加藤諒インタビュー「『パタリロ!』
は笑いと感動のバランスがとても素晴
らしい舞台」~舞台版全3作品+α 衛
星劇場で一挙放送

松竹ブロードキャスティング株式会社が運営するCS放送局「衛星劇場」では、1978年の連載開始から40年以上も愛され続けている、魔夜峰央原作の超人気作品「パタリロ!」を舞台化した、舞台『パタリロ!』のシリーズ全3作品を2021年8月に一挙放送する。中でも、3作目の「~霧のロンドンエアポート~」は今回がテレビ初放送となる。加えて同月に、舞台『パタリロ!』の劇場版(2019年)と、<アニメ映画>「パタリロ!スターダスト計画」(1983年)も放送される。さらに、8月22日(日)には5作品を全部イッキ見できる編成が実現した。
舞台『パタリロ!』で、主人公・パタリロを演じているのが、個性派俳優の加藤諒だ。原作の魔夜峰央をして「パタリロを演じられるのは彼しかいない」と言わしめた彼は、実写化不可能といわれた「パタリロ!」を舞台で見事に体現してみせた。また、原作の人気エピソードを盛り込んだ舞台も、それぞれに「傑作」との声が高く、公演を重ねるごとにファンを増やし続けてきた。舞台最新作から劇場版まで一挙放送されるこの機会に、パタリロを演じる上での楽しさ、それぞれの作品の見どころについて、加藤本人から話を聞いた。
加藤諒

ーー 舞台『パタリロ!』の第3弾『霧のロンドンエアポート』が今年1月に上演されました。あらためて振り返っていただくとどのような舞台でしたか?
今回はコロナ禍ということで、稽古前からいろんな不安がありました。でも、誰一人欠けることなく、無事に千秋楽を迎えられたことが何よりも嬉しかったです。もちろん、不安は僕らだけじゃなく、お客様にもあったと思うんです。それでも多くの方が劇場に足を運んでくださり、たくさん笑ってくれて。千秋楽では、そうしたみなさんの“パタリロ愛”をあらためて強く感じましたし、カーテンコールのときは一気に思いがこみ上げてきて、つい泣いてしまいしたね……。僕は、『パタリロ!』の舞台では絶対に泣かないと決めているのですが、あのときだけはちょっと我慢できなかったです(苦笑)。
舞台『パタリロ!』~霧のロンドンエアポート~(2021年) (c)魔夜峰央/白泉社
ーー また、今回の『霧のロンドンエアポート』ではキャストが一新されました。演じる上で変化を感じることはありましたか?
ものすごく若返ったなという印象が一番にありました(笑)。過去の2作品では年齢的に僕が中間くらいの位置で、お兄様たちがたくさんいるカンパニーという感じだったんです。でも今回は僕が上から数えて3番目くらいで。あまりにフレッシュ過ぎて、最初の頃はみんなとどう接していいのかわからず、歌姫役の中村中ちゃんや魔夜メンズの小沢道成さんと一緒に、コミュニケーションのとり方についてちょくちょく会議を開いていましたね(笑)。
舞台『パタリロ!』~霧のロンドンエアポート~(2021年) (c)魔夜峰央/白泉社
ーー この舞台『パタリロ!』シリーズの演出を手掛ける小林顕作さんとは1作目からタッグを組んでいらっしゃいます。これまでの演出で強く印象に残っていることはありますか?
一度、パタリロの役作りですごく悩んでいる時期があったんです。そのときに顕作さんが放ったのが、『パタリロって腹黒いでしょ。諒くんも腹黒いじゃん。だから普通にやればいいんだよ』という言葉で(笑)。そのときは正直、ドキッとしました(笑)。でも、その言葉があったからいろんなことに吹っ切れて、どんどん挑戦していこうという気持ちになれたのを覚えていますね。
舞台『パタリロ!』(2016年) (c)魔夜峰央/白泉社
ーー なお、8月の衛星劇場では3本の舞台作品と劇場版を一挙放送致します。それぞれのお気に入りのシーンを挙げていただくと……?
舞台1作目で印象に残っているのはマライヒ(佐奈宏紀)とバンコラン(青木玄徳)の長いキス! 公演を重ねるごとにどんどん時間が長くなっていったんです(笑)。『パタリロ!』の原作の連載が始まったのは1970年代で、BLマンガの先駆けとも言われているのですが、1作目のときの佐奈ちゃんと玄ちゃんは“本当に付き合ってるんじゃないの!?”と思うぐらい普段から仲が良くて。その関係性が舞台上でも表れていると思います。
舞台『パタリロ!』(2016年) (c)魔夜峰央/白泉社
また、2018年の『★スターダスト計画★』は個人的に原作でも大好きなエピソードで、舞台版ではさらに『FLY ME TO THE MOON』というもうひとつの人気のエピソードも盛り込まれているんです。ネタバレになるので詳しくは言えませんが、どちらもすごく感動的なお話ですし、パタリロが心の底から泣くシーンがあり、その場面を演じられたことが嬉しかったですね。
舞台『パタリロ!』★スターダスト計画★(2018年) (c)魔夜峰央/白泉社
ーー では、劇場版と最新作『霧のロンドンエアポート』はいかがでしょう?
「劇場版は舞台の1作目をさらにスケールアップしたものです。数少ない外ロケの中で、マライヒがバンコランを見つめるシーンがあったのですが、夕陽が後光のように差していて、それが本当に素晴らしくて。監督の顕作さんも、そのシーンを撮った瞬間、『勝った!』と思ったそうなので、ぜひ見ていただきたいです!
『霧のロンドンエアポート』はバンコランの心の葛藤が繊細に表現されています。舞台『パタリロ!』シリーズはどれも笑いと感動のバランスがすごくよくとれた作品で、そこが見どころでもあるのですが、最新作は感動の要素がこれまで以上に強くなっていますね。……まぁ、そんないい雰囲気をパタリロたちがぶち壊すんですけど(笑)」
舞台『パタリロ!』~霧のロンドンエアポート~(2021年) (c)魔夜峰央/白泉社
ーー (笑)。最後に、放送を楽しみにされている方にメッセージをお願いします!
「『パタリロ!』は原作も舞台も映画もギャグ要素の高い作品で、そうしたなかにいろんな争いごとや恋愛要素がたくさん盛り込まれています。もちろん、すべて架空のお話ですが、僕らが生きる現実世界と通ずるところがある。ですので、パタリロが繰り出すドタバタにお腹を抱えて笑ってもらいつつ、戦争のことや同性愛のことなどについても、少し目を向けていただく機会になってもらえると嬉しいなと思います。また、作中にはいろんなキャラクターが登場し、みんながみんなパタリロに振り回されていきますので(笑)、皆さんもマリネラ王国の国民の一人になった気分で見ていただければ、より一層楽しめると思いますよ」
舞台『パタリロ!』(2016年)

【プロフィール】加藤諒(Ryo Kato)。1990年2月13日生まれ。静岡県出身。2000年、『あっぱれさんま大先生』でデビュー。大学では舞台を学び、野田秀樹に師事。2010年にはNODA・MAP『ザ・キャラクター』にも出演。その後も舞台『押忍!!ふんどし部!』、『人間風車』、『真夏の夜の夢』など多くの話題作に出演。現在、映画『老後の資金がありません!』の公開が控えている。

取材・文:倉田モトキ

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