『バンクシーって誰?展』中村倫也イ
ンタビュー こだわりが光る声の表現
「どう最大限使いこなせるか」

アート界の異端児・バンクシーの傑作群を、日本オリジナルの切り口で紹介する展覧会『バンクシーって誰?展』が、天王洲アイルの寺田倉庫G1ビルにて、2021年8月21日(土)からいよいよ開催される。テレビスタジオの舞台美術チームが、美術館とは異なる会場空間でリアルサイズに再現した本展。その世界にいざなう案内人といえば、アンバサダーならびに音声ガイドを務める俳優・中村倫也だ。

オーディオツアーのナビゲーターは、初となる中村。これまでアニメーション映画のキャラクターボイス、ハリウッド映画の日本語版吹替、ドキュメンタリー番組のナレーションなど、数々の“声”の仕事を経験し、多くの人々を虜にしてきた。本展では、どのような声色で、トーンで、バンクシーに寄り添ったのか。音声ガイド収録直後の中村にインタビューした。
中村倫也
作品の“助け”になるようなナビゲーターを
――音声ガイドの収録、お疲れさまでした。非常に順調に終わったと伺いましたが、録ってみて、いかがでしたか?
これまで、「展覧会は、こういう風にやるんですよ」というイメージを見たり、説明を聞いてはいたんですけど、実際にまだ完成したものを見ていないので、「どういう感じなのかな?」と思っていたんです。なので、音声ガイドの台本を読んだことによって、自分も想像が広がったというか。「こういうことになっているのかな?」と景色のイメージを、ちょっと膨らませられました。やっている身ですけど、展示会の開催を実際自分の目で見られることが、より楽しみになりましたね。
――特に、どの展示が一番の楽しみになりましたか?
《世界一眺めの悪いホテル(THE WALLED OFF HOTEL)》のパートで、「どんな眺めなんでしょう。進んでみてください」という感じのガイドを読んだんです。そこで初めて、「おお。見れるんだ!」と知って。写真では見たことがあるけれど、実際に窓からそういう景色が見られるのかなと思うと、それこそ今回の醍醐味だと思いました。展覧会自体、“それはまるで映画のセットのような美術展”と謳っていますし、より体感というものに近づけるんじゃないかな。そういう展示の仕方なんだろうな、と楽しみになりました。
――中村さんがご覧になるときは、ご自身の音声ガイドを聴きながら、がいいですか?
自分の声を聴きながら? それはしないっす、ははは(笑)。こうして(台本を)読んでいるから、もう情報は入っていますしね。
中村倫也
――音声ガイドの収録では、通常の中村さんの話し言葉の感じと、トーンなどを変えているんでしょうか?
今、自分が話しているリラックスしたような声のトーンとは、若干は違うと思います。言葉の聞き取りやすさを意識したり、自分の音声ガイドの挑み方というか立ち位置も、自分の中では「これぐらいがちょうどいいんじゃないかな」というポジショニングがあったりしたので。
音声ガイドって、見に来てくれる人の歩みに合わせて、ひとつずつ、追っていくじゃないですか。その世界観の中でのちょっとした音色で、ちょっとリラックスして見られるゾーンがあったり、ぐっと入って行くゾーンがあったり……という風に、見ている方も心情が動くと思うんです。その辺、微妙な感じですけど、ちょっとずつちょっとずつ歩み寄りながら、かつ、ナビゲーターとして、少しだけ動線案内にもなればいいかな、と。そういう使い分けはしました。
――展示のゾーンに合わせて、中村さんの声の雰囲気も、少しずつ変わっていると。楽しみです。
なんか、ちょっとした助けになっていればな、みたいなね。音声ガイドって、難しいんですよね。「中村さんの音声ガイド、お楽しみに」というのもきっとあるんでしょうけど、それだけを楽しみにしてもらうために、僕はやっていないから。
――あくまでも「助けのポジション」ということですよね。
そうです。主人公は、あくまでも作品なので。そういう意味では、「中村倫也がなんかやってるよ」というのが邪魔にならないようにやりたいな、と思ってやっていました。
中村倫也
俳優・中村倫也が分析する自分の声「どう最大限使いこなせるか」
――スチール撮影時に、中村さんの台本を少し拝見しましたが、細かく書き込みなどもありました。言い回しを変えたり、少し語尾を変えるなどは、中村さんのアイデアですか?
言い回しが「ですます」調から、「ストリートキッズ」調まで入り混じっていたので、自分で少し変えたりしました。字面で追ってインプットする情報と、音で聴いてインプットする情報は違うので、単純に難しいんですよね。心地よく入ってくるリズムも絶対違うから。
僕の感覚として、名詞が多いと、音で聴いた場合に入ってこないんですよ。文字で読んでいる分には入るんですけど。小説と口語体のセリフの掛け合いとかは絶対違うので。そういうことで、いろいろやりながら変えたりもしました。基本は台本通りですけど。
――ご自宅で読んでいたりするときから、「こうしたほうが伝わりやすいかな?」と考えたりなさる?
なんとなーくは読みながら思ったりもします。でも、基本は書いてあるまま1回やって、「ちげーな」と思ったら変えちゃう。
――声のお仕事ということで括っても、これまで色々とキャリアがありますが、中村さんはご自身の声について、どんな風に思っていますか?
好きも嫌いもないですね。本当言うと「もっとこういうのだったら良かったな」とかは、いろいろあります。でも、こういう職業ですし、皿の上に乗っている食材でどう料理するか、しかできないので。「これを、どう最大限使いこなせるか」ということを、この仕事を始めてからはやっている感じなんです。
――けれど、褒められることはきっと多いですよね。
多いっす、多いっす、うん。でも、なんか役者をやっていると、どうあれ、声が大事だなあとは思うんです。別にいい声どうこうじゃなく、声の特徴というか、カラーというか。同じ人が同じ芝居をしても、声の表現でだいぶ伝わり方が変わると思いますし。そういう意味では、なおさらいかに使いこなせるか、というのは大事かなと思っています。
中村倫也
「これからの時代は、覆面だらけになると思う」中村倫也に覆面願望はある……?
――中村さんは普段、美術館などに行かれるとき、どんな風に楽しむ方ですか?これまで訪れた中で、印象的な美術館の思い出があれば、伺いたいです。
気になったのがあったら、じっくり見たりもしているタイプですかね。フランスにある「マルモッタン・モネ美術館」 (Musée Marmottan Monet)というモネの専門美術館みたいなところに行ったことがあって。地下に入ると、一区画全部、周りが睡蓮で囲われている場所になっているんです。「ああ、ずっと居れんな~」と思いながら、ぼんやーりしてました。なんかああいうの、いいですよね。やっぱり没入感を作るという上で、展示の仕方って絶対にありますもんね。
あとは、美術館ではないですけど、葛西臨海水族館の最初のアカシュモクザメの水槽に、1時間ぐらいいたこともあります。
――1時間もいらしたんですか! 癒やされるんですかね?
サメ、好きなんですよね(笑)。時間帯によっては、あまり人がいなかったりするから、ずーっとぼーっとできるんです。エスカレーターを降りて、柱があって、でっかい水槽があって。その柱から、座って見ていましたよ。
――ありがとうございました。最後になりますが、中村さんはバンクシーのように、まったくの覆面で何かをすることに興味はありますか?
そうだなあ~。「出ますよ」とも言わず、クレジットも載せずに、カメオ出演とかをしてみたいですね。
――これまで、なさっていない?
ないんです。なかなか難しいですよね。見ても気付かないぐらい、「へ~」みたいな感じで、出たいです。でもね、これからの時代は、覆面だらけになると思いますよ。音楽もそうだし、VTuberとかもそうですしね。そういった意味では、見てくれにとらわれずに、いろいろな才能が花開く場所が広がるのかな、と思います。
中村倫也
中村倫也が公式アンバサダーを務める『バンクシーって誰?展』は、2021年8月21日(土)から12月5日(日)まで、天王洲アイルの寺田倉庫G1ビルにて開催。

取材・文=赤山恭子 写真=iwa

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