【果歩 インタビュー】
感情が揺れたりする時に
それを忘れないように曲を書く
“この曲はこのために
生まれてきたんだな”と思った
今回のEPには「東京」という楽曲もありますけど、東京へ出てきたことが大きなきっかけではあるんですね。
一方、EP『きみと過ごした街のなかで』のサウンド面に話を移すと、前作『女の子の憂鬱』での弾き語りスタイルから一変、今回はバンドサウンドとなりましたね。アレンジャーにひぐちけいさんを迎えていらっしゃいますが、この経緯を教えてください。
けいさんと出会ったのは2年前で、20歳の時にワンマンライヴをしたんですけど、その時にギターをお願いしたんです。もともと知っている方ではあったんですけど、“やってくれるかな? どうかな?”って連絡したら快く引き受けてくれて、そこから仲良くしていただいています。前作は弾き語りのEPを出したんですけど、それまでにいろんな方向性で挑戦を重ねつつ、私的にはずっとバンドを聴いていたのもあるし、“バンドサウンドが好きだ”という想いがあったので、今回はこの方向で行きたかったんです。それで、あの時ギターがカッコ良かった、けいさんにまたお願いしました。
バンドサウンドはバンドサウンドでも、2019年に発表したEP『水色の備忘録』で會田茂一さんたちがアレンジした洗練された感じとも違って、粗いという表現でいいのかどうか…
そうですね。“ザ・バンド”という感じというか、ライヴハウスの音楽で育ってきたので、“もう一回この感じでやりたい”と伝えました。
グランジに近いでしょうかね。ザラザラした感じですよね?
はい。けいさんといろいろ相談しながら、私の好みを伝えました。“どういうイメージの曲がいい?”と訊かれて、何曲か挙げたり。私は曲を作ったらそれで完成!という人間なので、“あとは、けいさんにお任せします!”というタイプなんです(苦笑)。けいさんは私のそんなところも知ってくれていたから、“分かったよ”と私の意図を全部汲んでくれました(笑)。
具体名を挙げると、ナンバーガールとか、初期のくるりとかの匂いがあると思います。2000年前後のギターロック感と言ったらいいでしょうか。
それはレコーディングの時にけいさんが結構言ってました。ザラザラした感じって。あと、私がリファレンスに挙げた曲にもくるりは入っていて、すごくたくさん聴いてるんですよ。
そうしますと、この音は果歩さん自身も満足度は高いわけですね。
最初に聴いた時、“これが私の曲!?”となりました(笑)。私がギターで曲を作った時に想像したバンドサウンドの感じにしてもらったものもあるんですけど、「残暑」は私が弾き語りにしたのとはまったく違う感じにしてもらったんですよ。自分のイメージはもっとしっとりとしたバラードという感じだったので、夏の柔らかさを出してもらって“この曲はこのために生まれてきたんだな”と思いました。
それはめちゃくちゃいいコラボレーションだったんですね。
そんなEP『きみと過ごした街のなかで』をリリースしたあと、果歩さん自身、今後どんなふうに創作活動を続けていきたいと考えていらっしゃるのか、最後に将来展望を聞かせてください。
もちろん大きなことができたら最高なんですけど、自分が好きな音楽を続けて、それでご飯が食べれて、幸せに暮らせれば私は十分だと思ってます。第一に、続けられたらいいなと。
変に無理することなく?
はい。それで自分が音楽を嫌いになっちゃったりするのは嫌なので、自分のペースで好きなように続けていきたいです。
果歩さんにとって音楽は一生ものでしょうか?
そうですね。ずっとライヴハウスでライヴをしていたいです。ホールでのライヴも好きですけど、ライヴハウスの照明の感じとか、お客さんの近さが好きなので、例えば…すごく人気になってホールでライヴができるようになっても、ライヴハウスでやることを大事にするアーティストでいたいと思っています。
取材:帆苅智之
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EP『きみと過ごした街のなかで』2021年9月1日発売
make lip records
カホ:新潟県出身のシンガーソングライター。2018年4月に上京し、下北沢や渋谷を中心に活動する。15年8月より新潟を拠点にライヴ活動を開始し、17年5月には新潟の大型サーキットライヴ『NIIGATA RAINBOW ROCK』に初出演。同月、AbemaTV『日村がゆくフォークソング大会』の第一回大会で優勝を果たす。19年2月に初流通となるシングル「光の街」を、同年10月には初全国流通盤EP『水色の備忘録』をリリースし、 東京での初ワンマンライヴを下北沢SHELTERにて開催。23年10月に初のアニメタイアップ曲として書き下ろした「ゆるり」を配信リリース、同曲も収録した配信EP『まばゆい』を同年11月に発表。 果歩 オフィシャルHP
「きみの住む街」MV