THIS VERY DAYワンマンレポート-大き
な夢と野心と感謝にあふれた、若いバ
ンドの新たな第一歩

2021.08.26 THIS VERY DAY『VICTORY』リリースツアーファイナル@渋谷クラブクアトロ
大きな夢と野心と感謝にあふれた、若いバンドの新たな第一歩を目撃した。2021年8月26日、渋谷クラブクアトロ、THIS VERY DAYのアルバム『VICTORY』リリースツアー・ファイナル。結成から2年、ボーカル&ピアノを中心とするロックバンドとして急速に力をつけてきた彼らに注がれる視線は熱く、この日のチケットもソールドアウト。アルバム冒頭を飾る「Bloom」をフィーチャーした映像がスクリーンに映されたあと、すぐに生演奏の「Bloom」が爆音で始まる。1曲目から気力充実、気迫みなぎるオープニングだ。
「お待たせしました! 渋谷クアトロ、今日を一番最高の日にしよう!」
THIS VERY DAY
 ボーカル&ピアノのYujiが、声を出せない観客の思いを全身で受け止めて叫ぶ。ラウドロックの骨格に、メロディックなピアノポップのエッセンスを組み合わせた「Departure」では、軽快な指使いでピアノを奏でたかと思えば、次の瞬間にマイクを握って立ち上がり、拳を振り上げて観客を煽る。ピアノロック系バンドはほかにもいくつかいるが、1曲の中で二つの役割を全力でこなすパフォーマーはあまり見たことがない。「Forever Hero」「VICTORY」と、シンガロングのあるキャッチーな曲を連ねてオーディエンスをぐいぐい巻き込む。ベースのSHiNとドラムのRyogaが重くて速いビートを叩き出し、ギターのKohtaが気持ちのこもったソロを弾く。みんな笑顔、楽しそうだ。
THIS VERY DAY
「ツアーファイナルへようこそ。大変な世の中にも関わらず、みんなが来てくれたことを奇跡のように思います。でもこれは奇跡じゃない、現実です」
 「Days」ではオーディエンスの力を借り、無数のスマホのライトが掲げられる中での一体感あふれる幻想的なパフォーマンスを。「Shine A Light」では、声を出せない代わりにタオルをぶんぶん振り回すダンスタイムを。そして「Climb」では、緩急織り混ぜた雄大な曲調と、サビではロックバラードを思わせる美しいメロディを。ハード&ヘヴィとピアノサウンドの組み合わせの中で、少しずつバランスを変えながらバラエティのある楽曲を生み出してゆくバンドの力。ボーカルのYujiのエネルギッシュなパフォーマンスが、それをオーディエンスとの共有物に高めていく。フロアからはよく手が挙がっている。
THIS VERY DAY
「みんなのあたたかい応援のおかげで、こうしてライブができています。まだまだ未熟ですが、アーティストとしての“生きざま”をここに残していきたいと思います」
 アルバム『VICTORY』の中でも異色の1曲、Kohtaがワウギターを奏でてYujiがラップ調のボーカルを聴かせるダンスチューン「Prior」は、もともとルーツにあったものか、それとも新たなチャレンジか。どちらにしても体が動く。そこからの「タイムカプセル」は、この日のハイライトと言っていい出来栄えで、メランコリックなピアノバラードに力強いビートが加わり、せつないファルセットをまじえたボーカルがエモーションいっぱいに歌い上げる。Yujiは声量を自慢したり、聴き手をねじふせたりするタイプではなく、あくまで歌詞のメッセージをメロディに乗せて伝えるボーカリストだ。
ライブはそろそろ終盤だ。「星に願いを」は、ベースとドラムだけ聴いているとヘヴィメタルばりのいかついリフだが、Yujiの奏でるジャズっぽいピアノパートが加わり、叙情的なピアノのメロディと疾走感あるサウンドがバランスよく溶け合った、THIS VERY DAYらしいサウンドに着地している。そのまま「Stay With You」へ、緩急をつけたビートに乗って軽快に曲は進み、シンガロングできるパートがステージとフロアを一つにする。この曲が好き、という感情が4人の笑顔を見ているとすぐにわかる。ライブはクライマックスだ。
THIS VERY DAY
「音楽には少しでも心を強くしたり、優しくしてくれる力があると信じています。居場所がない時に居場所になれるような音楽を作り続けていきたい、それだけです」
 自分は弱い人間ですけど、音楽に出会って、わずかでも前に進めています。――そう語るYujiの言葉は、そのままTHIS VERY DAYの作る音楽と重なり合う。「決別」は別れの歌ではなく、新たな自分との出会いを歌う応援歌。演奏はパワフルで激しいが、歌はどこまでも優しく、Kohtaのギターソロもポジティブな気迫に満ちている。アルバム『VICTORY』のラストチューンは、まだ見ぬ未来へのスタートの合図だ。
「あと1曲、俺たちの始まりの曲をやって帰りたいと思います。全員で飛ぼうぜ!」
アンコール、ツアーTシャツに着替えてリラックスした表情の4人が奏でる「BRAND NEW WORLD」は、2年前にリリースした初のデジタルシングル曲。ヘヴィなファンクメタル、激しいツービート、華麗なピアノパート、楽しいシンガロング、今思えばTHIS VERY DAYのすべてがここにあった始まりの1曲。ステージの上も下も、笑顔でジャンプを繰り返す。これがTHIS VERY DAY、まさにこの日。
THIS VERY DAY
「またここで必ず会いましょう!」
結成2年でキャリアを振り返るには早すぎるが、信じたルーツを大切にしながら、バンドは急速に楽曲のバリエーションを増やしつつある。音源で聴く印象よりもより人間くさく、笑顔の絶えないライブパフォーマンスと、シリアスなメッセージが共存している。4人編成になって間もないということで、これからさらにバンドの総合力は増していくだろう。2021年8月26日、渋谷クラブクアトロ。それはTHIS VERY DAYの大きな夢への一里塚であり、振り返って「あの日がターニングポイントだった」と呼ばれるような1日だった。
取材・文=宮本英夫 Photo by 菊池貴裕

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