8/18生配信! のんが変顔し、虹郎が
屁をする『愛が世界を救います(ただ
し屁が出ます)』レポート

宮藤官九郎が作・演出を手掛ける大パルコ人(4)マジロックオペラ『愛が世界を救います(ただし屁が出ます)』が2021年8月9日(月)に東京・PARCO劇場にて開幕し、現在上演されている。
本作は、大人計画とパルコが共同プロデュースする、宮藤官九郎作・演出のオリジナルロックオペラシリーズ「大パルコ人」最新作。2009年のメカロックオペラ『R2C2~サイボーグなのでバンド辞めます!~』、2013年のバカロックオペラバカ『高校中パニック!小激突!!』、2016年のステキロックオペラ『サンバイザー兄弟』に続いての第4弾となり、音楽は前作に続き「怒髪天」の上原子友康が担当する。
撮影:宮川舞子
出演するのは、NHK朝ドラ『あまちゃん』(‘13年)以来の宮藤とのタッグとなるのん、初参加の村上虹郎、荒川良々、伊勢志摩、YOUNG DAIS、そして藤井隆、さらに“大パルコ人”シリーズのお馴染みメンバーである三宅弘城、少路勇介、よーかいくん、宮藤官九郎という濃厚な面々。
8月18日(水)18時の「Streaming+」生配信に先駆け、観劇レポートをお届けする。
※以下、ネタバレがございます。ご注意ください。

劇場に入り、座席に到着すると置いてあったのは、懐かしのあれ。タイトルともピッタリの、楽しみが増すアイテムだ。これはあるシーンで活躍する。
撮影:宮川舞子
いよいよ開演すると始まったのは、2044年の皆川S太郎のYouTube配信(映像)。皆川S太郎とは「大パルコ人」第一弾『R2C2』から毎回登場するキャラクターだが、今回初めて観る方にも問題なく楽しめる内容となっている。映像は途中、思わぬ太郎も参加してふたりで弾き語りを披露するなどいつまでも観ていたい面白さが続くが、舞台は生の芝居へ。そこには、2044年の『R2C2』の戦争で一度崩壊した渋谷の11年後、2055年の廃墟と化したミヤシタパークが広がっていた。奥にはタワレコそしてパルコという渋谷らしい光景が広がる。そこに住んでいるのはにじろー(村上)。にじろーには屁を出すと少しだけ先の未来が見えるという超能力があり、11年前の戦争を予言し『超能力少年ニジロー』というタイトルでドラマ化までされた人物だが、今は浮浪児として公園で暮らしている。そこにふらりとやって来た、同じく浮浪児のNON(のん)。NONにもテレパシーという超能力があるが、そのせいで婚約破棄された過去を持つ。テレパシーを使う時には寄り目&しゃくれになってしまうのんと、話の中でプウプウ屁をする村上……これは宮藤の舞台でないと見られないであろう斬新な光景だ。そしてそんなふたりを結び付けたのが「人と違うって不安になる」という共感であることも宮藤ならでは。
撮影:宮川舞子
意気投合したふたりに声を掛けたのは、カリスマ・育メン・ポップシンガー大江三千里(藤井)。ちなみに大江はヒット曲をいくつも持っており、どんどん歌ってくれる。にじろーやNONのようなマイノリティが参加する「LGBTQEYC5H 音楽祭」を企画していると話し、にじろーの能力に目をつけ音楽ユニットに誘う。そこから物語は転がり始め、やがて「世界を救う」という壮大なテーマに繋がっていく――。
撮影:宮川舞子
上演時間は約2時間45分(うち20分休憩)。その間ひたすら全く展開が予測できない。しかも村上以外の全キャストが2~6役演じるし、その中でも荒川や伊勢のキャラクターは感動的に強烈だし、三宅のアクロバットも飛び出すし、時にはとんでもない面白映像が挟み込まれるし、藤井の巧みさに翻弄されるし、懐かしのあれも活躍するし……。笑ったり驚いたりしっぱなしだが、時々ピリッと引っかかるエピソードや台詞にぶつかる。開幕に際し宮藤が「これ、本当に未来の話か? ってくらい時事ネタ多めです」とコメント(一部抜粋)を寄せていたが、そのまま描かれていなくても、思わず最近のニュースを連想することは多かった。ただそれはもちろんシリアスに描かれているのではない。だからこそ響くものが大きい舞台だと感じた。
音楽は、ハードコア、シティポップ、ボカロ系、K-POP風まであり、「怒髪天」上原子の超能力並みの才能を堪能できる。のんのギターボーカルや村上の歌は瑞々しいエネルギーに溢れ、藤井や伊勢の歌はとんでもなく魅力的! YOUNG DAISの本職でもあるラップには胸を掴まれた。三宅、少路、よーかいくん、宮藤の楽器演奏は本作がマジロックオペラたる所以だ。
撮影:宮川舞子
のんが開幕に向け寄せたコメント(一部抜粋)に「困難な状況下だからこそ、楽しむ事が生き抜く術なんだと思っています」とあったが、登場人物たちの置かれた状況、それを生き抜こうとする様には、楽しさもやさしさも切なさも悲しさも含まれていて心動かされる。好きな場所でじっくり観て好きなだけ笑える配信で、存分に楽しめるタイプの公演だと思う。気になった方、おかわりしたい方、予習したい方もぜひ、8月18日(水)の配信で楽しんで!
取材・文=中川實穗

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