『speakeasy podcast』×SPICE連動企
画、第五回ゲストはorigami PRODUCT
IONSーーアーティストがプロデュース
やリミックスも手掛けられる強さの秘
訣とは

海外音楽情報専門Podcast『speakeasy podcast』とSPICEの連動インタビュー企画。第五回のゲストとして、渋谷のアンダーグラウンドで盛り上がっていたジャムセッションを世界に広げるべく2007年に立ち上がり、現在はプロデュース、リミックス、演奏などのサポートもできるアーティスト集団となったorigami PRODUCTIONSから、Shingo Suzuki(Ovall)、Kan Sano、Michael KanekoHiro-a-keyの4名が登場。それぞれの所属までの経緯や、レーベルに所属してからの変化、7月18日(日)に大阪・服部緑地野外音楽堂にて開催される『origami SAI 2021 Osaka』への期待などを訊いた非常に濃い内容となっている。詳しくは7月7日(水)18時と7月14日(水)18時に配信される『speakeasy podcast』をチェックして欲しい。
●スタイルを貫き通したから居場所がなかった時期も●
竹内:origami PRODUCTIONSは2007年に発足してから音楽シーンの変遷もありつつ、影響力を拡大させてきてるように思われます。origamiの変遷を振り返ってみて、影響力が拡大していっているな、昔と結構変わったなと思うことはありますか?
Shingo:そうですね、やっぱり世の中の音楽のジャンルやスタイルが出てきては消えていく中で、origamiは黎明期から一貫したスタイルがあったんですよね。それが今の時代にフィットしているかどうかというところで、初めはフィットしていなかったのかな。僕らがやり始めた頃は、例えば「Shingo Suzukiはジャズとヒップホップと、マルチインストルメンタリストです」と出しても、それをピックアップするメディアを探すのが大変だったし、世の中ではアイドルやEDMが流行っているときに、その要素がなかったんですよね。Ovallとしてもヒップホップとバンドとビートメイキングを一緒にしたようなスタイルのバンドだったんですけど、それもヒップホップの雑誌では大変だし、かといって野外のナチュラル思考のフェスに呼んでもらってもちょっと柔らかすぎたり。居場所がなかったんですよね。
竹内:2010年代初頭はオーガニックなフェスが結構あった中で、そこにハマる感じでもなかったということですね。
Shingo:なかったですね。だけどそんな器用でもないし「せっかく音楽やってるんだからやりたいことやるべ」という感じでね、やっていったら気がつけば僕らにフォロワーができていて、僕らが作った曲が実は今の流行りの曲に1%くらいは影響しているような気もしていてですね、たとえばレコードショップに行っても「これOvallじゃない?」と思うバンドが増えてきたんですよ。「あーここの部分Ovallだね」とか。でも僕らより100倍有名になってて(笑)。コード進行とかメロディー、譜割、リズムとか、曲を作っている人はわかるので「あーすごい嬉しいな」と思ったり。不器用ながらやり続けて良かったなという感じですかね。
竹内:Ovallとしては活動を休止して、再始動されましたよね?
Shingo:そうですね、活動を休止してる間に割とorigamiっぽい音楽が溢れてきて、そういう流れもあるからOvallやろうかみたいなのはありますよね。
Shingo Suzuki
●コロナ禍も乗り越えられるタフさ●
竹内:Kan Sanoさんにもお聞きしたいんですけども、渋谷でのジャムセッションから、今のジャンルに囚われずに、それぞれがアーティストでありながらバンドもソロもして、プロデュースワークもして、というふうにorigami PRODUCTIONSが変わっていっている気がしています。Kan Sanoさんにもそんな印象を受けたりするんですけれども。
Kan:僕が所属する前は、レーベルのアーティストみんなで『LAIDBOOK』というアルバムを毎月出していたので、割とアーティスト活動の方がメインの印象だったんですけど、僕が入るタイミングからプロデュースをいっぱいやっていくようになっていきましたね。軌道に乗るまでは時間がかかって、その時期はスタッフもアーティストも大変だった気がします。僕の場合だと自分の音楽を基本的にやりたくて、自分のやりたい音楽をいかに長く続けていくかというのをずっと考えてきたんですけど、そのときに自分の活動だけだとお金に繋がらない、そうすると続けていくことが難しくて、それでやめていくミュージシャンが周りにいっぱいいるわけですよ。だから自分たちは外仕事というか、プロデュースや、誰かの作品を手伝える力もあるから、自分が関わることで作品がいいものになるんだったらJPOPでも関わりたいと思ってきましたし、そういうマインドでみんないろんな仕事をやるようになってきて、変わっていった気がしますね。その後にサブスクがいよいよ流行り始めて、それで海外でも聴かれるようになり、軌道に乗ってきて今に至るという感じです。
竹内:今ではOrigami Productionsのメンバーにプロデュースワークを依頼するときは、他とは違ったイメージ求められますよね。
Kan:そうですね、今だとこちらのカラーを理解した上で、origami PRODUCTIONSに頼みたい、所属アーティストに頼みたいとオファーしてくれる人が増えてきていて、すごく仕事もやりやすくなりました。でもそこで仕事がなかった時代を、スタッフも含めてみんなで経験してきたから、コロナ禍で音楽業界が大変になっても割と大丈夫というか、タフさはみんな身につけていると思うんですよね。
Kan Sano
竹内:Hiro-a-keyさんとMichael Kanekoさんもorigami PRODUCTIONSに入ったことがキッカケで、アーティストとして変わったところはありますか?
Hiro-a-key:僕自身はそんなに人のプロデュースをしないし、そんなにできないけど、所属アーティストが依頼された案件に仮歌入れるとか、英語や日本語の歌詞を付けるとか、僕がダイレクトに依頼されるというのは多くないんですけど、みんなに乗っかれて、ありがたいなと思います。
Michael:僕の場合はorigamiと初めて関わった時が25歳くらいで、当時はオープンマイクとアコギ一本で弾き語りしてたんですけど、プロデュースのやり方も全くわかんなかったし、細かいアレンジとかも経験がなかったので、origamiに入ってKanさんやOvallなどの先輩たちからめちゃくちゃ影響を受けましたね。社長の対馬さんにも「音楽で食っていきたかったら学んだ方がいいよ」とか「できるようになったほうがいいよ」と言われて、僕も自分の曲から勉強し始めたという感じですかね。だからorigamiと出会ってなかったら、今の形では絶対やってないと思います。
竹内:アーティスト活動も含めて音楽活動に影響があるということですよね。
Michael:そうですね、当時日本に住んでる外国人が音楽をしていた六本木のバーとか、渋谷のバーとかクラブとかで活動していたので、日本人がどこで活動しているのかなっていうのがわからなくて。ミュージシャン友達もあんまりいなかったし、ジャムセッションをしている場所もわからなかったから、音楽コミュニティーを紹介してくれたのもorigamiの先輩たちだし、ミュージシャンとしてのスキルが上達できたのも、origamiに入ったキッカケだと思います。
竹内:強靭なコミュニティですよね、origami PRODUCTIONS。
Michael:めちゃくちゃいい環境が整っていて、ちゃんとしたミュージシャンたちが周りにいたからこそ、僕もやらなきゃという気持ちになって今がある感じですかね。
Michael Kaneko
●7月開催のレーベルイベント『origami SAI 2021 Osaka』「大阪でできるのがでかい」●
竹内:さて、7月18日(日)に大阪で開催される『origami SAI 2021 Osaka』に向けて色々聞かせていただきたます。大阪では初めてなので、origami所属のアーティストが出て来るのですごく楽しみにしているんですけど、いつものイベントとかとフェスとかとは全く違う雰囲気ですか?
Singo:そうですね。アットホームなイベントになるんじゃないかと思いますね。フェスでは被ることがなかなかないし、『FUJI ROCK FESTIVAL』に行っても全員が揃うことなんてないしね。なので内輪パーティみたいな側面もあります。
竹内:東京では最後にメンバー全員が出てきて、セッションしているんですよね?
Shingo:やっちゃいますよねー(笑)。
Hiro-a-key:僕個人でいうと、みんなのステージに何度もチョイ乗りするので、ドキドキが続いてるって感じですね。
竹内:このイベント初の野外ということですが、違いはありますか?
Michael:ライブが一番楽しいのは野外ですよね、やっぱり。7月だし天気も良ければいいんですね。
竹内:そもそもライブを多くできる状況でもないので、origamiのメンバーが集まるという意味でも楽しみがありますよね。
Michael:あとは大阪でできるというのがすごくでかいですね。
竹内:大阪でというのはポイントになります?
Shingo:それぞれ大阪にはいつも行ってるし、みんな大阪好きっすよね(笑)。好きな場所で一緒にできるし、いい場所でやれるから楽しさもより一層で、みんなちょっとテンション上がるんじゃないですかね。
『origami SAI 2021 Osaka』
→これまでに観た海外アーティストのベストライブを教えてください。
Shingo:僕昔パリに住んでいることがあって、パリにあるニュー・モーニングという老舗のジャズクラブで(ジャズ・トランペッターの)ロイ・ハーグローヴが組んでいたバンドのRHファクターが最高に今でも印象に残っていますニュー・モーニングは泣く子も黙るマイルス・デイヴィスから、最新のアーティストまで出演していて、そこに出れたら一流のアーティストですよと、自他共に認めていい場所で。音響も最高だし雰囲気も良くて、歴史が詰まっていて、ジャズの歴史そのものみたいなところなんですよね。土臭くて、匂いがぷんぷん染み付いていて、音楽第一で、音楽通が来るみたいな、音楽そのものを熱気の中で楽しむ感じの、世界の名だたるライブハウスのうちの一つです。そこで見たRHファクターが最高にかっこよかったですね。
Kan:二十歳の時に見たソウライブですかね。僕アメリカのバーグリー音楽大学に通っていたので、学校のホールにいろんな人が演奏しにきたりとか、ボストンにツアーで回ってきたりとかで、ずいぶん色々見たんですけど。演奏はもちろん、自分の成熟度というか見るタイミングもあると思うんですけど、『モントレージャズフェスティバル』でソウライブを実際に見たらグルーヴが超強烈で、本当に衝撃を受けて、僕そのときずっと叫んでいました。めっちゃショッキングでしたね。二十歳の時に見たソウライブはもう何から何まで最高でしたね。
Hiro-a-key:ディアンジェロにします。『SUMMER SONIC 2015』に来ていて、日本でライブするのもそもそも何十年ぶりくらいの感じだと思うんですけど、待ち侘びていたので、「Untitled」をアンコールでやられたときには「キター!!!!」みたいな感じで、ずっと泣いてましたね。知らないアーティストの音に吸い寄せられていって感動する瞬間も沢山あるんですけど、この人は待ち侘びて、観に行って、凄いなと思えたので、本当に行ってよかったなと感じましたね。
Michael:2年前のジョン・メイヤーが武道館でやったときですね。僕ジョン・メイヤー合計で5〜6回くらい見てて、前回来た時も2公演したんですけど2回とも行きました。ライブ自体も武道館で2ステージに分けて、全部26〜30曲近く、3時間くらいやってバンドメンバーも素晴らしかったし、自分が聴きたい曲全部聴けたというのもありました。僕にとってアイドルみたいな存在だから、「きゃー!」という状態になって、きっと何をやっても多分好きになっちゃったと思いますね。だからもうベストに選んじゃうというのがありますね(笑)。
Hiro-a-key
→現在、よく聴いている海外アーティストを教えてください。
Shingo:キーファー(ピアニスト)の「Be Encouraged」
Kan:フィフティースリーシーブス(53 Thieves)の「southside」
Hiro-a-key:ラッキー・デイの「How Much Can A Heart Take」
Michael:edbl
取材=竹内琢也 文=川井美波

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

新着