですよね、マスクからもう――
ヒロキ:もう飛沫やろ、それは(笑)。
キンタ:言い方間違えたわ(笑)、エネルギーがな。セトリも良いんですよ、やってる側はあっちゅう間で。
ヤマモト:あっちゅう間やね、ほんまに!
キンタ:すごい手応えを感じながら歌いあげてます。そのぶん今までの何倍ものエネルギーで伝えようともしてるんで、ライブが締まってます。今の僕らのライブ。
ヒロキ:かといってそんなに斜に構えたセトリでもなく、オープンマインドなところもレゴにしては多めですね。セトリを考える上で、アニバーサリー感と、『気配』の曲をやりたいっていうことを話し合うと、自ずと方向は固まっちゃうんですよ、良い意味で。さっきの15年の話じゃないですけど、バンドの中でセトリが決まるのも日に日に早くなってますね。
ヤマモト:コロナ禍やからっていうのもあるとは思うんですよ。こんなときやからハッピーになって帰ってもらいたいのはどうしてもあって。そういう意味でも「歌える曲」っていうのは歌えなくてもハッピーになれる感じはするしっていう。
――新曲の「愛を食べた」も当然やっていますよね?
ヒロキ:やってますね。
――この曲は僕、たまたまデモ段階で聴かせていただいたんですけど、そこからわりと雰囲気は変わりましたよね。
ヤマモト:メロディのアレンジが結構多かったのと、デモの段階ではもっとホーンとか入っていて“海”みたいなイメージが強かったんですけど。
――最初は全体的に2番のリズムの感じだった記憶がなんとなくあって。
キンタ:ああー!
ヤマモト:そうそう。そうかもしれないです。
キンタ:1番のあのハーフっぽいリズム感は最初全然なくて、もっと細かい感じで構成してました。
――そういうアレンジを施された結果、とても軽やかな印象になりましたよね。過去曲とも一線を画すタイプの軽やかさや爽やかさがあって。
キンタ:まさにそうですね。サビとかも1音1音を長く作ってるので、軽やかさと伸びやかさ、煌びやかさみたいなところはデモの頃とは明らかに変わりましたね。あとはメロディでいえばファルセット押しで。
――いやあ、キー高いですよね、これ。
キンタ:もうこれね、ほんまにメンバーにも相談したくらいなんですけど(笑)、自分的に限界ギリギリのところを狙って作ってる感じで。そもそもそのサビのメロディは最初はなかったんです。アレンジ面でサビのコードが変わって、元のサビのメロディは<幸せを~>っていうところなんですけど、あそこを大サビにするアレンジにしたので、サビを1から作るっていう、自分の中では結構過酷なロードを歩んだ曲なんですけど。結果、思いついたのがああいうファルセットのメロディで、軽やかさや伸びやかさっていう意味ではこのファルセットはありやと思うでって。
ヤマモト:ファルセットって、マイナスに言うと声が細いんですけど、僕は結構キンタのファルセットって綺麗で上手やと思うので。それにこういう激しいところにファルセットを当てていくような使い方の曲ってレゴはあんまりしてこなかったので、そこはプラスに考えてましたね。キンタさんも、昔はファルセットになると「弱くない?」って言いがちやったんですよ。
キンタ:そう。当時はやっぱりバンドサウンドがゴツかったから、ファルセットってそれに負けちゃうんですよ。でも今はそういうことをあまり気にせず曲を作れているからイケるなっていうのと……自分としてもファルセットがどんどん強くなってるなっていうことも感じてて。
ヤマモト:うんうん。まさにやと思うよ。
――で、編曲はお馴染みになってきた辻村有記さんですが、彼がこれまで手がけてきた曲の印象ともまた少し違った仕上がりな気がしたんですよ。本来はもう少しデジタル色強めの印象で。
ヒロキ:そうですね。そっちの方が得意やと思います、多分。
ヤマモト:そこはお願いするときにすごく言いましたね。今までやと、わりと自由にしてもらってた部分が強くて、お任せでやってもらったものに対して「もうちょっとこうしたい」って言うやり方だったんですけど。今回は初めの時点で、いま有記がやっている――彼はアイドルとかの楽曲も作るので、そういう彼のポップス加減と僕らの持っているバンド感を融合させたいと伝えて。
――歌詞も面白いですね。現実感のある固有名詞が出てきたりするインパクトもあり、かなり狭い範囲に視点を向けつつも愛という大きなテーマを歌うという。
ヒロキ:今日初めからずっと言っている、15年やっているバンドとかメンバーとか仕事とか、当たり前のように日常に組み込まれているものとしての愛というか。大恋愛の刹那的な恋というよりは、こういう世界観の方が今のレゴにも通じるし、このコロナ禍の誰しもにも通じる。かつ、10周年では「Blue Birds Story」と「傷」っていう誰が見てもアニバーサリー感のある曲を作ったんですけど、そうじゃなくてもっと日常が見えるようなところで歌いたいなと思ったのと、あとは僕らのデビュー曲がそれこそ大恋愛みたいなものを描いた「Ray」っていう曲なので、そことの対比もちょっと感じてもらえたらいいなと思って、「Ray」の歌詞を入れたりとか。15年やらせてもらってそういう遊び心とか余裕ができましたっていう表現にもなるし、全部つながってる話ではありますね。
――「これはアニバーサリーソングだな」という意識は制作中からあったんですか。
ヒロキ:初めは全くなかったです。「この曲では何を書こう」というのはまったく決めずに書いたので。でも段々「リリース日がこの辺かな」とかなっていくうちに、アニバーサリー感をまったく無視できてたかといえば自信はないですね(笑)。かといって「Ray」を入れた以外は、つながってはいるけどノスタルジックでも思い出話をしているわけでもないので。
――続けてくる中で自ずと積み上げてきたもの、更新してきたものをいまナチュラルに出した形がこれ、という感覚?
ヒロキ:「潔癖症」くらいからそうなのかもなという話はしていて。
キンタ:うん。
ヒロキ:ちゃんと詩が歌詞になっていく感じというか、メロディがあっての言葉、その逆もまた然りで。これを言いたいから詰め込む、っていう美学もあるけど、「潔癖症」と「愛を食べた」はこれしかないっていうメロディだったので、歌詞の都合でメロディを変えたくないなっていう。
キンタ:「潔癖症」からの感覚なんですけど、歌っていてもすごく自分にフィットしていると思います。良い意味で慣れがなくて、ずっとアツアツな状態で歌えてるというか、新鮮な気持ちで歌えてる。意味だけを放り込んだ歌詞じゃないっていうのが自分でも理解できてますし、言葉の選び方も「自分もこう思う」って思えるフシがたくさんあるので、伝わるスピードも速いなと思いますね。
――もう一曲の「ピーポーピーポー」は、こゑださんへの提供曲のセルフカバーですが、まず提供用として最初に作ったときはどんなイメージだったんですか。
ヒロキ:リファレンスは「RAINBOW」なんですよ。
ヤマモト:こゑだちゃんは「RAINBOW」とか「end-end」とかも言ってたかな。
――自分たちでもやってみようというのはどんな流れで?
ヒロキ:僕の激推しです。デモをワンコーラス作って僕も歌詞を書いて、そこで単純に「これはレゴでやってもかっこよくなるな」って思えた。もちろんデモを歌ってるのがキンタなんで、すぐにイメージが湧いちゃったというか。もちろん提供する曲なんですけど……
――それで終わりではないなと。
ヒロキ:そう。俺らが歌っても別の角度から伝えられるんじゃないかなと思いました。
――レゴVer.としてアレンジなど変えていく上でのポイントはどこでしたか。
キンタ:僕はイントロですね。LEGO BIG MORLに落とし込んでいく上で絶対に必要なのはあのギターの掛け合いやと俺は思っていて。「2本のギターが絡み合うのを念頭においてくれ」とシンタロウに。
ヤマモト:それはずっと言ってたな。
キンタ:僕らなりの解釈がそこで伝わると思ったんで。
ヤマモト:面白いのは、こゑだちゃんのバージョンはそのギターの掛け合いが一番最後なんですよけど、レゴの方は一番はじめのイントロになっていて。同じような方向性のなかでなんとなく違うよりは、もっと肉体感のある、一人ひとりの顔がさらに見えやすいようにやりたかったのもあります。
――ここ最近のレゴの曲のなかでもかなりバンド感が前に出てますもんね。
ヤマモト:そうですそうです。そこはすごく意識的にやりました。ちょっと昔のレゴも感じつつ今のレゴも感じつつっていうので構成しましたね。ギターのああいう始まりをする時点で――
キンタ:ルーツを感じるよね。
――たしかに。最後に、いま現在とこれからの話も聞いておきたいんですが、他にも曲は作っていたりします?
ヤマモト:ありますね。良すぎて寝かし続けてる曲とかもあります(笑)。「あなたがいればいいのに」もそういう、できてから「これは良い曲やから」って一年以上寝かしてたんですよね。
ヒロキ:いやいや。6年とかよ。
ヤマモト:え、そんなに寝かしてたっけ。
キンタ:そう。もう熟成。
ヒロキ:ライブでしか聴けない名曲、みたいに最初はしてたんですけど。
ヤマモト:まあそこまでの年数じゃないけど、寝かせてる良い曲はあります。「ここぞ」のタイミングでみんなに聴かせたいなって。
――周年イヤーでいうと来春まで続きます。まだ半分過ぎたところですけど、いま計画してることは言える範囲で何かありますか。
キンタ:やっぱりこうやってシングルリリースするっていうことは、どんな状況下においてもすごく意味のあることやなと思うんで、このペースをしっかり保って来年の3月を迎えたいですよね。1年間でこれだけ出したんやぞっていうものを抱えた上で、来年はちょっと大きいことをやりたいです。
ヤマモト:自分たちが「良い」と思ったことをやりたいっていうのが強いですね。長くやればやるほど謎のルーティン観念に縛られたり、流行りにも踊らされそうになるときがあるというか。そういうトレンドとかも大事なんですけど、最終的にはやっぱり、やりたいことをやってるのが一番伝わると思うんですよ、僕は。だから15周年はレゴやからこういうことをやってるよねっていう、“らしさ”を出せたらなと思います。

取材・文=風間大洋

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