[Alexandros]の『ALEATORIC TOMATO
Tour 2021』 "ホーム"横浜の地で示
した姿

ALEATORIC TOMATO Tour 2021 2021.7.15 KT Zepp Yokohama
全国ツアーとしては2019年の『Sleepless in Japan Tour』以来、約2年ぶり。ドラムのリアド偉武加入後初のツアーでもある『ALEATORIC TOMATO Tour 2021』。中盤戦のKT Zepp Yokohama2デイズの初日は、川上洋平(Vo/Gt)と白井眞輝(Gt)が神奈川県出身ということで、「楽しい地元愛に溢れた横浜の一日目」と川上が表する等、ホーム感満載のライブとなった。
[Alexandros]のライブとは、例えセットリストが同じだとしても、ライブごとにどんどんアレンジが変わる。このツアーはMCは最小限、基本的には曲間無しに次の曲にガンガン移行していくスタイルで、アレンジで大きな変貌を遂げている曲が多く、親しみ慣れた楽曲でも新曲と見紛う程。まさに、ロックバンドとは進化し続ける生き物なのだということを思い知らされた。
イントロで川上が「手を振る準備はできてますか!?」と呼びかけて始まったが、すぐに曲を止めて「全員やろうぜ!」と珍しく要求し、「声出せないのはわかってるけど、横浜それぐらいはできるだろ?」と煽った「Don’ t Fuck With Yoohei Kawakami」は、川上と磯部寛之(Ba/Cho)が向き合ってヘビーな音をぶつけ合ったアンサンブルを経て、白井が長いインプロ的なギタープレイを披露し、かなり獰猛でフリーキーだった。暗めのブルーの照明の中で軽やかなステップを踏みながら川上が歌った「Thunder」はBedroom Jouleヴァージョンだったが、さらにクールで深遠なアレンジが施されていた。
大胆なアレンジに加えて、ステージ上のスクリーンに本ツアーオリジナルの映像が何度も映し出され、映像を含めてセッションしているようなドライブ感があった。オーディエンスが声を出せない中、立体的な物語が描かれた「見るライブ」としても、テンションを落とさず曲と曲をそのまま繋ぐ「聴けるライブ」としても素晴らしかったのだ。それが高いレベルで具現化できるのも、[Alexandros]に骨太且つ緻密な演奏力と10年以上にも亙る濃密な経験があるからこそだ。音楽には枠組みなんてないと言わんばかりの自由度に溢れた極上のライブ体験だった。
あまり出身地を前面に出さない[Alexandros]だが、(ほぼ)地元である横浜公演ということで、MCではその話題に。川上が「『We are [Alexandros]! from Tokyo』とさっき言っちゃったんですが、東京出身はサポートのROSÉだけ(笑)」と自身に突っ込む。「出身を武器にしちゃうと他の土地に行った時に気まずい。俺は他の土地も好きだし、現に大阪の方が神奈川より好き(笑)。皆さんがどこ出身であろうと──もっと言うと、どんなものを信じていようが、この会場に来て俺たちの前にいるならば心から愛したい。ただ、うちのワンマンで他のバンドのTシャツ着てるやつはマジぶっ殺す(笑)」と川上。
川上は「Beast」のインタビューで、「意見の違いや考え方の違いによって争いごとやぶつかり合いは起こってしまうんだけど、どの意見も残したまま共存していきたい」「いろんな人に自分の音楽を好きでいてほしいし、好きでいてくれた人が傷ついてほしくない」と語っていた(https://spice.eplus.jp/articles/278529)。特定の思想によって聴き手が振り落とされないように、まっさらな気持ちで自身の楽曲を愛してほしいのだと。その信念はまさに、この日もバキバキの音像で披露された「Beast」で、何が正義で何が悪なのか、何が正解で不正解なのかという問いかけでもって歌われている。MCからもその強固さが滲んでいた。
さらに、最新シングル「閃光」をリリースするタイミングで行ったインタビューでは、現在地とこれからのヴィジョンについてこんなことを言っていた。「自分たちには確固たる好きな表現があるので、それを勢いだけじゃなくちゃんと伝えられるように形づくっていきたい」「誰にも負けたくない』というこれまでのガソリンはありながら、もうひとつのガソリンを手に入れてそれを楽しんでる状態」だと(https://www.vogue.co.jp/celebrity/article/expressing-music-as-art-alexandros-yoohei-kawakami)。
闘争心をエンジンに時代に風穴を開けるやんちゃな攻撃性を持ち、音楽の果てしない自由度を説得力を持って見せつけるパフォーマンスは、確かにネクストレベルを感じさせた。ライブハウスで間近で聴く「風になって」は爽快さと泥臭さが混然一体となり、どこまでも想いが羽ばたいていくようだったし、すぐに喜びのハンドクラップが起きた久々の「This is Teenage」では白井と磯部とROSÉの「Come on!」という爽快なコーラスも後押しし、自らの音楽を世界中に知らしめる旅はまだまだ続くのだという意志が貫かれていた。
本編ラスト、ドラムセットの前に寝転がって両人差し指を突き上げ、つくづく名残惜しそうだった川上。自由で獰猛でしなやかな[Alexandros]の最新形は、本ツアーを経てさらに進化していくのだろう。なお、7月31日Zepp Osaka Bayside公演のライブ全編&アフターパーティーの生配信が決定したとのこと。

取材・文=小松香里

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