まふまふ主催『ひきこもりたちでもフ
ェスがしたい!~世界征服II@東京ド
ーム~ONLINE』ーー妥協なき挑戦の軌
跡、強い想いが起こした奇跡

ひきこもりたちでもフェスがしたい!~世界征服II@東京ドーム~ONLINE

2021.8.1 日本国内:Streaming+/海外在住者向け:veeps/中国在住者向け:Weibo
苦渋の決断をしてから、約1年半。ようやく、“ひきこもりたち”がそろった。しかも、その場所は東京ドームのステージ。彼らの妥協なき挑戦の軌跡が、強い想いが、奇跡を起こしたのだ。
あらためて触れておくと、『ひきこもりたちでもフェスがしたい!』、通称『ひきフェス』とは、主催者であるマルチクリエイター・まふまふをはじめ、才ある“ひきこもり”たちが集う宴である。2017年の初開催以降、回を重ねるごとに規模を拡大し、2020年3月には東京ドーム公演を開催予定だったが、コロナ禍に見舞われ中止に。しかし、まふまふは、“ひきこもりたち”は、諦める道を選ばなかった。『ひきこもりたちでもフェスがしたい!~世界征服II@東京ドーム~ONLINE』と題し、8月1日に国内109か所の映画館で上映され、全世界に向け配信もされた、無観客ライブ映像。大舞台に堂々と立ったのは、まふまふ、そらる天月-あまつき-少年Tうらたぬき志麻となりの坂田。センラあらきun:cめいちゃんluzだ。それぞれの色鮮やかな個性、スペシャルなコラボレーションが生む化学反応で、心が躍りっぱなしの2時間半だった。
少年T、天月-あまつき-
オープニングムービーがあけ、東京ドームのセンターに設置されたステージが映し出されると、そこにいたのは天月-あまつき-と少年T。気持ちを込めて歌い出した天月-あまつき-、続く少年T、時折向き合いながらていねいに歌声を重ねる2人。「ホシアイ」による幕開けは、実にドラマティックだ。客席に瞬くのは、オーディエンスが振るサイリウムを思わせる光。どうしたって胸が熱くなる。
少年T
そのままステージに残ったのは、少年Tだ。ダンサーを従え、とびきりキャッチーに突き抜けた「ゲッタバンバン」。アコースティックギターを手に、コミカルに表情豊かにたったひとりで弾き語りした「いつか君はそいつと別れるに決まってる」。2曲だけでも、彼のポテンシャルの高さを知るには十分だ。
天月-あまつき-
「音楽は人生に必要なもの。そう信じる僕たちとみなさんの力で、この日を迎えることができました」と喜びの言葉を口にしたのは天月-あまつき-。目の前にはいなくても、画面の前にいるリスナーに届くように、ひとりひとりの声を確かに感じながら歌った、アコースティックアレンジの「小さな恋のうた」。ダンサーと共に軽やかにステップを踏みながら、大きくクラップしながら歌った「月曜日の憂鬱」。楽しさが加速していく。
ステージではなくスタンド席に登場して意表を突いたのは、うらたぬき、志麻、となりの坂田。、センラからなる浦島坂田船。花魁姿で和傘をさした4人は、「吉原ラメント」を艶っぽく歌いながらゆっくりとセンターステージへ。「花魁俺嵐コンフュージョン」では挑発的なセリフや表情でドキドキさせて、ステージの周りにファイヤーボールが噴き上がった「Boohoo」にしろ、「Beetle Battle」にしろ、歌にダンスに4人の色気がダダ漏れ状態だ。息ぴったりなかけ合いが映える「ベノム」。4人の笑顔とチームワークが満開となった「SWEET TASTE PRESENT」。やはり浦島坂田船には和情緒がよく似合うとあらためて感じた「花や、花」。4人が躍動するステージは本当に華やかだ。
うらたぬき
志麻
となりの坂田。
センラ
luzがオーガナイザーを務めるライブイベント『XYZ TOUR』の出演者によるユニット・XYZのあらき、un:c、センラ、めいちゃん、luzが順繰り歌をつないだのは、「Alice in N.Y.」。持ち味それぞれ、ハイトーンの競演は無双感がある。また、ステージにはいないnqrseの名前をluzが呼んだ瞬間、高まった視聴者も多いはずだ。
XYZ

luz

めいちゃん
luzの隙のない甘美な歌声が耳を奪った「エンヴィーベイビー」からは、ライブアレンジのメドレーでテンポよくたたみかけていく。めいちゃんとluzによる「KING」では、2人が背中合わせになったり、隣り合ったり、急接近してluzがめいちゃんの頬をなでる場面も。レーザー光線が飛び交うカオスな「メビウス」で、巻き舌全開で<世界に入り込む>本領を発揮しためいちゃん。「テレキャスタービーボーイ」の冒頭、勢いよく跳ねながらアオったun:c。笑顔でハイタッチして、肩を組みながら「グッバイ宣言」を歌ったセンラとめいちゃん。「ジャンキーナイトタウンオーケストラ」を時に向き合って歌い、しまいにはゼロ距離となったセンラとluz。熱情ほとばしるロック魂で「うっせぇわ」を貫いたあらき。ステージの周りに花火が噴き上がる中、2人で笑顔を交わし、肩を組み、身体を折りたたみながら、「ワールズエンドダンスホール」で歌声を絡ませたあらきとun:c。画面に見入って、息をするのも忘れそうになる。とどめに、あらき、un:c、センラ、めいちゃん、luzがまたまたそろった、「Mirage call」と「CocktaiL」。『XYZ TOUR』で数多のライブをこなしてきた叩き上げの歌唱力は、圧倒的だ。
un:c

あらき

雨上がりの澄みきった空にかかる虹のように。灰色がかった世界を彩ってくれたのは、そらるとまふまふによるAfter the Rain。まるで少年のような声と表情で「1・2・3」を歌うそらるとまふまふ、重なる2人の歌声、自然と向き合う姿。お互いを指さしながらの<キミにきめた>に、揺るぎない信頼がにじむ。
幻想的なスモークがステージに満ちる中、「ワンダー」でイノセントをたたえた歌声をどこまでも響かせたそらる。「最終宣告」で、もがき悩んだ末の<生きると言え>を全身全霊で放ったまふまふ。「いつか満員の東京ドームにAfter the Rainとして立とう」と誓った2人が、After the Rainとして歌ったのは「折り紙と百景」と「夕刻、夢ト見紛ウ」だ。情景が浮かぶ切ない和ロックは、After the Rainならではのもの。それぞれの歌声、美しいハーモニー、桜色のライトに照らされながら背中合わせに歌う姿とすべてが尊い。
After the Rain
『ひきフェス』恒例、コラボゾーンの先陣を切ったのは、そらまふうらさか。胸ポケットに深紅の薔薇をさした白いラメジャケットといい、ダンスといい、揃いすぎているそらる、まふまふ、うらたぬき、となりの坂田。。矢継ぎ早な展開と遊び心で突っ走る「能力引継ぎで乙女ゲーの世界に転生した件についてwww」の破壊力はすさまじい。
和の高揚感を味方につけて、「極楽浄土」で歌にダンスに絶妙なコンビネーションを見せた志麻とセンラ。赤いライトに染まるステージで「ヴァンパイア」の妖艶な世界に身を投じ、<こっちおいで>と視聴者をいざなったそらると少年T。初コラボから9年、大舞台で「チルドレンレコード(Re:boot)」を披露し、高音をきれいに重ねたまふまふと天月-あまつき-。目にも耳にも贅沢が過ぎる。
そらる
そして、ステージの周りに花火が噴き上がった「Secret Answer」でステージに立ったのは、あらき、un:c、センラ、めいちゃん、luz、そらる、まふまふ、天月-あまつき-。ギターを手にしているまふまふ、nqrseの代わりにラップを繰り出す-あまつき-も映えて、なんて刺激的なんだ。
ステージに12人がそろい、めいちゃんが「夢の舞台で歌えてどれくらい嬉しかったかというと、東京ドーム5個分です」と言えば、「一昨年も言ったけど、やっぱりこいつらは俺のアベンジャーズです!」と誇らしげなとなりの坂田。。少年Tやluzはなにかとツッコまれるし、どうしてもジャレ合ってしまう12人。歌っているときとのギャップもまた愛おしい。
「みんなに目の前にいてほしかった、というのが素直な想い。でも、オンラインだからこそ観られたという人も多いだろうし、何事もプラスにとらえたいです。いつか日常が戻ってきたら、またみんなの前で歌うことができたら最高だなと思っています」とそらるが前を向き、困難な中でも諦めずに公演開催へとこぎつけたまふまふを労い、感謝する面々。すると、まふまふが口を開いた。
まふまふ
「決断できたのは、僕のおかげではないです。大切なのは、無謀な夢を後先考えず口にしたときに、ついてきてくれる人がいるということ。昔の僕だったら、隣には誰も立っていなかったと思う。nqrse合わせて、僕以外の12名。みんなが賛成して、集まってくれて、夢が叶いました。本当に幸せです。ありがとう。届かないと思っているステージにも、いつか届くのかもしれないと思いました。東京ドームに立って、それで終わりじゃない。世界は広いからさ。東京ドームに辿り着くことだけが革命ではないのだ。これからもついてこられるか!? どこまでもいこう!」
まふまふの力強い宣言から、全員で歌う「ワールドドミネイション」へ。そらるとluz。そらるとun:c。un:cとあらき。まふまふと天月-あまつき-。天月-あまつき-と少年T。うらたぬきととなりの坂田。。あらきとめいちゃん。そらるとluz。少年Tとun:c。ステージの周りにファイヤーボールや花火、火柱が派手に噴き上がる中、さまざまな組み合わせが目まぐるしく視界を賑わせるのも、ライブならではの醍醐味だ。その歌声や存在そのものが、今や国内外多くの人々に愛される“ひきこもりたち”。『ひきこもりたちでもフェスがしたい!~世界征服I@メットライフドーム~』から2年の時を経て再びあげた“勝ち鬨”は、なんとも頼もしく、希望的だった。
ひきこもりたちでもフェスがしたい!~世界征服II@東京ドーム~ONLINE
強い想いは、実を結ぶ。どんな状況でもそれを体現し、歌を愛し、リスナーが楽しめるエンターテインメントを追い求める“ひきこもりたち”は、しっかりと手を携え、高め合いながら、これからもひるまずに道を切り拓いていく。彼らが牽引していくなら、音楽シーンはまだまだ面白くなるに違いない。

文=杉江優花 撮影=小松 陽祐[ODD JOB]、岡本 麻衣、堀 卓朗[ELENORE]、今田 和也[ELENORE]

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