[Alexandros]川上洋平、韓国で初登場
No.1ヒットとなったSFエンターテイ
ンメント映画『SEOBOK/ソボク』につ
いて語る【映画連載:ポップコーン、
バター多めで PART2】

大の映画好きとして知られる[Alexandros]のボーカル&ギター川上洋平の映画連載「ポップコーン、バター多めで PART2」。今回は、韓国の2大スター、コン・ユとパク・ボゴムがダブル主演を務め、韓国で初登場No.1ヒットとなったSFエンターテインメント映画『SEOBOK/ソボク』について語ります。
『SEOBOK/ソボク』
脳腫瘍を患って余命宣告を受けた元エージェントのギホンが、自分の病気が治るための鍵を握っているクローンの青年ソボクを守るっていう話なんですけど、ここ最近、iPS細胞や肝細胞関連の医療技術のニュースが報道されることも多くて、僕もすごく興味を持っているんですね。というのも、何年か前に僕の父が癌になったり、兄がギホンと同じく脳腫瘍になってしまって。ふたりとももう治ったんだけど、うちの家系は割と癌の家系なので、いずれ自分もそういう病気を患ったら嫌だなあと思っていて。それもあって、そういう病を治す技術が発展したらいいなあという気持ちでこの映画を観てましたね。
『SEOBOK/ソボク』より
■主演のコン・ユはイケメンの主人公だけど実は嫌な奴みたいなキャラクターを演じるのが上手い
『新感染 ファイナル・エクスプレス』のコン・ユが主役のギホンを演じてるんですが、とても好きな役者さんですね。端正な顔立ちなんだけど、ギホンはあまりかっこよくない過去を持っていて。それでいて、自分が助かりたいがためにクローンの実験体であるソボクを助けようとする。コン・ユさんは『新感染』でもそうだったんだけど、イケメンの主人公だけど実は嫌な奴みたいなキャラクターを演じるのが上手いですよね。
監督のイ・ヨンジュは、2012年に『建築学概論』っていう恋愛映画がかなりヒットして。その作品は15年前と現在を交差させるような話だったんですけど、『ソボク』でも時間軸を描いていたので、通じるものはあるのかなと思いました。
『SEOBOK/ソボク』より
■この先の未来のことを考えさせる映画でもある
ギホンが余命宣告を受けているということもあって、全編を通して「生きてるんだったら価値のある人生を送ることが大切なんだ」っていうことが問いかけられているような作品ですよね。良いなって思ったのが、ギホンとソボクがビーチでやり取りするシーンで。ソボクは寝れないっていう特性を持ってるから、「なんで寝るの?」ってギホンに質問して、そこでギホンが「目覚めないかもしれないけど、目覚めるって信じて寝るんだよ」みたいなことを言うのはなかなかおもしろかったですね。
僕はずっと生きていたいリブ・フォーエバー派ですけど(笑)、10代の頃の「生」っていうものに対する執着とはまた違ってきていて。「いつかは死ぬわけだよな」と思うんだけど、医療の発達によっていつか死なないのかもしれない、とも思ったりして。そういう風にこの先の未来のことを考えさせる映画でもありますね。
『SEOBOK/ソボク』より
■SF映画はいかにリアルさを追求するかが大事だと思ってる
SF映画って、僕としてはいかにリアルさを追求するかが大事だと思ってるんですね。「近い将来本当にこういうことが起きるかもしれない」という説得力を、説明面だけでなくリアルな近未来感があるビジュアルでも持たせられるかっていう。『ソボク』はその視覚的な説得力の部分をもう少し頑張ってほしかったなっていうのはあります。もう少し重厚感のあるCGを使ってSF要素を強くしても良かったのかなって。ソボクは死なない体にするための技術の副作用として、手を触れずに物を浮かしたり破壊したりする超能力みたいな力を持ってるんですけど、その描写は『AKIRA』の影響は受けてるんだろうなと思いました。でも、その物が動いたり床を破壊したりする描写ももう少しリアルな感じにしても良かったとも思います。
あと、人間であるギホンとクローンであるソボクを比較して、コントラストが強いほうが僕としては楽しめたと思うんですけど、ソボクは見た目は普通の人間だし、中身も割とすぐ人間らしい感情が芽生えてたので、もうちょっとカリスマ的なクローン感がほしかったなとも思いましたね。
それと、これは思った人も多いと思うんですけど、逃亡してる時にバレにくくするためにソボクが服を替えるんですけど、めちゃめちゃ派手なパーカーを買ってて。「それだと逆に目立つじゃん。もうちょっと地味なやつ買いなよ」と思いました(笑)。
『SEOBOK/ソボク』より
■「人間はみんな死ぬんだ」というどうしようもない事実を見せつけられる
敵役の役者さんたちがすごく良かったですね。中でも、ギホンにソボクを守る依頼をする元上司のアン部長を演じたチョ・ウジンは『国家が破産する日』っていう映画に出てるんですけど、その映画でも良くて。『国家が破産する日』は好景気の中で通貨危機が起こる社会派の作品でおもしろいです。主演のキム・ヘスがまた良いんですよね。キム・ヘスは『グッバイ・シングル』っていう映画では今をときめくマ・ドンソクと共演してるんですけど、そこではコメディエンヌぶりを発揮してます。説得力のある素晴らしい演技をする役者さんたちが韓国映画にはたくさんいますよね。
韓国映画で最初に見たのはハン・ソッキュ主演の『8月のクリスマス』だったんですけど、そこからよく韓国映画を観てて思うのは、死を根っこに感じながら切なくも生を全うしている様をしっかり落とし込む作品が多いなっていうことで。「人間はみんな死ぬんだ」っていうどうしようもない事実を残酷なまでにまざまざと見せつけるというか。そういうところがこの世界の儚さでもあり美しさでもあるということがうっすら描かれていたり。そこがリアルだなと思いますね。
日本はアニメ大国っていうこともあって、僕としては死をバーチャルな世界の中でゲーム感覚で捉えてる作品が多い気がしてるんですよね。韓国映画は「生と死とは何か」をリアルに突き詰めてるというか。そこは緊張状態が続いてるようなお国柄も影響してるのかなって。兵役が義務付けられていて、国を守るために戦うっていうことが身近にある。隣の国だけど、僕も含めて日本に住んでる日本人にとっては、そういう感覚って想像がつかないところもありますよね。僕は昔中東の国に住んでいたので、まさにそういう緊張状態を味わってましたけど、世界を見渡すと実際戦いが起きてる国や緊張状態が続いてる国はとても多い。だから、そういう感覚をあまり感じずに生活できる日本は幸せだなとも思いますね。最近僕が観た韓国映画はハリウッド的な映画かホラーが多かったので、『ソボク』はそういう意味でも久しぶりに韓国映画らしい韓国映画を観たという風にも感じました。
取材・文=小松香里
※本連載や取り上げている作品についての感想等を是非spice_info@eplus.co.jp へお送りください。川上洋平さん共々お待ちしています!

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