次世代チルアウト系ラッパーA夏目、
応援歌「Stay true」に乗せた想いー
ー「抽象的な言葉で世代を選ばず聴い
た人をラクにできれば」

メロウネスなフロウとグルーヴで紡がれる、10代のやるせないリアルを柔らかな声で綴る熊本出身の18歳のラッパー、A夏目。2020年の冬に本格的に音楽制作をスタートするや、瞬く間に人気レーベルROOFTOPから1st EP「この夜のこと」をリリース。アーティストとして参加したABEMA『恋する❤︎週末ホームステイ2020冬 Tokyo』でも披露された「東京の冬」で同世代の心を掴んだ彼が、6月16日(水)にリリックもトラックも開放感に満ちた最新曲「Stay true」を発表。爽快でキャッチーな新曲で新境地を切り開いた次世代チルアウト系ラッパー、A夏目の魅力とルーツを掘り下げる。
ーー「Stay true」の心地よいフロウやトラックからふと響く<誰かを救いたい>というフレーズに驚きました。間違いなくこれは新境地ですね。
今回は届けたい人とかを設定したわけではなくて、めっちゃ小さい子から大人の方まで、いろんな世代の方を応援する……僕が言うのもおこがましいんですけど(笑)、A夏目の音楽を聴いて、ちょっと気持ちがラクになればいいなと思い作りました。
ーーそう思ったキッカケというと?
受け取ったトラックを聴いて、すごく爽やかだなと思ったんです。このトラックの勢いに任せて僕のちょっとした考えとかをポポポポと入れていったら、応援できる曲になるんじゃないかと思って。いつも「こういう曲を作りたい」と取り掛かるのではなくて、届いたトラックを聴いて、まずそこにある程度鼻歌で母音を乗せるんです。その時に出て来た言葉に違和感がないように言葉を当てはめていくんですけど、最初のワンブロックが出来た段階で、この曲はこういう流れにしようというようなことが決まっていきます。
A夏目
ーートラックを聴くうちに言葉が生まれてくる?
トラックを聴いてると自然に口が動くんです。そのテキトーに発した言葉がいちばん気持ちいい言葉だと思うから、その音に最も近い言葉を探すと共に、意味を通していきますくっていう作業なんですよ。そこで言葉が生まれるというか、そこにヒントがあるというか。説明するのがめちゃくちゃ難しいんですけど(笑)。曲の規模が広い歌と狭い歌があるとして、例えば、描写をめっちゃ細かく具体的にしていくと狭い曲になっていく。逆に、描写を細かくしない場合は大きくなる……。
ーー細かく描写された歌詞は受け取るイメージが限定されますよね。
そうなんです。「Stay true」はトラックを聴いて、大きい曲だなと思ったんです。その印象に忠実に、物とか自分がしたこととか……例えばイスとか(笑)、そういう具体的なものは書かないようにしようと思って挑みました。だから視点が広がったというよりは、歌詞が抽象的になっていて、カメラみたいに、近づいたら画質が綺麗になるけど、この曲ではぼやかして広く写す、みたいな感じですかね。
ーー意図的にイメージをぼかす。
そのほうがいろんな人に届くかなと。(「Stay true」のサビを歌いながら)<for stay true♫>のところを、<そこに水がある~♫>とかって歌うのはなんか違いますよね(笑)。決定的な、「これだ!」という歌の方が書きづらくて、ちゃんと言葉を繋げていくほうが僕には難しいですね。反対に、抽象的なものだと、自分が最初に思ってたものとは違うけど、こういうところでも意味が繋がるじゃん! ということがよくあります。
A夏目
ーー「東京の冬」はかなりストレートなラブソングでしたけど、抵抗はなかったのですか?
「東京の冬」は実際に体験したこというか、自分の歌の中では唯一の体験談です。自分の身に起きたことで、体験したことだから恥ずかしくないし、嘘がないと思うんです。「僕の考えはこうだ」ではなく、「僕は君が好きだ」ということだし、その気持ちに間違いはないから怖さはないですね。それに、好きな人に自分の思いを伝えるために作った曲なので、誰かに聴かせるというより、その人に聴かせるために書いたのではっきりしてるというか。直接フツーに言葉で言うより、歌にした方が全然恥ずかしくないかなというか。アーティストとして表現することが自分の中で一番自信があることだから、歌にすることに恥ずかしいとか怖いっていうとかの気持ちはないですね。それ以外の曲は、妄想混じりだったり、こうじゃないかなと想像して書いた曲だったりするので、ちょっとぼかしたりしてます。
ーーそういえば、本格的に楽曲制作を始めたのが去年の冬頃だったとか。
はい。でもいきなり歌を始めたというわけでもなくて、中学校の頃から、ラップで韻を踏みながらちょくちょく作って、それをコピーして友達に聴かせたりしてたんです。なので一番最初に曲……と言えるかわかんないようなものを作ったのが中学2年生くらいで、それから結構書けるようになったと思います。近所の友達と、フリートラックに合わせて遊びで歌詞をラッパーの人の真似をして書いてみて、それで一生懸命歌ったりしてて。その録音が今も残っててたまに聴き返すんですけど、その頃からちょっとずつ進化していったなっていう気が自分ではしてます。
ーーということは、当時はラップバトル的なスタイルを目指してたのですか?
そうですね。ラップバトルをしてる人たちは、自分の曲を持ってるじゃないですか。そういうのに憧れて「俺、曲作ったぜ」みたいな感じで友達に聴かせていました(笑)。そんな感じでしたね。
ーー当時使ってた機材というと……。
iPhoneのアプリや、母親のパソコンに入っていたエフェクトとかもかけられないけど録音できる無料のソフト、みたいなのがあって、そういうので録って聴かせてましたね。
ーーちゃんとそういう布石があったんですね。
いきなり去年の冬に曲を作ろう! とか思ったわけじゃなくて(笑)、ちょっとずつ歌詞の書き方とかを学びつつ、去年の冬に、ちゃんと形にしてYouTubeにあげようと思って、MacBookや機材をめちゃくちゃ調べて全部揃えて始めました。
A夏目
ーーそもそもラップバトルに興味を持ったキッカケは?
僕、身体も大きくないし、運動もそんなに出来なくて。ラップバトルは例えば、見た目がめちゃくちゃ強そうな人たちにも勝てるじゃないですか。いちばん最初にラップバトルを観た時に戦ってたのが、T-Pablowさんと、かしわさんというラッパーだったのですが、それを観て、めちゃくちゃ怖そうな人や強そうな人たちとかにも、ラップバトルは勝てるじゃないですか。多分そこにひかれましたね。実技するようなスポーツではやっぱり渡り合えないから。でもラップバトルはそういう人たちにも勝っていけるチャンスがあるから、そこがすごいなと思いました。
ーーこれなら勝てるかもと。
そうですね。技で勝っていくような人が好きなので、すました感じでやります。全然負けるんですけどね(笑)。声を荒げたことはないので。
ーーじゃあ、今もシンガーという意識よりは……。
自分ではラッパーでありたいと思ってます。韻は絶対に外せなくて、それプラス、フロウ、みたいな感覚ですね。それまではバリバリのラップをただやってたんですけど、ちゃんと曲を作り始めるタイミングでクボタカイさんの作品に出会って。「あ、そうか、歌の感じでいいんだ」という衝撃を受けて、今の感じになりました。
A夏目
ーーそこが夜明けだったんですね。
最初の頃はあんまり思い出せないですけど、やっぱり自分でも上手くなったなと思います。最初の頃は(ラップ口調で)<俺は、誰より弱ぇー>みたいな感じでした(笑)。でも、去年の冬にいきなりころっと変わった感じはありました。いきなり書けるようになったというか。いきなりちょっと暑苦しくないような歌詞が書けるようになったんです。
ーー本来は今のスタイルで、ラップを始めた頃は勝ちにこだわってたのかも。
ああー。見せるようなラップみたいな感じでしたね。でも、上手く書けるようになった瞬間は覚えてなくて、気付いたらこんな感じになってました。で、フリートラックで3曲ぐらい作って、その最初に作った「この夜のこと」という曲を、憧れてた事務所(ROOFTOP)に送って今に至る感じですね。
ーーすごいスピードで夢を実現したのですね。
友達とかも同じ頃から曲作りを始めてた友達もみんな今、めっちゃ頑張って曲作ってます。インスタで知り合った友達もROOFTOPに憧れてたりするので……僕も頑張ります。まだ自信はないんですけど、ステージに立つのは楽しいので、ライブもやっていきたいですね。
A夏目
取材・文=早川加奈子 撮影=ハヤシマコ

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