『ヤングタイガー2021』、Cody・Lee
(李)、Hakubi、ヤユヨらが7組の新人
アーティストが繰り広げた灼熱の試合

『ヤングタイガー2021』2021.7.22(Thu)大阪城音楽堂
樋口大喜
梅雨明けから約1週間、すっかり夏本番を迎えた7月22日(木・祝)。大阪城音楽堂にて、コンサートプロモーター・清水音泉が主催する、新人アーティストに注目したライブイベント『ヤングタイガー2021』が開催された。今回は、前身イベント『ヤングライオン』から数えて10回目の記念大会。KALMAclimbgrowCody・Lee(李)超能力戦士ドリアンHakubi、PK shampoo、ヤユヨら、新進気鋭の若手バンド7組が共演した。最高気温35℃。灼熱の日差しが容赦なく降り注ぎ、立っているだけで汗が吹き出るような暑さの中、大阪城音楽堂にはこの日を楽しみに集まったライブキッズたちが、暑さ対策とコロナ感染対策をした上で、続々と入場を始めていた。定刻の14時。トラの雄叫びと入場曲をBGMに、リングアナウンサー・樋口大喜(ラジオDJ)がステージに登場。「時がきた。王座をかけて若虎たちが、ここ大阪城音楽堂に集結! 今日、新たなる伝説が始まる!」とプロレス風のアナウンスの後、早速、第一試合の超能力戦士ドリアンのリングコールへ。「『ヤングタイガー2021』公式戦、ただいまより第一試合を行います! チャレンジャー! 牛、恐竜。関西に届く猛獣使い。豊臣秀吉のごとく天下統一を目指す! 超能力戦士ドーリーアーン! ファイッ!」「少ーしだけ? プロレス興行っぽい雰囲気を醸し出しております」との公式サイトの記述通り、「カーン!」とゴングが鳴り響き、いよいよ試合が幕を開けた。
第一試合 超能力戦士ドリアン
超能力戦士ドリアン
トップバッターはスリーピースバンド・超能力戦士ドリアン。ボーカルとギターのみの編成のはずだが、自称ドラマーのアナウンスが入り、やっさん(Gt.Vo)とけつぷり(Gt)が元気よく入場。彼らのライブはとにかく楽しい。コミックバンドらしく、人懐っこさや身振り、小道具でこれでもかと盛り上げる。
超能力戦士ドリアン
1曲目は「恐竜博士は恐竜見たことないでしょ」。突如2体の恐竜の着ぐるみが登場。恐竜がくちゃくちゃになりながらステージで踊りまくる。実はこの正体は、おーちくん(Vo)と樋口大喜。2人が恐竜の中から登場し、会場は大盛り上がり。両手を上に突き上げ客席が揺れる。恐竜を脱ぎ捨てたおーちくんがステージに戻り、新曲「家のお風呂でさっパーリーナイト」へ。へたりそうな暑さだが、楽しい3人に元気をもらえる。
超能力戦士ドリアン
MCでは「ヤングタイガー初登場なので、子供のトラを連れてきました」と子トラのぬいぐるみを持ち込む。暑すぎてPCにトラブルが出るも、「天保山」「尊み秀吉天下統一」を連続でプレイ。自己紹介ソング「いきものがかりと同じ編成」では、盛り上げる力を貸してくれるスタッフを探しに裏へ行ったおーちくんの断末魔が聞こえ、ステージに大人のトラとボロボロのおーちくんが現れるという謎展開。
超能力戦士ドリアン
実はこのトラ、先ほど連れてきた子トラを探していたのだった! まさか伏線だったとは。感動の再会を果たした親子のトラと共に踊るメンバー。最後は「焼肉屋さんの看板で牛さんが笑っているのおかしいね」で、元気いっぱい、ポップに会場全体を巻き込み、最高にハッピーな空気を残してライブを終えた。
超能力戦士ドリアン
第二試合 PK shampoo
PK shampoo
樋口大喜による「酒に生き、酒と生きる、これぞヤマトパンク魂! PK shampoo!! ファイッ!」とのリングコールから、ポケモンのバトル音楽をSEにメンバーが入場。1曲目は「星」。ヤマトパンクス(Vo.Gt)が最初から声をふり絞る。一曲入魂のエモーショナルな演奏に会場が惹き込まれていく。
PK shampoo
続いてドラムのみをバックに、ほとんどアカペラでヤマトが叫ぶように声を張り上げ「3D/Biela」へ。今は観測できなくなってしまった彗星の名前をタイトルにした楽曲だ。ものすごく暑いのだが、目も耳もステージに集中させてしまう力が彼らにはある。福島カイト(Gt)のギターがギィイーンと唸り、ライブではアンセムの「夜間通用口」をドロップ。野音の青空に音が吸い込まれていく。
PK shampoo
MCで「暑い、暑い」と口にするヤマト。福島が「皆の方が暑い」と言うと「俺の方が暑い!」と張り合ったり、カズキ(Dr)のテンガロンハットをいじったり、無口な西岡ケンタロウ(Ba)に話を振ったり、ゆるくマイペースな会話を繰り広げる。演奏中とのギャップが魅力だ。
PK shampoo
そして「夏はすぐ終わるし、スピードのある曲やります」と「奇跡」を披露。客席は一斉にクラップ! PK shampooは夜が似合うバンドだと思うが、昼の野外もよく似合う。ラストはミドルテンポの「京都線」。ノイズまじりのギター、喉の奥から絞り出す歌声、情景が浮かぶ文学的な歌詞。時折吹き抜ける風がノスタルジーを連れてくる。たっぷりと聴かせて第二試合は終了した。
PK shampoo
第三試合 climbgrow
climbgrow
日差しはいく分弱まるも、まだまだ真夏の暑さのなか樋口の呼び込みを受け現れた「滋賀の閃光」は、杉野泰誠(Vo.Gt)の咆哮からフルスロットル。「LILY」、「THIS IS」と立て続ければ、観客はそのスピード感に突き動かされ、早々に拳を掲げてリズムを刻む。ボーカルもますます鬼気迫るうえ、「Yeah!」の雄叫びが何度も轟き、「DOOR」でも重厚感や巻き舌で追い立てて体感温度の上昇は天井知らずだ。
climbgrow
挟むMCでも一旦クールダウンとはまったくならず、「ロックンロールでしか変えられない未来を大阪に持って来ました!」(杉野)と、勢いそのままに「未来は俺らの手の中」へ。耳に残るサビからエモーショナルに繰り広げ、最後方の人にもハンズアップさせると、またも加速して次は「ラスガノ」、そしてMCへ。
climbgrow
そこでも「今日出たバンドのなかで一番カッコ良かったと言わせる自信があります」(杉野)と前のめり。これにはじわっと拍手も起こり、有言実行とばかりにラストは「風夜更け」でラップもキレッキレの猛攻に。
climbgrow
すさまじいパンチ力を見せる言葉とパフォーマンスは会場を完全制圧。4人はその存在と雄々しく荒ぶるロックを人々の脳裏に強く焼きつけていった。
climbgrow
第四試合 Cody・Lee(李)
Cody・Lee(李)
16:30過ぎ、メンバーがリングインすると客席後方まで即スタンディング。そんな高い期待値にこたえ、最初に放つのは「I'm sweet on you(BABY I LOVE YOU)」だ。スイートな滑り出しに風もそよぎ、リラクシングなポップにのる2ボーカルには清涼感も。
Cody・Lee(李)
続く「drizzle」でも尾崎リノ(Vo.Ag)のウィスパーや高橋響(Vo.Gt)のスローなラップ、浮遊感漂うギターで心地よさを広げる一方、日々を切り取るリリックの鮮やかさや、体をよじらせ鳴らす力毅のギターが脳を刺激する。
Cody・Lee(李)
そしてMCでは「(プロレス形式の『ヤングタイガー』に対し)武闘派じゃないCody・Lee(李)ですが、穏やかな気持ちで見ていただけたら(笑)」(高橋)と和ませ、次はムードを変えて「我愛你」でダンサブルに。オリエンタルや80’sを絶妙にブレンドするナンバーは彼らのセンスがくっきり。

Cody・Lee(李)

会場もヒートアップするが、西日に照らされ続けた高橋がここで戦線離脱。しかし、「こういうところから(熱中症について)学べるんだぞ(笑)」(力毅)とつなぎつつ、「何ができる?」(尾崎)と4人で急遽「ボーイズブラボー」を披露し見事にリカバー。アッパーに会場を再加熱すれば、観客の気持ちも一つになってたくさんの拳が突き上がる。しかも途中からは高橋も復活を果たし、最後は「When I was cityboy」を繰り出し5人で無事ゴール。わずか5曲とは思えないワクワクの音世界を楽しませてくれた。ちなみに高橋は後日、「チャンスを頂けるのならリベンジさせてください」とツイート。ぜひ再試合を!
Cody・Lee(李)
第五試合 ヤユヨ
ヤユヨ
会場から日なたが消えて夕暮れが始まる頃、大阪発、現役大学生の4人組が登場。リコ(Vo.Gt)のブレスを合図に、まずはギター&ボーカルでワンコーラスという「七月」で勝負に出ると、いっきに観客の集中は高まり、そこから徐々に熱を上げ切ない曲の世界へ。
ヤユヨ
そして続く「星に願いを」では疾走感や次々に色合いを変える展開で、涼しい風も吹く会場に再び灼熱をもたらす。さらに「いい日になりそう」と「ユー!」をシームレスに続けて今度は緊張を緩めながら、いきいきと躍動するプレイやリコのハイトーン、甘酸っぱいラブソングでガールズバンドの強みも発揮。客席ではクラップが起きて一体感も生まれ、「ユー! ユー!」のコールも聞こえてきそうだ。
ヤユヨ
だがそんなガーリーなイメージは「おとぎばなし」で一変。うなるギターや艶っぽくも吐き出すような歌声でまた違った側面を見せると、早くも最終「さよなら前夜」に。
ヤユヨ
再度スピードを上げ突き進み、リコはロックスターのスタイルでボーカル。若さとパワーで最後まで会場を盛り立てていった。言葉は少なくとも表情豊かに堂々と約30分を走り切った彼女たち。今後の活躍が楽しみだ。
ヤユヨ
第六試合 Hakubi
Hakubi
9月にメジャー進出を控える京都から来た3ピースは、片桐(Vo.Gt)のよくとおる声が際立つ「灯」で幕開け。抑え目なサウンドから突沸させると、「忘れられない1日にする!」(片桐)と宣言してもう2曲を連続。日が暮れてストロボが瞬き出すなか、緩急をきかせてドラマチックに物語を綴ればどこかヒリヒリとした感覚に。
Hakubi
そして「いろんなことに寛容になっていく自分が嫌で書いた曲」(片桐)と明かし「大人になって気づいたこと」へ。「若虎」ゆえの苦悩や葛藤は叫びになり、張り詰めたアクトは痛々しささえある。同世代が多いであろうオーディエンスは圧倒され、アウトロは静寂に響く片桐のささやくような歌声とセミの声が重なる印象的な夏の情景だ。
Hakubi
また片桐は「いつかみんなで一緒に歌えるといいね。そのいつかが夢物語になっているような現実、それに慣れてしまっている現実。すごく悔しいな」と述べ、思いを託した「悲しいほどに毎日は」も披露。ここまでの空気を和らげるこの新曲は、心の中で「ラララ」と口ずさませると同時に前向きなメッセージも伝える。
Hakubi
だが、締めくくりは「mirror」の全力疾走でもう一度ヒリッと。煽情的に畳みかければ観客の手は3人へと伸び、頭上を埋めるリストバンドがラストシーンをピンクに染めた。
Hakubi
第七試合 KALMA
KALMA
記念すべき『ヤングタイガー2021』のトリは北海道が生んだ「元気玉」、全員2000年生まれのKALMA。3人は向き合い気合いを入れると、「いい夏にしよう!」(畑山悠月/Vo.Gt)と「blue!!」でスタートダッシュし、シンプルなメロディに絞り出す熱っぽいボーカルをぶつけるショートチューンで瞬時に会場を支配する。
KALMA
また次も思い切りよく、かつめまぐるしく「ねぇミスター」のパンクで観客をとりこに。「気持ちいいな!」(畑山)、「最高ですよ」(齋藤陸斗、Ba)と自身も気分上々の様子だ。そして今度は日没過ぎの野外になじむ「親友」でゆったり語り掛けると、聴く側もその言葉と音を丁寧に受け止めるように聴き入り、心地いい夏の夜が訪れる。
KALMA
しかしそこからはラッシュをかけるように、畑山が「どうしてもやりたかった」という「SORA」から3曲を連投。若者だからこその純粋さはみずみずしく清々しい音楽となり、続く「デイズ」では思春期のモヤモヤを爽快に撃破。多くのファンが声にしない声で「ラ、ララ」と特大でシンガロングをしているに違いない。
KALMA
そんなロックでやり取りする若い世代のコミュニケーションをより強固なものにするフィナーレは「夏の奇跡」。センチメンタルなメロディ、のびのびと青春を謳歌する歌詞、畑山が渾身のボーカルを見せる大サビetc.。満月間近の月が見守る下で響き渡る、まぶしいほどにキラキラのサマーアンセムは観客のハートをギュッとつかんで二度と離すことはなかった。
KALMA
取材・文=ERI KUBOTA、服田昌子 撮影=河上良

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