伝説のライブアルバム『唐十郎/四角
いジャングルで唄う』が奇蹟の初CD化

1973年2月、唐十郎/状況劇場の劇中歌リサイタル「四角いジャングルで唄う」が開催され、同年10月には、その実況録音盤が(キング)ベルウッド・レコードより自主制作LPとして発売された。「永遠に再発はない」と言われていた、その伝説のレコード『唐十郎/四角いジャングルで唄う』が初CD化され、2021年9月22日に発売される。これはまさしく、48年目の奇蹟の出来事といえる。そのトレイラー動画もこのほど公開された。
【動画】『唐十郎/四角いジャングルで唄う』より

唐十郎/状況劇場の劇中歌リサイタル「四角いジャングルで唄う」は、1973年2月8日、後楽園ホールの特設リングで行われた。当時の唐は32歳、前年には『二都物語』や『鐵仮面』を上演し、またこのライブの直後には『ベンガルの虎』や蜷川幸雄演出の桜社『盲導犬』等の上演が控えていた、最も脂の乗っていた時期だった。
リサイタルには、唐十郎をはじめ、李麗仙(当時は「李礼仙」)、大久保鷹、不破万作、根津甚八、小林薫ら状況劇場の劇団員が総出演、さらに前々年に退団していた四谷シモンも特別に復帰した。演奏を務めたのは、日本フォーク界の草分け的存在たるシンガーソングライターの小室等が指揮する“ザ・サウンド・ガーリック”(この日のためだけに結成された楽団)。ちなみに、この当時の状況劇場の劇中歌の殆どは、小室が作曲を担当していた。
歌のプログラムは、『吸血鬼』『腰巻お仙 振袖火事の巻』『少女都市』『由比正雪』『腰巻お仙 義理人情いろはにほへと篇』『少女仮面』『ジョン・シルバー』等、劇団初期の名作の劇中歌群。また、唐による自作小説の一部の朗読も披露された。
特筆すべきは、1970年2月、岸田國士戯曲賞受賞直後の唐十郎がベルウッド・レコードより1stシングルレコードとしてリリースする予定だったが、発売禁止処分を受けた「愛の床屋」が、このリサイタルの中で歌われていることだ。発禁処分の理由は明らかではないが、唐の書いた歌詞は、A・ジャリの戯曲『寝取られユビュ』の劇中歌のパロディで、小室等のドラマチックな作曲により、危険度の高い歌謡として仕上がっている(大島渚監督1968年作品「新宿泥棒日記」の中で唐が歌う同曲はメロディが異なるため、幾分味わいが薄いものとなっている)。ちなみに、小室は「愛の床屋」と同時期に後の代表作となる「雨が空から降れば」を含む、別役実の『スパイものがたり』の劇中歌を作曲しており、小室もまた最も脂の乗っていた時期なのだった。今後、件の発禁シングル「愛の床屋」の音源CD化も切に待たれるところだ(ちなみにシングルB面「さすらいの歌」はCD化済み)。
なお、1973年10月に実況録音盤がLPアルバムとして発売された際には、ジャケット画を合田佐和子が担当。同年に出版された唐十郎の小説集『ズボン』の表紙絵や、数々の劇団ポスターなど、唐ワールドとは非常に相性の良い合田が生み出す幻想風景は、今回のCD化に際しても堪能できる。
そして、CD化にあたっては、唐十郎が横浜国立大学教授に就任して以来、薫陶を受け続けてきた劇団☆唐ゼミ代表の中野敦之が解説を執筆しているのが、何よりも頼もしいかぎりで、その期待は大きい。彼は、2011年11月「大唐十郎展」を企画し、その一環として、唐十郎や小室等らを招き、赤レンガ倉庫1号館 3Fホールで「四角いジャングル」2011版ともいうべき「21世紀リサイタル」を開催した経緯もある。唐十郎の劇宇宙を、劇中歌の切り口から解読していくうえで、中野ほど相応しい人選はないだろう。
本CDを通して、日本の演劇界を震撼とさせた唐十郎/状況劇場の全盛期の息吹を感じ取って欲しい。

【プロフィール】唐十郎(1940~):劇作家、俳優、小説家。1963年、状況劇場を旗揚げし1967年より紅テント公演を行う。天井桟敷の寺山修司、黒テントの佐藤信とともに前衛演劇の代表的存在となり、劇団からは、李礼仙(麗仙)、麿赤兒、根津甚八、小林薫らを輩出。1982年、『佐川君からの手紙』で芥川賞を受賞。1988年、状況劇場を解散して唐組を結成し現在に至る。音楽活動では、1967年に山下洋輔と共演。1970年、シングル「愛の床屋」(キングレコード)で歌手デビュー、また同年、東宝映画『銭ゲバ』の主題歌「銭ゲバ大行進」も。

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