日本で最も“タフ”な音楽フェス『フ
ジロック』ならではのオフィシャル・
グッズ開発者インタビュー

コロナ禍において、音楽文化を支える手段として注目されたもの。それは“グッズ”だ。

音楽業界ではCDなどの形ある音源パッケージのほかに、ツアーやライブ、イベント毎に製作されるTシャツやタオルなどを総称して“物販”と呼ぶが、一般的に“グッズ”と呼ばれるのは音楽パッケージ以外を指すことが多い。
音楽活動における主要売上がグッズ販売であるケースが多いことは今も昔も変わらないが、ことコロナ禍では、購入者側の心持ちが「欲しいから買う」だけではなく、アーティストを筆頭に、音楽フェスやライブハウスなどを支援する目的でのグッズ購入が広く浸透している。
そこで今回は、8月に2年振りの開催を目指す『FUJI ROCK FESTIVAL’ 21』のグッズ開発を担当されている、SMASHの石黒 陽子さんと高﨑 亮さん、GAN-BANの四方 亜矢さんに、グッズの開発から販売に至るまでの製作裏話や、過去最高に売り上げたグッズ、コロナ禍での製作にかける思いなどについて話を訊いた。
■ 機能美とバラエティに富む、多彩な“フジロック・グッズ”の特色
――フジロックのオフィシャル・グッズは多岐にわたりますね。
SMASH・石黒:大きく分けますと、SMASHが作るオフィシャル・グッズ、GAN-BANとのコラボ、協賛いただいているBEMASやコロンビアなどの企業とのコラボ、そして、デザイナーを立ててクリエイトしていくFUJI ROCK COLLECTIONがあります。これら4つを総称したものが、フジロックのオフィシャル・グッズです。
――それらを3人で開発されている。
SMASH・高﨑:SMASHでは石黒がメインに立ち、私は“私が作りたいもの”を作るといった、ちょっとしたおまけです。
GAN-BAN・四方:私はグッズ担当になって2年目で、GAN-BANはオフィシャルショップとしてフジロックと一緒にコラボグッズを作って販売しています。
――グッズ企画開発はどのように進められているんでしょうか。
SMASH・石黒:GAN-BANさんとは毎月ミーティングをして情報交換をして進めています。
SMASH・高﨑:エクセル表で月毎に「3月にはこんなアイテムを、4月には…」というのを共有して、「これは被っちゃうから時期をずらそう」とかを話し合ってアイテム分けをしているんですけど…外から見れば「一緒じゃん」と思われているのかもしれません(笑)。
――2社製品の見分け方はあるのでしょうか。
GAN-BAN・四方:商品名に“フジロック✕GAN-BAN”とあるものがGAN-BANが製作したものになります。
――ミーティングで揉めたりはしない?
SMASH・高﨑:たまに。グッズが似通っちゃったりした時にですが、そこは大人の話し合いで(笑)。
――なるほど。フジロックのオフィシャル・グッズは種類も豊富で、アイテム数が非常に多いことも特徴的ですが、例年の販売総数はどれくらいでしょうか。
SMASH・石黒:2019年の場合は色違いを含まず、82種類を販売したのですが、以前はこの数がベースとなっていました。フジロックにはいろんなステージがありますので、ステージ毎のオフィシャル商品もあれば、アーティストや企業とのコラボ商品も多くあります。また、お客様に手に取ってもらえるような値段設定のグッズから定番商品までを考えて商品数が多くなったこともありました。
――さらに高﨑さんの作りたいものが加わる。
SMASH・高﨑:それもありますね(笑)。物販担当になって5年目ですが、今年はどこまで商品が売れるか見えない部分があったので、種類を増やさずに確実に売れる物を作っていこうということで、例年の数の半分以下に減らしています。作りたいのは山々なんですが。
――歴代様々なグッズを販売されてきましたが、過去最高に売れたグッズは何ですか。
SMASH・石黒:フジロックのロゴ、開催日、出演ステージ、そしてアーティスト名をプリントしたTシャツです。当日現地でしか販売しないものでしたが、2005年、2006年、2010年、それぞれ3000枚ほど売れました。

■ キングオブフジロック・忌野清志郎と日本アニメの傑作・鉄腕アトムのコラボは、こうして生まれた!
ヒトハタウサギ×鉄腕アトム×フジロック'21×GAN-BAN Tシャツ  4,400 円(税込)
――フジロックのグッズ開発におけるこだわりをお聞かせください。
SMASH・石黒:すべてのオフィシャル商品はメッセージ性のあるこだわりグッズになっています。私自身が手がけるデザインもありますが、それぞれのデザイナーさんが数ヶ月に渡ってその年に関係するメッセージ性も込めてデザインを考えてくれています。
――GAN-BANは他のフェスともコラボ・グッズを出されていますが、他のフェスとフジロックとで違いはありますか。
GAN-BAN・四方:フジロックは他のフェスよりも厳しい環境でタフなので、晴れでも、雨でも、風でもですけど(笑)、いろんな環境にフィットするように、そしてお客さんの荷物も極力減らせるように、2wayで使えるような便利なものを作るように心がけています。
SMASH・高﨑:やっぱりフジロックは雨がすごいんで。それにキャンプの場合は山の斜面にテントを立てたりもするので、アウトドアでも使い勝手のいいものを意識していますね。あとは、僕自身、シンプルな服が好きなので、ロゴだけが入った服や、日常使いができるようなものを作りたいなと思って物販に参加しています。
――アーティストとのコラボ製品はどんな過程を経て製作されるのでしょうか。
SMASH・石黒:出演が決まったアーティストに物販申請書を送る際、提案をしています。ロゴ使用料などのロイヤリティは発生しますが、フジロックに出演した記念になるということで製作するアーティストは多いです。
――では、今年のアイテムの「ヒトハタウサギ✕鉄腕アトム✕フジロック’ 21✕GAN-BAN Tシャツ」の場合、アーティストが生んだキャラクター、アニメ、そしてフジロック、GAN-BANの名が連なっていますが、どのように進行されたのでしょう?
GAN-BAN・四方:これまでもGAN-BANは手塚プロダクションさんとはアトムTシャツや火の鳥TシャツなどのコラボTシャツを作っていますが、元は前任者がアニメ好きで、その熱意が伝わって作れることになったんです。昨年、忌野清志郎 Rock’ n’ Roll FOREVERが決まった時、清志郎さんが描いたヒトハタウサギとアトムが一緒になったTシャツがあったらいいなあと思い、手塚プロダクションさんと清志郎さんの事務所へそれぞれご相談したら「ぜひ」と言っていただき、この開発チームにもOKをもらって実現しました。
――商品名が長いのはそういうことでしたか。
GAN-BAN・四方:名前が思い浮かばなくて全部入れちゃったんですよ(笑)。ただ、あまりにも両方のキャラクターが強すぎてデザインがなかなか決まらず、1年かけて3社で考えました。最後に残った3つのデザインはどれも良かったんですが、今回は元気が出るようなこのデザインに決めました。すごく時間をかけたので、愛されるTシャツになってほしいという気持ちが強いです。
――2005年から立ち上げた『フジロック・コレクション 』も強いこだわりが詰まっていそうですね。
SMASH・高﨑:現在は私が担当していますが、通常単価が一万円超えのデザイナーさんの服をそのまま持ってきても売れないので、ちょっと高いけど手に届きそうな5~6千円という値段設定で作れないかと毎年デザイナーさんに提案するんです。デザイナーさんにも「もうちょっと柔らかめなものを」や「もうちょっとテカリが…」などのこだわりがあるので、そこを詰めていくのに非常に時間がかかります。
――コンセプトは音楽とファッションのクロスオーバー。
SMASH・高﨑:デザイナーコミュニティの中の、フジロックのことを考えてくださるデザイナーさんといい流れで出会えています。それから、ジョーストラマー・ファウンデーションに寄付をするというコンセプトでフジコレが進んだ背景もあるので音楽は外せません。

■ コロナ禍でのグッズ製作における変化
救急セット 1,800円(税込)
――コロナ以前と比べて、企画製作や販売する上で変化したことや難しかったことはありますか。
SMASH・高﨑:除菌スプレー、マスクなどのコロナに関するアイテムを意識して作っています。世の中でフェスが中止になっていたりもしますし、例年の感じで作ってしまうと「作りすぎちゃった」となる可能性もあるので数の作り方が難しかったというのがありますね。
GAN-BAN・四方:GAN-BANは第一弾、第二弾グッズを早割に合わせて出していますが、今年はいつもより2ヶ月ほどスタートが遅れているんです。そのため全スケジュールが変わるのがすごく難しいですね。
SMASH・高﨑:それから現在、物販の課題として話しているのに大勢の人たちがブワーっと列をなすのをどう密にならないようするかというのがあります。
――そこはお客さんにも協力してもらう必要がありそうですが、近年進んだフジロック場内のキャッシュレス化も感染症対策には有効でしょうね。
SMASH・高﨑:そうですね。いろいろ対策を検討していきます。

■ 自然との共生を謳うフジロック。音楽フェスもSDGsの時代へ
――フェスエコ、フジロックの森プロジェクトなど、これまでも環境対策や自然保護に積極的に取り組まれてきているフジロックですが、先日、BEAMSと取り組むサステナブルシフトチャレンジが発表されました。
SMASH・石黒:開催していれば昨年からの話ではあったのですが、まず、これまでグッズを買われたお客様にお渡ししていたショッピングバッグについて今後どうしようかという重要な話になりました。その袋は何にでも使えたりしていたので、「困ったぞ」と。
――確かにあのオレンジバッグはすごく便利でしたが、この取り組みと同時に似たような形の「FRF21ナップザック(Kiu製)」を新たに販売されると知って「これを買えばいいんだ」と思いました。
SMASH・石黒:お客様に案内して安心してもらえたらと思って、同じタイミングで発表しました。現地限定で販売します。
――以前からリストバンドをリサイクルしてグッズ化されたりもしていますよね。
SMASH・石黒:リストバンドを捨ててしまうのはもったいないから何かできないかということで前任者が思いついたものです。そのキーホルダーを集めたり、リュックに飾ったりして「フジロックにこれだけ行ったんだ」という記念にもなるとのことで人気の商品です。
――そういえば、レッドマーキーのテントを再利用して作ったバッグは衝撃的でしたが、逆に経費がかかって大変だったそうですね。
GAN-BAN・四方:あれも「もったいないから」という経緯で前任者が作ったものですが、“作ったことに意味がある”みたいな商品でしたね(笑)。

<FUJI ROCK FESTIVAL'21 ✕ BEAMS​ サステナブルシフトチャレンジについて>
規模、出演者、ラインアップの全てにおいて日本の野外フェスを代表すると言える「FUJI ROCK FESTIVAL」は、環境にも配慮しており、海外からも“世界一クリーンなフェス”と賞賛されています。
BEAMSは“自然と音楽の共生”をスローガンに掲げる本フェスティバルに共感し、応援を続けてまいりました。
環境問題が取りざたされる中、BEAMSとしても何かできることはないか、日々模索しております。
“世界一クリーンなフェス”の取り組みに敬意を払い、本フェスの参加におけるサステナブルシフトに挑戦しました。
いずれ廃棄される在庫やプラスチック資材の量を減らすため、Tシャツをアップサイクルしたり、ビニール製のショッピングバッグを廃止したり、オフィシャルTシャツの主な販売を受注生産方式に切り替えています。
BEAMS CREATIVE INC.
ブランドマーケティング本部 宣伝販促部 宣伝課
桑原 優季さん

■ 3人のグッズ開発者による“フジロック’ 21の推しアイテム”をピックアップ!
――最後に皆さんの今年のフジロック・グッズの推しの3アイテムをご紹介ください。
SMASH・石黒:1つめは「FRF オリジナル GUMSA FLAG」です。コロナの影響で昨年からキャンプに行かれる方が多いので、例年出しているガムサの生地でフラッグを作りました。
FRF オリジナル GUMSA FLAG 2,000円(税込)
2つめは、これひとつ持っていれば最低限大丈夫というものを集めた「救急セット」です。ご自身に必要なものを入れたり、なくなったら追加していただければと。
3つめが「タイダイTシャツ」。一昨年くらいから企画していたのですが染めが難しく、思うような色がなかなか出なかったのが今年はできたのでこれから販売します。
FRF2021 タイダイTシャツ  4,800 円(税込)
SMASH・高﨑:まずは「FRF'21 ロゴフェイスタオル」。フジロックフェスティバルという文字入りのフェイスタオルは2017年に一回作ったきりでしたが、それがステージ前の柵に垂れた写真を見てすごくいいなと思ったのとTBSドラマ『俺の家の話』で使われていたこともあって。僕はごはんを食べながら見てたんですけど、これはもう作れってことだなと。
FRF'21 ロゴフェイスタオル  2,750 円(税込)
2つめが定番になりつつある「温泉タオル」。よく新聞とったらくれるみたいな安っぽい、ペラッペラのですが、実はあれ、生地が良すぎてもお風呂で絞りにくいのでちょうどいい生地を選んでたりして結構こだわって作っているんですよ。わざわざそれっぽくするために湯沢市とか住所とかも入れたりして。
フジロック’21 温泉タオル 550円(税込)
あとは、今年はいつもよりも開催が一ヶ月遅いのと、現地の話では例年よりも寒いというので現地での販売限定でトレーナーを作ろうとしてます。サイズも今どきな感じでちょっと大きめなものを。こちらは開催直前の発表になる予定です。
GAN-BAN・四方:うちのお薦めは定番の「フジロック'21✕GAN-BAN サッカーTシャツ」です。素材が快適で、青、白、黒、キッズサイズもあります。今年はオリンピックもありますし、親子で着てもらえたらなと。
フジロック’21 × GAN-BAN サッカーTシャツ  3,850 円(税込)
2つめがCHUMSさんと作っている「フジロック’ 21 ✕ GAN-BAN マルチパスケース PLUS(CHUMS製)」。毎年黒とその年のCHUMSさんお薦めのカラーの2種類を作っていて、今年の色はオリーブで中はオレンジ。カラーリングも可愛いのと中にマスクを収納できるので食事中に使えたり、携帯電話も入る便利グッズです。
フジロック’21 × GAN-BAN マルチパスケース PLUS(CHUMS製)  3,300 円(税込)
3つめは、7つポケットがついている「フジロック ✕ GAN-BAN フェスショーツ( go slow caravan 製)」で、毎年フジロックに参加しているデザイナーさんの“手ぶらで快適にフェスを楽しみたい”を追求したこだわりが詰まっています。どの商品にも言えることですが、フジロックがどういうものかを分かった上で、なるべく荷物も少なく快適に遊んでいただけるようにとカスタマイズして作っているのでお薦めです。
フジロック×GAN-BANフェスショーツ(go slow caravan製)  7,590 円(税込)

まとめ
8月20日から始まる、“特別なフジロック”。参加する人も参加できない人も、グッズを通してフジロックを楽しんでいただきたいという願いを込めてお届けしました。オフィシャル・グッズの中には会場限定で販売される商品もありますが、オフィシャルグッズサイトGREENonREDでの通信販売や渋谷PARCO内にあるオフィシャルショップGAN-BAN店頭にて、できるだけ事前に購入していただき、現地での密を避けるための御協力をお願いします。
取材・文=早乙女‘dorami’ ゆうこ

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