ドラァグクイーンが考える宇多田ヒカ
ルのノンバイナリー告白:ドラァグク
イーン・エスムラルダ連載369

エスムラルダの「勝手にワイドショー!」
第369回 ドラァグクイーンが考える宇多田ヒカルのノンバイナリー告白 宇多田ヒカルが6月26日、インスタグラムのライブ配信で、自身がノンバイナリーであることをカミングアウトしたというニュース、みなさんはご存じかしら? なんでも、ヒカルは数年前に「ノンバイナリー」という言葉を知り、自分がそれに当てはまると自覚したのは最近とのこと。
 海外ではサム・スミスなどが、ノンバイナリーであることをカミングアウトしているけど、日本できちんとノンバイナリーであることを公言した著名人は、おそらくヒカルが初。
 って、今、おそらくほとんどの人が「ノンバイナリーって何?」と思ったわよね……?
 ノンバイナリーというのは、性自認が女性/男性の典型的な二分法(バイナリー)に当てはまらない人(女性と男性のグラデーション上にある人、女性でも男性でもない人など)のこと。
 こういうと「え? 宇多田ヒカルって、男も女も好きなの?」と勘違いする人がいるかもしれないけど、性自認(自分の性をどう認識しているか)と性的指向(自分がどんな相手に恋愛感情や性欲を抱くか)は全く別物。ちなみにアタシ自身は、男性が好きで、ステージに立つ際にはドレスを着たりしているけど、性自認は男性。現時点では、自分の体に違和感を抱いていないし、日常生活で女性の格好をしたいとも思っていないわ。
 さて、著名人がこのようなカミングアウトをした場合、アタシとしては「あーはいはい、話題づくりね」と思っちまうときと、そうでないときがあるんだけど、ヒカルに関しては完全に後者。昔から、ヒカルが書く詞や言動には、どこか性別を超越したものを感じていたから、今回のニュースを知って腑に落ちたというか、すんなり納得したわ(それに、ヒカルは、そんなことで話題づくりする必要性感じてなさそうだし)。
 そして、今回の件がきっかけで、多くの人が「ノンバイナリー」という言葉を知り、「世の中には、『女性』という枠にも『男性』という枠にもハマれない(もしくはハマりたくない)人がいる」という認識が広まったことの意味は大きいと思うわ。特に、今まで「自分は、体は女性だけど、女性であること、女性として生きることに違和感を覚えている。だからといって、自分のことを男性だとも思えない」といった悩みを抱えていた人が、ノンバイナリーという概念を知ったら、かなり気がラクになるはず。「世間の『当たり前』にハマることができない」「自分が何者かわからない」という状態は、多くの人にとって、かなりしんどいものだから。
 ただ、多様な性のあり方が認知されていくのはいいことだと思うんだけど(女性/男性という二分法に、そもそも無理があるのよね)、文章を書く人間としては、ちょっと困るのが、代名詞。「彼女」「彼」といった代名詞が使えないと、この文章みたいに、何度も「ヒカルが」とか書かなきゃいけないじゃない……?
 というわけで、「彼女」「彼」に代わる代名詞が一日も早く発明され、世の中に広がることを祈っているわ!
<水曜連載>※今回金曜更新
写真:A non-binary flag on with wood texture Karen Roach/Adobe stock
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【エスムラルダ:プロフィール】
えすむらるだ…1972年生まれ。94年よりドラァグクイーンとしての活動を開始し、各種イベント、メディア等に出演。2002年、東京都の『ヘブンアーティスト』ライセンスを取得。脚本家・ライターとしても活躍している。著書に「同性パートナーシップ証明、はじまりました。」(ポット出版、共著)
twitter:@esmralda001
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