タイのエンタメを紹介する『レオレオ
、タイタメ』#2ーー豊かな自然と人の
温かさに癒されるチェンマイが舞台の
ドラマ『A Tale of Thousand Stars』

6月から始まった、タイのエンタメ=タイタメを紹介する連載企画『レオレオ、タイタメ』、略して『レオタイ』。第1回目にドラマ『2gether』をピックアップしたところ想像を遥かに超える反響があり、心から感謝している。ขอบคุณค่ะ(コップンカー、ありがとうございます)。

前回紹介した映画『2gether THE MOVIE』は初日に観に行き、毎週変わる特典と最前席で見ても美しい映像、大画面だからこそ気づける小さな表情の変化に魅了されて3回鑑賞してしまった。まだ公開している地域の方はぜひ1度で良いので足を運んで欲しい。
『2gether』にハマったのなら、次は『Still 2gether』の監督の最新作『A Tale of Thousand Stars』をお勧めしたい。同作はタイの北部に位置するチェンマイの小さな村を舞台とした物語で、チェンマイよりさらに北部のチェンライで撮影されたため、終始背景に映る木々や滝などの自然がとても美しい。少しでも世界観に浸りたくて郷土料理も食べに行ってしまった。今回は『A Tale of Thousand Stars』、通称『千星物語』を中心にチェンマイ関連の作品やレストランを紹介していく。
『A Tale of Thousand Stars』 (c)GMMTV
●心臓移植から動く『千星物語』のストーリー●
バンコクの裕福な家庭に生まれ育った大学生、ティアン(演:ミックス)。 何不自由ない生活を送っていたが、ある日心臓発作を起こし、若い女性から心臓の移植を受けた。術後しばらくしてから自分の命を救った心臓提供者に興味を持つティアンは、トーファン(演:アーイ)という女性が提供者であることを知り、彼女の自宅で「千の星の物語」と書かれた日記を発見する。そこにはトーファンがボランティア教師を務めていた、タイ北部・チェンマイのパーパンダーオ村について書かれており、ティアンは同じく教師として赴くことに。その小さな村で森林警備隊のプーパー隊長(演:アース)と出会い、この高まる鼓動がプーパーに想いを寄せていたトーファンのものか、それとも自分のものか、葛藤する日々を過ごす。
オフィシャルトレーラー『นิทานพันดาว 1000star』
心臓移植がキッカケに物語が進むこともあり、「自分の人生はこのままでいいのか」とか「他人の為に自分は何ができているのか」とか、自身の人生観を見直したくなる同作品。それに加えて、生活インフラが通っていないほどの田舎、パーパンダーオ村が舞台となっていることが映像作品としてのもう一つ魅力だ。
『A Tale of Thousand Stars』、ドナーのトーファンと学校の子供達 (c)GMMTV
生い茂る森や広大な茶畑、夜になると真っ暗な村に満天の星空、そして心優しい村人たちと、他のドラマでは観られない姿が映し出されている。さらにはラオスやミャンマーとの国境が近いことから、シャーマンを信仰したり儀式を大切にする文化や、学習環境が整っていないために起きる生産物の不公正取引、児童労働など、バンコクが舞台のドラマでは知り得ないような実情を垣間見ることができた。
『A Tale of Thousand Stars』、ティアンと森林警備隊 (c)GMMTV
下の舞台裏の動画からは、撮影までの道のりから人の手が加えられていない森の様子が伝わってくる。タイの田舎の雰囲気が好きだとか、山道を登る動画を見ることが好きだという方々にもお勧めしたい。
●『2gether』続編の監督作品がYouTubeで視聴可能●
2019年より準備が進められた同作は、二度の延期を経て2021年1月から4月までタイのテレビ局、GMM25にて放送されていた。YouTubeとLINE TVでも全話が無料で公開されており、YouTubeだけでも累計再生回数が約6,600万回と人気作の一つになっている。日本では6月26日(土)から、有料動画配信サービスのTELASA(テラサ)が日本語字幕付きで全話初配信。日本で配信される際には通常、特定の地域で動画の視聴をブロックする「ジオブロック」をかけられるのだが、現時点では珍しくYouTubeでも視聴することができる。
『นิทานพันดาว 1000stars』第1話 [1/4]
『千星物語』の監督を務めたAof・ノファナックは、連載第1回目に紹介した『2gether』のスペシャルエピソード『Still 2gether』も手掛けている。そのほかの過去作としては、現在巡回中のタイ俳優の展示会『GMMTV EXHIBITION in JAPAN』でピックアップされる、テイ・タワンとニュー・ティティプーンが主演の『Dark Blue Kiss~僕のキスは君だけに~』やシントー・プラチャヤーが主演の『He’ s Coming To Me~清明節、彼は僕のお墓の隣にやって来た』など、人気作を連ねる。
多くのタイドラマには、大阪人の筆者的に言うと「なんでやねん」とツッコみたくなる箇所があり、そこが日本のドラマと違って面白いところでもあるのだが、Aof監督の作品はどれも美しく繊細に作られているので、どちらかといえばツッコミどころが少なく、日本のドラマに近いように感じる。『千星物語』の場合は上でも挙げたが村の景色や、ティアンとプーパー隊長が互いに隠していたことが相手にバレるシーンの表情の映し方などにその美しさへの拘りが垣間見えた。
『A Tale of Thousand Stars』左プーパー、右ティアン (c)GMMTV
●主演アースとミックスの初ファンミーティング開催●
テラサでの配信開始日と同日の6月26日(土)には、プーパー隊長役のアースとティアン役のミックスによる、初のファンミーティング『EARTH - MIX Love at 1st Live Fan Meeting』が開催された。ドラマの再現や自身の曲の歌唱、人気曲をカバーしたパフォーマンスなどが行われ、世界中のファンがオンライン配信で見守ることができた。
彼らが所属する事務所で、『千星物語』を放送したGMMTVが主催のファンミーティングではもうお馴染みとなりつつあるが、主演二人のバックには抽選で当選した600名のラッキーファンが、Zoomで繋がり投影されていた。マイクはオフに設定されているが、リアルタイムでアンケートを取ったり、ファンへクイズを出したりと、有観客のイベント以上に参加型となっている。
特筆すべきはこのラッキーファンの中でもイベント中に質問を投げかけられたり、イベント終了後に2対1でビデオコールできたりと、直接会話できるファンがいるのだ。さらに今回は質問したファンのうち二名が日本人で、かつ日本語での通訳者がいたことから日本語で質問したりと、距離と言語の壁を感じさせない工夫がされていた。自身がZoomに参加していなくても国籍や住んでいる地域、質問したいことなど、質問者との共通点があるだけでただ眺めているだけのライブ配信より一体感が生まれていたため、日本でも同様のイベントが増えて欲しいと願う。
●原作の日本語翻訳版『A Tale of Thousand Stars』●
ドラマやイベントの配信だけでなく、日本語で世界観を楽しめるものがある。
2020年10月に『2gether』原作小説の日本語版がワニブックスから出版されたことを皮切に、KADOKAWAからも『Manner of Death』『The Red Thread』など、人気ドラマの原作翻訳小説が続々発行されている。『A Tale of Thousand Stars』の原作もそのうちの一つとして翻訳されている。
『A Tale of Thousand Stars』 著者:Bacteria  翻訳:イーブン美奈子
ドラマでは諸事情により「森林警備隊」に変更されたプーパーが「軍人」であったり、チェンマイよりさらに北部のチェンライが舞台であったりと設定は多少違う箇所があるものの、大筋は変わらず原作とドラマが補完し合うような内容となっている。ドラマを観終えてから小説を読むと景色が思い浮かべやすく、またドラマでは語られなかった登場人物の心境の変化が鮮明に浮かび上がり、再度ドラマを観返すとヒントが隠されていたことに気づくというループに入ってしまう。
●チェンマイを味覚・嗅覚でも楽しめるレストラン●
同作品を通して視覚、聴覚でチェンマイを楽しんだ後は、味覚・嗅覚でも体感してみたい。というのも、バンコク育ちで裕福な家庭で育ち、洋食ばかり食べていたティアンが、初めは躊躇いながらも物語の後半には「恋しくなった」とわざわざチェンマイ料理屋に行っていたからだ。その「恋しくなった」というのは料理なのか、それとも村にいる誰かなのかははぐらかされているが、ティアンが行っていたレストランと似た雰囲気を持つチェンマイ料理屋が、大阪の北堀江にもあったので紹介する。
チェディルアン北堀江本店
数少ないタイ政府認定5つ星に選ばれているタイ北部郷土料理屋
ランチ平日 11:30~15:00/土日祝 11:30~15:30、ディナー全曜日 17:30~20:00
〒550-0014 大阪府大阪市西区北堀江1丁目17−11
地下鉄四つ橋線四ツ橋駅 4番出口 徒歩3分
06-6535-1515
http://www.chedi.jp/
チェディルアン北堀江店
チェンマイ料理の特徴は、味付けが辛すぎずマイルド、そして野菜がたっぷり入っていて健康的な食事だとされている。ドラマ内に出てくる料理も確かに野菜が多い印象だった。流石に豚の脳みそを使ったエーブ・オンオーなどは食べられないが、チェディルアン北堀江本店で用意されているラープ ムー(豚挽肉とイカの炒り米のスパイシーサラダ)やカオソイガイ(チェンマイ風チキンカレーヌードル)からなどの郷土料理をテイクアウトして食べてみると、マイルドとはいえ普通に辛かったのだが一般的なタイ料理とは違う素朴で繊細なその特徴を感じ取れる。内装や食器にも拘られているので、店内ではその名の通りチェディルアン(仏塔のある大きなお寺)に行った気分を味わえそうだ。
テイクアウトしたラープ ムー
◇韓国映画『バンジージャンプする』のタイリメイク版が上陸◇
そして、7月2日(金)からは、同じくチェンマイがキーワードとなり、景色の美しい映画『デュー あの時の君とボク』が、シネマート新宿ほかで公開されている。同作はイ・ビョンホン主演の韓国映画『バンジージャンプする』のタイリメイク版となり、タイの映画『チョコレート・ファイター』の脚本家でも知られるマシュー・チューキアット・サックヴィーラクルが、監督と脚本を担当した。
(c)2019 CJ MAJOR ENTERTAINMENT CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED
内容としては、1996年に同性愛への偏見が色濃く、噂がすぐ広まる小さな町で出会った、厳格な家庭に育った高校生ポップと、母と二人暮らしの転校生デュー。二人の友情はほのかな愛情へと成長したものの、その関係は学校にも家族にも知れ渡り、周囲に理解されず追いつめられていく。それから23年後、結婚して母校の教師となったポップは、教え子で問題児の女子生徒と惹かれ合ってしまい……という物語。筆者は追い詰められた二人と、その家族の掛け合いの違いに思わず涙を流してしまった。
主演のデューを演じるのは、『The Shipper』や『BLACKLIST』、そして先述した『He’ s Coming To Me~清明節、彼は僕のお墓の隣にやって来た』の主演を務めたオーム・パワット。若い頃のポップは、タイ映画の主要映画賞『Suphannahong National Film Awards』で最優秀俳優賞を受賞し、『Bad Genius』などに出演するノン・サダノンが演じる。
『2gether』の映画から2ヶ月連続でタイ映画が公開されることや、原作の翻訳本が発売されたことなど、1年前までは考えられないほど日本での楽しみ方が充実してきた。さらには「まだ日本で配信されていなくて、YouTubeで観られる作品を紹介したい」と思い『千星物語』を題材にしたのにも関わらず、この記事を書いている最中に日本での配信が決定・開始されるくらい、流れ星のようなスピード感で展開されていく。
次回はそんな必死に食らいつかなければ振り落とされそうな勢いのタイドラマから少し離れてみようと思う。この記事に関する感想はハッシュタグ「#レオタイxチェンマイ」(xはエックス)、紹介してほしいコンテンツや文化のリクエストがあれば「#SPICEレオタイ」をつけて投稿してもらえると嬉しい。それでは最後に覚えたての言葉を伝えてお別れしタイ。
◇今日のひとことタイ語講座◇
ดาว(ダーオ、daaw)=星

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