テスラは泣かない。 再会の契りを固
く結んだ活動休止前ラストツアー・フ
ァイナル

MOON release tour “MOOOOOON 2021“ 2021.7.4 shibuya eggman
7月4日に、テスラは泣かない。の活動休止前ラストツアー『MOON release tour “MOOOOOON 2021“』のファイナル公演が、shibuya eggmanにて行われた。彼らはこの休止期間のことを「大充電期間」と呼称している。この表現は彼らの希望的な意図が込められたものなので、休止に対する不安は一切ない。けれど、正直なことを言えば、やっぱり寂しさはある。そんな心境で会場へ向かったが、そうした感傷的な気持ちは、ライブのスタートと同時に吹き飛ばされることとなった。
ソールドアウトで迎えられた会場に「CHOOSE R」が流れると、村上学(Vo/Gt)、飯野桃子(Pf/Cho)、吉牟田直和(Ba)、實吉祐一(Dr)の4人が登場。オーディエンスは、ステージインした彼らを拍手で迎えたのだが、この拍手がなかなか鳴り止まない。彼らがステージに立った姿を目に焼き付けようという気持ちの強さが、拍手の音量と長さに込められているような気がして、この時点で既に胸が熱くなった。そして、いよいよライブがスタートするのだが、驚くことに、1曲目にプレイされた楽曲は「サラバ」だった。
タイトルからも分かるように、大切な人に別れを告げる自分を鼓舞する為の曲なのだが、まさか休止前最後のライブのトップで演奏されるとは思わなかった。こちらのそんな心境を見透かしたかのように、村上は曲中に「1曲目に「サラバ」をやるなんて意地悪に思ったかもしれませんけど、お別れを言いに来たわけではございません! 新しい始まりと、再会の決意をこの曲に託して、今夜のステージを始めます!」と堂々と宣言した。“終わりは始まり”とよく言われるが、彼らにとって今夜のライブは、まさにその意味を持つのだろう。
そして、音源では森心言(Alaska Jam/DALLJUB STEP CLUB)が担当しているラップパートを村上が担ったダンスチューン「new era」でフロアを揺らしつつ、吉牟田のベースが牽引する「cold girl lost fiction」、「Lie to myself」、さらに「my world is not yours」と、メジャー1stアルバム『TESLA doesn’ t know how to cry.』の楽曲を続けてプレイ。そうした5曲の流れからは、始まりの宣誓である「サラバ」が“未来”、新時代突入の象徴である「new era」が“今”、バンドの第一変革期とも言える3曲が“過去”といった、テスラは泣かない。の軌跡が見えてくるようだった。
また彼らは、どの時期の曲でも変わらずに、「Lie to myself」では<信じ込めば真実と/プラセボだって上等でしょ>、「new era」では<常識を破って/飛び込んでしまえよ>という歌詞のように、「思い込みでもいいから自分の可能性を信じて、もっと先に行こう」と歌っている。そうしたチャレンジ精神と好奇心を忘れずにこれまで活動をしてきたらこそ、次のセクションでプレイされた変拍子とドラマティックな展開が心揺さぶる「CALL」や、ドラムンベースが印象的な「STOMP」、ドリーミーなリフレインが心地好い「コインランドリー」など、13年経った今でも変わらずに、既存の“らしさ”に拘らない新鮮な楽曲が生まれていくのだろう。
とはいえ、“らしさ”ももちろんある。「深海」の導入に流れた波の音に対し、村上は「この音を聴いて、深夜の東京湾で吉牟田がひとり、レコーダーを持ってサンプリングしている姿を思い浮かべた方はいらっしゃいますか? ……すみません、この音は、吉牟田がインターネットで260円でダウンロードしたものです」と言ってオーディエンスを笑わせていたし、飯野のピアノが楽曲の美しさと叙情性を高める「マグノリア」では、村上の突発的な発案(無茶振り?)によって、ラストの飯野のソロの尺が倍になった。テスラは泣かない。の楽曲からもバンドの空気感からも感じられるそうしたギミックやユーモアも彼ららしさと言えよう。
ライブ中盤では、会場の各所に設置されている撮影機材について触れつつ、「(映像を撮っておいて良かったと思えるような)伝説を一緒に作ろう! でも、そんなに簡単に伝説を作れると思うなよ!」と会場を鼓舞しつつ、實吉の躍動的なドラムがクラップを誘導する「パルモア」や、エモーショナルに走り抜ける「万華鏡のようだ」など、過去の曲を一気に披露。オーディエンスも、楽曲に対するそれぞれの思い入れを放出するかのように、クラップやハンズアップなどの身体的反応で呼応していた。
そして、テスラにとって、ひとつの大きなターニングポイントとも言える楽曲「自由」をプレイ。かつては<「もっと自由にして 自由にして」ってなんですか/自由って>(「万華鏡のようだ」)と、自由に対して疑心を持っていた彼らが、<この夜の向こう側へ行こう/小さなその手に握りしめたまま/自由を>と、自由への恐れを拭い去り、前に進むための相棒として歌うようになった。バンドの精神的成長がもたらした、視野の広がりと探求心。その結晶のようなこの楽曲が、あらゆるルールや制約に疲弊しがちな今の私たちの心に、余裕と豊かさを与えてくれるようだった。
ラストスパートを目前にしたMCにて、村上は以前、敬愛するバンドマン・浅井健一から「突き抜けようぜ!」というメッセージを貰った時のエピソードを踏まえながら、「一緒に突き抜けよう! 突き抜けるには、すごいスピードが必要だし、俺たち4人じゃ無理なんです。だから、ここにいる全員で、一緒に突き抜けましょう」とオーディエンスの覇気を上げ、實吉による足元が揺らぐような渾身のドラミングをきっかけに「呶々々」をぶちかますと、キラーチューン「アテネ」、新しい世界へと誘う「アンダーソン」を怒涛の勢いで投下し、爆発的な盛り上がりを見せた。
そうして本編を堂々と終わらせた彼らだったが、当然のようにアンコールは鳴り止むことはなかった。そんなオーディエンスの期待に応えるようにメンバーが再度ステージに登場すると、この日を迎えた4人それぞれの率直な想いを話してくれた。吉牟田は「今日が楽しかったということが、一番嬉しいことです。突き抜けたり、乗り越えたりすることは簡単じゃないですけど、“今日があるからこの先も頑張れる”と思える一日になりました」と話し、實吉は「こんなわがままで自由なバンドに付き合ってくれて、感謝の気持ちでいっぱいです。やっぱりライブがすごい楽しいし、またこの熱量を味わいたいんですよ。だから、必ず帰ってくるので、わがままですが、待っていて下さい。これからよろしくお願いします」と、再会を約束した。飯野は「辛かったことも沢山あったけど、その辛さを塗り替えるような幸せな想い出が沢山あります」と話しながら、ぐっと涙を堪えていたが、「私も明るい未来を想像して進んでいきますので、皆さんも負けないで、生きていこうぜ!また必ず会いましょう」と力強く笑った。
そして最後に村上は、「必ず戻ってきます、絶対に。もしかしたら僕らのことを忘れてしまうかもしれないけど、思い出させるくらいの曲を作って戻ってきます。それまで元気で、生きていてください」と言葉を残し、ラストに「朝陽」、「Like a swallow」を贈った。テスラは泣かない。は燕のように、必ずここに帰ってくる――そうした前向きな契りを結ぶように、最後まで笑顔が絶えないライブだったことが、何よりも嬉しく、何よりも心強かった。さらに、極めつけとして、村上はステージを去る直前に、羽織っていたシャツのボタンを開け、中に着込んでいたTシャツを見せたのだが、そこには有名なサイボーグの写真と共に、「I’ LL BE BACK」の文字が……! その演出に、会場は爆笑。この瞬間の為にTシャツを買って仕込んでいたのか!?と思うと、愛おしくてたまらない気持ちになった。
『MOON』という大傑作を作り上げた彼らは、これから充電期間に入るが、新たなステップを踏むべく大きな成長を遂げて帰ってくるだろう。帰還がいつになるのかは誰にも分からないが、メンバーもオーディエンスも含めた全員がそれぞれ進む道の先で、テスラは泣かない。の音楽の前でまた巡り合うことができたらどんなに素敵だろう。そんな未来を想像しながら、またライブハウスで一緒に突き抜ける日を、心から楽しみにしている。
また、オーディエンスの前で行われるライブはこの日で区切りとなったが、7月9日にYouTube murrffin discsチャンネルにて、無観客配信ライブ『テスラが泣く(7/9)日。』を開催することが決定している。様々な事情で会場へ赴くことができなかった人は、この機会をお見逃しなく。

取材・文=峯岸利恵

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