「一週間フレンズ。」岩崎太郎監督イ
ンタビュー(後編)~今後の見どころ

岩崎:登場キャラクターが本心を吐露する、お決まりの場所になっていますね。本心をさらけ出しやすい場所なんでしょうか(笑)。
 
実は、土手というよりは、川と橋を見せたかったんです。位置関係をハッキリ示しているわけではありませんが、川をはさんで香織の家と長谷の家があるんですよ。屋上のシーンもそうなんですが、金網の柱をふたりの間に入れたりすることで、ある種の断絶を表現しています。ふたりは“友達”ですが、距離を縮められるようで縮められない。そういった距離感を表すために、ふたりを分ける壁をいろいろな形で見せています。
また、夕日を綺麗に見せられたり、川の上に何もない開放感の気持ちよさもあるので、便利に利用しています。
 
――背景にもかなりこだわっていますよね。見覚えのある光景だなと思いましたが、もしかして府中市の付近ですか?
岩崎:はい、ロケハンもしました。当初はここまでリアルに再現するつもりはなく、場所を限定せずに「都会ではない、どこかわからない地方都市」くらいにとどめておきたかったんです。ところが、第2話のスタッフが街をキッチリ表現したいということで、写真を参考にして聖蹟桜ヶ丘駅をそのまま描きました。京王電鉄さんにもご協力をお願いして、以降は写真を多用するようになりましたね。
 
――では、話は変わりますが、キャラクターを演じる声優さんについてもお話をうかがいたいと思います。どのようにキャスティングしたのですか?
岩崎:年齢や経歴は一切考慮せずに、声がキャラクターに合っているかどうかで選びました。長谷役の山谷祥生くん、香織役の雨宮天さんともに20代前半とフレッシュなのは偶然の産物です。山谷くんは、ほとんど長谷そのままですよ。長谷というキャラクターは、子供っぽいところやまっすぐなところがとても重要なんですが、オーディションで初めて山谷くんの声を聞いた時には「長谷本人が来た!」と驚いてしまいました(笑)。即座に「この人しかいない」と思いましたね。
 
一方、香織役の声優さんには、今流行りというか、キャピキャピしたお芝居をする人は避けたいと考えていました。若手の声優さんは、どうしても型にはまった典型的なお芝居をする人が多いんですが、その中でも数人そうではない演技をする方がいた。香織役の声優さんにはEDテーマを歌ってもらうことも決まっていたので、最初は演技で候補を絞り、最終的に歌を聴いた上で決定しました。雨宮さん自身、サバサバした媚びるところのない性格で、まさに僕たちの求めていた役者さんでした。
 
――山谷さんと雨宮さんの印象はどうでしたか?
岩崎:ふたりとも緊張していましたが、僕も監督は久しぶりなので、同じくらいガチガチでしたね(笑)。実は、お二人とちゃんと話す機会を持てたのが3話くらいからなんですよ。ふたりともマジメなので、桐生役の細谷佳正さんが、現場の雰囲気を盛り上げてくれたのはありがたかったですね。演技に関してはオーディションの際にしっかり選んだこともあり不安になるようなことはまったくありませんでした。
 
――歌や音楽についてもお聞かせいただければと思います。雨宮さんが香織として歌うエンディングテーマの「奏(かなで)」は、もともとはスキマスイッチの曲ですよね。どうしてこの曲が採用されたのでしょうか?
岩崎:楽曲のカバーを使うということは決まっていて、何百曲という中から選びました。当初はオープニングテーマもカバーで、という話もあったのですがオリジナル楽曲ということで落ち着きました。
 
――戸田色音さんの劇伴(BGM)はストーリーにとてもマッチしているように感じました。監督の方から、こういった音楽がほしい、というような要望はされたのでしょうか?
岩崎:劇伴に関しては、ほとんど音響監督の本山哲さんにお任せしました。僕の方からは、本作はギスギスしたところのない作品で、登場するキャラクターはみんな優しい子なので、音楽についても手触りの柔らかさを重要視したい――具体的には、できるだけ硬質的な電子音を使わずに生の演奏を使いたい――ということを伝えたくらいです。そうして完成した音楽は、まさしく僕が欲しかったものだったので、初めて聴いた瞬間はものすごくうれしかったですね。
 
本作のために用意された劇伴は25曲ほどとかなり少ないんですが、これはストーリーの内容上、それほど多くの曲数を必要としないだろうという本山さんの判断によるものです。実際に聴いていただければわかると思いますが、本作では1話につき使用されている曲数もさほど多くはないんです。
 
――なるほど、音楽に注目して見返してみるのもおもしろそうですね。では、今後の見どころを教えていただけますか?
岩崎:全12話ということで、原作通りのストーリーでは終われないので、アニメオリジナル展開になっていきます。長谷と香織にとっては、一週間で記憶がなくなるというハンデを抱えつつもがんばっているところに、九条くんという爆弾が落ちてくる、かなり重たいできごとが起きるはずです。それを、どうやってふたりが乗り越えていくのか、彼らの関係がどうなっていくのか、注目していただきたいですね。
 
――それでは最後に、クライマックスに向けての放映を楽しみにしているファンに一言いただけますでしょうか?
岩崎:香織と長谷、ふたりの行く末を最後まで暖かく見守ってあげてください。また、アニメはまもなく終わってしまいますが、原作コミックの連載は続いていますので、そちらもぜひ注目してください!
 
 


(C)葉月抹茶/スクウェアエニックス・「一週間フレンズ。」製作委員会

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