YeYe、海外生活や出産、レーベル移籍
などの経験を経て、デビューから10年
の今、リリースされた新作ミニアルバ
ム『おとな』

2011年のデビューから今年で10周年を迎え、レーベル移籍、海外生活、出産、などの経験を経て「おとな」になったYeYe。そんな彼女が7月21日(水)にKing Gnu、Friday Night Plansなどのレコーディングやプロデュースを手がける江﨑文武(WONK)とコラボレーションした楽曲「家を買う」やミツメの川辺素とのデュエット曲「No Longer」、サウンドプロデュースにTENDREを迎え韻シストBASIをフィーチャーした「おとな」などを収録したミニアルバム『おとな』をリリースした。10年間変わらず大切にしていること、大人になるにつれ楽曲制作の仕方や価値観などがどのように変化してきたのかを、デビュー当時を振り返りながら語ってもらった。
ーー2011年にアルバム『朝を開けだして、夜をとじるまで』でデビューされて、ちょうど丸10年なので、今日は当時の話から訊かせてください。
デビューの話があったのは20歳でしたね、12年前とかです。全て初めての事なので、「ジャケット撮るのは、こんなんなんや」とか、「MVの撮影は25時間もかかるんや」とか、レコーディングでも楽器の演奏全てをやるセルフプロデュースが売りだったので、今振り返ったら、一番大変な時期でしたね。力の抜き方もわからなかったですし、何か洗礼を受けた感じでした。レコーディング中に東日本大震災が起きて、レコーディングしていていいのかなと思ったのも覚えています。それから、みんな立ち上がって、Ustreamとか何か色々な事をしていたのですが、その頃のニュースで「(復興支援は)結局続けないと意味が無い」と報道されていたのを凄く覚えていますね。なので、去年まで毎月11日に配信ライブをしていました。出産4日後の日でも病院からしていました。音楽で人を救えるなんて思ってないですけど、(震災を)忘れないキッカケになればなと思っていました。
ーーやはり何事も10年続けるというのは凄い事だと思うんです。
音楽をやっていますと言っても、色々な角度で音楽を出来るじゃないですか。台所で鼻歌を歌っていても音楽ですし。なので、まさか、こんなふうにお仕事として10年も音楽にしがみついてやってこれるとは思っていませんでした。とにかく自分だけでやってこれた事ではなくて、本当に人に恵まれていますね。この10年の中でも、レーベルも変わりましたし、京都のサポートミュージシャンたちと出会ったり、オーストラリアで暮らしたり、色々ありました。音楽に直接繋がっている事では無いですけど、出産もありましたし。子供の事を思って歌った事は無いですけど、子供との生活が始まった事で、前にも増して根性が出たというか……。機材を持って移動していたのをしんどいと言っていた事が「なんやねん!」と思えるくらいに、動き回る子供と一緒に移動する事の方が大変ですから。今まで以上に「自由な時間にありがとうございます」と思えますし、音楽に感謝が出来ています。子育てをする体力と音楽をする体力のバランスで格闘していますけど、今の生活の中で、そこは一番大きいですね。
ーーオーストラリアでの暮らしというのも大きかったと思うんですが。
音楽から離れる気持ちは全くなくて、オーストラリアで暮らしていても音楽が出来るという事を自分が証明したいと思っていました。日本がドメスティックとは以前から感じていたんです。端っこにいるインディーミュージシャンでも、海外にいても音楽は出来ると思っていました。今はインターネットもありますから。京都に暮らしていた時も、「何で東京に来ないのですか?」と聞かれていましたけど、京都で音楽を出来ていましたから。だから、オーストラリアに暮らしていた時も、京都に暮らしている今も、何も違和感は無いですね。

YeYe
ーーお子さんが生まれた事で前にも増して根性が増したと、先程お話しされていましたが、男兄弟が多かったので、ご自身が子供の頃から根性があったんですよね?

今こそ、ほわっとしていますけど「お兄ちゃんには負けない!」と小さい頃は思っていましたね。14歳、10歳、4歳と年齢はめっちゃ離れたりもしているので、大きな括りとしては可愛がってもらいましたけど、「これやってこい! お前には、これ出来へんやろ!」みたいな事はあって、それは悔しかったですね。兄たちを尊敬していたので、認められたかったんです。音楽に関しても、兄たちから影響を受けていますし。そう言えば、サッカー日本代表スターティングメンバーは、ほとんど末っ子の選手が多いらしくて、みんな、お兄ちゃんたちに勝てないのが悔しくて、のし上がってきたらしいんです。負けず嫌いな性格は末っ子あるあるなんでしょうね。
ーーそういう経緯を聞いていると、「ゆらゆら」のMVが1,000万回を超える再生数を記録しているという結果は凄いなと心から思えます。日頃からの思いが実を結んだ感じがします。
気が付いたらという感じですね(笑)。全然実感はないです。例えば再生回数に対してライブ動員が多いかというと、そうはないですし、ライブの動員は多いけど、再生回数は、そうではない場合もありますしね。そういう話は、レーベルの社長とも、よく話します。私はライブが一番大事な表現の場と思っているので、再生回数だけでは実感が沸かないんですよね。自分の中のゴールが、作品を作って直に観てもらう事ですから。
ーーライブを大切にするという基本概念は10年前から変わってないと思うのですが、作品作りという意味では、この10年で、どのような変化がありましたか?
1枚目のアルバムは当時のレーベルのスタッフの言われるがままにやっていて、2枚目、3枚目からバンドとやりたいと思ったんです。実際に3枚目はバンドサウンドで作って、自分でも今までで一番しっくりきたのですが、一番売れなくて……。やりたい事と求められている事が違うのかなと考えましたね。「ゆらゆら」が収録されている4枚目は、客観的に聴いても、一番声が入ってきたんです。今のレーベルの社長はやりたい事をやらしてくれて、何も言わないのですが、4枚目、5枚目の時は、私からプロデュース目線を下さいとお願いし始めましたね。私、CM楽曲制作もしていて、関わるまでは、CMはプライドを捨てて、言いなりで作るものだと思っていましたが、実際は違いました。参考曲があっても、結果マネにならず自分らしさが出ているんですね。なので、今はアルバム制作の時にも参考曲がありますし、より社長と密になって作っています。私はビジネス勘は無いですけど、狙いに行くしたたかさも持って、そういう事を逆に楽しもうと最近は思っていますね。そういう制作もしつつ、バンドでの活動も行いたいので、違う名前を使って別プロジェクトとして動いて、海外レーベルに売り込むくらいの感じでやりたいです。ノルウェーのミュージシャンで自分のやりたい事をしっかりとやっている方もいたりするので、私もやりたい事をやればいいし、名前を変えて全部やったらいいやんと思っていますね。
ーー自分の中でふたつのモードを持てる様になったというのは大きいですよね。
良い意味での諦めというか。そういう事は、音楽を作る上でよくあるみたいですけど、私は本当に何かを聴いて参考にして作ったらアカンと思っていたので。漫画家の楳図かずお先生を尊敬しているんですけど、梅図先生が影響を受けない様にして、映画『ジュラシック・パーク』を2005年に観たという話が好きだったんです。でも、今は他の作品から影響を受ける事を楽しんでいますね。

YeYe
ーー今こうやってインタビューで話していても、明らかに成長されている事を感じます。

昔から多くの人に聴いて欲しいとは思っていましたけど、若くてトガっていたので、自分のやる事を聴いて欲しいと思っていたんです。今のレーベルも、最初は海外メインで動いているところだったのですが、今は所属ミュージシャンが日本のメジャーシーンでも活躍するようになって、そこで得られた新しい気付きを私に還元してくれているんです。レーベルと自分が一緒に成長している感覚がありますね。そういう感じなので、頑固にならずやれています。自分の音楽だけではなく、レーベル含め仲間でやっている感じですし、私もレーベルに還元できる様になりたいですね。色々な事が、この10年でありましたけど、何も一切後悔していないし、楽しいです。後、また海外にも行きたいですね。行きたいというか、たまたま日本人で日本にいますけど、どうしても考えが固執してしまうので、一個の場所にいたくないですね。3、4年前に1年くらいオーストラリアのメルボルンに住んでいて、気付きが多かったし、学びがあったので、今暮らしている京都で、このまま年老いて暮らしていくイメージが無いんです。何なら、宇宙に行くかも知れませんし (笑)。
ーー根性があって常に新しい事に気付いて学んで挑戦し続ける姿は、僕はデビュー前からお逢いする機会もあったので、少しは知っていましたが、パブリックイメージしか知らない人には、このインタビューは良い意味で刺激的なものになっていると思います。
ライブを終わった後に「可愛かったです!」と言われるのが嫌で。もちろん嬉しいんですけど、かっこいいと思われたくてライブをやっていますから。でも、そこを越える熱いものが出来ていないのも事実なので、ここから精進します。ここ2作は歌詞をわかりやすくして、曝け出して書いているので、もっと歌で表現していきたいですね。修行みたいな感じですね。
ーー精進とか修行とか、ここまでストイックにストロングスタイルにやっていたら、確実に世間にバレますよ、必ず近い内に。
ちゃんとバレますかね?! ちゃんと自分を出しているつもりなんですけど……。人のテンションに合わせて、小さな頃から話していて、その感覚で音楽もどこかやっているので、全然伝わらないのかなとか不安はありますね。でも、言語化が出来ないくらいの凄いライブをする人に自分もなりたいです。
YeYe
取材・文=鈴木淳史 撮影=ハヤシマコ

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