ビーバー、マンウィズ、時雨 三つ巴
の競演が実現した『LOVE MUSIC FEST
IVAL 2021』2日目

フジテレビ系の音楽番組『Love music』による、“テレビでは伝えきれないライブの感動・興奮・魅力を伝えるべく開催した本気のロックフェス”というコンセプトのライブイベント『LOVE MUSIC FESTIVAL 2021』。昨年は新型コロナウイルスによる感染症拡大の影響で開催されなかったが、今年は感染症対策をしっかり行ったうえで開催。2年ぶりの『LOVE MUSIC FESTIVAL』に集まった観客の熱量は高く、各バンドのライブが始まる前には、「待ってました!」と言わんばかりに大きな拍手、手拍子をしている。
2日間のうち、この記事では2日目(6/27公演)の模様をレポート。『Love music』2月の放送で凛として時雨MAN WITH A MISSIONSUPER BEAVERの3組が揃って登場し、それぞれのバンドのフロントマン2者1匹(TK、ジャン・ケン・ジョニー、渋谷龍太)によるスペシャルトークを行ったその縁もあって、今回『LOVE MUSIC FESTIVAL』でも夢の競演が実現することとなった。
SUPER BEAVER 撮影=タマイシンゴ
番組セット同様、ペガサスのオブジェが印象的なステージに最初に登場したのはSUPER BEAVERだ。手を叩く観客を煽るようなしぐさをした渋谷龍太(Vo)は、まず、イベントスタッフや観客への感謝と敬意を言葉にする。客席からの手拍子とアカペラによって始まった1曲目は「美しい日」。続く「閃光」も歌い出しはボーカルのみで、息を吞むような静寂が生まれた。それにより、<あっという間に終わってしまうよ>という言葉の威力が増す。終わってしまうからこそ、今ここにある感情を曝け出すんだといった具合に、バンドも客席も凄まじいエネルギーを放っている。
SUPER BEAVER 撮影=タマイシンゴ
中盤では、最新曲「名前を呼ぶよ」も披露。搔きむしるようなギター、うねるベース、“強い”よりも“鋭い”と形容したくなるドラム、遠くまで伸びていくボーカル。聴いているこっちも覚醒せざるを得ないような、全身の毛穴が開く心地のするバンドサウンドだ。だからこそ、それを目の間にした観客の盛り上がり方はさらに前のめりになっていく。SUPER BEAVERは結成17年目で、この日出演した3組の中では一番年下(究極の生命体たちは長年凍結されていたので)。“後輩”として先陣を切っていく立ち位置は今や珍しいが、ライブバンドとして生きている今の彼らがそれをやるとどうなるか……。「最高の1日を作る約束をしますけど、最高の1日を一緒に作りたいと思っています」(渋谷)と語るバンドの覚悟はまさに演奏に表れていた。
人間の愚かさと美しさを見つめたうえで、<信じ続けるしかないじゃないか/愛し続けるしかないじゃないか>と唄う「人として」、そして「この場所にいるあなたに、そしてこのイベントに、最大級の“愛してる”を贈りたいと思います」(渋谷)と届けられた「アイラヴユー」で終了。大声で愛を叫べるようになるその日を信じる気持ち、未来への希望を音楽に託す。
MAN WITH A MISSION 撮影=Daisuke Sakai
続いては、MAN WITH A MISSIONが登場。昨年は有観客フェスがほとんど開催されなかったため、タオルを掲げたりガウガウポーズをしたりしながらライブを待つ観客の様子がもはや懐かしく感じられる。疾走感と壮大さを兼ね備えたサウンドで鳴らされたのは「Raise your flag」。そしてあのギターリフが「Get Off of My Way」の始まりを告げる。このご時世のため観客は声を出せないが、それでもシンガロングが聞こえるような気がするのはなぜだろう。客席のテンションの高さはメンバーにも伝わっているようで、「調子良サソウジャネエカ、人間ノ野郎ドモ! 最後マデソノ調子デ行クゾ!」とジャン・ケン・ジョニー(Gt/Vo/Raps)。さらに「世界ハ急激ニ変ワッテイキヤガリマシタケド、我々ノ心ハ変エラレテナルモノカト。ダカライツモト同ジヨウニ楽シンデイッテクレ!」と伝えた。
MAN WITH A MISSION 撮影=Daisuke Sakai
3曲目には、最新曲「INTO THE DEEP」を披露。エレクトロ要素の強い出だしからラップパートを経て、バンドサウンドがじわじわと剥き出しになっていく構成は、ライブだとなお聴き応えがある。特に、サビに入り、視界が一気に開ける瞬間は問答無用でアガってしまうものだ。そうしてバンドの最新モードを提示しつつ、「これこれ!」と言いたくなるようなライブ定番曲群もしっかり演奏。そんななか、異彩を放っていたのが、NHK『みんなのうた』でオンエア中の「小さきものたち」だ。ハートウォーミングなサウンドとともに平和と幸せを願う歌が、今日ここで届けられた意味を噛み締める。
MAN WITH A MISSION 撮影=Daisuke Sakai
番組内で行った3組のフロントマンによる鼎談を振り返り、初共演ゆえにマンウィズのバックボーンを知らなかった凛として時雨・TK(Vo/Gt)を「え、研究室で育ったってどういうことですか?」「南極の氷に?」と困惑させてしまったと明かしたMCを経て、「FLY AGAIN -Hero's Anthem-」からの「Remember Me」で締め。トリの凛として時雨にバトンを繋げた。
凛として時雨 撮影=タマイシンゴ
凛として時雨は「abnormalize」でスタート。TKと345(Vo/Ba)による超ハイトーンのツインボーカル。ベース&ドラムによるスリルとグルーヴ。歌いながらよくこんなに弾けるよな、とシンプルに感心するしかないギターさばき。触れるものみな傷つけそうなサウンドの狂気を、ぴあアリーナの照明が一層際立たせる。前2組のときとは違い、客席の人々はただただ立ち尽くしている。凛として時雨のライブは“一緒に唄いたくなる”とか“手拍子して盛り上がりたくなる”という感じではないが、研ぎ澄まされた演奏を全身で浴びるという体験は、一人ひとりがそれぞれに何かを受け取り、大切なものを持ち帰るのがライブなのだと思い出させてくれる。観客が声を出せなかろうと、普段の半分しか観客を入れられない状況だろうと、変わらないバンドの強さがここにある。
凛として時雨 撮影=タマイシンゴ
最初の3曲は『PSYCHO-PASS サイコパス』関連楽曲。フェスらしく、タイアップ曲中心のセットリストかと思いきや、2010年リリースのアルバム曲「a symmetry」で意表を突いてくるのが心憎いし、精度と衝動、どちらも要求される同曲を2021年現在の3人の演奏で聴けたことが嬉しい。ピエール中野(Dr)のMCを挟み、「テレキャスターの真実」から後半に入ると、この辺りから客席で挙がる腕の数が増え始め、ダンスミュージック色の強い「DISCO FLIGHT」では多くの人が身を揺らす。
凛として時雨 撮影=タマイシンゴ
そしてラストのMCでは、TKがイベントのスタッフ陣に向けて「音楽には、僕たちみたいに“どうしてこうなっちゃったんだろう?”って音楽もあるんですけど、ぺちゃんこにせず、歪なまま伝えてくれようとしている愛が嬉しいです」と語った。凛として時雨は今年2月に番組に出演したが、そもそもテレビ番組やフェスに出演すること自体がかなり珍しい。その背景には、『Love music』チームとの信頼関係があったということだ。「傍観」演奏後、残響音を残して姿を消した3人。嵐が去ったあとのようなこの胸のざわめきもまた、“テレビでは伝えきれないライブの感動・興奮・魅力”に違いない。

取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=タマイシンゴ、Daisuke Sakai

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