【大西亜玖璃 インタビュー】
歌を通してみなさんの日常に
幸せや癒しを届ける存在になりたい
両A面シングル「Elder flower/初恋カラーズ」で表現したのは“チャレンジした私”と“もっと明るい私”。そんな同作の制作当時の心境はもちろん、応援してくれるファンに向けた純真な想いも語ってもらった。
“あなたの孤独を癒したい”という
願いややさしさを最大限に詰め込んだ
デビューシングル「本日は晴天なり」(2021年3月発表)で念願のアーティスト活動をスタートされましたが、実感した瞬間はいつでしたか?
3月3日のデビュー当日ですね。この日に開催したイベントでファンのみなさんにお祝いしていただけて。私と同じか、むしろそれ以上に喜んでくださる方々がこんなにいらっしゃるのかと感激したんです。その後も大阪や名古屋でお話し会などもあったのですが、本当に全国のいろんな場所で応援していただいていることを実感しました。
お話し会の参加者も子供から大人まで世代が幅広いとのことで。
そうなんです。大阪のイベントには8歳の男の子も来てくれて。実はイベント前日に声優友達の楠木ともりちゃんが配信番組をしていたのですが、その男の子が“ともりる(楠木ともりの愛称)の配信で昨日、あぐぽん(大西亜玖璃の愛称)の話をしてたよ!”と報告してくれたんですよ。そんな熱心なお子さんから私より大人な方々まで、本当にたくさんの出会いがありました。
ファンからの直接の声を受けて新たな気づきはありましたか?
新たに…というよりも、むしろ自分を見つめ直すきっかけになりました。普段は緊張しいで静かな性格だと言われるのですが、デビュー曲「本日は晴天なり」ではピュアで元気な女の子の姿を歌うからこそ、私自身も明るく楽しく、幸せな気持ちになれたなと。
声優アーティストと言えば、楽曲の主人公を演じる方と、本人の等身大をもって歌う方、おおまかにふたつの歌唱スタイルがありますよね。大西さんはどちらに当てはまりそうですか?
自分の等身大を歌うタイプですかね。「本日は晴天なり」を明るく歌う姿は演じているものかと言われると少し違うんです。むしろ、“私にはこういう一面もあるよ!”と、今まで見せていなかった自分を披露してる一曲ですね。
今回の新曲「Elder flower」と「初恋カラーズ」でも大西さんの等身大を大切にされているかと思います。それぞれ自身のどのような部分が表現された楽曲になりましたか?
それこそ「Elder flower」は“チャレンジした私”ですかね。本当にカッコ良い楽曲なので、私も負けないように頑張って歌いきりました。「初恋カラーズ」は“もっと明るい私”かな? 「本日は晴天なり」を発表して以来、応援してくださるみなさんからの温かいお言葉で少しずつ自信が出てきて、以前よりももっと音楽を楽しめるようになったので。だからこそ、私自身もまた少しだけ明るい自分になれた気がするんです。
それでは「Elder flower」のお話から聞かせてください。同楽曲はTVアニメ『精霊幻想記』のEDテーマ曲に起用されていますが、作品に関して大西さんはどんな印象をお持ちですか?
私は原作を拝見したのですが、主人公のリオが大きな悩みを抱えているんですよね。異世界転生を扱った作品なのですが、自分が以前にいた世界での記憶を周囲に理解してもらうことは本当に難しいんだろうなって。それこそ時には憎悪の感情を抱いて、もがいてしまったり…ただ、彼を支えるヒロインたちがその想いに共感できる存在だからこそ、お互いを救い合う姿は素敵だと思いました。
そうした素敵な作品を大西さんは楽曲で彩るわけですね。今回はデビュー曲とはがらりと雰囲気を変えたシリアスなテイストです。そもそもなぜエルダーフラワーをテーマに選んだのでしょうか?
楽曲プロデュースをお願いした作家のhisakuniさんから教えていただいたのですが、エルダーフラワーには“思いやり”や“苦しみを癒す”といった花言葉があるんです。テーマに選んだ理由も、リオの苦しみを癒したいと願うヒロイン目線と重なるからで、1番Bメロの《君にとっての居場所になりたい/忘れないでいつも一緒だよ》というフレーズが私のお気に入りです。あと、アーティストとしての大西亜玖璃の姿が、小さく白い花を咲かせるエルダーフラワーのイメージとすごくマッチしているからともおっしゃっていただけました。私自身も歌を通してみなさんの日常に幸せや癒しを届けられる存在になりたいと願っています。
Bメロやサビ後半にはオートチューンをかけたようなエフェクトが施されていますね。
あれは仮歌の段階で決まっていたアレンジなんです。Bメロは特にグッとトーンが下がってハモリも加わるので、Aメロまでとは雰囲気が違って面白いですよね。
そうなると、AとBメロ間でどのような歌い分けを意識されましたか?
ハモリがここまで目立つ楽曲って結構少ないと思うんです。だからこそ、Aメロではメロディーの流れに添いつつ、Bメロはハモリを粒立った印象に歌えればいいなと。むしろ、ハモリのフレーズも主軸のメロディーのように考えていましたね。
楽曲の歌い終わりがAメロというのも、切なげな余韻が残っていいですね。
今回は出だしから一貫して力強いイメージになるように歌っていたのですが、この最後のフレーズには“あなたの孤独を癒したい”という願いややさしさを最大限に詰め込みました。実はレコーディングでももっとも時間をかけたところなんですよ。
やや変化球な質問なのですが、今回のモチーフとなったエルダーフラワーは自身の周囲に何気なく咲いているのか、あるいは誰かへの贈り物としてきれいにラッピングされているのか、花の存在している状態が気になりました。大西さんはどんなイメージを持っていますか?
私はどちらのイメージも間違いじゃないと感じます。私自身をエルダーフラワーとするなら、例えば野原に咲いているのをファンの方々が見つけてくださったわけで。そんなみなさんに、今度は私が恩返しをできたらなと。でも、贈り物というとらえ方も素敵ですね。私が歌を届けることで誰かが誰かにエルダーフラワーをプレゼントする構図とも重なりそうな気もします。