英国の名作文学がダンスに~ファビュ
ラ・コレクティブ『HUMAN.』世界初演
は魂を揺さぶるトリプル・ビル

2021年8月28日(土)~29日(日)新国立劇場小劇場にて、英国・ロンドンを拠点に国際的に活動するプロダクションカンパニー、ファビュラ・コレクティブ(Fabula Collective)が企画する日英コラボレーション『HUMAN.』が世界初演を迎える。
ファビュラ・コレクティブは2019年、英国で舞台美術・衣裳を手がけるデザイナーとして実績多数の塚本行子(クリエイティブ・ディレクター)を中心に設立された。多分野の新進気鋭、トップクラスのアーティストと共に、質の高いライブ&デジタル作品をイギリス国内外に発信する。2019年5月には、東京・セルリアンタワー能楽堂にてダンス公演『Elevation-昇華-』を一夜限りで上演し、英国発の意欲的なパフォーマンスとして鮮烈な印象をもたらした。
このたび満を持して開催される『HUMAN.』では、ウィリアム・シェイクスピア、ルイス・キャロルオスカー・ワイルドという英国の文学を代表する作家たちの名作からインスピレーションを得たダンスに挑戦。「狂気」をテーマにした新作トリプル・ビルを披露する。
『HUMAN.』フライヤー表面
シェイクスピアの「マクベス」に想を得た『レディマクベス』(初演)を振付するのはクリストファー・マーニー。空前の大ヒット作『白鳥の湖』を始めとするマシュー・ボーン作品で知られるスターが新作を振付する(出演はなし)。そして、狂気のダークサイドに堕ちていくマクベス夫人を踊るのは英国の実力派カンパニー、バレエブラック(Ballet Black)で活躍するチラ・ロビンソン。マクベス夫人の内なる真実をどのように浮き彫りにするのか興味が尽きない。
『レディマクベス』 (c)Amber Hunt
キャロルの「不思議の国のアリス」を下敷きにした『Everything Would Be Nonsense』は、英国ロイヤル・バレエ団の常任振付家ウェイン・マクレガーの舞踊団を経て活躍する異才トラヴィス・クローセン=ナイトの振付作品。マッド・ハッターのお茶会を舞台に、「意味の混乱」と「秩序の崩壊」を探る。なお本作では出演者を公募し、冨岡カイ、加藤美羽、土田貴好、岩瀬斗羽という日本人の俊英4名を抜擢。英日を繋ぐ協同制作としても意義深く注目される。
『Everything Would Be Nonsense』 (c)Akihito Abe
最後を飾るのがワイルドの小説「ドリアン・グレイの肖像」に基づく『ドリアン・グレイ』(初演)。絶世の美青年の内面を描く原作を、振付のジェームズ・ペットと作家でドラマトゥルクのベン・ルイスが、新たに読み解く。ペットはバレエ界のレジェンドである名花アレッサンドラ・フェリとの共演経験もある鬼才だ。出演はペットとトラヴィス・クローセン=ナイトで、マクレガーのカンパニーでの同僚時代からコラボレーションを続ける2人ならではの濃密な世界が生まれそうだ。音楽をペットの弟ショーン・ペットが手がける。
『ドリアン・グレイ』 (c)Alex Kingston
日本においてシェイクスピア、キャロル、ワイルドの文学は親しまれている。また英国ロイヤル・バレエ団の演劇的バレエも人気が高い。だが、イギリスの現代のパフォーミングアート、ことにダンスが紹介される機会は非常に限られるので貴重だ。日英交流年「UK in JAPAN」、Japan-UK Season of Culture 日本文化季間認定事業として意義ある公演になるに違いない。
ジェームズ・ペット コメント
「なぜ人間は他者が苦しんでいるのをみると快感を覚えるのだろうか」
私のバージョンのドリアン・グレイには、『美しさ』『中毒』『堕落』『混沌』『愛』などの多くのテーマが入っています。
この今までに見た事のない男性デュエットでは、私は作品の振付とドリアンを演じると言うことを同時に行っている為、見た目だけでなくドリアンを深く体現していると感じています。そして観客の皆様がこの作品を完成させる為のパズルの最後のピースです。
皆様と共に作品を完結させる事を楽しみにしています。
塚本行子 コメント
アーティスト、ジェームズ・ペットは身体能力の秀でた才能だけでなく、人間離れした『完璧』に限りなく近い様々な要素を持ち合わせている貴重な存在だと思います。ダンストリプル・ビルのフィナーレに彼の作品ドリアン・グレイを持って来た理由は壮絶なパフォーマンスをお客様にお届けするであろう事が想像出来ると同時に、それ故に観た後の普段とは違う拍手をしていいかを戸惑う様なペットの献身的な完成度は最後にふさわしいと思ったからです。
ダンストリプル・ビル『HUMAN.』、少しでも多くの方の心に響く3作品になっていることを願っております。ご来場お待ち申し上げております。

文=高橋森彦

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