澤野弘之とKOHTA YAMAMOTOが語る『8
6』劇伴制作秘話と「音楽の言葉」を
紡ぐ関係性

そのハードな世界観で話題となったTVアニメ『86―エイティシックス―』。分割2クールの第一期は先日終了したが、この骨太の世界観を支えているのが澤野弘之とKOHTA YAMAMOTOが作り上げる劇伴だ。過去にも『進撃の巨人』『甲鉄城のカバネリ』『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』などでもタッグを組んできた二人に『86―エイティシックス―』という作品について、それぞれの印象、劇伴作りについて話を聞いた。巻末には二人のサインプレゼントもあるので、是非チェックしてもらいたい。
(c)2020安里アサト/KADOKAWA/Project-86
■1つの作品を二人で手掛ける澤野弘之とKOHTA YAMAMOTOの関係性
――お二人が音楽を担当されているTVアニメ『86―エイティシックス―(以後『86』)』ですが、やはり作品の印象からお聞きしたいです。
澤野:全体的なイメージは日常的なシーンがフィーチャーされていて明るい雰囲気があるんですけれど、出てくるキャラクターたちがそれぞれいろんなことを抱えていたりだとか、86区という区域は戦争で常に死に追い込まれている、みたいな世界だったりする。その対比された世界のコントラストみたいなものが魅力的ですね。日常が明るければ明るいほど、戦闘シーンだったりとか、人が死んでしまう時の悲しみだったりとかが、自分も視聴者として見ていてすごく心に来るものがある。もちろんエンタメ作品としても凄く楽しんで見させてもらっています。
YAMAMOTO:人間扱いされない「エイティシックス」の人たちに戦争を任せていて、それに対して国を支配している人たちは壁の中でのうのうと生きていて、っていうすごく理不尽さのある世界。その世界観に凄く惹かれたっていうのがまずありました。そしていざ放送が始まってみると、壁の中では主人公の一人であるレーナがその理不尽さに抗おうと反発して、それを覆そうとしている。逆に「エイティシックス」側は、自分たちの運命みたいなものを受け入れていて、今を明るく生きている。押し付けている側と押し付けられている側の両者の間で表情が逆になっているところが、実際にアニメを観て意外に感じたところですね。そこがまた作品としてより魅力が感じられるところになっていると思います。
――確かに「サンマグノリア共和国」と「エイティシックス」はその立場と受け入れ方が対局な感じはしますね。そして今回アニメになり、残酷な現実が突き付けられる中で、お二人の楽曲のエッジの立ち方が作品のクオリティを物凄く上げていると思います。今回、澤野さんとYAMAMOTOさんで劇伴を手掛けられているわけですが、楽曲を作るうえで心がけた部分はあるのでしょうか?
澤野:二人で分担する上で、制作サイドからリクエストがあったのは、「エイティシックス」側はちょっと土着的な感じで、「サンマグノリア共和国」側は少しクラシックみたいにというものでした。YAMAMOTOくんにも「エイティシックス」側の曲は作ってもらってるんですけれども、僕が「エイティシックス」側の日常曲を多めに作っていたので、そこのサウンドの意識はしましたね。リクエストされたこと以外では、基本的に『86』という作品は結構ダークな部分とかいろいろなものを内包しているんですけど、自分としてはやっぱり音楽はエンターテインメントにしたいという思いが強いので、サウンドとして、カッコいいシーンがカッコよく見えるとか、楽しいシーンが楽しく見えるようなというものをちゃんと出せるような音を心がけて作っていければ、と思って取り掛かりました。
YAMAMOTO:僕はクラシカルめな曲だったりとか、レーナたちの心情系な部分だったり、ちょっとコミカルな部分も作らせていただきました。そういう意味では明るい曲は明るく、コミカルな曲はコミカルに、クラシカルな曲もちょっと馬鹿馬鹿しいぐらいクラシカルな感じに振り幅をしっかりつけようというところは意識としてありました。『86』としてこう! と言うより、作品の劇伴としての役割をどうしようか、というところを意識して作っていった感じですね。
――お二人で担当されている中で、「エイティシックス」側と「共和国」側みたいな割り振りはあったとのことですが、その中でも「この曲どうする?」みたいなやり取りもあったんでしょうか。
澤野:最初の打ち合わせで音楽のメニュー表をいただくのですが、そこからどう割り振りするかは二人で決めていくんです。『86』に限らずですが、二人で担当したときに、片方が日常が多くて、片方が戦闘が多くなるみたいな形で楽曲が偏っちゃうよりは、お互いにバランスよくサウンドのアプローチができた方がいいなっていう風に考えているので、そこの分量がイーブンになる形で割り振りをしていったっていうのはありますね。
澤野弘之
――なるほど。そんなお二人で一つの作品の音楽を担当するのはTVアニメ『青の祓魔師』からですよね?
澤野:そうですね、『京都不浄王篇』からです。
――いろいろな作品でご一緒にお仕事をされていますが、改めてお二人の関係性からお伺いできればと思っています。どのようなことからお二人で一つの作品の劇伴を手掛けるようになったのでしょうか?
YAMAMOTO:僕が初めて所属した事務所の大先輩として澤野さんがいらして、自分の勉強も兼ねて澤野さんのレコーディング現場に毎回見に行かせていただいていたんです。そこで澤野さんの楽曲のカッコよさを目の当たりにして、自分もそういう音楽を作ってみたくてインスト曲も作るようになったんです。そこからしばらくして澤野さんが「YAMAMOTO君、どんな感じの曲作ってるの?」って声をかけてくださってデモをお送りしたんです。それがきっかけで「例えばこういうテーマで曲を作ってみたら面白いんじゃないの」っていうやり取りをさせていただいて、そこから『京都不浄王篇』につながっていったという感じですね。
――澤野さんはYAMAMOTOさんの最初の印象ってどういう感じだったのでしょうか?
澤野:元々は歌モノの曲を作っていた人なので、ポップスで持っているシンセの感覚みたいなものを逆にサウンドトラックの世界に持ってきてくれたら、面白いアプローチをしてくれるんじゃないかみたいなところはありましたね。メロディに対しても彼なりの工夫をしてやってくれるんじゃないかなって期待もあって。柔軟に対応できる能力も見たかったので、そういうのもやりとりの中で見ていった感じですかね。ただ彼は柔軟なだけじゃなくて、そこに自分のエッジみたいなものを持ってくるのでそこが面白いと思って。どこかで一緒にやりたいなと思っていた中で、『青の祓魔師』でそういう機会ができたのがよかったですね。
――YAMAMOTOさんは『青エク』の時にお話がきたときはいかがでした?
YAMAMOTO:いやあ、もう、すごく嬉しかったです。本当に、作品をご一緒させていただけるっていう喜びと、自分の楽曲を劇伴として初めて世に出させていただく作品になるので。そこでいいものを作れなかったらこの先が繋がっていかないんじゃないかというプレッシャーももちろんありました。
――プレッシャーはやっぱりありますよね。
YAMAMOTO:澤野さんという素晴らしい作家の方とご一緒させていただける喜びがある一方で、自分が変なものを作ったら迷惑をかけてしまう可能性もあるわけじゃないすか。「一緒にやろう」って言ってくださった澤野さんに対する責任もありますし。あとは単純に、自分自身の評価に直結する物作りなんだ、ということもありました。でも当時は「ここから自分の道を開きたい」っていうポジティブな気持ちで作っていた気がします。
――そこから、いくつも作品をご一緒されて、澤野さん的にも信頼がおける相手だと。
澤野:そうですね。信頼はありますし、回を重ねるごとに……僕も偉そうな立場で言うつもりはないんですけど、彼が成長していく、っておこがましいな(笑)。いろんなものを吸収して、最初に『青エク』をやったときよりも、サウンドに対して追及をしていくところを見られるのは、僕自身にも刺激になりました。
――澤野さん的にも刺激があったんですね。
澤野:初めは一緒にやることで、「ああ、こういうサウンドを作るんだな」っていうところを見物している感覚もあったと思うんですけれども、彼が作る曲がかっこよかったりすると、だんだんプレッシャーになってくるじゃないですか。オチオチしてらんないな!って感じにさせてもらって(笑)。でも、そういう風になりたいから一緒にやるっていうところもあったりすると言うか。
――下からの突き上げも期待していたというか。
澤野:ただなあなあに楽しくやれればいいっていうことではなくて、常に自分も危機感を持っていたいという気持ちがあります。例えばYAMAMOTO君が作っている音楽がずーっと同じようなアプローチのままだったら何も感じないと思うんですけど、そこをちゃんと超えていくように、新しいことを追及してやってきてくれるので、僕にとってもありがたいなと思いますね。
YAMAMOTO:恐縮です。
澤野:いや、ぜんぜん(笑)。
KOHTA YAMAMOTO
■彼にはワガママなお願いをしちゃってるところもあるかもしれない(澤野)
――お互いの楽曲や、パーソナルな部分に対しての印象はどうなんでしょうか。澤野さんから見たYAMAMOTOさんって、どういう方でどういう音楽を作る人なんでしょうか。
澤野:楽曲で言うと、彼もいろんな劇伴の数をこなすにつれて、いろいろと吸収しなきゃいけないと感じていると思うんですよ。海外の楽曲とかいろんなアプローチを自分なりに取り入れてやっているのが見えていますね。例えば、あるサウンドトラックを聴いた時に、どの部分を吸収するかって人それぞれの感覚で違うじゃないですか。
――そうですね、それはストーリーでも音楽でもそうだと思います。
澤野:そういう部分で、彼の場合はこういう感覚で吸収するんだなっていうことが感じられて、それが自分にはできていないことだったりするんですよね。だったら逆に自分もトライしてみようかなって思えたりもするし、そういう目線の違う部分が彼の魅力かなって思って見ていますね。
――では、人として、というところもお聞きできれば。
澤野:もちろん人間としてしっかりしてますし、話しやすいし、正直にいろいろ言ったりすることもできるっていう部分でも信頼しています。だから逆にちょっと僕は、もしかしたら彼にはワガママなお願いをしちゃってるところもあるかもしれないんですけれども(笑)。
YAMAMOTO:いやぁ、ありがとうございます(笑)。
――ではYAMAMOTOさんから見た澤野さんは?
YAMAMOTO:音楽的なところで、僕が何か言ったらおこがましいぐらいの本当に素晴らしい作曲家だと思っています。澤野さんの楽曲って本当にカッコいいんですよ。美しいとかっていうのもあるんですけど、すごく深みと奥行きを感じるというか。それをじゃあどう言語化して説明していくっていうのが、自分の語彙力では説明しきれないところではあるんですけれども。
――カッコいい、は分かります。本当にカッコいい。
YAMAMOTO:例えばどんな番組のどこで流れていても「これは絶対澤野さんの曲だ」っていうのがわかるというか。どの作品のサントラであってもそれを感じられる。僕自身も自分の音楽にそういうものをプラスさせたいなと思いつつ、毎回「よし、気合入っていいものができたぞ」って思っても、やっぱり澤野さんとは「ぜんぜん違う……」って思ったりとか(笑)。
澤野:いやいや(笑)。
YAMAMOTO:「やっぱり壁が高いな」って毎回実感して。なかなか自分はまだそこに辿り着けないなと思って作っているんですけど。その凄さが、澤野さんの音楽の好きなところですね。
――では、プライベートの方は?
YAMAMOTO:ものすごく気さくな方ですし、誰に対しても分け隔てなく凄く気を遣われる方ですね。澤野さんって本当にポジティブな方なんですよ。難しい状況になっても、いかにその中から良い部分を見つけて前へ進んでいくかということを常に考えられている方だと思うんです。自分自身はどっちかというと物事をネガティブに考えがちなところがあるので。澤野さんにお会いすると自分もそこでポジティブな気持ちになれますし、元気をいただける。そういう存在ですね。
澤野:ありがとうございます、気を遣っていただいて!
YAMAMOTO:ぜんぜん、そういうのじゃないです(笑)。
澤野:「ほんと、クソなんですよねー」とか、「マジコイツクソ野郎っすよ」とか言うのかと(笑)。
YAMAMOTO:そんなことないですよ!(笑)
――改めて、今回サントラが発売されます。改めてまとめて聴いてみて、今回の曲の印象というものもお聞きしたいです。
澤野:YAMAMOTO君が作っている「サンマグノリア共和国」側の音楽ではクラシカルなアプローチをしているんですが、クラシックっぽいアプローチって、僕自身はあんまりやらなかったりするんですよね。彼なりに解釈して作っている弦のハーモニーや旋律など、魅力的だなと思って現場で聴いていましたね。もちろん戦闘の曲ではサウンドの構築の仕方とかも改めて進化しているところがあるので、そこも聴いていてすごく楽しいですね。
YAMAMOTO:今回、澤野さんの『86』の楽曲って個人的な印象としては、いつにも増してすごくダークな印象があります。気持ち的な部分の重さと、物質的な重み、そして戦場の質感を感じさせるような楽曲が多くて。その中でも「THE ANSWER」は、そういうものをぜんぶ突き抜けて行くようなポジティブなエネルギーを持った戦闘曲になってますよね。その一方でピアノでの柔らかい曲もあり、対比を感じられるのが……素晴らしい作品だなと(笑)。
澤野:あはははは!(笑)。
YAMAMOTO:すみません……おこがましいことを。
澤野:いえいえ、ぜんぜんぜんぜん!
■簡単な曲でも、映像にあたって物語とリンクした時に感情の部分まで補ってくれる
――今回歌唱の入っている楽曲もサントラの中に入っています。まあ主題歌は別だと思うんですけど、作品の中に入る歌モノの立ち位置と言うか、置き方って、澤野さん的にはどう捉えてらっしゃるんでしょうか。
澤野:インストの曲とはまた別のエッジみたいなものを出せますね。歌だからこそ出せる勢いとか、グルーヴがあったりするので、アクセントになればいいなって思っています。サウンドトラックって、ポップスと比べればたくさんの人が買うものじゃないと思うんですよね。でも、自分が作った作品に興味を持ってもらいたいというところももちろんあって。
――それはもちろんそうですよね。
澤野:インストの曲だと物語に集中しちゃうと聞き流しちゃってるところでも、歌が挿入歌として入ってくることで「歌の曲流れた!」って気にさせるところがあるじゃないですか。それをきっかけにサウンドトラックを手に取ってもらえればいいなって思いがあって、今までの作品の中にもわりと歌の曲を入れてきたっていうのもありますね。
YAMAMOTO:僕はあまりこれまで、劇伴で歌ものは作ってこなかったんですけど、やはり作品の中で観てる方の耳を惹くような立ち位置になって欲しいなっていう思いで作っています。今回でいうと、音響監督の明田川(仁)さんとの打ち合わせの中で、「日常曲っぽい歌があってもいいかもしれない」というようなお話もあり、それを踏まえた楽曲になっています。劇伴としても注目してもらえるポイントになったら嬉しいなと思っています。
――ちょっとこれは今回の劇伴の話から少しずれる話かもしれませんが、アニメ作品の劇伴というものが、昔に比べると注目されることが増えた印象があるんです。そんな今、改めて劇伴制作の面白さや難しさというものをお聞きできれば。
澤野:インストの曲を作る面白さは、歌では表現できないようなところ…例えばメロディがなくても、サウンドだけで構築してカッコよく魅せられるみたいなことは、インストの魅力ではあると思います。劇伴の面白さは、作っている時は単純に「インストの面白い物作んなきゃ」って気持ちになってるんですけれども、放送されるときは、物語と合わさった状態でお客さんに音楽が届くじゃないですか。
――そうですね。
澤野:そうすると、自分の思っていたことと違うような伝わり方をするというか、物語が音楽にも力を与えてくれるというか。劇伴音楽を聴いた人たちって、多分作品を思い出すと思うんですよね。
――そうだと思いますね。
澤野:例えば何てことの無いピアノの和音をポンポーンと鳴らした簡単な曲でも、映像にあたって物語とリンクした時に、勝手に感情の部分まで補ってくれるというか。
――物凄いわかります。物語と音楽の相乗効果というか、そういうこと僕もあります。
澤野:それって音楽単体だけではできないことだと思うんです。インストって、言っちゃえば歌詞が無い分、伝わり方がそれぞれ違うと思うんです。でも作品を通した瞬間に、映像は無くても、その曲に対して“言葉”みたいなものを感じているっていうか。そうした形で伝わるのはやっぱり面白いし、魅力かなと思いますね。
――YAMAMOTOさんは、劇伴を作るということの難しさなどはありますか?
YAMAMOTO:歌ものの場合だと歌が中心にあるので、どれだけメロディを印象的にするか、際立っているかを意識するというのが、基本的にはあると思うんです。なのでそこを追求していくっていう作業になるんですけれども。じゃあ劇伴は違うのかというと、メインテーマとか作品で中心的な役割をする楽曲に関しては、そこまで違いはなくて基本的には追求していくことの本質は変わらないと思うんです。でも、歌もののように全曲メロディを活かすことだけを考えればいいというわけでもないですし。
――そうですよね。
YAMAMOTO:実際最初に劇伴をやり始めたときには「あ、歌ものみたいなノリで、これがカッコいいだろう」と思って作ってみたものが、映像と合わせたときに「ちょっと違うな」と思ったこともあったんです。映像の中で裏を支えるっていうか、そういう役割を持てる曲も必要なんだと実感したのはありました。一方でトータル的に「この作品は音楽も素晴らしかったね」って言われるには、裏方的な曲だけだとそうもならないし、バランスという部分は難しいと思いましたね。
――『86』は分割2クールということで、後半も劇伴を担当されると思うんですけれども。すでに楽曲は出来上がっているのでしょうか。
澤野:始めの段階である程度、2クール全体を通しての曲の発注があって作っていた中で、あとからもう少し必要になった曲を含めて、もう一回追加レコーディングをしましたね。制作は全て終わっているんですけど、1回目のレコーディングの曲でまだ流れていない曲が2クール目に使われることもあると思います。
――その辺は僕らも楽しみです。最後に『86』の劇伴を、どういう思いで作られたのかというのもお聞きできれば。
澤野:自分が作っている音楽というものが、作品を見ていて感情が揺さぶられるような音楽であって欲しいと思っているんです。気にしてないとサラッと流しちゃうようなBGMって結構あると思うんですけど、やっぱりここぞっていうシーンで流れる音楽に、観てる人も、映像だけじゃなく音楽と一緒に感情移入して欲しい。感動的なシーンだけじゃなく、カッコいいと思わせるシーンとか、戦闘してて手に汗を握るようなシーンとか、全て内包して『86』の音楽が構築できたらいいなって。そういう形で皆さんに楽しんでもらえたらと思っています。
――そこはお二人の音楽が作品の質感を高めているとは思いますね。
澤野:僕が作品に関わる時って、大体がこれまで自分が作ってきた音楽の方向性も知っていただいた上でオファーをいただくところもあると思うんですが。僕の中で変わらない部分として、その作品をよりエンターテインメントにと言うか、カッコいいシーンをよりカッコよく、泣けるシーンをより泣けるように、そういう音楽で力になりたい、そういう音楽でありたいという思いで作っています。『86』はお話をいただいた時に、内容だけを聞くと難しく重たくなっていっちゃう世界観だけれども、見てる人たちに「この作品、難しいですよ」っていう風にならないように。誰が見ても何か楽しく、わかりにくい部分があったとしても、カッコいい音楽流れてるからこのシーンカッコいいな! って感じてもらえるような、そういう音楽が付けられたらいいなって思って作っていますね。
――ではYAMAMOTOさんにもお聞きできれば、何か『86』に関してはテーマを持って取り組まれたのでしょうか?
YAMAMOTO:「『86』だからこういうテーマを自分の中で持って」ということはなかったとは思います。でも自分の中で決めていたのは、ちゃんと振り幅を出して、楽しいときは楽しいし、悲しいときは悲しいしっていうところの濃淡がしっかり付くような作品になればいいなと思っていました。そういう意味では澤野さんがおっしゃっていた、エンターテインメント性を追及するということに近いのかなと思います。
――では最後にファンの方に一言ずつメッセージをいただければと思います。
澤野:サウンドトラックって基本的には作品を見て、そのシーンを思い出したりしながら聴くものだと思うんです。もちろんそうやって聴いていただきたい部分もありますし、逆に自分の勝手な想像というか、例えばあそこでいなくなっちゃったキャラクターは、過去こうだったんじゃないかな……とか、いろんな想像を膨らませて、そこに音楽を当てて聴いてもらえたらすごく嬉しいですね。
YAMAMOTO:今回2枚組で、澤野さんの方で作られている世界観と、僕の方で作った世界観というのは、『86』の世界観が大きく二分されているように、今回のディスクも1枚目と2枚目で毛色の違う印象の作品になっていると思います。そのあたりの対比などを、作品をイメージしながら聴いていただけたら楽しめると思います。歌ものの曲も入っていますので、作品と切り離して日常的に聴いていただくのも僕としては嬉しい楽しみ方なのかなと思っています。
インタビュー・文=加東岳史 撮影=ジョニー寺坂

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