ソニーの恐竜展『DinoScience 恐竜科
学博』はこんなにスゴイ! 大興奮の
内覧会レポート

この夏をより一層熱くするイベント、『Sony presents DinoScience 恐竜科学博 〜ララミディア大陸の恐竜物語〜 2021@YOKOHAMA』が、2021年7月17日(土)から9月12日(日)まで、パシフィコ横浜にて開催中だ。本展はソニーグループ9社が結集し、総力戦でつくり上げる “新しい恐竜展”。企画・監修は、サイエンスコミュニケーターとして活躍する “恐竜くん” が手掛けている。
舞台は “失われた大陸・ララミディア” だ。本展は長い恐竜史のなかで、およそ6600万年前のララミディア大陸(現在のアラスカからメキシコまで、西側一帯に相当する)にピンポイントでフォーカスし、そこに息づいていた様々な恐竜たちのリアルな世界に迫る。これだけローカルで、狙いどころが明確な恐竜展は、そうそう無いのではないだろうか。
トリケラトプス「レイン」 ※ヒューストン自然科学博物館所蔵
そしてなんといっても熱い視線が注がれるのは、“世界で最も完全で美しい” と言われる、トリケラトプスの実物全身骨格「レイン」だ! ほぼ完璧な形状を保って発掘された「レイン」が、本展のために初来日する。こちらは後ほど、たっぷりと紹介しようと思う。
それでは恐竜たちへの愛に溢れた展示の見どころを、順を追ってチェックしていこう。
《Zone01》プロローグ〜変わり続ける地球と生命〜
まずはプロローグとして、ワイドな帯状スクリーンで、舞台設定の解説ムービーを鑑賞する。地球上の生命の始まりから、超大陸パンゲアの出現、そして大絶滅、恐竜の時代の始まり……。さながら “ここまでのあらすじ” と言ったところだ。この後の展示を理解・感情移入(?)するのに役立つこと間違いなしなので、「当然知っている!」という恐竜好きな方も改めてしっかり鑑賞するのがオススメだ。
オープニングムービー
印象的なのは、最初に展示される化石が恐竜の骨格ではなく、足跡の化石という点だ。
恐竜の足跡だけでなく、尻尾を引きずった跡も残っている
いきなり復元骨格をドーン! と登場させれば、受け手にとって恐竜のイメージはどうしても “骨” になってしまう。その前に、地面の上に確かに生身の身体を持った生き物がいた、その姿や重みを想像させる計らいだろう。とても大人っぽい演出だ。
《Zone02》発見ラボラトリー〜科学が解き明かすララミディア大陸〜
そして会場が大きく開けると、そこは「発見ラボラトリー」のエリア。ここでは10パートに分けて、舞台である白亜紀のララミディア大陸がいったいどのような場所だったのか、そこにどんな生き物がいたのかを詳しく学べるようになっている。
「発見ラボラトリー」展示風景
会場中央に展示されているのは、ゴルゴサウルスの骨格標本だ。カッコいいな〜と眺めてスルーしてしまいそうになるが、実はこのゴルゴサウルス、頭部に脳腫瘍の痕跡が残っている非常に珍しい個体なのだとか。恐竜にも病気があると思うと、恐竜もまた動物なのだと改めて実感する。
ゴルゴサウルス
どれもずっしり見応えのある10パートの中で、例えばティラノサウルスをテーマにした部分に注目してみると……。
歯が大きいのはもちろん、その形状が特殊なことに気が付く。肉を食べるためには薄く鋭いナイフ状の歯を持つのが通常だが、ティラノサウルスは違う。肉を骨ごと噛み砕くために、歯が分厚く立体的な形をしているのである。ちなみに一般的な肉食獣の「ナイフ型」に対し、こちらは「バナナ型」というのだそう。破壊力に反して意外と可愛いネーミングだ。
これだけでも迫力がある……!
会場内にはいくつか、ソニーの空間再現ディスプレイ「ELF-SR1」が設置されている。小さな水槽ほどの大きさの箱を覗くと、メガネなしで立体映像を見ることができるのだ! 鑑賞者の目の位置を捉えて像を結ぶ仕組みなので、しゃがんだりしても映像がついてくる。手のひらサイズの恐竜が精細な立体映像で浮かび上がるのは、なんとも言えず未来っぽくて面白い。
「ELF-SR1」による立体映像。解説によると、医療現場などでの活用が期待されている技術だそう (c)DinoScience 恐竜科学博製作委員会
《Zone03》フィールドツアー〜少年トリケラトプスの冒険〜
続いてのコーナーは、企画・監修の恐竜くんがどうしても実現させたかったパートだという「フィールドツアー」だ。子供のトリケラトプスを主人公に、ある日の小さな冒険を紙芝居風にたどっていく。
実は、子供のトリケラトプス(幼体)の全身骨格は未だに発見されていない。そのため本展では、大人のトリケラトプスである「レイン」の3Dスキャンデータを元に、恐竜の成長に関する最新の研究結果を交え、その骨格を理論的に若返らせて子供の骨格を完成させている。恐竜くんが「これが現時点でもっとも科学的に正確」と言う、必見の展示だ。
トリケラトプスの幼体
「レイン」のただの縮小版というわけではなく、データを元に角やフリルも子供仕様へと変更されている。トリケラトプスのフリル部分は、幼体だとスカラップのようなギザギザがよりクッキリと出ていて、まさにフリル付きの襟みたいで可愛いのだ。
「フィールドツアー」展示風景(川で小型のワニに襲われてびっくりする幼いトリケラトプス)
トリケラトプスの幼体とともに、その時代に生きていた様々な生物たちの骨格が約20点展示されている。骨格たちがただ棒立ちなのではなく、しっかりワンシーンを演じているのが特徴的だ。鳥獣戯画を思わせるようなポージングがお茶目で、ついクスッと笑ってしまう。
それぞれのシーンには、恐竜くんによるイラスト付きの解説パネルが用意されている
写真右側の、追われて猛ダッシュするストルティオミムス(“最速” と言われるダチョウ恐竜)の姿勢が特にキレッキレなのでぜひ注目してみてほしい。躍動感あるポーズでの展示は、恐竜たちが生きていた時の姿をリアルに想像させてくれるし、何より空間の雰囲気が “博物館” から “動物園” に近くなり、格段に親しみやすくなるのを感じるはずだ。
「フィールドツアー」展示風景 (M.ジャクソンもびっくりの斜め立ち!)
《Zone04》白亜紀体験シアター〜恐竜たちが生きる世界〜
いよいよ、見どころのひとつである「白亜紀体験シアター」へ進もう。ソニーの現時点での技術の最高傑作だという「Crystal LED」の大画面(横幅12m✕高さ6.8m)に、迫力のフルCG映像が映し出される。映像は恐竜くんが徹底的に監修して、細部までこだわり抜いて製作されたものだという。恐竜の造形・質感・動き方、さらに背景の植物たちにいたるまで、最新の研究に基づいてリアルな世界の再現を目指している。
「白亜紀体験シアター」 (c)DinoScience 恐竜科学博製作委員会
超高精細な映像はため息モノだ。しかも7.1.2chのサラウンド音響システムに加え、映像に合わせて足元が振動したり、風が吹いたりする4D演出もあって大興奮! これって、遊園地で味わうやつでは?
「白亜紀体験シアター」 (c)DinoScience 恐竜科学博製作委員会
恐竜くんは本展のテーマを「人類は科学の力でどこまで恐竜たちの世界に近づくことができるのか?」と位置付けたうえで、このシアターを「主催者側の出した、ひとつの答え」だとコメントしている。恐竜研究とテクノロジー、それぞれの粋を集めたこの答えを、ぜひ現地で目撃してほしい。
《Zone05》特別展示「レイン」と「スタン」〜LANE&STAN〜
特別展示「レイン」と「スタン」
そして最後に鑑賞者を待ち受けるのが……。ヒューストンから海を越えて、白亜紀から6600万年の時を超えてやってきたトリケラトプス「レイン」。そしてティラノサウルスの「スタン」だ。「レイン」はヒューストン自然科学博物館から門外不出の至宝だったが、その初めてのお出かけが、本展で実現したのだ。
ティラノサウルス「スタン」
2体の周囲を360度回りこめるようになっているので、躍動感あふれる姿を隅々まで鑑賞しよう。ちなみに、この「スタン」のポーズデザインだけで構想に3ヶ月を要したという。恐竜くんいわく “世界一やんちゃなティラノサウルス” とのことだ。
トリケラトプス「レイン」 ※ヒューストン自然科学博物館所蔵
トリケラトプスはその長い角や複雑な頭骨の形から、化石になる過程で変形や欠損が起きることが多いそう(納得である)。だからこそ、ほぼ完璧な形状を保って発掘された「レイン」は “奇跡の化石” とも言われている。完全な手と足、ほとんど完全な尾が揃い、骨の数でいうと80%以上という信じられない残存比率である!
さらに「レイン」の魅力は、大型の皮膚跡を含めて発掘されたところでもある。皮膚がどんな感じだったのか分かるだけで、その下のお肉も自然と想像されてくる。一気に恐竜のイメージが「骨」から「動物」に変わるのを感じないだろうか。
ストア・フードコーナーも要チェック!
会場内の「DinoScience Store」では、本展オリジナルデザインの恐竜グッズや、公式アンバサダーを務める小坂菜緒(日向坂46)の直筆イラストグッズなど、バラエティ豊かなアイテムと出会うことができる。展覧会の思い出や、お土産にぴったりなグッズを探してみては。
DinoScience Store
中でも、展覧会の公式図録は約200ページにわたる大作で、恐竜くん&ブラックヒルズ地質学研究所のピーター・ラーソン所長による解説がふんだんに盛り込まれているので見逃せない。
展覧会公式図録(税込2,500円)
ちなみに、フードコーナー「美食恐竜のキッチン」では本展オリジナルの恐竜フードメニューも用意されている。興奮しすぎてお腹が空いても大丈夫だ!
初めまして、恐竜
「フィールドツアー」展示風景(デンヴァーサウルス (c)Tank(TM)BHIGR、エドモントサウルス)
「恐竜」と一口に言っても色々いる。それはいろんな種類の恐竜がいるという意味でもあるけれど、それだけではない。いろんな時代を生きた恐竜がいるし、いろんな場所を生きた恐竜がいるし、一頭一頭違った個性を持ち違った人生を歩んだ、いろんな恐竜がいたということだ。この展覧会を通じて、恐竜は “恐竜” というキャラクターの域を超えて、私たちと同じ生き物であり、隣人になったような気がする。もし自分が恐竜だったら、このことをとても嬉しいと感じるのではないだろうか。
パシフィコ横浜にて開催されている『Sony presents DinoScience 恐竜科学博 〜ララミディア大陸の恐竜物語〜』は、2021年9月12日(日)まで。またとない機会である。ぜひ、「レイン」に会いに横浜へ!

文=小杉美香 撮影=草刈雅之

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