【仲村瞳の歌謡界偉人名言集】#211
フォークシンガー・高田渡の言葉

作詞家、作曲家、編曲家、音楽プロデューサー、バンドマン、振付師、……そして、歌手。きらびやかな日本の歌謡界を支えてきた偉人たちを紹介するとともに、その方々が発したエネルギー溢れる言葉を伝えます。常軌を逸した言動の裏に、時代を牽引したパワーが隠されているのです! このコラムで、皆様の生活に少しでも艶と潤いが生まれることを願います。

売れない歌を作ってる時がいちばんいい
のかもしれませんよ

松本隆対談集 風待茶房 1971-2004』(著・松本隆/立東舎/2017年1月10日発行)より

高田渡と松本隆が共に22歳だった1971年に行われた対談。進行役は、松本隆の同級生で、はっぴいえんどのマネージャーだった石浦信三。石浦が「二人は詞の面でも曲の面でもいい意味で両極に対蹠していると思うし、微妙なところで一致しているとも思う」と言うように、この二人の対談には意外性がある。しかし、松本隆は、はっぴいえんど時代に高田渡のライブのバックでドラムを叩いており、高田のアルバムの中で一番ヒットした『ごあいさつ』(1971年)でも演奏している。京都巡りや古本屋巡りを共にするなど、音楽以外の部分でも意気投合したそうだ。石浦の「二人とも、普通の意味合いでは売れないね」という言葉を受けての高田の発言が今回の名言。続けて松本が「それが偶然売れたとしたら、それが本当に自然だものね。売れなきゃいけないなんて考えてあくせくしてるの、すごく惨めったらしいよ」と応える。いい詞について話が及ぶと高田は、「誤解が起きやすいのが、いちばんいい詞なんですよ」と主張。松本が「ぼくはわざと日常語を使いたがるから、表面上は優しく見えるかもしれないね」と言うと、高田は「むしろ難解な用語というのは、一通りの意味しかないし、複雑な内容を日常語で言うほうが、実は複雑だし歌らしいんだよ」と、松本の歌詞の魅力をすでに見極めているかのように語る。この対談の3年後、松本は「ポケットいっぱいの秘密」(アグネス・チャン)で専業作詞家デビュー。以後、ヒットメーカーとして第一線で活躍し続けることとなる。歌の世界の真理は、売れようとすることとは別のところにあるのかもしれない。
高田渡(たかだわたる)
1949年1月1日生まれ、岐阜県北方町出身。フォークシンガー。1966年、音楽評論家の三橋一夫に師事しアメリカ民謡や明治演歌について学ぶ。同じ頃、灰田勝彦のバンジョー教室やうたごえ喫茶『灯火』に通い、フォークシンガーへの道を歩み始める。1968年、四谷の野村ビル会議室にて初めてフォークシンガーとして歌う。遠藤賢司南正人などと東京のアマチュアシンガー集団「アゴラ」に参加。1969年、関西に拠点を移し、高石事務所に所属する。高石ともや、岡林信康中川五郎早川義夫加川良などと共に関西フォーク・ムーブメントの中心的存在となる。同年、「大・ダイジェスト版三億円強奪事件の唄」を発表。同年、『第1回全日本フォークジャンボリー』に参加。1970年、『第2回全日本フォークジャンボリー』に参加。1971年、ベルウッド・レコードから『ファーストアルバム ごあいさつ』をリリース。1971年、『第3回全日本フォークジャンボリー』に、ジャグ・バンドである武蔵野タンポポ団のメンバーとして出演。1975年、細野晴臣中川イサトとのトリオ編成でロサンゼルスで録音。翌年、アルバム『FISHIN’ ON SUNDAY』としてリリース。1989年、『第4回全日本フォークジャンボリー』に参加。1993年、ハウスシチューのCMソング「ホントはみんな」の歌を担当。1997年、市川準監督の映画『東京夜曲』の主題歌に「さびしいといま」が採用される。1999年、詩人・山之口貘の詩の楽曲をまとめたアルバム『貘』をリリース。2001年、エッセイ集『バーボン・ストリート・ブルース』を出版。2004年、高田の日常とライブ映像を撮影したドキュメンタリー映画『タカダワタル的』が公開される。2005年4月15日、北海道白糠町でのライブ終了後に倒れ、入院。翌16日、心不全により死去。享年56。
仲村 瞳(なかむらひとみ)
編集者・ライター。2003年、『週刊SPA!』(扶桑社)でライターデビュー後、『TOKYO1週間』(講談社)、『Hot-Dog PRESS』(講談社)などの情報誌で雑誌制作に従事する。2009年、『のせすぎ! 中野ブロードウェイ』(辰巳出版)の制作をきっかけに中野ブロードウェイ研究家として活動を開始。ゾンビ漫画『ブロードウェイ・オブ・ザ・デッド 女ンビ~童貞SOS~』(著・すぎむらしんいち/講談社)の単行本巻末記事を担当。2012年から絵馬研究本『えまにあん』(自主制作)を発行し、絵馬研究家としても活動を続ける。2014年にライフワークでもある昭和歌謡研究をテーマとした『昭和歌謡文化継承委員会』を発足し会長として活動中。

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