和田琢磨「ものすごく研ぎ澄まされた
状態で向かい合える作品です」~『U
NDERSTUDY/アンダースタディ』イン
タビュー

アメリカの劇作家テレサ・レベックが2008年に発表、翌年にはブロードウェイで上演され話題となった3人芝居『UNDERSTUDY/アンダースタディ』の日本初演が決定した。20世紀文学を代表する作家フランツ・カフカの幻の戯曲上演を前に、それぞれ異なる立場で稽古場に集まった3人の若者たちの思惑、不安、孤独が交錯するこの濃密なセリフ劇で和田琢磨が演じるのは映画スター・ジェイク。演劇への熱情溢れる本作に挑む、その胸中を聞いた。
ーー翻訳ものの3人芝居。和田さんにとってこれまでやってこなかったタイプの作品ですね。
そうですね。僕自身も新たな挑戦だと思っていますし、やってみたかったこと。声をかけていただいてとても嬉しかったです。
ーー和田さんが演じるジェイクは娯楽作で名を知られる映画スター。世間の評判と、自身の内に滾る芝居への思いのギャップに悩みながらも、文学性の強い作品に挑み高みを目指そうと模索する姿は非常にリアリティがあります。
実際にそういう思いを抱える俳優も少なくないと思います。台本を読んでいてふと思い浮かんだジェイクのイメージは、トム・クルーズ。もちろん直接お会いしたことはないですけど(笑)、ああいう熱量とか、俳優業に対する「これは正しい」「これはダメ」という自分のジャッジとか、そういうところは重なります。
ーー演出の深作健太さんとは?
今回初めてご一緒するのですが、まだお会いできていなくて。
ーーでは共演のお二人の印象はいかがでしょう。
お二人にお会いするのもまだこれからなんですけど、主演の福田(悠太)さんは同じ’ 86年生まれなんです。学年はひとつ違うものの本当に同世代なので、遠慮せずどんどんコミュニケーションを取っていけたらいいなと。谷村(美月)さんは、僕は映像のイメージがすごく強いんですが、こういう作品に出られるということはやっぱり演劇やお芝居が好きな方だと思うので、そこを接点に積極的に話していきたいです。ただ、やっぱり俳優が3人だけですからね。稽古が始まる前からプレッシャーは大きい(笑)。2人がどれだけセリフを覚えてくるんだろうとか……そこももうひとつの駆け引きだなって。代役と映画俳優と舞台監督、全く違う立場の3人が抱く相手への“読み合い”が、稽古の段階からいい作用を起こせばいいなと思っています。
ーー3人が出会うのは幕が開ける前の劇場でのリハーサル。テクニカルチェックをしながらの芝居の確認など、バックステージものとしての面白みも大きいですね。
台本を読んでいると「客席から出てくる」とか「客席にハケていく」という場面も結構あったので……公演時にコロナ渦がどう収まっているかは分からないですけど、そういう意味ではお客さんも一緒にこの空間に巻き込んで作品創りをしていけたらなとは思っています。僕らのやりとりも「これはセリフなの?」「役者のアドリブなの?」と感じてもらえるぐらい、生っぽい言葉でできたら正解のひとつかな……とも。今いただいているのは粗訳の台本。多少英語を勉強しているので自分自身「ここはたぶんそのまま直訳したんだろうな」って箇所や、初見で日本人の方が聞くとちょっと背景がわかりにくく「どういう意味だろう?」と感じるだろう部分もあるので……生きた言葉で戯曲に向き合えるよう、早く稽古用の台本をいただきたいです! こういう作品の場合、翻訳家の方も稽古場にいらっしゃるんでしょうか?
ーー立ち合われている現場はよく拝見します。
それはいいですね。翻訳の方ともいろいろディスカッションしたいなぁ。早くこの物語を自分の言葉で読み解きたい。
ーー物語はカフカの戯曲の稽古と3人の日常会話が目まぐるしく入れ替わっていくことで、スリリングに進行していきます。
面白いですよね。カフカは20代の前半に『変身』を読んだきりなんですけど……あんまり内容は覚えていないな(笑)。でも虫になってしまうとか異次元的な作風でしたよね。この舞台もちょっとそういう異次元的というか、劇中劇でありながら一人二役みたいな観念的な構造にもなっていて、近しい空気を感じます。
ーー自身の気持ちの吐露なのか、役のセリフなのか、芝居へのダメ出しなのか、はたまた共に“人生の演技”を楽しんでいるのか……。場面場面での置きどころが自在にズレていく感じは濃密な台詞劇ならでは。
だからこそ緻密に作らないと……この複雑さを楽しみたいという気持ちと同じくらい、物語をコントロールしていく怖さも感じてます。緻密な分すごく脆くもあるし、お客さんがついていけなくなるのが一番怖いですね。僕ら3人の掛け合い、ちょっとでもどこかが「カッ」て外れたらガラガラと全体が崩れていってしまいそうで。ほら、あの、立体パズルゲームのような──
ーージェンガ的な?
そう、ジェンガ、ジェンガ(笑)。一度崩れたらどこから間違ったのかも遡れないようなバランスで成り立っているイメージです。自分はどちらかというと相手に投げるよりは受けるほうが好きだし、そういうお芝居を大事にしていきたいので……ここでも自分のセリフがどうこうというよりは、相手が何を言って、何を思っているかというのを常に探したり、感じようとしたりすることが大事なんじゃないかなとは思っています。やっぱり稽古場で不規則に起きたこととか、偶然起こってしまって「さあどうする?」っていう状態のほうが好きなんですよね。作品が緻密でも、自分の役としては事前にあまり細かく「ここでこれを取って」とか「ここで立って」とかは考えないです。
ーーそのスタイルは……いつ頃から?
特にここ数年、映像のお仕事をやらせてもらうようになってから、ですね。映像の現場で自分が想像していた状況と違う状況を監督が望んでいたりした時にまったく対応できず、「こんなこと、こんなたった2行でも自分はうまく言えないんだ!」という体験をして……いまだにできないことも多いけれど、でもやっぱりすごく反省した経験を踏まえて。あまり作り込まずに現場に行った時に感じたものとか、その状況で自分のセリフを自然に出せるように、そういうことはとても意識しています。
ーー映像現場でのスピーディーなリハーサルとひと月かけて行う舞台の稽古では、創る道のりも違うので。
そうなんですよね。もちろん稽古場に行ったら常に100%を出そうとはするんですが、同じシーンを何回も何回も練習するうちに慣れてしまうと……やっぱり本番が大事だから、稽古ではいくつか失敗してもまだ間に合うしとか、セリフ、なんとなく間違っててもまだ今は大丈夫だろうとか、そういうちょっとよくない余裕がいつのまにかできてしまっていて。テレビの現場に行った時にものすごく反省したのがその感覚。でも逆に言えばそういうことを気づかせてもらったから、舞台でもその学びを活かして「最初の稽古から、自分は100点を出せるような状態や気持ちを作っていくんだ」って、強く心がけています。
ーーそのためにはより普段の生活や見聞が大事になるようにも思います。
僕、コロナ禍になって余計なことをしなくなったんです。外に飲みに行くとか買い物に出るとか……いや、余計なことではなく、生活に必要のない行動を削っていきました。仕事に行って、家に帰ってきて、台本を覚えて、寝て、翌日また起きて、稽古に行って、というルーティンが定着したら、案外、自分はそれで生活ができているなぁって。生活の枝が剪定されていった感じがすごくあって、そうしたらより楽しくお芝居と向き合えているという現実が現れたんです。趣味を持つこともなく、たまに競馬を見て、三国志のゲームをやって……余暇はそれくらいで十分(笑)。ほんと、すっきりしました。「無くても大丈夫。この生活、シンプルでいいなぁ」って。だから、『UNDERSTUDY/アンダースタディ』の稽古も、シンプルな自分、ものすごく研ぎ澄まされた状態で臨めると思います。
ーー6月には蓬莱竜太さんの演出で初のPARCO劇場にも進出。こちらも新しい挑戦と経験にあふれていたのでは?
錚々たる俳優さんがいらっしゃいました。蜷川幸雄さん、小川絵梨子さん、栗山民也さんといった演出家さんたちとお芝居をされてきた方々が、蓬莱さんの元に集まっている。でね、さっきの話と通ずるところがあって、稽古場がもう一発目の立ち稽古から「これ、OKじゃないですか!?」と思っちゃうぐらいで──あれはまさに「初球160キロの外角低め、バンッ、最高のストライクですね」という到達度だったんじゃないかと思うんですけど……。
ーー気持ちがよかった。
そうなんです! 僕が目指している「作り込みはしないけれど最初から100%」という状況への緊張感や集中力って、第一線で活躍されている方はやっぱりみんなそうですし、それが当たり前なんだとはっきり気づかされました。非常に理想的でものすごい刺激的な現場に居る、自分の今のこのいいエネルギーをさらに持続し、そのまま『UNDERSTUDY/アンダースタディ』のほうにも注ぎ込みたいですね。パルコ劇場から芸劇へ……演劇人として、とても幸せな時間を経験しています。
ーー充実した研鑽の時を生きている実感が伝わってきます。
一方で来年の2.5次元舞台の出演も発表され、テレビドラマの放映も始まっていて……いろいろ幅広くやらせてもらえて本当に楽しい。そこはまた自分でちょっと自信を持てるところでもありますし。僕は2.5次元舞台をもう10年ぐらい続けてますけど、最近はその呼び方もみなさんに浸透してきて珍しいジャンルではなくなってきている。そこと、テレビドラマやこうした演劇の中の演劇もやらせてもらえている今、ここまでの幅のジャンルを行き来できている人ってまだあまりいないぞって意味では、どの作品、どの現場でも自分に自信を持ってやりたいなと思いますし、全ての根底は「お芝居」。そこは絶対変わらないので、全てを身にしながら全部の世界で演じ続けたいです。役者としてグッと成長したい気持ちは日々強くなっています。ちなみに、シアターウエストのキャパシティって……。
ーー300席弱ですね。
いいですよね〜。あの空間でお芝居を観るのも好きですし、やっぱりマイク使わないでやれるお芝居っていいんですよね。僕のことを応援してくださる方は僕と同じでいろんな演劇の種類を楽しんでくださる方が多いので、『UNDERSTUDY/アンダースタディ』もいっぱい通って楽しんでくれるんじゃないかなぁ。初めましての方々と初めての翻訳劇、自分にとってもすごく掻き立てられる素晴らしい要素がたくさんある作品。稽古を通じて自分が「こんな感情を持てるんだ」とか「こんな声を出せるんだ」という発見をしたいなという思いもあります。舞台俳優として今まで自分が出したことのない音とか表情みたいなものが、この『UNDERSTUDY/アンダースタディ』で見つけられ、届けられたらいいですね。
ーーその姿、本番でしっかり目撃させていただきます。
はい。ぜひそうできるように頑張ります。
取材・文=横澤由香

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