LOVE PSYCHEDELICOが魅せた、20年の
キャリアを持つバンドの懐の深さとエ
ネルギッシュなロックンロールバンド
の圧倒的な姿

LOVE PSYCHEDELICO 20th Anniversary Tour

2021.7.9 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
演奏についてはもちろん、その日のライブに読み取った物語や、アーティストがステージで語った言葉に込めた思いを伝えることも我々音楽ライターの仕事だと思っている。その意味では、この日のライブにも伝えるべき物語はあったと思う。しかし、それを読み取る前に筆者はLOVE PSYCHEDELICOの音楽そのものにすっかり魅了されてしまっていた。
『LOVE PSYCHEDELICO 20th Anniversary Tour』と題したツアーもこの日を含め残り3公演。いよいよ大詰めを迎えたこの日、バンドの演奏は2000年4月にリリースした1stシングル「LADY MADONNA~憂鬱なるスパイダー~」から始まった。
歌いながらKUMI(Vo/Gt)が腕を上下に動かす、ちょっとミック・ジャガーっぽいキュートな振りに合わせ、観客を踊らせる。そして、「来てくれてありがとう。素敵な夜にしようね!」と繋げていったのがKUMI、NAOKI(Gt)、深沼元昭(Gt)がコード・ストロークのリフをユニゾンで鳴らしたイントロが印象的なクールなロックンロール「No Reason」、フォークロック調の「This is a love song」、そしてカントリーソングの「Beautiful Days」の3曲だ。
「This is a love song」ではKUMIの歌にNAOKI、深沼、高桑圭(Ba)がコーラスを重ねる裏で松本圭司(Key)のピアノがラグタイム風に鳴り、「Beautiful days」ではその松本と深沼がマンドリンを奏で、KUMIの伸びやかな歌声とともに曲が持つ世界観をよりリアルなものにする。
そんなふうに序盤から観客の気持ちを鷲掴みにしていったバンドが観客を自分たちの世界の、さらに深いところに誘ったのが、バックドロップにサイケデリックな映像を映しながら演奏した「Shining On」と「Rain」だった。
シャッフルの跳ねるリズムとマイナーに転調するサビのギャップにハッと気持ちを持っていかれる「Shining On」。NAOKIが奏でるエキゾチックなギターリフが、まさにレッド・ツェッペリンオマージュな「Rain」。ともにLOVE PSYCHEDELICOのマニアックな志向が色濃く表れた2曲がNAOKIによる奔放なギターソロとともに会場の熱をぐっと上げたことは言うまでもない。
この日、KUMIとNAOKIら、棹隊のメンバーたちが1曲ごとに曲が持つ音色にふさわしい棹(ギターとベース)に持ち替えながら披露したのは、LOVE PSYCHEDELICOがデビューしてからこの20年の間、ファンと分かち合ってきた代表曲とも言える全18曲。
「LOVE PSYCHEDELICOは去年、デビュー20周年を迎えました。この20年、いろいろあったと思うんだけど、こうやってみんなに出会えたことはほんと宝物です。いい時も、そうじゃなかった時も一緒にいてくれてありがとう!」(KUMI)
2020年6月から予定されていたツアーが一度延期になりチケットが払い戻しになったことに触れ、「もう1回、チケットをゲットして同じ空間で音楽を楽しむために来てくれたと思うので特別にがんばります!(笑)」(NAOKI)
それ以外、言葉は必要なかった。そもそも思いを言葉で伝えるのではなく、音楽を届けることに取り組んできたバンドだ。彼らの楽曲や演奏の向こうに見え隠れする豊かなバックグラウンドに思いを馳せながら、音楽だけに浸ることができる時間が個人的にはすこぶる心地好かった。
テンポを落としながら演奏に熱を込めていった「Secret Crush」「Last Smile」「Fantastic World」の3曲をじっくりと聴かせた中盤のブロックのハイライトは何と言っても「Last Smile」だろう。展開を重ねながら、観客の気持ちをとらえて離さないメランコリックな歌メロの力もさることながら、往年のウエストコーストロックを彷彿とさせる哀愁のハーモニーは、まさに圧巻の素晴らしさ。
そんな中盤のブロックから、後述するようにがらっと様相を変える後半戦に繋げたのが、跳ねるリズムに胸が躍るポップソングの「This Moment」。KUMIとまるでデュエットするようにNAOKIがギターでメロディアスなフレーズを奏で、観客を沸かせると、NAOKIがスライドギターのフレーズをルーズに鳴らした「Swingin’ 」からの後半戦はライブバンドとしてのLOVE PSYCHEDELICOの魅力を存分にアピールしていった。
NAOKIが12弦のアコースティックギターを泣かせながら始まったブルースジャムをたっぷりと聴かせてからなだれこんだLOVE PSYCHEDELICOのポップアンセム「Your Song」では、“Come on!!”というKUMIの呼びかけに応え、観客が手を振りながらジャンプを始める。
「ありがとう! もっと一緒に踊れる?」(KUMI)
そこからの展開があまりにもすごかった。それまでは敢えて抑えていたんじゃないかと思えるぐらいKUMIとNAOKIのパフォーマンスにアクションが加わり、ステージに動きが出始める。そんなエネルギッシュなバンドの姿を正面からのライトがバックドロップに映し出した「This Way」、KUMIがステップを踏みながらステージを前後左右に動き、ジャンプを決めた「Aha! (All We Want)」、そしてコロナ禍だからという理由でいつものパフォーマンスを変えたくなかったのだろう、“Come on now!!”とKUMIが客席にシンガロングを求め、観客の代わりにメンバーたちが“Oh Oh Oh”とシンガロングの声を上げ、声を出せない観客たちが身振り手振りで応えた「Everybody needs somebody」。4年ぶりにバンドと一緒にツアーできる歓びとともにロックンロールナンバーをたたみかけるように繋げると、ステージの6人はライブバンドとしての底力を見せつけながら、観客とともに大きな熱狂を作りあげていった。
「とても素敵な夜をどうもありがとう。愛してるよ。声を出せなくても、みんなの温かい気持ちは伝わってきてます。最後にみんなで一緒に行こう!」(KUMI)
本編最後を飾ったのは「Freedom」。シンガロングの声こそ上げられなかったものの、観客はもちろん、メンバーもジャンプした。そして、KUMIが手振りを求めると、観客全員が一斉に頭の上で手を横に振り始める。サビで繰り返す《Freedom》という言葉の響きとアンセミックな曲調が一つになり、観客の気持ちに宿したのはポジティブなエネルギー。そして、眩い照明の中に至福の瞬間が訪れた。
20年のキャリアを持つバンドならではの懐の深さを余裕とともに味わわせた前半と、いまだエネルギッシュなロックンロールバンドとして圧倒的な姿を見せつけた後半。そのギャップも楽しませたLOVE PSYCHEDELICOは、アンコールにムーディーな「Standing Bird」ともう1曲、“みんなのために歌います”とアコースティックタッチの「A DAY FOR YOU」を披露。そのアウトロを、全員が冨田政彦(Dr)を囲むように演奏しながら、彼らが持つピースフルな魅力を印象づけ、2時間を超える熱演を締めくくったのだった。
因みに、ライブの中盤、2019年の『Premium Acoustic Live “TWO OF US" Tour 2019』から導入したLOVE PSYCHEDELICO特製のスピーカーをこの日も持ち込んでいることを語ったNAOKIは、そのスピーカーで鳴らす開演前のBGMを、今回も自分たちのスタジオでアナログ盤からPro Toolsに落とし、手作業でノイズ除去したそうだ。
“できるだけ良い音で聴いて欲しいと思って”とNAOKIが語ったボブ・ディランの「追憶のハイウェイ61」をはじめとするそのBGMの数々を、プレイリストにして、ぜひサブスクにアップしてほしいと思っているのは筆者だけではないはずだ。そんなところにも音楽そのものを楽しませるLOVE PSYCHEDELICOらしさが表れていたように思う。

取材・文=山口智男 撮影=岡田貴之

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