神使轟く、激情の如く。 バックドロ
ップシンデレラ、a crowd of rebell
ionを迎えた対バンライブ『LEGIT Vo
l.8』をレポート

LEGIT Vol.8

2021.6.14 新宿BLAZE
予測不能なのは曲展開だけではなかった――。先日、2022年3月30日(水)に初の東京・日本武道館にてワンマンライブ『神使轟く、激情の如く。日本武道館単独公演「宣戦布告」』を開催することを発表した“神激”こと神使轟く、激情の如く。(読み:しんしとどろく、げきじょうのごとく。)。神激といえば、ゴリゴリのメタルコアからプログレ、ヒップホップ、Jポップまで予測不能な展開を繰り返すエクストリームな楽曲が特徴。それを実久里ことの、生牡蠣いもこ、涙染あまね、三笠エヴァ、二日よいこ、TiNAの6人がクリーンボーカル、ラップ、スクリーモ、シャウトを織り交ぜて歌い踊ると、そのステージングと完全シンクロさせるようにパラデータを操り、生バンド並みの迫力あるライブサウンドをマニピュレーターが場内に鳴らすライブスタイルは、いまや誰にも真似できない彼女たちの魅力となっている。そんな神激は現在、様々な邦楽ロックシーンの先輩を迎え、コロナ禍を吹き飛ばすような勢いで独自の対バン企画『LEGIT』を開催中。この『LEGIT』のなかから、ここでは6月14日、東京・新宿BLAZEにバックドロップシンデレラa crowd of rebellionを迎えて行なったスリーマン『LEGIT Vol.8』で3者がバッチバチに白熱しまくった狂乱の宴を完全レポートする。
バックドロップシンデレラ
いい意味で3組とも全然ベクトルが違う“熱狂”を会場に作り出すことを得意としているライブアーティスト。それを示すように、この日集まったファンは、ほとんどが推しのバンドTを着て参戦という気合いの入れようだった。だが、終わってみるとそんな風にバンドのプライドを背負って集まった観客みんなが、お目当以外のバンドにも魅了され、垣根を超えて盛り上がるという見事なハマりっぷりで熱狂。これこれ! これこそが対バンを観る醍醐味。Vol.8にして、誰もがそんな幸福感に満たされた今回のイベント。
バックドロップシンデレラ/でんでけあゆみ
トップバッターとしてイベントの口火を切ったのはバックドロップシンデレラ(以下、バクシン)だった。“初めましての神激さん、お久しぶりのリベリオン”とオープニングは、この日の出演者を「およげ!たいやきくん」の替え歌にのせて豊島“ペリー来航”渉(Vo,Gt)が弾き語りで歌ってご挨拶。直後に、アサヒキャナコ(Ba,Cho)、鬼ヶ島一徳(Dr,Cho) が破壊力満点のリズムで「亡霊とウンザウンザを踊る」を奏でると、でんでけあゆみ(Vo)がステージに飛び出してきて、いよいよパーティーが開幕。
バックドロップシンデレラ/アサヒキャナコ
「バズらせない天才」が始まると、あゆみは軽やかなステップでステージを縦横無尽に動き回り、「フェスだして」が始まる頃には、ユーモラスな歌詞、軽快なリズムに導かれて、手を上下に動かしたりお願いヘドバンをする踊りに彼らのファンじゃない人も巻き込まれ、場内は大盛り上がり。どんな場所でも踊らせればそこはホームに変身。これがバクシンのバンドパワーだ。
バックドロップシンデレラ/鬼ヶ島一徳
曲中、ペリーの長めのMCで盛り上げたあと、シンガロングができないいま「僕たちはハミングを奨励しています」と告げると、この曲のシンガロングパートをファンが一斉にハミングで轟かせる(←意外と迫力ある!)。そんな観客たちを「2020年はロックを聴かない」の高速ステップでさらに踊らせ、「激情とウンザウンザ」、キラーチューン「台湾フォーチュン」とつないだ頃にはステージもフロアも汗だくで踊りまくり。間髪入れずに「月明かりウンザウンザを踊る」を見舞い、最後に鉄板曲「さらば青春のパンク」でフロアを狂乱の渦に巻き込んで、あゆみが美しい開脚ジャンプをキメ、ライブは終了。音楽をとことん踊りへと変換していくバクシンらしいライブアクトで、フロアを楽しませた。
バックドロップシンデレラ
a crowd of rebellion
2番手に登場したのはa crowd of rebellion(以下、リベリオン)。さっきまでお祭り騒ぎで踊りまくっていた場内に、美しいピアノの旋律が流れ出す。そのSEがどんどんボルテージを上げ、場内にクラップが広がると、丸山漠(Gt)、近藤岳(Dr)、小林亮輔(Vo,Gt)、サポートベースとともに宮田大作(Vo)がオンステージ。全員、白✕黒で統一されたスタイリッシュな佇まいだ。宮田が「新潟から来ました」といって挨拶代わりにいきなり丸山のギターリフが襲いかかるアンセムチューン「M1917」を撃ち抜く。宮田のアグレッシブなスクリーモと小林のクリーンなハイトーンが次々に押し寄せてくる強烈な幕開けから「Black Philosophy Bomb」とつなげ、美メロ✕絶叫のスクリーモバンドとしての圧倒的存在感でフロアに激震を呼び起こしていく。
a crowd of rebellion/宮田大作
演奏が終わると「カッコよくね? 俺たち」と思わずいってしまった宮田に小林が「いま心の声、出ちゃったね」と笑いかける。演奏中の彼らからは想像できないフランクな表情を見せた直後、曲は激アツな「O.B.M.A」へ。観客がウォールオブデスや歌って大騒ぎできない分、バンドが異様な熱量でフロアに挑んでいるのが伝わってくる。そこからキャッチーな「無罪者」、小林のエンジェリックな美声がライブ空間に天国を生み出す「coelacanth」を連投。
a crowd of rebellion/丸山漠
「俺たちは激しいだけじゃない、静かなだけじゃない」と宮田が語り、アカペラから始まった「リビルド」で観客の胸奥をじわじわ侵食。曲中「この世界はコロナのせいじゃない。人間のせいなんだ」と宮田が心撼わすメッセージを投げかけ、目頭が熱くなってきたところに“さよなら”という台詞から始まる「III」という、たまらない流れでライブを締めくくる。コロナ禍でも感動をもたらすリベリオンのライブ力を存分に見せつけてくれた。

a crowd of rebellion/小林亮輔
a crowd of rebellion/近藤岳
神使轟く、激情の如く。
2組の熱演を受け、この日ラストにステージに登場した神激。腕を骨折した三笠は、ステージ上手に立ち、そこにステイ。客電が消えるとフロアでは神者(神激ファンの呼称)たちが一斉にサイリウムを灯し、いつもの神激空間を作り上げる。シンセに合わせてド派手なレーザービームが広がるなか、この日は頭から「合法トリップ:ボイルハザード」を威勢良く浴びせかけ、バンドキッズに殴り込みをかけていく。バクシン、リベリオンのライブの熱気を受け、オープニングからバチバチに気合いが入っている6人。それでも観客と目線が合えば、笑顔を返すことも忘れないところが素敵だ。
神使轟く、激情の如く。/三笠エヴァ
神使轟く、激情の如く。/涙染あまね
手を胸の前でクルクル回すチャーミングな振り付け、そこから別次元へと向かうキャッチーなサビメロ、TiNAのソロダンスなど、アイドル要素を盛り込みつつも、メタリックなサウンドから繰り出すブレイクダウン、よいこのスリリングなラップ、あまねのエモーションをすべて吐き出すようなスクリーモのクオリティーでロックキッズを驚かせ、神激の世界へどんどん引きずりこんでいく。そこから、対バンイベントでは大活躍中の「自己都合主義メタモルフォーゼ」へとなだれ込む。
神使轟く、激情の如く。/TiNA
神使轟く、激情の如く。/実久里ことの
毎回お楽しみの中盤のフリースタイルゾーンは、バクシンの「フェスだして」をフィーチャー。これで対バン相手のファン心をグッと引き寄せたあとは、いもこが「3月30日、ぶどーかん!」とちゃっかり自分たちの告知も刷り込んで、季節感溢れるプログレッシブミクスチャーロックチューン「夏声蝉時雨」へと展開。このあとTiNAが「スリーマン、神激は初めてなんです」と場内に語りかけて始まったMCでは、あまねがリベリオンにシャウトをする喉のケアについて相談したときの様子をよいこが明かし「そのときオリーブオイルの直飲みを勧められてんだけど。みんな、オリーブオイル直飲みしたことある?」とフロアに尋ねると、ステージ上にいたあまねが「さっき貰って飲みました」と返答。そうして「今日は喉もバッチリ!」といって笑顔を浮かべた。
神使轟く、激情の如く。/二日よいこ
神使轟く、激情の如く。/生牡蠣いもこ
この後はジャジーなサウンドを纏ったいもこが大人っぽい表情を浮かべて「神奏曲:アブソリュートゼロ」を歌いだすと、曲はラウドへと急転直下。よいこのラップに続いて、包帯&ギブス姿まで絵になる三笠がフロアに向かって必殺技を激しく叫び散らし、観客のテンションを熱狂のカオスへと導いたあと、その熱狂をひきずるようにそこからシームレスに「BAD CAKE」を投下。クラップで場内を一つにしたあと、ことのが「ラストスパート、いけるかー!」とフロアを煽り、「神奏曲:テンペスト」へ。三笠の昇竜拳に続いてよいこの高速ラップが炸裂し、ラスト、“共に突破して未来へ”と爆発的なエネルギーで高音メロを駆け上がることののボーカルでブチ上がったあとは、神激史上もっともヘヴィなメタルコア「神奏曲:ガイア」でトドメの一撃を食らわす。
神使轟く、激情の如く。/実久里ことの
神使轟く、激情の如く。/TiNA
疾走感あるドラムにのせて“ナンマイダー”、キメキメのギターリフとともに“G.O.D!!”を唱えたあと“心!頭!滅!却!”を合図に、音とテンポが徐々にダウンしていき、最後に場内はブラックアウト。真っ暗闇、サイレントな空間をあまねが咆哮一発で切り裂いていくと、場内は興奮のピークに到達。イベントのトリに相応しい大迫力のクライマックスを生み出してみせた。
神使轟く、激情の如く。/涙染あまね
神使轟く、激情の如く。/生牡蠣いもこ
最後に今日集まってくれたバクシン、リベリオン、オーディエンスに感謝の気持ちを伝えたいもこが、自分たちはライブをするたびにみんなからパワーを貰っているが「あなたたちだってそうでしょ? 悲しいとき、苦しいときバクシンの、リベリオンの、神激の音楽があったからここにいるんでしょ?」と観客の心に訴えかける。このサウンドに負けない熱い思い。これこそが神激の原動力。そんな生き様を最後に見せつけ、ここからまた日常に戻ったあと“あなたの糧になるように”と願いを込めて「不器用HERO」をエモーショナルに歌いあげた彼女たち。全力でみんなの日常にエールを送り、どこまでも気持ちを鼓舞していく6人の姿はキラキラ輝いていて、この『LEGIT』を通して、メンバー全員がカッコいいフロントマンに成長してきていることを実感。そして、歌を届け終わると、この日のライブは幸せな余韻をたっぷりとそれぞれの心に残したまま終わりを告げた。
神使轟く、激情の如く。/二日よいこ
神使轟く、激情の如く。/三笠エヴァ
このあと、神激は7月16日、名古屋・名古屋ReNYにヒストリックパニックを迎え『LEGIT Vol.9』を開催。2022年3月30日、日本武道館で開催する単独公演『宣戦布告』まで、彼女たちの爆走はまだまだ続いていくので、まだ神激のライブを見たことがない人は、ぜひ会場で直に体感してみてほしい。
取材・文=東條祥恵 撮影=鈴木恵

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