【竹原ピストル インタビュー】
昔の話をしているように
歌ったような気がする
好きなことをやり続けるだけ、
ここからまた積み上げていけばいい
収録曲の歌詞の話を聞かせてください。主客の逆転であったり、彼我の違いであったり、そういったものが随所にありますよね。具体的に挙げますと「とまり木」の《待つことを嫌い ひとりで/待たれることを嫌い ひとりで》。「たった二種類の金魚鉢」では《わたしにとっての良い知らせは/あなたにとっての悪い知らせ》とありますし、「あっかんべ、だぜ故郷」では《俺はこの街の嘘を知っていて、この街は俺の嘘を知っている。》とあります。
これはもうギターで言うところの手癖みたいなものだと思うんですよね。“どう言葉を並べると気持ち良いか”という。気持ち良さが先行になっちゃったら意味が分からなくなっちゃいますけど、ちゃんと意味が通るし、“これはひっくり返すと余韻が深くなるな”とか“幅が広がるな”と思うことが多いからだと思いますね。
「今宵もかろうじて歌い切る<Live at ドラマ「バイプレイヤーズ」撮影現場ver.>」に《棄てるのはいつだってこちらの方/“道”は人を棄てたりしない》とあって、これも深い歌詞だと思って聴かせてもらったんですけど、竹原さんのそういう歌詞って何かひとつ答えが出るようなところがあるように思っていて、これは竹原ピストルというアーティストが目指すところなのかなと勝手に想像していたところではあります。
無意識にやっちゃっている部分が多々あるのでどうなんだろう? “ああでもない、こうでもない”って、こっちから考えて、あっちから考えて…というのは自分の思考の癖としてあるかもしれないですね。言葉にせずとも。“で、結局はどうしたいんだ?”みたいなことを繰り返すのは。でも、その先みたいなものは見えたことがない気がします。今のところは。だから、強いてその先のことを言うのなら、“ずーっとこの先、そうやって生きていくんじゃないの?”みたいな、“ずーっとこのままで終わっていくんだろうな”みたいな(笑)。
これも見事にアルバムタイトルに結びつきましたね(笑)。
あははは。そうか! “STILL GOING ON”はそういう意味だったのかもしれないですね(笑)。たわいもない理由でつけたんですけど。
その、たわいもない理由とは?
前回の全国ツアーが折り返しみたいなところで中止になっちゃったんですけど、ツアーグッズが載っているカタログのようなものがあったんですよ。そのカタログにグッズをデザインしたデザイナーが“STILL GOING ON”と書いていたんです。で、“これ、どういう意味なの?”って訊いたら、ツアーはまだまだ続くっていう意味で“STILL GOING ON”と書いたって言うから、“そんな言葉があんの!? カッコ良いね”って話になり、“STILL GOING ON、尽きぬ闘志をって韻も踏めるじゃん!”ということで、そのフレーズをもとに作ったのが「ギラギラなやつをまだ持ってる」で、それを収録したアルバムなので、そのままタイトルにしたという。なので、デザイナー発信です(笑)。
でも、その竹原さん自身の思考もそうだし、いろんなサウンドに影響を受けて取り込んでいく姿勢もそうだし、図らずも竹原ピストルというアーティストのスタンスを示す、素晴らしいタイトルだと思います。
図らずも…ですけど(笑)。でも、そうやって言っていただけるとありがたいですね。
さて、最後にリリース後のツアーの話をうかがいたいと思います。なかなかライヴ自体が厳しい状況ではありますが、こと竹原ピストルのライヴでは、お客さんが密になることもないでしょうし、あんまり皆で大声で合唱することもないでしょうから、もちろん感染対策はしっかりされるんでしょけれども、他のライヴに比べたら竹原ピストルのライヴは感染の危険性は低いように感じますけどね。
コロナ前から、お客さんはジッと聴いてくれてドンと拍手を返してくれて…ということが多いので、そういう部分はあると思いますけど、本音を言えば不安ですよね。正直言って“できるかぁ?”って思ってる部分はあって。なので、正直言って“ぶちかましてやりまっせ!”みたいな気持ちではないですね。
竹原さん自身、このコロナ禍でなかなか思うようにライヴができなかったと思いますが、プロのミュージシャンになってから、こんなにライヴをしない時間があったのは初めてなのでは?
無観客配信ライヴはやっているので、そこをカウントしちゃうとライヴをやらなかったのは最初の緊急事態宣言の時だけですね。あとはライヴやってますよ。ただ、無料で配信ライヴをやりまくったから、次のツアーはお客さんが入ってくれるのかなって不安はあって(笑)。
あははは。
でも、今は“それでもいいわい!”って思っているんですよ。自分自身もそうだけど、自分を応援してくれている人たちがイライラ、モヤモヤした日々を過ごしていると思うと、日頃の恩返しじゃないですけど、ちょっとでも暇つぶしになったらいいと思って、無料で配信ライヴしていたので。“もうそれでいいか!”と。“またゼロからかぁ”というニュアンスじゃなくて、“ここからまたやりゃあいいんだろう?”みたいな、清々しいスタート地点という感じで。コロナなんてないほうがいいわけだから、立ちたくないスタート地点ではあるけど、わりと清々しく“ここからやってやろう!”みたいな気持ちにもなったし。あと、自分はどんだけライヴが好きなのかを改めて知りましたね。“俺は放っておいても歌を作るな”とか“ライヴしたがるな”って浮き彫りになった期間でもあるんで、“好きなことを目いっぱいやり続けるだけだ”“ここからまた積み上げていけばいい”というような心境でもありますね。
その心持ちで秋からのツアーに突入するということですね。
はい。で、僕から言わせれば日程はスカスカなんで、この間を埋めちゃっていいと思うし。どこかでできるものならば配信をやってもいいかなと。
えーっと…日程を見てますけど、決してスカスカではないですよ。むしろ、詰まってますけど(苦笑)。
9月7日の大阪から9月12日の新潟までの間とか狙い目だと思ってるんですよね。僕からすれば、大阪と新潟は近所ですからね(笑)。
取材:帆苅智之
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アルバム『STILL GOING ON』2021年8月25日発売
SPEEDSTAR RECORDS
- 【初回限定盤】(CD+ブックレット)
- VIZL-1935
- ¥4.620(税込)
- 【スペシャルパッケージ】(初回限定盤+オリジナルグッズセット)
- ¥9.900(税込)
- ※オリジナルグッズは「Tシャツ+リストバンド+タオル」、ビクターオンラインストア(VOS)のみ販売
- 【通常盤】(CD)
- VICL-65553
- ¥3.300(税込)
- 【生産限定盤】(LP)
- VIJL-60246
- ¥4.620(税込)
『全国弾き語りツアー “STILL GOING ON”』
9/06(月) 東京・東京キネマ倶楽部
9/07(火) 大阪・BIG CAT
9/12(日) 新潟・NIIGATA LOTS
9/14(火) 宮城・Rensa
9/30(木) 北海道・PENNY LANE24
10/08(金) 広島・広島クラブクアトロ
10/09(土) 高知・高知キャラバンサライ
10/11(月) 福岡・DRUM LOGOS
10/12(火) 愛知・名古屋ボトムライン
10/24(日) 大阪・Zepp Namba
10/29(金) 東京・Zepp DiverCity
タケハラピストル:1976年、千葉県生まれ。99年、野狐禅(やこぜん)を結成し音楽活動を本格化。際立った音楽性が高く評価されて03年にメジャーデビューするが09年4月に解散し、ひとりきりでの表現活動を開始。14年10月にビクター/スピードスターレコーズよりアルバム『BEST BOUT』を発表し、17年の大晦日には『NHK紅白歌合戦』に初出場を果たすと、18年12月22日に日本武道館での単独公演を成功させる。また、音楽活動に加え、役者としても活動の幅を広げ、16年秋に公開された西川美和監督の最新作『永い言い訳』での好演が評価されてキネマ旬報 助演男優賞、日本アカデミー賞 優秀助演男優賞を受賞した。竹原ピストル オフィシャルHP
「よー、そこの若いの」MV
「きーぷ、うぉーきんぐ!!」MV
(「BLUE/ブルー」Ver.)
「今宵もかろうじて歌い切る」MV