Saucy Dog、緑黄色社会、Creepy Nut
s、マカロニえんぴつ 『Love music
』と所縁深い4組が集ったフェス1日目

フジテレビの音楽番組『Love music』のライブイベント『LOVE MUSIC FESTIVAL 2021』が、6月26日、27日の2日間に渡り、神奈川県・ぴあアリーナMMにて開催された。コロナ禍という状況ではあるが、参加者全員が感染対策を遵守し、決められたルールの中で各々の音楽愛を爆発させながら、最大級の盛り上がりをみせていた。当記事では、Saucy Dog緑黄色社会Creepy Nutsマカロニえんぴつの4組が出演した、1日目の模様をレポートする。
1日目の出演者は番組と付き合いが長く、Saucy Dog、緑黄色社会、マカロニえんぴつの3組は注目のニューカマーとしてデビュー前の2017年に揃って出演。Creepy Nutsは2017年10月放送の特別番組『LOVE MUSIC staff presents「ど真夜中フェス!!」』に登場。その後も4組は度々番組に出演し、深い縁のあるアーティストである。
Saucy Dog
トップバッターを務めたのは、Saucy Dog。せとゆいか(Dr)、秋澤和貴(Ba)、石原慎也(Vo/Gt)の3人が一人ずつステージに登場し、拳を突き合わせた後、「楽しんでいきましょう!」との石原の号令を合図に「シーグラス」でライブがスタート。青い照明が会場を照らす中、夏の海に吹く風のような爽快感のあるメロディが瑞々しく鳴り響くと、軽快なテンポで「雀ノ欠伸」、「ナイトクロージング」へと誘う。どこまでも遠くに飛んでいきそうな石原の澄んだボーカルと、せとと秋澤が生み出す心地好いリズムに、オーディエンスのハンズアップやクラップが合わさって、気持ち良いグルーヴを生み出していた。せとも「楽しさを伝えてくれている拍手が、会場全体に鳴り響いていてめちゃめちゃ嬉しいです」と、こちらの想いがしっかりと届いていることを伝え、最新曲「週末グルーミー」を披露。日常の中に潜む寂しさや喪失感を丁寧に描写し、聴き手の心情にするりと入り込みながらも、そこで立ち止まることや諦めを促すことは決してしない。いつだって、その先にある希望の明かりを灯してくれるのが、Saucy Dogの音楽だ。
Saucy Dog
石原は、自身の恋愛経験談を交えながら「忘れたいような恋愛をしたことがある人は、無理に忘れなくてもいいと思います。埋め合わせできるものではないし、誰かで誰かを代用することはできないから」と語ったが、恋愛に限らず、そのように目の前にいる人を大事に想い、「頑固」と思われるくらいに誠実に向き合っているからこそ、彼らの曲はどれも温かくて優しい響きがするのだろう。そうした“愛”と呼べる想いを込めた「sugar」、離れていても繋がっていると思わせてくれる「スタンド・バイ・ミー」を最後に届け、最高の状態でバトンを繋いだ。
緑黄色社会
次に登場した緑黄色社会は、「またね」でライブをスタートさせると、長屋晴子(Vo/Gt)の限りなく澄んだ歌声が広い会場の隅々にまで美しく響き、あっという間に雰囲気を作り上げていく。そんな彼女の歌声の魅力を最大限に引き出すサウンドを作り出すのは、peppe(key)の繊細かつ煌びやかな鍵盤の音色と、堂々とメロディをリードする小林壱誓(Gt)の存在感のあるギター。そして、穴見真吾(Ba/Cho)とドラムが生み出す、聴者のワクワク感を足元から刺激する躍動だ。そのハーモニーは、パワフルでポップな「sabotage」や最新曲「ずっとずっとずっと」から、長屋の圧倒的なアカペラから始まり、サビでハンズアップを巻き起こした「Shout Baby」へと続くにつれて、会場を巻き込みながらどんどんスケールアップしていく。
緑黄色社会
長屋は、この日共演した3組について「一緒に時を重ねてきた方たち」だと話しつつ、「今日、一緒にやれていることを誇らしく思います。私たちも切磋琢磨しながら、お互いに刺激し合っていくので、もっと大きいところにいけるように見守ってもらえたらと思います。まだまだ大きくなります」と、共に駆け上がっていく為の決意を言葉にした。そして、「運命だったり絆だったり、そういう目には見えないものを信じていれば、きっと繋がって、また会える」との紹介から、ミドルバラード「結証」へ。人間であれば誰しもが心に持っているであろう、陰と陽。その二面性を、自由かつ堂々と歌い鳴らすことのできる緑黄色社会のポテンシャルの高さと、表現の奥行きの深さが伝わる名曲だ。そしてラストは、ポジティブ側のエンジンを一気に点火させ、最高に煌びやかな「たとえたとえ」と「Mela!」の2曲をプレイ! しなやかで美しいリョクシャカの音楽をめいっぱい堪能できた時間だった。
Creepy Nuts
Creepy Nutsは、ステージに登場すると早速<check…/まずは今日の空気/まずは今日の客/まずは今日の現場/ここの温度感>とのリリックから始まる「板の上の魔物」をドロップし、フロアの調子を伺う。既に2バンド分のエネルギーをがっつりと吸収し、テンションも上がっているオーディエンスは、歓声の代わりに大きなハンドクラップを贈りながら、彼らの問いに全身で反応する。声は出せずとも、彼らが生み出すビートとリリックでバイブスが上がっていることは一目瞭然。その上、「俺たちと一緒に夜更かし楽しめる奴は思い切り両手挙げてください~!」とのR-指定の号令でスタートした「よふかしのうた」では、DJ松永の超絶テクニックを披露。さらに「今日はマスクして声は出せないけど、手を挙げるのも飛び跳ねるのも“合法”らしいですよ~」との振りから「合法的トビ方ノススメ」へと続け、全員を巻き込んでアガる曲を怒涛の勢いでプレイするもんだから、オーディエンスのテンションと温度はみるみる爆上がり! クールでユーモラスなCreepy Nutsのステージングに、全員がドハマり状態だ。
Creepy Nuts
Creepy Nuts
その上で「我々Creepy Nutsも、テレビや現場など、色んな場所でライブをやられせてもらってますけども、俺たちは何が一番の仕事かというと、ラップとDJ。これ以上でも以下でもない訳ですよ」と、彼らが思う自分たちの在り方を伝え、「どこまでいっても、これが俺たちのやり方やし、根っこやし、芯でございます」との言葉の後に「生業」をプレイ。彼らの中で脈打つ血の躍動が伝わるような、全身全霊、渾身のアクトに、オーディエンスは身体を揺らしながら没頭していた。そして「皆さん、各々の方法でサバイブして、またお会いしましょう。俺は、俺が生まれた瞬間、誰にも比べられていない、誰にも負けていない瞬間のことを思い出しながら、いい意味で勘違いして“俺は最強なんだ”と思いつつ、胸を張って生きていこうと思います」と再会への約束とエールを贈り、「かつて天才だった俺たちへ」と新曲「バレる!」を披露。こちらの身体のみならず、魂まで丸ごと揺さぶるような真摯なライブだった。
マカロニえんぴつ
そして、この日のトリを務めたのは、マカロニえんぴつ。こっくりとした甘さと、切なくなるような酸っぱさ。スイーツにも恋愛につきものである、そうした味わいを爽やか&ポップに歌い上げる「レモンパイ」からスタートし、「横浜、そんなもんじゃないよね?」とのはっとり(Vo/Gt) の煽りを加えた「洗濯機と君とラヂオ」、テンポの変化や歌詞におけるギミックの入れ方が絶妙な「生きるをする」を一挙にプレイ。高野賢也(Ba/Cho)、田辺由明(Gt/Cho)、長谷川大喜(Key/Cho)の3人も、はっとりの歌声をしっかりと支えつつ、緊張や気負いを感じさせることなく、自由に演奏していく。その後、「元気を残して帰らぬように!Love musicだけに、愛をこめて」と、音楽”愛”を歌った「MUSIC」と、君への”愛”を伝えそびれてしまった切ない恋愛模様を描く「恋人ごっこ」の続けて贈った4人。その2曲の並びにストーリー性を感じると共に、様々な「愛」に対する楽曲を歌い続ける彼らの多角的な視野と歴史を感じた。
マカロニえんぴつ
ここまで、どの曲でも自然発生的にハンズクラップは発生していたが、「ルート16」では、そのクラップをパーカッションの一部に率先して加えつつ、オーディエンスを含む全員で曲を再構築。そこで得た特大エネルギーを燃料としながら「はしりがき」、最新曲「八月の陽炎」へと一気に走り抜けた。そして、「箸にも棒にも掛からなかったグッドミュージックを、危うく自分でも嫌いになりそうだったミュージックを、愛でいっぱいのミュージックに変えてくれたのはあなたです。ラブソングにするには、あなたに届いてなきゃ意味がない」と、目の前にいる人に対する愛を伝えた彼らが最後に選んだ楽曲は、『Love music』初出演の際に披露した「ミスター・ブルースカイ」。「こんな暗い毎日だって通り雨に過ぎないと、そう思って歌います」というはっとりの言葉と<ブルースカイ、いつか届け>という歌詞が、曇り空を割く一筋の陽の光のように思えて、とても頼もしかった。

取材・文=峯岸利恵 撮影=白石達也

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