teto小池貞利、ニューアルバム『愛と
例話』リリース直前の突如メンバー脱
退も、絶対に止まる事なく進み続ける
理由を全てを曝け出す

3枚目のフルアルバムとなる最新作『愛と例話』は、一聴しただけで、全てを出し切ってブチかましてきた事を感じる事が出来た。だからこそ、8月4日(水)のリリースを翌月に控えた今年7月に、メンバーふたりが脱退した事は本当に衝撃だった。しかしながら、力強さだけでなく、きめ細やかなこだわりも感じる事が出来る今作は間違いなく最高傑作だと思う。

残された小池貞利(Vo.Gt)と佐藤健一郎(Ba)で8月28日(土)から始まるリリースツアー『日ノ出行脚』を含むライブを、どう乗り越えていくかが気になっていたし、どうやら止まるつもりがない事も伝わってきていた。なので、小池本人に思いの丈を話してもらった。話し始めて、すぐに小池の意識の変化がわかったし、その進化があれば何も心配はいらない。とにかく、全く現状に納得いっておらず、満足いっていない。現状を覆す事しか考えていない小池は物凄く頼もしい。改めて絶対に認められるべきバンドだと本気で思っている。

teto小池貞利
ーーまずは素晴らしいアルバムが完成したなと本当に思っています。完成してから、アルバムを振り返る人と振り返らない人に分かれるのですが、小池君の場合は、いかがですか?

作り終えたものを振り返ったりはしないですけど、こうやって(インタビューで)話す時に振り返りますね。改めて聴き直すと、時代にふさわしいものは出せたかなと思います。別に時代に合わせるつもりはないのですが、2020年という色々大変な時期にアルバムを制作し始める中で、どうしても自分を含めて世の中が愛に枯渇しているかなと感じていたので、ロックにふさわしいラブソングを恥ずかしげなく、ロックバンドの使命として掲げましたね。それは自分の望んでいる事でもありましたし。今までは、好きとか愛しているは、遠回しに間接的にしていたんです。その方がお洒落だったし、稚拙にならないようにというのもあったし、恥ずかしがりでもありましたから。今回は聴いている方が恥ずかしくなるくらいに、直接的に勝負してみました。前のアルバム(2019年10月リリース『超現実至上主義宣言』)は15曲収録で、今まででの全部を出せましたし、色々な良さがありましたけど、最後は直接勝負なんだなと。(コロナ禍で)心も物理的にも少し距離が出来た中で、ロックバンドからぶつけないと、聴く人たちの気持ちが遠ざかってしまうと思ったので。全力で殴り掛かるというか。
ーーこのコロナ禍の中で間髪入れずに、このアルバムをぶつけられたのが大きいと思うんです。
バンドはお客さんとのストーリー作りが大切だと思っているので、ライブができないなと思いつつも、音楽制作が好きなのでひとつ出し切ったというのはあります。また、こういうアルバムは作れないと思うので。何か25歳で1曲目を作った感覚と、このアルバムを作った感覚は近くて。初心に戻って来れたのですが、ずっとそこにいても仕方ないので、さらに進んでいこうと思います。
teto小池貞利
ーーデビューして5年で、そこからのお付き合いですけど、どこか小池君はインタビューに対して距離感を置いているイメージがありました。でも、それは徐々に変わってきたし、特に今日のインタビューは凄く言葉で表してくれているなと感じています。
(インタビューに)しなくちゃいけない言葉はあるなと。伝えないといけない言葉を伝えないのは怠慢なので。思考放棄して、曲だけ聴いてもらってというのは逃げているなと。ただ芸術の奥ゆかしさは数学じゃないので、相手の自由を奪わないようには注意しています。前までは少しふざけていたとこもあって、(インタビュアーと)会話する気もなかったりして、「それでいいです」とか答えてしまったりしていて、それは失礼だなと……。
ーーそこまでインタビュアーに対しての思いを持ってくれているのは誠実だなと思います。
「ごめん! ごめん! 許して!」くらいの感じですが(笑)。
ーーハハハ(笑)。でも、明らかにインタビューに対する姿勢は変わってきていますもんね。
自分の筋が通っていないなと。音楽に対する真摯なところを助けてくれるインタビュアーさんには本気で行かないと。今まではそういう当たり前の事が出来ていなくて。ロックは好きですが、そういう事を「それがロックだよ」と言うのは古いし、そんな人間にはなりたくなくて。それが似合う昔の人たちはカッコ良いけど、自分はその時代に生まれていないので、自分が胸を張って2021年の最新のロックの形を見せていきたいですね。
teto小池貞利
ーーここまで話してくれるので、敢えてお伺いしますが、アルバム直前の先月にメンバーふたりの急な脱退も発表されましたよね。
俺が一番悲しいし、むかつくし、悔しいしと言いたい……。それ以外は何もないかな……。自分の人生史において一番の大失態をしてしまったとは思いますが、それは納得できる事で、俺も早く決断しました。アルバムのリリースも、そのツアーもある中で、ふたりから申し出があって……、最後にツアーを回るというのは形としてありかなとは思いますが、俺の場合はそう思わず、その場で終わらしました。小石に躓いてしまい擦り傷はありますが、無様だろうと止まらず走っていくと。だから、こういうプロモーションもツアーもやりきります。ただツアーのサポートメンバーが全然まだ見つかってなくて。自分とベースしかいない状態ですが、ツアーの前にバンドとして誘ってもらったライブはバンドで出たいなと。なので、北海道の知床にいた知り合いに電話して「5日後ライブだけど、とりあえず東京来ない?」と聞いたら、「行きます!」と言ってくれて。3日で仕上げて、まずはライブをやるつもりです。こういうドタドタしてる感じも自分ぽくていいなと。その誘った人も「tetoなら、小池さんなら」と言ってくれて、有難かったですね。
teto小池貞利
ーー2にいたドラムのyuccoちゃんですよね。小池君もyuccoちゃんもロックだし、ちゃんとロールしているなと思うんですよ。
周りには、ロックをやっていなくても転がりまくっている人が多いですよ。例えば、母親とか大親友とか。バンドとして、どうしても物語がひとつ終わってしまったというのは事実ですが、チープな言い方をすると第二章ですから。急にはなったけど、いいタイミングではありました。
ーーメンバーふたりの脱退は勿論残念ですけど、本当にやりきったと心から思えるアルバムなんですよね。衝動だけではない細やかなこだわりも凄く感じるアルバムです。
音など細かいところを今までで一番こだわらせてもらって。自分以外の楽器や自分の表現したい事と違うと思ったら、0から100近くまでこだわったので周りの負担は大きかったかなと。4人で雰囲気良くアルバムを作っていたら、こんな形にはならなかったとは思いますが、それではやってる意味がないので。細く長く作るよりは、太く短く作っていますから。本当にこだわらせてもらったし、メンバーみたいな身内ではないエンジニアさんとかにもわがままを言いました。
teto小池貞利
ーーそこまで緊張感を優先して、こだわり抜こうと思えた動機は何だったのですかね?
2020年の時代感もあったかなと。一種のフラストレーションとか。あんな事(コロナ禍)が去年なかったら、生温いアルバムを作っていたかも知れないですし。いつかは突き抜けた事が出来たと思いますが、早めてくれたのは、この時代だろうなと。あの期間に後悔というよりは、あの期間に感謝したいなと。
ーー1曲目「宣誓」から、しっかり緊張感と高揚感が伝わってくるのも凄く好きなんです。
その雰囲気のパッケージはこだわりました。シリアスだけを届けたいわけじゃないから4人の緊張感がシリアスにならず、ユーモアな発想を入れられたので、だからこそ届けたくて。
teto小池貞利
ーーこれは作り終えた後に精魂尽き果ててもおかしくないと思うくらいの凄いアルバムだと思いました。でも、今日インタビューしてみたら、全然精魂尽き果ててないし、まだまだ、ここから行く気満々な感じが伝わってきたんですよ。
まだ伝わってないなと思ってますから。ちっとも現状に納得いってないですし、満足していません。これ以上、良い曲を作らないといけないのかなとは思うし、どれだけ良い曲を書いたらいいのかと……、毎回思っています。
ーー納得いかないし、満足していない中でも、ずっと音楽を鳴らし続けているのは凄いし、単純に聴き手としては嬉しいんですよ。その上、今回はメンバーふたりが脱退しても、全く止まらず、進み続けているのが、むちゃくちゃ嬉しいです。
もちろん、根底に楽しい音楽を作っているというのがあるし、音楽が楽しくないとやってられないですよ。最近、特に解散や活動休止のバンドが増えてきていますけど、おこがましいですが、音楽は嫌いにならないで欲しいですね。(音楽を嫌いになるのは)もったいないので……。バンドの物語のひとつが終わってしまう時に、お客さんが同情して純粋に楽しめなくなるのが嫌なので、楽しんでくれと! 音楽を伝えるためにやっているので、音楽で判断してくれと思っています。
取材・文=鈴木淳史 撮影=日吉“JP”純平

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