河口湖から13年間の感謝を込めて 茅
原実里 SUMMER CHAMPION 2021~Mino
ri Chihara Final Summer Live~<D
ay2>ライブレポート

2021.8.8 SUMMER CHAMPION 2021~Minori Chihara 13th Summer Live~ @河口湖ステラシアター
2004年に歌手活動をスタートし、アニメソングを中心に数多くの名曲を生み出し続けてきた声優でありアーティスト、茅原実里。2021年4月には同年12月31日で歌手活動の休止を発表した彼女。2009年から毎年、河口湖ステラシアターで開催してきたライブもこの『SUMMER CHAMPION 2021~Minori Chihara 13th Summer Live~』をもって締め括りとなることとなった。二日間開催された当ライブの二日目、彼女は何を見せてくれるのか。多くのファンが万感の思いを胸にこのライブを見守った。
開演と同時に舞台上に姿を現したのは『SUMMER CHAMPION 』の前身である『SUMMER DREAM』にて生まれたマスコットキャラクター、サマ鳥。彼が前説を行うと同時に、共にマスコットキャラクターを務めたドリ子との結婚を発表した。そして前説の締めくくりにはサマ鳥による可愛らしいラップも披露され前説は締め括られる。
そしてサマ鳥とバトンタッチするようにライブのバンドを務めるCMBの面々が登場。そして最後に主役である茅原実里が夏らしい水色の衣装に身を包んでステージ上に現れる。そして彼女の「『SUMMER CHAMPION 2021』いくよ!」との掛け声とともに一曲目がスタート。一曲目に披露したのは「Tomorrow’ s chance」だ。会場でライブを心待ちにしていたファン達も旗を振ってこのライブのスタートを大いに歓迎する。そして曲の終わりには会場中が「Wow wow chance」とレスポンスを返す。開始早々会場とステージの一体感は完成されていたのだ。
一曲目を終え「みんな会いたかったよー!」と茅原が会場中に呼びかけると休むことなく二曲目がスタートする。二曲目に披露したのは自身のサマーチューン「夏を忘れたら」だ。今年が最後のサマーライブであり、この未曾有の事態の中で歌を届けようとする彼女の「夏はまた来るけどおんなじ夏じゃない」というメッセージは聞く全ての人の心に深く刻み込まれただろう。
そこから畳み掛けるように、自身のファーストシングル「純白サンクチュアリィ」が続き会場は開始早々にもかかわらず高い高揚感に包まれる。そしてその高揚感に応えるかのようにステージ後方の扉が開き、そこには雄大な自然が現れる。
そして雄大な自然をバックに続いて彼女は「詩人の旅」を披露する。デビュー当時の楽曲を立て続けに披露した彼女、そこにはデビューした頃の力強さを持ち続けながらそこから更に成長した彼女の姿が確かにあったのであった。
「詩人の旅」の演奏が終わっても会場から音が途切れることはなかった。ドラムが鳴り響き続け次の曲に移行する。「フラッグを用意!」との掛け声とともに始まったの楽曲は「Lush march!!」だ。茅原の旗振りに合わせて会場中の人々が旗を用意し、彼女に合わせて旗を振る。茅原と、彼女とともにステージに上がるCMBと、会場にいる観客とスタッフ、全ての人の心が一つに重なって初めて生み出される圧巻の光景であった。
ここで一度茅原からの挨拶とCMBのメンバー紹介がなされる。台風の直撃が心配されていた本ライブ、バンドメンバー各々がこの日を快晴で迎えられたことを心から喜んだ。ライブの際に接近していた3つの台風に対して茅原は「三つともふっ飛ばしてやったんだけどね!」と語り会場の笑いを誘った。しかしながら当日の快晴は本当に茅原が台風をぶっ飛ばしたんじゃないかと思わせるほどであった。
そこから茅原が椅子に腰掛けてのアコースティックコーナーに突入する。雄大な自然をバックにしたアコースティック演奏が会場中を優しく包み込む。そんな中で茅原が一曲目に披露したのは「Love Blossom」だ。彼女の伸びやかな歌声が珠玉のラブソングを紡ぎ出す。そして彼女から「私のライブで出会ってお付き合いしている人はいますか」と問いかけが入る。そして会場に来ている恋人達を改めて祝福したのであった。
そこから次の曲に向けて優しい鈴の根が鳴り響く。アコースティックコーナーの二曲目を飾ったのは「Joyful Flower」。その多幸感溢れるサウンドに彼女の歌声が乗り、さらなるハッピーな空気が会場中を駆け巡る。そして曲に合わせて彼女が旗を振ると観客もそれに合わせて旗を振る、会場中が彼女の指揮する楽団のような一体感を帯びたのであった。
アコースティックコーナーを終えてバンドメンバーが元の位置に戻り、アコースティックコーナーを引き継ぐかのように爽やかなサウンドを奏で始める。続いて披露した楽曲は「凛の花」だ。大自然の中で爽やかな風が吹き抜けるような楽曲、聴く人全ての耳を喜ばせた。
ここで一度茅原は裏手に移動、今回のライブで演奏を担当するCMBによる楽曲「Theme of CMB」がスタート。メンバーが自己紹介をしつつソロ演奏を魅せる。確固たる技術に加えて彼等のお茶目な人柄も見え隠れする非常に楽しい時間が見る者の心を掴む。
そして「Theme of CMB」を終えると神秘的なサウンドが会場を包み込む。ステージに舞い戻る茅原、青の衣装に身を包んだ彼女がステージ戻って最初に披露したのは「NEO FANTASIA」だった。ここまでのライブとはまた違った魅力、そのミステリアスな空気を纏って後半戦はスタートしたのであった。
後半戦一曲目を高らかに歌い上げると彼女は次の曲を紹介する。「自分自身のテーマソングと言っても過言ではない」「この曲でみんなの背中を押してあげられたらいいなと思って」と語ってスタートしたのは「Hopeful “SOUL”」だ。彼女が魂を吐き出すかのように聴くもの全てに言葉をぶつけていく。「何度倒れても夢は消ない」彼女の力強い歌声に乗って放たれたこのメッセージはコロナ渦を生きる全ての人の胸に確かに突き刺さっただろう。そしてこれに続く「TERMINATED」で客席のテンションは更に上がっていく。全ての人が腕を振り上げて、全身で音楽を、この場の空気を楽しんだ。
ここでライブの盛り上がりはさらなる加速度を見せる。舞台上最前列からは火が上がり、その灼熱の中茅原の衣装はロングスカートからミニスカートへと変わる。そこで披露したのが燃えるような情熱溢れるナンバー「赤い棘のギルティ」。会場中のサイリウムが赤く染まり会場中を燃えるような熱気が包み込む。
その熱気をさらなるものにするように茅原が「もっともっと一緒に熱くなろうぜ!」と叫ぶと続いてのナンバーは「夢幻SPIRAL」。おさまることのない熱気の中で観客は歌詞に合わせてサイリウムを全力で回転させる。
そして会場中の熱気が最高潮に上がったこのタイミングで茅原は自身の代表曲の一つ「Paradise Lost」を投下して開場中を熱狂の渦に引き摺り込んだのであった。圧巻の光景である。
この熱狂から一度会場は暗転する。そして再び光が灯った会場に現れたのは真っ赤な法被を羽織り手に扇子を持った茅原の姿だ。高いテンションの中にある会場で彼女が披露したのは「美歌爛漫ノ宴ニテ」だった。上がりきったテンションを日本伝統の祭りというスタイルに転嫁して会場をこれまでと一風変わった形の興奮の坩堝に落とし込む。
そしてここでラストナンバー。彼女が披露したのは「We are stars!」だ。目まぐるしく詰められた言葉数に心が躍ると同時に、これだけの長時間のライブを終えた後でもこれだけの言葉を繰り出し続けられる彼女の姿に圧倒される。そしてこの曲の締めくくりの一言はこうだ。「ということで続きはこの先で・・・またね。」。この言葉を信じて会場中がステージに熱い視線とアンコールを注ぎ込む。
アンコールの声に応えて茅原が戻ってくる。ライブTシャツに水玉柄のスカートという爽やかな装いで。そしてステージ上を駆け回り開場中の全ての人に全身全霊で感謝を伝える。アンコールとして夏らしいさ溢れる一曲「Sunshine flower」を披露すると会場中がひまわりの花を掲げそれに応える。そして茅原本人もひまわりを手にステージ上を駆け巡り、CMBの面々一人一人の元へ駆け寄る。このライブが終盤に差し掛かっていることへの名残惜しさを噛み締めるかのように一人ずつと共にパフォーマンスをみせていくのであった。
アンコール一曲目を歌いきると改めて茅原の口から、改めて年内で音楽活動を休止することが語られる。そしてここからの年内の活動について、最後のミニアルバム『Re:Contact』がリリースされること、11月26日に神奈川県民ホールにて『MinoriChihara the Last Live 2021 〜Re:Contact〜』を行うことを発表すると当ライブも締めくくりへと駒を進めていく。
「みんな本当に楽しかったたくさんの日々に感謝をしながらこの曲を歌いたいと思います」との言葉を込めて彼女が披露したのが「Contact 13th」だ。その伸びやかな歌声に聴くもの全てが引き込まれ、酔いしれた。そしてそこからアンコール最後の曲である「Freedom Dreamer」へ。彼女の最後まで楽しんで歌を届ける姿は、最後の瞬間まで音楽を楽しむものとして提供したいというメッセージが溢れていたのかもしれない。茅原は、潤んだ目ではありながら、満遍の笑みでアンコールを終えたのだ。
あまりに感動的なライブを見た観客たち。アンコールが終わっても手拍子は鳴り止むことがない。そして、茅原はもう一度戻ってくる。浴衣に身を包んだ彼女、ステージ上に戻ってきた瞬間に「やっぱりライブは楽しいね」とこぼしたのだった。
そして、改めてここまで一緒にライブを楽しんでくれた方々、ライブを支えてくれたスタッフ、そして近隣の店舗の方、ライブに関わってくれた全ての方に感謝を伝えると「この場所でみんなと一緒に大切に育ててきた曲です。一緒に歌いましょう。」と語り本当のラストナンバーが始まる。ラストナンバーは「purest note~あたたかい音~」。3年前に開催された『SUMMER CHAMPION 2018』においてはファン参加型の新録PVが制作された、当ライブとは縁の深い楽曲だ。最後の一曲を高らかに歌い上げる茅原。客席に手をふりながら歌う彼女の姿は聴くものの目頭をあつくさせずにはいない。
曲の終わりには「終わっちゃった」と名残惜しそうに言葉を漏らした茅原。CMBメンバーと、客席に集まった全ての人と記念撮影をし、CMBメンバーから最後に一人ずつの挨拶。開催したライブの盛大さにまだ終わったことにいまいち実感がわかないCMBのメンバーたち。それだけの熱気溢れるライブだったのだ。見るもの全ても同じ感覚の中にいただろう。そして茅原から「花火の準備ができたって」「カウントダウンしましょう」との提案に会場中が花火へのカウントダウンを行う。そして盛大な打ち上げ花火、そして夜空に向けて「13年間ありがとうございました!」と茅原からの一言。
そして河口湖ステラシアターでの最後の挨拶。「ライブの楽しさを教えてくれたのはこの河口湖ステラシアターでした」と語った彼女。最後には会場の音を止め、マイクを通さず「みんな、今年の夏も本当にありがとうございました!みんな大好き!!」と叫ぶと切なさと笑顔が入り混じった表情を浮かべ、会場中に手を振りながらステージを後にした。こうして『SUMMER CHAMPION 2021 ~Minori Chihara 13th Summer Live~』は締めくくられたのであった。
茅原の最後の夏のライブは幕を閉じてしまった。しかし彼女自身の音楽活動はまだ終わっていない。残り短い期間ではあるが、最後のその瞬間まで彼女は僕らに感動を届け続けてくれるだろう。その期待感を抱かせずにはいない力強さがこのライブには確かにあった。この期待感を胸に彼女のアーティスト活動の残りの時間をを目に焼き付けていきたいと思う。
レポート・文=一野大悟

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